GOOD TALK

「お客様の毎日に、おいしい健康を。」健康問題の解決で社会貢献を行うVol.9[2026年2月号]

キリンビバレッジ株式会社 代表取締役社長 井上 一弘
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アパグループ専務 元谷 拓

多様性尊重等多彩な人事政策もキリングループの大きな魅力だ。

アパグループ 専務 元谷 拓

紅茶飲料では国内トップシェアの「キリン 午後の紅茶」をはじめ、プラズマ乳酸菌入り飲料である「キリン iMUSE」「キリン おいしい免疫ケア」、「キリン 生茶」等数々のブランドの清涼飲料商品の製造・販売を手掛けるキリンビバレッジ株式会社。「お客様の毎日に、おいしい健康を。」というパーパスの下、飲み物を通した「健康」という社会課題の解決に貢献するキリンビバレッジ株式会社の代表取締役社長井上一弘氏に、アパグループの元谷専務が迫ります。
井上 一弘氏 Inoue Kazuhiro
1966年生まれ、埼玉県出身。青山学院大学経済学部卒業後、1988年にキリンビール株式会社に入社。営業部門で経験を積み、2015年よりキリンビールマーケティング部 部部長としてマーケティング戦略を牽引。2021年からは常務執行役員流通営業本部長として全国の営業体制を担う。2024年より現職。
「プラズマ乳酸菌」で
免疫機能維持をサポート

元谷 本日はグッドトークにご登場いただき、ありがとうございます。キリンビバレッジ株式会社は、ロングセラーの「キリンレモン」や「午後の紅茶」、コーヒー飲料の「ファイア」等様々な清涼飲料商品を製造・販売されているのですが、井上さんの最も思い入れのある商品は何でしょうか。

井上 私が好きなのは「午後の紅茶ストレートティー」です。スリランカの紅茶葉を使用して、味わい深くバランスの良い味に仕上がっています。「午後の紅茶」だけで、スリランカが輸出する紅茶葉の八%を使用しているのです。紅茶カテゴリーの日本の飲料市場における構成比はまだ5%ほどですが、まだまだチャンスのあるマーケットであり、飲料メーカー各社紅茶飲料マーケットでのシェア拡大を狙ってきています。「午後の紅茶」はこのマーケットでトップシェアです。しっかりと商品を鍛えることで、まだまだこのシェアを伸ばすことが可能だと考えています。

元谷 例えば、アパホテルには直営の鉄板焼レストランがあるのですが、ソフトドリンクメニューの中に「午後の紅茶 おいしい無糖」を入れるのはどうでしょうか。ステーキを食べた後、さっぱりするのにいいと思うのですが。

井上 とても良く合うと思います。ぜひコラボレーションしたいですね。他に好きな商品というと、プラズマ乳酸菌毎日一千億個摂取をルーティンにしていますから、それを含む機能性表示食品である「おいしい免疫ケア」一〇〇mlを一本、毎朝飲んでから出社しています。

元谷 キリンビバレッジの商品はおいしく高品質で、強いブランドの商品が多いですね。また最近は「おいしい免疫ケア」等、健康に注力した商品開発を行っているイメージが強いです。

井上 弊社はキリングループのDNAである「お客様本意・品質本意」に従って、商品開発を行っています。お客様の潜在ニーズを深く捉え、それに向けた「いい商品」を作ることを常に考えていますね。そのため基本的には時間が掛かるのですが、バリューチェーン全体の努力で可能な限りスピードアップを図り、全従業員で新しい飲料文化創造に向けて取り組んでいます。そしてキリンビバレッジグループが掲げているパーパス(存在意義)は「お客様の毎日に、おいしい健康を。」で、飲み物を通じて「健康」という社会課題の解決に貢献することが使命だと考えています。少しでもお客様の健康に役立つ商品を生み出すことで、他社との差別化を図ろうとしており、ビジョン(将来像)として「おいしい飲みもので、ヘルスサイエンスリーディングカンパニー」になることを目指しています。その具体策として展開しているのが、「プラズマ乳酸菌」を核とした、ヘルスサイエンス飲料です。

