GOOD TALK

コアなビジネスを守りながら先を見据えた変革を率先して行うVol.8[2026年1月号]

サントリービバレッジソリューション 株式会社 代表取締役社長 森 祐二
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アパグループ専務 元谷 拓

新しいアイデアを実行してスピード対応するかどうかですべてが決まる。人を巻き込むことができる魅力を身に付けた人が運をつかむ

アパグループ 専務 元谷 拓

コーヒー飲料の「ボス」や緑茶の「伊右衛門」、ロングセラーの「サントリー烏龍茶」や「サントリー天然水」等のサントリーのソフトドリンクを、自動販売機等によって直接お客様に届ける仕事を担い、さらに独自の問題解決型サービスも展開するサントリービバレッジソリューション株式会社。アパグループの元谷専務がサントリービバレッジソリューション株式会社代表取締役社長の森祐二氏に、高いシェアを誇るサントリーのソフトドリンク事業の躍進の秘密に迫ります。
森 祐二氏 Mori Yuji
1969年岐阜県生まれ。1991年愛知大学法経学部を卒業、同年4月サントリーフーズ株式会社入社。2018年同社 北海道支社長、2021年同社 関東・甲信越支社長、2024年同社 取締役常務執行役員 近畿営業本部長を歴任。2025年1月サントリービバレッジソリューション株式会社 代表取締役社長に就任。
魅力ある世界観の存在が
サントリーの飲料の魅力

元谷 本日はグッドトークにご登場いただき、ありがとうございます。まず森さんの会社のことを、読者に教えていただけますか。

森 私どもサントリービバレッジソリューション株式会社は、お客様の生活シーンの一番近くで、直接飲料をお届けする仕事を行っています。弊社の一番の魅力は、強いブランド力と豊富なラインナップです。二〇一八年~二〇二四年に七年連続年間販売数量で国内清涼飲料ブランドナンバーワンとなったナチュラルミネラルウォーター「サントリー天然水」(※サントリー推計)をはじめ、コーヒーの「ボス」、お茶の「伊右衛門」、スポーツ飲料の「GREEN DA・KA・RA」等、多くの消費者がブランドを認知している商品を、主に自動販売機を通じて販売しています。

元谷 ヒット商品も非常に多いですね。

森 はい。「伊右衛門」は二〇〇四年の発売ですが、その頃私は大手スーパーの担当でした。発売日に店頭で陳列を行っていたのですが、そこに、商品がなくなったので「休売」にするとの電話連絡が入ったのです。それまでサントリーの緑茶は他社に押されていたのですが、「伊右衛門」は発売から一気に飛ぶように売れました。京都の福寿園との共同開発であること、竹筒を模したペットボトルが特徴的だったこと、伊右衛門の茶匠に扮した本木雅弘さんと、それを支える妻役の宮沢りえさんのCMのインパクトが強かったこと等、様々な要因がありました。総じて、和の世界観を前面に出して、工業製品らしくないイメージを打ち出せたのが、成功の鍵でしたね。

元谷 コーヒーの「ボス」も息の長い商品です。パイプを咥えた哀愁漂う「ボスおじさん」のかっこよさでヒットしたと思うのですが。

森 「ボス」は一九九二年発売なのですが、翌年のキャンペーンで二万着プレゼントした「ボスジャン」(「ボス」のロゴがあしらわれたジャンパー)に大量の応募がありました。一九九九年には、携帯電話の「ボス電」をプレゼントにしたことも。こんなキャンペーンの成功もあって、「ボス」のブランドが成長していったのだと思います。世界観の構築の上手さも、弊社の強みの一つですね。

元谷 昨年容器の形状を変更した「サントリー天然水」の一lペットボトルも、非常によく売れていると聞いています。

森 はい。元々円柱状だったペットボトルを、少し高さを伸ばした四角柱状に変更しました。従来一lボトルは二l同様、ご家庭での利用を想定した商品だったのですが、購買動向の分析から五五〇mlボトル同様に、個人が持ち運んで飲んでいることがわかったのです。そこで形状をスリムにして、片手で飲みやすく、リュックのサイドポケットにも入りやすいものにしたのです。ボトルの形状の変更だけで、これほど売上が増加するというのは、サントリーグループにとっても新たな気づきでした。

