昨年10月に北京で開かれた中国建国60周年を祝う軍事パレードは、国際社会に「やはり中国は軍事大国を目指し、覇権獲得が究極の目的なのだ」と強く印象づけた。中国が誇る陸海空の最新鋭兵器が次々に登場して、テレビ画面を通して見ていても圧倒させられた。特に注目は弾道ミサイルで、10年前のパレードで披露された数は36基だったが、今回は108基と3倍に増えた。性能もアメリカ全土への核攻撃が可能な長距離ミサイル「東風31A」や、日本やインドなど周辺諸国を射程に収める中距離ミサイルで、日米が共同開発するミサイル防衛のMDシステム突破を可能にする「東風21C」など、性能も大幅にアップしている。
陸上車両では最新型の重戦車「99式」や海からの上陸作戦用の水陸両用戦闘車が初公開された。台湾侵攻を想定したものと思われる。空にはロシアの戦闘機スホイ27をモデルにした国産機「殲一一」が編隊で初飛行、空中警戒機、爆撃機などが次々にデモ飛行を繰り広げた。男女兵士の一糸乱れぬ行進も、よくテレビで見せられる北朝鮮の行進を凌駕する見事さで、圧倒させられると同時に、世界の潮流が核軍縮に向かおうというこの時代に、あえて軍事力を誇示するパレードを行ったことの狙いに背筋が凍る。いくら胡錦濤国家主席ら指導部が平和を強調し、中国脅威論を薄めようとしても、薄め切れるものではない。
軍事パレードではミサイルや重戦車、戦闘機のほかにも、さまざまな最新兵器が登場した。中国軍はアメリカやヨーロッパの国が湾岸戦争やイラク戦争で使った先進兵器を追いかけ、ハイテクを導入して火力や機動力を向上させ、さらには衛星や精密誘導兵器を使った実戦戦術のネットワーク化を進めている。国防費は21年連続で2ケタの伸びを続け、軍事費は日本円換算で15兆円と日本の3倍強、アメリカに次ぐ世界第2位の軍事大国だ。その中国が、今回、ことさらに自国が開発した最新兵器を世界に誇示したことには狙いがある。
隠れた野望というより、最近は衣の下から鎧がのぞく中国の野望は、アジアにおいて西太平洋を支配し、防衛ラインを中国本土から離れた太平洋上まで前進させることだ。その場合、アメリカはグアム、ハワイまで後退し、日本は中華勢力圏に吸収されることになる。杞憂ではない。実際に2009年、中国海軍の幹部が米太平洋艦隊のキーティング司令官に、「太平洋を二分し、東をアメリカ、西を中国が支配しよう」と提案したという。米上院軍事委員会でこの証言をしたキーティング司令官は、「ジョークととるかもしれないが、この言葉の中に中国の長期戦略の真髄が入っている」と警告している。米本土を射程圏に収めた最新鋭長距離ミサイル、周辺諸国を全制覇できる中距離ミサイルを整備した現在、アメリカが防衛ラインを日本と中国の中間に置いている現状など、もう役には立たないのだから、兵力を削減し、軍事費を節約するために、頼りにならない日本など見捨てて、アメリカは防衛ラインを下げた方がお得なのでは。中国はあくまでも専守防衛ですからご心配なく。という暗示も込められているのではないか。
この国慶節での軍事パレードの半年前の4月23日、中国は山東省青島沖で中国初の国際観艦式を行い、原子力潜水艦や最新鋭の水上艦など25隻を披露、アメリカ、ロシアなど14カ国から艦船21隻が参加したが、日本の海上自衛隊の艦船は招かれなかった。この観艦式でも胡錦濤国家主席(軍事委員会主席)は各国海軍代表の前で、「中国は防御型の国防政策を堅持し、永遠に覇権を唱えず、軍拡競争をせず、いかなる国にも軍事的脅威になり得ない」と演説し、中国脅威論の打ち消しに躍起だったが、とうていまともには受け取れない。「国力や軍事力がどんなに強くなろうと、われわれの専守防衛は変わらない」と強調し、胡指導部も「平和を持続させ、反映する和諧世界の建設を目指す」外交の基本方針を改めて示したとしているが、本音と建前の使い分けは中国の常套手段だ。
