Essay

東京オリンピックを機に日本は飛躍的な発展を目指せ

藤 誠志

安倍政権の発足によって 日本の「反論」が始まった

 九月十四日の産経新聞の一面トップ記事の見出しは「WTOに韓国提訴へ」だった。二〇二〇年オリンピック開催地を決定するIOC(国際オリンピック委員会)総会直前の九月六日、韓国政府は「汚染水漏れ問題への懸念が広がった事を受け、福島、青森、岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、千葉の計八県の水産物の輸入を全面禁止すると発表」した。「二〇二〇年夏季五輪の開催都市を決める国際オリンピック委員会(IOC)総会直前の禁輸措置の発表に、日本国内では『韓国が東京の五輪招致を妨害している』」という声も出ていた。これらを踏まえ日本政府が韓国のこの禁輸措置に対して、「科学的根拠のない不当な輸入制限だとして、韓国を相手取り年内にも世界貿易機関(WTO)に提訴する方向で検討に入った」と報じられている。またフランスの週刊紙「カナール・アンシェネ」が九月十一日付け紙面に、原発事故の影響で腕や脚が三本になり、痩せこけて目玉が飛び出ている力士が爆発した原発施設をバックに相撲を取っていて、さらにそれをレポーターらしき男性が「フクシマのお陰で、相撲が五輪種目になった」とコメントしている風刺画を掲載した。これに対して菅官房長官は十二日の会見で、この風刺画は福島の避難者を傷つけ、世界中に日本に対する誤った印象を植え付ける「不適切な報道で大変遺憾」と述べ、在仏日本大使館を通じてカナール・アンシェネに抗議を行った。カナール・アンシェネの編集長は、「何が問題なのか、分からない。謝罪するつもりはない」と発言し、その傲慢ぶりを晒している。例えば原発事故がアメリカやイギリスで発生したとして、それをオリンピックと絡めたこの様な風刺画がフランスのメディアに登場する事があるだろうか。チェルノブイリの事故の時に、ここまで酷い風刺画が出回っただろうか。私には、白人国のアジアに対する差別意識が背景にある様に思えてならない。
 先月号の本稿で、私は「世界の情報謀略戦は、過酷さを増している。中国とアメリカはお互いをサイバー攻撃の首謀者だと非難しているが、実際にはどちらもやっているはずだ。盗聴を含む情報収集・解析に加え、撹乱情報を流したり、相手国のコンピューターサーバーにサイバー攻撃を加えるのは現代の国家としては安全保障上当然の事だ。この世界の現実に危機感すら感じていない日本が問題なのである。一刻も早く、少なくとも全世界から日本に影響力のある国の言語でのテレビや新聞などの公開された情報を収集・解析できる体制を作り、誤った報道や日本を非難する報道に対しては、二十四時間以内に反論し訂正を求めるとともに、サイバーテロによる攻撃にも直ちに反撃できる体制を築かなければならない」と書いた。
 しかし安倍政権の登場によって、今取り上げた韓国の禁輸措置やフランスの週刊紙の報道への対応の様に、ようやく日本にも諸外国の誤った報道・主張に抗議をし、反撃をするというスタンスが芽生えてきた。これまで諸外国の主張を甘受し何の対応も行わなかった結果、それらの国の主張が真実としてまかり通ってしまって来た。中国が主張する南京大虐殺や韓国が主張する従軍慰安婦問題の様に、史実に反する事をあたかも日本軍が行ったかの様に世界中に喧伝され、それを信じた世界中の人々が日本を批判している。最初の段階でその都度反撃をしていれば、今の様な状況にはならなかったはずだ。

 