元谷 プラズマ乳酸菌には、どんな働きがあるのでしょうか。

井上 一般的な乳酸菌は一部の免疫細胞にしか働きかけませんが、プラズマ乳酸菌は免疫の司令塔に直接働きかけ、免疫の司令塔から免疫細胞全体を活性化します。活性化した免疫の司令塔の指令を受けた免疫細胞が外敵に反応し、飲んだ方の健康をサポートするのです。健康の土台である免疫ですが、過労やストレス、睡眠不足等で簡単に落ちてしまいます。規則正しい生活やバランスの良い食事、十分な睡眠と適度な運動が「免疫ケア」には必要なのですが、プラズマ乳酸菌は免疫機能維持をサポートしてくれるのです。少子高齢化による人口減少の続く日本において成長の基盤を維持するためには、お客様の生活習慣にまでアクセス可能な商品やサービスの提案が必要です。そのためのポイントの一つが「美と健康」であり、カラダの健康はもちろん、ココロの健康にも注力するというのが弊社の方針です。

幼少期の子供を
対象に健康啓発
活動を展開

元谷 ノンアルコールドリンクの市場も活性化してきていると聞いています。今後のトレンドをどのように予測されていますか。

井上 コロナ禍によるリモートワークの普及によって健康管理意識が向上し、アルコールを楽しむという人に加え、清涼飲料水で体調を整えるという流れが、若い方々を中心に生まれてきています。今後も消費者のニーズは多様化すると予測しています。アルコールの代替となる商品や健康づくりに資する商品の開発や、デジタルを通じた手軽な健康づくり支援プログラム等の提案で、お客様の様々なニーズに応えていきたいと考えています。まずは「おいしい免疫ケア」。今イチオシの商品ですので、力を入れて販売していきたいですね。アパホテル様にも、朝食ビュッフェでお客様に提供するのはどうでしょうかとご提案しています。

元谷 山積みにして提供すると、インスタ映えして話題になるかもしれませんね。若年層へのアプローチで工夫されていることはありますか。

井上 二〇二五年六月に、「こども専用健康飲料」である「つよいぞ! ムテキッズ」の一部量販店での発売を開始しました。幼少期の健康習慣の形成が商品のコンセプトで、子供達が自ら飲みたいと思うよう、子供のことを知り尽くした「月刊コロコロコミック」(小学館)編集部と共同開発したキャラクター「ムテキッズ」をデザインしています。この商品にも、プラズマ乳酸菌五百億個と鉄分一・五mgを配合。すっきりと飲みやすいヨーグルトテイストです。また同じく二〇二五年六月からキリングループ全体で行っているのが、「キリンキッズケア」プロジェクトです。まずは子供の健康課題が顕在化しやすい二歳児~小学校低学年が対象で、全国二千以上の幼稚園、保育園、小学校での特別授業等での健康啓発活動や、商品、サービスを通じた子供達の大切な毎日と未来を支える取組を行っています。

元谷 ここでも「健康」がキーワードとなっているのですね。

井上 その通りです。

出向先での経験で
会社経営の厳しさを実感

元谷 井上さんが考える「キリンビバレッジ」らしさとは何でしょうか。

井上 弊社は一九六三年に「キリンレモン」の自動販売機を手掛ける「自動販売サービス株式会社」として設立されました。その後業容拡大を行い、一九九一年にキリンビールから清涼飲料事業を譲り受ける形で「第二の創業」を行い、今に至っています。発祥が営業会社ということで、営業が元気というのが、弊社の一番の特徴ですね。また飲料を造り込む調合調香の技術力にも、非常に自信を持っています。