世界的大ヒットを続け、かつて「タイタニック」が作った世界興行収入を抜いて新記録を更新中のハリウッド映画「アバター」の上映館縮小を中国国家ラジオ・映画・テレビ総局が映画業界に指示したという。「アバター」は未来の22世紀、未知の惑星パンドラを舞台にしたSF映画。こんな筋だ。惑星に埋蔵されている貴重な鉱物資源を狙って地球の人類が軍隊仕立てで乗り込む。平和に暮らして自然の森で動物たちと共存している惑星の先住民は、森を破壊し、動物や自分たちの生命を脅かす人類の侵略に激しく抵抗する。この先住民を撹乱し懐柔するため地球陣営は、人類と先住民のDNAを組み込んだ先住民同様の分身(アバター)をつくり、先住民の集落に送り込んで工作に当たらせるが、両者の話し合いがまとまらないうちに地球陣営が森を破壊し採掘に乗り出したことから戦いが始まる。人類の暴挙に怒ったアバターは原住民に加担し、巨大な未来型ハイテク兵器やロボットで攻撃してくる地球陣営に対して先住民・アバター側は、森に棲む恐竜や恐鳥を武器代わりに対抗、壮絶な戦いの末に勝利して地球軍を地球に追い返す。この地球軍を中国、先住民を資源を持つ途上国と置き換えてみれば、まさに今、地球の方々で直面し、戸惑い、あるいは怒り、未来を憂いている状況そっくりではないか。それほど中国の膨張、侵食はすさまじい。
そんな中国に周辺国は警戒感を強めている。3月13日付けの朝日新聞の国際面には、『インド軍拡加速』『中国に対抗 ロシアから空母』という見出しの記事が出ている。『インドのシン首相は12日、同国を訪問中のプーチン・ロシア首相と会談し、空母や艦載機の購入をはじめ軍事分野で幅広い合意に達した。インドは、空母建造で遠洋進出を本格化させようとしている中国に対抗。同様に対中警戒感を強めているロシアは、インドへの武器売り込みを加速させている』『インドにとって、ロシアは兵器の60~70 %を供給する最大の調達先。主力戦闘機の供給や巡航ミサイル、原子力潜水艦の開発などで幅広い関係を築いてきた。近年、イスラエルや米国がインドに急接近する中、総額百億ドルとされる巨額合意でロシアが巻き返しを図った』『会談の目玉は、旧ソ連時代の1987年に配備された空母アドミラル・ゴルシコフ(約45000千トン)の引渡しだ。2004年に9憶7400万ドルで基本契約が結ばれたが、インド側が装備の刷新を求めて価格の調整が難航。今回、23億ドルで妥結し、ロシア側は12年末までの引渡しを明言したと伝えられている』『インドは現在、英国から購入した空母一隻(約2万8000トン)を保有している。1950年代に建造され、82年のフォークランド紛争で使用された年代物で老朽化が激しく、代替艦の入手を急いでいた。ゴルシコフに加え、南部ケララ州の港で4万トン級の国産空母を建造中で、2014年ごろの就航を目指している』『両国間には、ゴルシコフの艦載機ミグ二九K戦闘機を16機売買する契約があり、その一部が昨年末、インド側に引渡された。インドは今回、さらに29機を追加購入することで合意し、国産空母にも配備する方針だ』『インドが海軍力整備を図る背景には、62年に国境紛争を経験した中国への対抗意識がある。中国は2隻の空母の建造を急ぐ一方、パキスタン、スリランカ、ミャンマー(ビルマ)で、インドを取り巻くように港湾を建設。「将来の軍港への布石ではないか」(海軍筋)とインド側は警戒感を募らせていた』『インドは国防予算を09~10年度に前年度比23.7%増加させ、10~11年度予算案でも同8%増を計上。5年間で300億ドルをかけた軍事力近代化の真っ最中だ』という。このプーチン首相のインド訪問は、『ロ印関係リセット』とも報じられている。国境を接しないインドへの武器輸出は年々増加し、いまやロシアにとって最大の顧客。この記事によると『2009年のロシアの兵器輸出七四億ドルのうち、中国は18%、インド30%に上る』というのだ。
1年前の就任時には中国に配慮した政策が目立っていたオバマ大統領も、今年になって態度が変わってきた。きっかけは、昨年暮れにベルギーで行われた気候変動会議(COP15)で、中国が誠実さを欠く非協力的な態度をとったことだ。年明けにアメリカは台湾への武器売却を発表。オバマ大統領は就任以来封印していた中国の神経を逆なでするような問題への関与を、とうとう解禁したのだ。2月にダライ・ラマ十四世との会見を行ったのも、この一環だ。チベットは、IT産業などには欠かせない21世紀型の鉱物資源の宝庫として大きな可能性を秘めている。アジアの平和だけではなく、世界経済にとっても重要な鍵を握るエリアなのだ。
