GOOD TALK

リスクをとって積極的に攻めることは経営者やマネージャーの絶対条件だVol.10[2026年3月号]

株式会社ニトリホールディングス 代表取締役会長兼CEO 似鳥 昭雄
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アパグループ専務 元谷 拓

センスと好奇心で、人に興味を持って接することがチャンスに繋がる

アパグループ 専務 元谷 拓

「暮らしの豊かさを世界の人々に提供する」というロマン(志)を原点として、中長期ビジョンの「三千店舗三兆円」の目標達成に向けて邁進する株式会社ニトリホールディングス。「安さ」「品質」「コーディネート」の三つのこだわりで、「Nクール」や「Nウォーム」などの多彩なヒット商品を連発して成長を続けるニトリ創業者の似鳥昭雄会長をお迎えし、アパグループの元谷専務がその成長の秘密を探ります。
似鳥 昭雄氏 Nitori Akio
1944年樺太生まれ。1966年北海学園大学経済学部を卒業。1967年似鳥家具店を札幌で創業、1972年似鳥家具卸センター株式会社を設立。同年、米国視察ツアーに参加。1978年社名を株式会社ニトリ家具に変更。1986年社名を株式会社ニトリに変更。2010年持ち株会社へ移行。2024年には1000店舗を達成した。
ヒット商品の多くを
似鳥会長のアイデアで開発

元谷 本日はグッドトークにご登場いただき、ありがとうございます。ニトリといえば、数々の大ヒット商品を生み出しています。その秘訣は何なのでしょうか。

似鳥 お招きいただき、ありがとうございます。ニトリ最大のヒット商品は、やはり触れるとひんやりと感じる素材の「Nクール」シリーズでしょう。これは私が発想した商品です。札幌から東京に二十年前やってきたのですが、暑さを強く感じました。夜、寝苦しいのですが、冷房を使うと体がだるくなるのです。自然に涼しくなって気持ち良く眠ることができる寝具がないかと探したところ、それがありません。では自分達で作ろうと思い開発に着手、完成まで四カ月かかりました。最初はなかなか上手くいかず、途中で諦めそうになるスタッフを、「人々の要求を満足させるものを初めて作るのがニトリじゃないか」と励ましましたね。今の製法は異なるのですが、最初に作ったものは大理石を粉にして、繊維の中に入れ込むというものでした。年間三百万個売れないと採算が取れなかったのですが、最初の売上は七十万枚程度。しかし翌年には二百万枚になり、三年目には三百万枚、四年目には…と増え続け、今は一千万枚。商品の種類も敷パッドから布団カバー、枕までどんどん増えていき、大人気のシリーズとなりました。体から発散する水分を利用して暖かく感じられる「Nウォーム」シリーズも多くのお客様から支持をいただいております。また、家具においてもNスリープというマットレスなど、私の発案で開発したものが多くあります。とにかく新商品のアイデアがいろいろと湧いてくるのです。

元谷 人の意見を聞くことも多いのでは。

似鳥 はい。いつもお会いする方に、「困っていることはないか」とお聞きするようにしています。また、十年程前から年二回、パートさんも含めた従業員全員が応募できる、商品アイデア大会を行っています。たくさんのアイデアが集まるのですが、その中から良い提案を選び、表彰します。最も優れたアイデアは実際に商品化して販売しますが、これが良く売れると、またヒット賞で賞金が出るのです。こういう仕組みで、商品開発が順調に進むようになりました。

アメリカの視察研修で
商売のやり方を変えた

元谷 全世界に千以上の店舗を展開、売上高が一兆円に迫り、ニトリは「お、ねだん以上。」という価値を提供するスーパー企業となりました。そもそも似鳥さんはどのような大志を持って、家具店を立ち上げたのでしょうか。

似鳥 五年前にわかったのですが、私は発達障害で、そのため緊張で人との会話が不得手でした。大学を卒業して、バスの広告を担当する代理店に営業職で入ったのですが、覚えたセールストークが出てこなくて、クビになりました。その後なんとか頼み込んで、その会社の住み込みの雑用係になったのですが、またクビに。その後は父が経営していた水道管工事の会社に入ったのですが、そこも飯場が火事になってクビ。追い詰められた中、家具を扱う店舗がまだ少ないということで、家具店を始めることにしたのです。