元谷 井上さんご自身は、どのようなお仕事をされてきたのでしょうか。

井上 一九八八年にキリンビールに入社して、最初の配属先は足立区北千住にある東東京支店でした。バブル期ということもあり、私の担当エリアも活気に溢れていて、ビールをかなり売ることができました。一方で繁華街ならではのトラブルも多く、今では考えられませんが、一度道にキリンビールという名前が入った車を止めて営業して戻ってきたら、大勢の人に車が取り囲まれていることがありましたね。その後北海道に八年間いました。仕事を覚えて三十歳ぐらいの生意気盛りの頃、ある企業様に強気の商品の陳列計画の提案をしたところ、「二度と来るな」と怒られました。その企業様は価格訴求が売りだったのですが、キリンの商品のみ価格を上げられて、あっという間に売上がガタ落ちになったのです。結局私が先方に懸命に詫びを入れて、なんとか関係を修復することができました。

元谷 営業担当として、いろいろな経験をされているのですね。

井上 東京に戻ってきた後は、まずはスーパーやコンビニエンスストア等の量販市場を担当した後、キリンヤクルトネクストステージ株式会社という健康食品を販売するキリンビールとヤクルトの合弁会社の営業部長になりました。赴任した時には経営状況が芳しくなく、私も何とか梃入れを行おうと尽力したのですが、結局業務を縮小してキリンビールは手を引くことになったのです。その際、メンバーの何人かには、私から退職勧告を行う必要があり、私も一緒に泣きながらお話をさせていただきました。キリングループにいると経験することがまずないのですが、私は会社というものは下手な経営をすればすぐに潰れるということを、心の底から実感しました。この経験が私の中の大きな財産になっており、以来仕事の厳しさの源泉にもなっていると感じています。その後キリンビールのマーケティング部門担当の執行役員等を経て、二〇二一年に現職に就任しました。

失敗だらけの人生の結論は
世の中「縁」と「運」と「恩」

元谷 そのような経験を経て、今は社長として活躍されている井上さんですが、何か「モットー」とされていることはありますか。

井上 省略して仕事歴をお話しましたが、結論としては失敗だらけの人生で、「失敗が服を着て歩いているようなものだ」と若い社員には話をしています。ただ「人は仕事で磨かれる」「常に一〇〇%目標完遂」の二つは、常に自分の言動の拠り所にしています。さらに還暦に近くなり、世の中やはり「縁」と「運」と「恩」だとしみじみ感じています。会社でよく言っているのは、まず自分で「運」を創ること。「運」は、明確な目的と人知れぬ努力の結果や、素直さや謙虚さという「全人格的魅力」で備わるものです。これがあってはじめて「ご縁」をいただくことができ、この「ご縁」に報いるために、利他の精神で「ご恩」を返そうとする。この感情の流れが人や物事の繋がりの好循環を産み、相手にも自分にも社会にも還元され、豊かな心として実るのです。

元谷 素晴らしいお考えだと思います。

井上 弊社の組織風土としては、真面目で素直で根が明るく、この会社を良くしたいという情熱を持っている人が多いですね。また私の「常に一〇〇%目標完遂」のマインドが根付いたのか、やると決めたことはやり切る、集中力や突破力もキリンビバレッジの強みだと考えています。

元谷 とてもいい会社だと思います。また、様々な人事政策がキリングループの魅力だと聞いています。多様性の観点から、取り組まれていることは何でしょうか。

井上 キリングループは経営理念として、「キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、食と健康の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します」を掲げています。この経営理念の下、食から医療にわたる領域で価値を創造し、CSV(Creating Shared Value)という経済的価値と社会的価値の両立を目指す経営戦略の中で、世界のCSV先進企業となることを目指しています。この方針に基づく価値観 ‘One Kirin Value’ は「熱意 passion、誠意 integrity、多様性 diversity」です。多様性としては全ての社員が個性を活かしながら活躍できる職場づくりを行っていて、女性活躍推進策の一つとして、管理職になったばかりの女性社員が様々なメンターと対話するメンタリングバトンの取組を行っています。また、リーダー層に向けてのアンコンシャス・バイアス(モノの見方の歪みや偏り)の理解促進にも力を入れています。

元谷 今後のキリンビバレッジの躍進に期待できそうです。今日はありがとうございました。

井上 ありがとうございました。