汚染水の放射性物質の数値は飲料水の五百分の一

 韓国の水産物の禁輸措置は、福島での原発事故による汚染水が原因だと主張しているが、その対象に海のない栃木県や群馬県も含めている。全く支離滅裂だ。こういった事は、朴槿惠韓国大統領が、父の朴正煕が、かつて日本軍将校であったことで、自らも親日派と見做されて批判されて来たその反作用であり、こうした自らの政権基盤の強化のための韓国の卑劣な宣伝工作に対して、IOC総会での最終プレゼンテーションで安倍首相は、泰然と「近海でのモニタリングでは、(放射性物質の)数値は最大でもWHO(世界保険機関)の飲料水の水質ガイドラインの五百分の一」「健康問題は現在も将来も問題ない」と委員の不安を払拭、その結果二〇二〇年の東京オリンピックの開催が決定した。日本のイメージ低下には、国内の反日メディアも一役買っている。
 事実や科学的根拠、統計学的確率計算に基づかず、これまで排出された汚染水の放射性物質は十兆ベクレルとよく分からない単位で不安感を煽っているが、これが福島第一原発港湾内の〇・三平方キロメートル内に排出されても海水で希釈され、飲料水の水質ガイドラインの五百分の一程度という事で、この様に、全く健康に害のない程度の放射性物質の排出なのに、過度に放射能への不安感を煽り、ひたすら日本を貶める事に専念する反日メディアの報道を、中韓がまた利用して日本攻撃を行っている。五十六年ぶりの東京オリンピックに向かって、国を挙げて歓迎をし、一致団結して準備にあたって行くべきなのに、メディアは安倍首相のプレゼンの中にあった、「汚染水は福島第一原発の〇・三平方キロメートルの港湾内で完全にブロックされている」という発言に執拗に食い下がり、海水はシルトフェンス内外を行き来しているので、ブロックなどされていないと非難するが、海水がシルトフェンス内外を行き来していれば更に希釈されてWHOの飲料水の基準値の五百分の一よりさらに少ない放射性物質しか検出されていない事になるのに、その事をほとんどのメディアは報道していない。この事を大きく伝えて、国民を安心させなければならないのに、逆に不安感ばかりを煽っているこの姿は、一体何なのだろうか。
 メディアの「煽り」は過去何度も行われてきた。二〇〇三年のサーズや二〇〇九年の新型インフルエンザ騒動の時も、防護服を着た係員が飛行機の中の消毒を行う映像を流す事などで、必要以上に人々を不安に陥れた。東日本大震災と原発事故後、トモダチ作戦を展開したアメリカ軍も、空母ロナルド・レーガンを原発から百六十~二百キロの位置に離し、救助作業から帰還したヘリコプターや兵士の除染作業の映像を世界中に垂れ流した。どれくらいの放射能がある地域で作業を行い、どれくらいその影響があったために除染したのかなどは、一切公表されていないため、その映像から伝わるのは漠然とした不安だけだ。落ちて来た隕石に当たって死ぬ確率等は限りなくゼロに近いが、メディアの報道は確率的に見れば、隕石での死亡事故を避けるために外出はするなと言っているに等しい。こんな非科学的な報道が、まさに風評被害を生み出しているのだ。三本の手足の力士の風刺画を掲載したフランスの週刊紙の様な報道はせずに、日本のメディアには正しい報道で、国民が安心して生活ができる様に導いてくれる事を強く願っている。

 

東京オリンピックの次は 旧敵国条項の撤廃だ

 安倍政権によって、誤った報道を指摘して、それを発した機関へ抗議をする体制が次第に整いつつあるが、さらに年間予算三千億円でスタッフ三千人規模の情報宣伝機関「情報宣伝省」を創設して、すぐにでも世界から日本を非難する情報や誤った情報を収集し、すかさず反撃すべきだと私は主張している。二十一世紀となり、「世界の戦い」は軍事的に相手国を屈服させるというよりも、情報謀略戦で相手国の富や権益を奪うという形に変化してきている。中国はありもしない南京大虐殺を強く主張する事で尖閣諸島の領土と領海を自国のものとし、その地下に眠る大量の地下資源を我が物にしようと画策している。この様な状況となって来たのは、これまで日本が南京大虐殺についてしつこく明確な反論を行って来なかったからだ。安倍政権の誕生以来、従来の政権に比べれば遥かに巧みな情報宣伝活動を行っているが、さらに情報宣伝省の創設によって、日本に不利益な報道があれば二十四時間以内に抗議を行う体制を取るべきだ。
 私はこれまで世界七十七カ国を歴訪、この五~六年だけでも数多くの国々を訪れて来て、常に主張して来た事は、「東京オリンピック開催に一票を」と「国連憲章内の旧敵国条項撤廃への支持」である。今回ようやく二度目にして東京オリンピックの開催という夢が叶った。次は旧敵国条項の撤廃である。日本政府の見解ではこの条項の「敵国」に当たるのは、日本、ドイツ、イタリア、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、フィンランドの七カ国である。この国々が結束し、三年以内に撤廃が行われないのであれば、国連分担金の支払いをストップするという措置ぐらいは取っても良いのではないか。国際連合というのは意図的な誤訳で、正しい訳は連合国であり、先の大戦の戦勝国にのみ拒否権のある常任理事国の地位が与えられている。しかし、その大戦から七十年が経過しようとしており、国家間の戦争を回避するという国連の大きな役割も機能して来ている。そろそろ国連は大改革を行って、加盟国の真の平等を実現した国際組織へと生まれ変わるべきではないだろうか。そのためには日本だけが声を上げていても駄目だ。
 「敵国」とされていた国が全て国連に加盟する今、この条項は死文化しているとも言われる。一九九五年に日本やドイツがこれらの条項を国連憲章から削除する決議案を国連総会に提出、賛成多数によって採択されたが、国連憲章改正の条件である国連加盟国の三分の二での批准が未達成なため、決議は未だ効力を発生していない。これを速やかに進めるよう、「敵国」とされている国々が力を合わせるべきなのだ。
 日本が真っ当な国家となるためには、国連憲章の旧敵国条項の撤廃と日本国憲法の改正が必要だ。安倍政権はこれに全力で取り組むべきだろう。さらに憲法改正の先には、軍の独立を達成しなければならない。そして独自の兵器開発も行うべきである。自国で開発した兵器を自国だけで使用していては、コストが掛かり過ぎだ。結局、予算の絡みで日本の兵器が採用されず、アメリカの開発費償却済の一世代前の兵器を高く買わされる羽目になる。アメリカをはじめ、中国やロシア、フランスなど多くの国々が行っている様に、日本も技術力を活かして最新鋭兵器の開発を行い、それらは自国の軍隊で採用し、一世代前の兵器は海外に輸出するのである。かつては自由主義国家には共産圏への武器輸出規制があったが、今それらはほとんど無くなり、各国とも自国の国益に沿うかどうかで武器の輸出を決めている。