「やってみなはれ」の精神で
新しい事業も積極的に展開

元谷 そういった新しいアイデアの実行が、サントリーらしさなのではないでしょうか。また、「水と生きる SUNTORY」というコーポレートメッセージからも、環境と品質を大切にするサントリーの姿勢が伝わってきます。

森 まず品質へのこだわりは、サントリーホールディングス株式会社の佐治信忠会長からもよく発せられるメッセージで、グループ内でしっかりと徹底されています。口から飲んでいただく製品の製造・販売がグループのメイン事業ですから、製品として美味しいことが絶対条件です。さらにこだわるのは、製品をお客様に美味しく飲んでもらうための環境作り。例えば飲食店の生ビールは注ぎ方や提供方法、グラスの冷やし方で味が全く変わってきます。ですから飲食店に向けても、きちんと準備してお客様に美味しいものを出しましょうと提案します。製造だけではなく提供方法まで、サントリーグループは品質にこだわっているのです。また「やってみなはれ。やらなわからしまへんで」という創業者・鳥井信治郎の言葉が社内にしっかりと浸透しているので、新しい挑戦も比較的やりやすいですね。マネジメントも、社内が官僚主義になっていないかと、常に目を光らせています。

元谷 そんな気風から、新しい自動販売機の事業や健康経営のサービスが生まれたということなのでしょうか。

森 その通りだと思います。競合との差別化を行うために、自動販売機を介して企業の様々な課題を解決するサービスを提供するというコンセプトから始めたのが、弊社の「社長のおごり自販機」です。導入企業から、非常に高評価をいただいております。

元谷 「おごり」ということは、会社の経費で飲料が飲めるということでしょうか。

森 その通りなのですが、二人の社員がそれぞれの社員証を自販機にかざして、はじめて飲料が出てくるのです。このサービスを始めたのは、コロナ禍でテレワークが増え、社員の間のコミュニケーションが希薄になっていることが経営層の課題だと聞いたことからでした。二人を必須にしたのは、仲間を誘うことで自然と雑談のきっかけが生まれ、自販機まで歩く道のりでの会話や二人で社員証をかざす共同作業がコミュニケーションの活性化につながると考えたからです。一人あたりの一日の上限数や同じ人同士は週に一回が上限、使用できるのは定時内のみ等、企業によっていろいろと独自のカスタマイズ設定を行うことも可能です。導入企業への調査では、従業員利用率は九六%で満足度は九八%、八四%の方がコミュニケーションのきっかけになったと回答しています。

元谷 非常にユニークな企業のコミュニケーション促進施策ですね。

森 また二〇一六年から健康経営優良法人認定制度が始まったこともあり、経営戦略として従業員等の健康管理を行う「健康経営」に注目が集まっています。この健康経営をサポートする「サントリープラス」という、法人向けのスマホアプリと自動販売機を組み合わせたハイブリッドなサービスの提供も行っています。従業員がこのアプリをインストールして、様々な健康行動のタスクをクリアすることでポイントが貰え、弊社が導入したサービス自動販売機で健康飲料等との交換に利用できます。タスクはそれほど健康意識が高くなくても、簡単に実行できるものを多く揃えています。また、ポイント以外にも、アプリには健康行動継続のための様々な仕掛けを準備しています。一方企業の管理者には、専用のWEB画面を提供し、従業員の活動状況(歩数・健康タスク実施状況等)が確認できたり、ウォーキングイベントや各種施策の申し込みも可能で、様々な健康経営のPDCAにお役立ち出来るようになっています。
 なお、導入からご利用までの費用が無料(弊社の自動販売機設置により基本利用料は無料)で、既に千五百社以上でご利用いただいています。