元谷 背水の陣で始めた商売だったのですね。

似鳥 はい。最初の店舗は妻の接客が上手で、まずまずの儲けになりました。ただお客様に商品数の少なさをよく指摘されて、どうしてももう一店舗出したくなり、一号店から一kmぐらい離れたところに、借金をして二百五十坪の二号店を建てたのです。これが非常に売上が上がり、これで一生食べていけると思ったら、一年後に五倍の大きさの家具店が近くにできて売上が激減、赤字になって倒産の危機を迎えました。その時にアメリカで家具の勉強会があるからというので、旅費の四十万円を借金で工面して、参加したのです。アメリカの豊かさには本当にびっくりしました。どの家にもダイニングテーブルからソファー、ベッドが揃っていて、バスやトイレも二つ以上ある。日本人もこういう暮らしができるようにしたい、そのためにアメリカに追いつき追い越さなければという思いを、二十七歳の時に持ったのです。そこから人生が変わりましたね。

元谷 商売のやり方も変わったということでしょうか。

似鳥 日本人の暮らしを変える「革命」をやろうと思い、それまでの家具を全て否定することから始めました。まず安くて誰もが購入できる家具を販売すること、そして家具だけではなくカーペットやカーテン、寝装品の販売を始め、さらに家庭用品や家電も導入して、今や家中のものが全てニトリで揃うようになりました。

元谷 特に最近、ニトリの商品アイテムの数が増えているように感じます。

似鳥 商品数については、ようやく完成に近づいてきたと思います。ただ「コーディネート」がまだ六割ぐらい。こちらが完成するには、後十年はかかるのではないでしょうか。

成長のために
欠かせない
ニトリの「4C主義」

元谷 似鳥さんが理想としている、他の家具店や家電量販店とは異なる「ニトリらしさ」とは何なのでしょうか。

似鳥 まず安さ。そして品質と機能です。ニトリは他店より値段が半分で、品質と機能は二倍の商品を展開しています。これらの商品を揃えれば、接客をしなくても売れます。接客に力を入れようとすると、教育や採用、雇用に多額の費用がかかります。私は当初から、接客のいらない家具店を目指したのです。次に大切にしたのが、家具と他の商品とのコーディネートですね。

元谷 商品力によって人材へのコストを省くという発想は、他にはないニトリの特徴です。とはいえ、人材の獲得に関しては、似鳥さんも非常に重視されているのではないでしょうか。

似鳥 基本的には新卒採用を行い、自社で育てることに注力してきました。私が三十一歳の時に大卒の第一期を採用したのですが、今はもう五十期になりました。流通業は教育を怠りがちなのですが、ニトリでは二十年掛けて、新入社員を日本一の技術者にする教育を行っています。また優秀な人材のスカウトも盛んです。私も様々な会合に出席、目を付けた人と食事をして、未来に向けて挑戦的だとわかればスカウトしています。成功は四人に一人でしょうか。もう何百人もスカウトで入社してもらいましたが、ロマンに共鳴し残っているのは十人に一人ぐらいです。

元谷 「人は石垣」ではないですから、企業にとってその時に必要な人が入社して、また別の道を見つけていかれたのでしょう。ご一緒していろいろな方と食事をする機会が多いのですが、私は似鳥さんの好奇心の旺盛さにはいつも感銘を受けています。この好奇心はどこから湧いてくるのでしょうか。

似鳥 成長をするには、できるだけ多くの人と会って学ぶ必要があると考えています。若い人からでも、どんな職業の人からでも必ず学ぶことがある。何にでも興味を持っているので、自分にないものを持っている人のことを知りたくなるのです。あと思ったことをすぐに口に出してしまいます。どう思われてもいいので、相手に伝えたくなるのです。