 

日本製攻撃用兵器を備えて効率的に抑止力を得るべき

 また日本の防衛予算(軍事費)はアメリカ、中国、ロシア、イギリスに次いで、世界第五位だ。これだけの金を費やしているのに、防御用兵器しか装備できず、攻撃用兵器を禁じられているために、効率はかなり悪い。「攻撃は最大の防御」である。「やられたらやりかえす」事が可能な攻撃用兵器を持っている事が抑止力に繋がり、結果として戦争を防ぐのだ。これが世界の常識であり、軍隊で日本の自衛隊の様に自らの手足を縛っている国はない。平和は願うだけで達成されるものではなく、古代ローマ人曰く「平和を求めるなら、戦争の準備をせよ」なのだ。日本はもっと現実に目を向けなければならない。
 繰り返すが、今の戦争は経済戦争と情報謀略戦争だ。経済戦争に対しては、日本は先端科学技術立国と観光立国を掲げて、世界第二位の経済大国の地位の奪回を図るべきだ。ようやく一千万人に達しようとしている訪日外国人観光客数だが、二〇二〇年の東京オリンピックまでには、さらに倍の二千万人を目指すべきだろう。情報謀略戦争は情報宣伝省を創設すると同時に、サイバー戦争を戦うサイバー部隊の創設が必要になる。また、これらの新組織のバックグラウンドには、日本を守るという強い気概が必要だ。そのためにも日本の近現代史を正しく学び、日本民族が過去も今も、そして未来も世界から尊敬される誇れる民族である事を知る事が大事なのだ。今、日本国民が誇りを持てないのは、先の大戦末期から始まった戦後世界覇権を巡るソ連に対する牽制として、すでに完成間近となっていた原爆を完成させ日本に投下した事で、後に日本から非難されない様に、日本軍がそれ以上に悪い事をしたのだと、占領時代にアメリカが行った「自虐的国民への洗脳プログラム」が成功を収め、戦後七十年に亘って教育機関がアメリカの意図に沿った誤った歴史を教え、報道機関がこれまたアメリカの意図に沿った誤った歴史を伝え、中韓がこれを利用して日本を非難し、反日メディアがそれに輪をかけて非難報道を繰り返してきたからだ。それももう終わりにすべきだろう。アメリカとの真っ向勝負は避けて迂回戦術をとっている安倍首相だが、東京オリンピック開催決定などひとつひとつ成果を獲得してきている。東京オリンピックは、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の三本の矢に続く安倍政権の第四の矢だ。日本を再び誇れる国とすべく、東京オリンピック開催までの長期政権を目指して、引き続き安倍首相の活躍には期待をしたい。私も精一杯のサポートを行うつもりだ。

9月24日(火)午後5時20分校了