自民党政調の組織に、
「女性活躍推進本部」
がある。
女性が社会のあらゆる場面でリーダーとして活躍することができるように、後押しをしようとする議論を展開している。
この本部の中に、
「女性の権利保護プロジェクトチーム」
を、稲田朋美政調会長の肝入りで設置。
そのPTが、馳浩座長のもとスタートした。
具体的な案件は、
「性的虐待に関する時効制度の改正と、被害者救済制度の整備」
である。
私は15年前から、児童虐待防止法の立法とそのフォローアップに取り組んで来た。
・ 暴力
・ 心理的抑圧
・ ネグレクト
・ 性的虐待
この四つの類型の中で、最も被害が表面化しづらく、さらに虐待発覚後の親子再統合が困難であるのが、性的虐待。
被害児童のほとんどが女児。
幼児、少女の年代に、いったい自分が何をされているかもわからないままに、強制的に虐待を受け続け、誰にどう訴えていいかもわからないままに、時が過ぎてしまう。
その加害者は、家族の中や、親類縁者という、きわめて限られた、身近にいる。
思春期になり、性の知識を得、自分が何をされているかを理解できるようになった時に、どれほどの絶望感を味わい、性の自覚を見失い、自分自身の存在意義すら否定するようになってしまうことか。その状況は、想像に難くない。
しかし。
意を決して家族に訴え出ても、
「おまえさえ黙っていれば」
「家族の恥を表に出すか」
「できればガマンしておきなさい」
と否定的な対応をされ、
「なかったことに」
されてしまうことが、とても多い。
だからこそ、家族再統合が困難。
実は、児童虐待問題に詳しい私のもとに、厚生労働省の村木厚子事務次官が、二人の女性を連れて相談に来られた。
一人は、釧路性的虐待被害事件の原告。
もう一人は、その弁護団の寺町東子弁護士。
要望は、以下の二点。
①幼少時、未成年時に性的虐待を受けた被害者に対する刑事事件の公訴時効と、民法724条の時効・除斥期間の起算点を成人時(20歳)まで停止する趣旨の立法化。
②大人を含む性暴力被害に対する※ワンストップセンターを国として予算化し、全国各地に整備し、特に子どもが性的虐待を受けた場合の相談・対応について、児童相談所とワンストップセンターとの連携を強化
※ワンストップセンターとは!!
被害者が相談、刑事事件等の証拠保全、捜査の支援、診療・治療(医療の負担軽減も含む)、法律相談、損害賠償等の法的手続の支援を調整する機関。
原告の女性の勇気を、特別な事として思ってはいけない。全ての被害児童(男児を含む)を代表しての心の叫び、と私は受け取めた。
村木事務次官は、私が議員立法に走り回っていたときの担当課長であり、
「ぜひ、政治の課題として正面から取り組んでください。役所としてできることは何でもやります。」
と、立法府の対応を求めて来た。
社会正義とは何だろう?
法治国家とは何だろう?
女性活躍とは何だろう?
性の自己決定権とは何だろう?
人権侵害とは何だろう?
いろんな想いがかけめぐる。
成熟した日本社会であるにもかかわらず、家庭の中では信じられない事件が日々繰り返されている危機を、私たち国民は自覚しなければならない。
「一番安全で、安心していられるはずの家庭が、一番恐ろしい場所となってしまい、居場所がない。それどころか、ふるさとすら追われてしまい、家族も親戚も失ってしまう恐怖感で、自分が自分でなくなってしまう。」
との原告の魂の叫びを、どのように受け取めなければならないのか。
この問題の深さは、性の根源に関わることであり、加害者の愚劣さが放置されかねない非道徳性にもある。
少なくとも、加害行為が終了してからの時効ではなく、被害者が事態を自覚してからか、あるいは成人してからを時効の起算点とすべきではないか、の議論を深め、法改正をし、社会に非常ベルを鳴らさなければならないと、私は感じている。
「なかったことには、させない!!」
(了)
馳浩の永田町通信