元谷 成長というのは、ニトリの経営においても重要なキーワードになっていますね。

似鳥 ニトリは社員の在り方として、「4C主義」というのを大切にしています。これはChange(変化)、Challenge(挑戦)、Competition(競争)にCommunication(対話)を加えたものです。成長のためには、人間も脱皮して「変化」しなければなりません。今までやってきたことを、現状否定で常に変える。「変化」を科学的に行うために、社員が毎週反省点や問題点のレポートを出し、一年経過した後にそれらをどう変えたかを検証するという仕組みを導入しています。「挑戦」は難しいことに取り組むことです。富士山は準備を整えれば誰でも登れますが、エベレストは生命を賭けないと登れません。それぐらいの挑戦をする。ビジネスでも生き残りのために「競争」が必要で、社内でも競って技術を高め、成長した人をどんどん要職に就けて給料を上げていく。そしてこれら全てのことを行うには、絶え間のない「対話」が重要になっていきます。

元谷 様々なところで、ニトリは「4C主義」を強調されています。

休日に考えたアイデアを
勤務する中で実現する

似鳥 また、素直さ、謙虚さ、感謝の心、あと愛嬌がないと駄目だと。愛嬌がないと、部下がついてこなかったり、周囲が言うことを聞いてくれなかったりします。さらに言えば、私はリスクをとって積極的に攻めることを、経営者やマネージャーの絶対条件としています。しかし実際にはこういう人は少なく、リスクを取ることを怖がる方が多いですね。

元谷 ずっと棚からぼた餅を待っているようでは駄目です。

似鳥 私は物覚えが悪く、整理整頓もできない人間ですが、二十歳前後の時に、何か人に負けないことを貫こうと思ったのです。それが即決即断即行の三つです。私の父は人生には大きなチャンスが三つあると言っていたのですが、どんなチャンスかはわかりません。チャンスには前髪しかなく、後ろはツルッパゲだとも言われていますから、とにかくすぐに決めて、前髪を捕まえなければなりません。そして決断して、すぐに行動する。これらを今も実行しています。失敗もたくさんしましたが、会社が倒産しなければいいわけで、その範疇であればどんどん挑戦しようと。このことを社員にも言っていて、優秀な人材も獲得しているはずなのですが、なかなか即決即断即行できる人がいません。失敗したら、全部会社が責任を持つとも言っています。

元谷 口だけで実行が伴わず、カッコよく仕事をしているつもりですが、結果が伴わない…。

似鳥 どの会社にもそういう社員はいるとは思うのですが、経営者としては対応に苦慮しています。

元谷 いつも仕事でハードな日々を送ってらっしゃると思うのですが、リフレッシュ法は何かお持ちでしょうか。

似鳥 私はゴルフが大好きで、週に一回はコースに出ています。友達とゴルフをして、その後一緒に飲んで騒ぐというのが、最高のリフレッシュになっていますね。

元谷 ニトリレディスゴルフトーナメントも主催されていますから、ゴルフ好きはよくわかります。

似鳥 あと会社にジムがあるので、週三回、筋トレを行っています。年齢が年齢ですので、筋肉が落ちてくるのですが、これを放置していると体や頭の動きが鈍ってくるのです。パーソナルトレーナーの指導の下、毎回一時間ぐらいトレーニングをしています。

元谷 とても良い習慣だと思います。今の二十代や三十代の若い人に伝えたいメッセージは何でしょうか。

似鳥 私は勝負は業務時間以外だと思っています。アフターファイブや休日に、いろいろなアイデアが生まれるのです。ビジネスとは、業務時間以外に考えたことを業務時間に実現するものだという認識を持って欲しいですね。自分が自由な時間にいる時だからこそ、人々が何に対して不平不満を持っているか、何を求めているかがわかると思います。自分なりに考えてでは駄目。顧客の立場に立つことが肝心なのです。あと大切なのは記憶力ではなく、問題発見能力です。問題を発見すれば、仕事の八割は終わっていますから。

元谷 今日は本当にいろいろと貴重なお話をありがとうございました。

似鳥 楽しかったです。ありがとうございました。