北京オリンピック直後に世界を襲ったリーマンショックの影響を物ともせず、今年上海万博を迎える中国は膨大な政府支出を以って依然経済拡大を続けている。これは共産党一党独裁の国だから可能なことだ。インフラ整備にせよ、住民の同意をとるなど時間的なロスもなく、強権的に実行できるからだ。拡大に伴って多くの富裕層が生まれ、日本をはじめ世界へと繰り出し、買い物などに精を出している。その豊かさの背景には、数多くの豊かさを享受できない農民戸籍の人々がいる。中国の富裕層は、人口の9割の人々の犠牲の上に成り立っている。この構造は、かつてのヨーロッパの繁栄がアフリカやアジアの植民地の上に成り立っていたことや、アメリカの白人社会を黒人奴隷が支えたこと、さらに古くは、古代ローマの栄華の背景にあった皇帝、貴族、市民、奴隷の身分制度にまで行き着く。しかしこんないびつな形がいつまで続くのだろうか。チベットや新疆ウイグル自治区の暴動であれば、まだ武力による鎮圧も可能だろう。しかし漢民族の中での矛盾の拡大が暴動に発展した場合、1989年の天安門事件の時の鄧小平と同様に、軍隊によって市民を弾圧するようなことが、果たして現主席である胡錦涛にできるのか、この矛盾の解決は、中国にとって逼迫した課題だ。
一方、アメリカは、9.11以来テロとの戦いに明け暮れ、アフガニスタン、イラクと相次ぐ戦争で疲弊してきている。冷戦終結直後の世界一極支配体制は弱まり、オーバーコミットメントの縮小を目指して、関わりの薄い地域には介入を控えるのが今のアメリカのスタンスだ。中国が軍事力を拡大し、制空権・制海権を確保しようとしている今、日米安保をゆるがせ、自衛隊の力をそぐことばかりを行なっているのが、鳩山民主党政権とマスメディアだ。特に酷いのは普天間問題で、国家間の約束は政権が代わっても引き継ぐのが国際慣行であるにもかかわらず、勝手に自民党政権時の合意を白紙に戻してしまって、それでいいのか。鳩山民主党政権がこの先の日本をどの方向に持っていこうとしているのか、非常に不安である。
ロシアとインドが膨張する中国へ対抗するために連携を深めている情勢下、日本もアメリカとの関係を強化するのはもちろん、ロシアとインドとのパイプを太くし、自らを縛るような非核三原則や集団的自衛権の放棄を止め、武器輸出も可能にして、独立自衛の国家へと変貌すべきである。でないと、日本は中華勢力圏にすっぽりと組み込まれてしまうだろう。そうならないためにも重要なのは日本が攻撃的軍事力を持つことだ。抑止力としての攻撃力を保持してはじめてバランス・オブ・パワーが保たれるというのが、力の論理の現実である。しかし日本が攻撃力を持つことを、アメリカも阻止したいと考えている。そのために防御力である弾道ミサイル防衛システム(BMD)の導入を日本に強く働きかけて、攻撃力となる兵器に予算がまわらないようにしているのだ。3月13日の朝日新聞の国際面によると、アメリカは韓国にもBMD参加圧力をかけている。日本と韓国を自らの配下に置きながら、中国と牽制しあっていくというのが、アメリカの狙いだ。またロシアとインドは、武器だけではなく原発建設まで連携を行うことを表明し、着々と中国に対抗する体制を構築しつつある。こんな中、日本が明確なポジションを確保するには、まず自らを縛っている制約を破棄し、さらに強力なリーダーシップを持った政権が誕生することが必要だ。今の鳩山民主党政権にはとても期待できない。この際一日も早く「誇れる国日本の再興を目指す」政策で一致する真正保守の党を立ち上げることを起爆薬に政界再編を促すべきだ。五月中に普天間問題の解決策を出すと主張する鳩山総理は、細川政権の在任期間(263日)を6月はじめに越えたあたりに自らの退陣と引き換えに普天間移転問題は自民党政権が決めた事とはいえ、アメリカと日本の国と国との取り決めであって、これを尊重しなければいけないと主張を変える事が、彼が「トラスト・ミー」とオバマ大統領に述べた真意である。
鳩山総理は、国会の会期の延長をして逮捕許諾請求の必要な時間稼ぎをするとともに参院選挙を八月に引き延ばし参院選挙前のタイミングの良い時期に退陣を表明し小沢幹事長にも一緒に辞めることを勧める形をとって、若手の親小沢でも反小沢でもない首相候補を擁立して反小沢の推す候補と激しい党首戦(必ず小沢チルドレンとガールズの数が多いので小沢氏の推す候補が勝つ)をやって支持率を上げ、参院選になだれ込む。そうすれプーチンによるメドヴェージェフ政権の様に小沢氏が院政を引くことができると、「辞任すれば逮捕されるかもしれない」とおののく小沢氏を説得して幹事長に辞任を納得させる。そんなことでできる陰の小沢民主党政権の誕生を許してはいけない。