元谷 自動販売機を単に設置するだけではなく、それを中心に様々な新しいサービスを実現させているのですね。

偶然の出会いを大切にして
縁と運とを呼び寄せる

元谷 少し森さん個人のことをお聞きしたいのですが、入社して何年になりますか。

森 一九九一年入社ですから、丸三十四年になります。入社当時はサントリーのソフトドリンクは「サントリー烏龍茶」と「サントリーはちみつレモン」、そして一九八九年の発売当時、鷲尾いさ子さんのCMが話題になって大ヒットした「鉄骨飲料」等もありましたが、現在のようにラインアップが多くなく、ヒット商品の売れ行きにも陰りが出ていましたので営業先に相手にされず、入社して二年間は充実感を得られなかったのを覚えています。たまたま三年目に良いお客様と出会い、期待されることの喜びと貢献することで信頼を積み重ねていくことの大切さを知り、働くことの面白さがわかるようになりました。

元谷 やはり人との出会いが大切ということでしょうか。

森 はい。その後もいろいろ大変なことはありましたが、労を惜しまず努力することで出会いの縁と運に恵まれて、今に至っています。元谷さんの最新著書『誰も知らない帝王学Ⅱ 勇者の選択』を拝読させていただいたのですが、「偶然とは必然という名の運命である」という言葉に感銘を受けました。偶然出会った人を大切にすることで、私もここまで仕事を続けることができました。元谷さんと出会えたのも、必然だと考えています。

元谷 ありがとうございます。森さんのお気に入りの商品は何でしょうか。

森 今は年齢から体調や体型が気になりますから、朝は「伊右衛門 特茶」に決めています。日中も「伊右衛門」を飲んでいることが多いですね。

元谷 サントリーのソフトドリンクには「伊右衛門 特茶」の他にも特定保健用食品として、「サントリー黒烏龍茶OTPP」や「胡麻麦茶」等、健康を考えた商品が充実していますね。特定保健用食品ではありませんが、私は果肉がたっぷりの「Gokuri グレープフルーツ」が好きでした。

森 「Gokuri」は残念ながら終売になっていますが、非常によく売れた商品でした。

任期ある社長として
次世代への継承を重視

元谷 アパホテル&リゾート〈東京ベイ潮見〉のプールは、昨年から「C.C.レモンプール」になりました。これに合わせてホテルの創作ビュッフェダイニング「ラ・ベランダ」では、「C.C.レモン」にたっぷりフルーツを入れた「出来たてフルーツポンチ」をタイムサービスで提供していて、大好評です。

森 私達清涼飲料品の製造と販売を行っている企業は、製品を完成品として販売しているので、アレンジの知恵があまりないのです。〈東京ベイ潮見〉のフルーツポンチは、プールと製品のアレンジメニューを使った、新しい世界観の創出の試みです。私達も今後の提案の参考にさせていただきたいと思います。

元谷 是非導入例としてご参照ください。今年一月一日に社長に就任されてまだ日が浅いのですが、森さんにとって経営とは何でしょうか。

森 私のような新入社員で入社して、そこから階段を上ってきた社長は、どうしても任期がありますから、その中で課題を見つけて解決して、次の世代にバトンタッチすることが重要な仕事になります。三十四年間この会社に勤めてきた中で、気づいたことや考えてきたことが沢山あります。将来的な健全経営に向けて、それらをつまびらかにしていくことも大事でしょう。ただ経営ですので、売上や利益の確保は必須条件だと思っています。

元谷 そんな森さんにとって、商売とは何でしょうか。

森 昔は「商売は心理戦」と思っていましたが、最近は「商売は人との出会いの機会」と思っています。商売を通じて多くの方に出会い、自分の成長に繋げていくものではないでしょうか。

元谷 最後に森さんが考える、これからサントリービバレッジソリューション株式会社が勝ち抜くために必要な「マインド」とは何でしょうか。

森 少し抽象的なのですが、大事なものは守りながら、時には形を変えて時代に合わせていくことが重要ではないでしょうか。コアなビジネスを否定する必要は全くないのですが、ただその先を見据えて変わっていくことを、社員全員が理解することが必須だと感じています。今を守るというのは日本人気質で、愚直に皆が仕事をしてくれるので今が守れているのも確かです。しかし変わろうというマインドも同時に醸成していかなければ、未来はないだろうというのが、私の思いです。

元谷 今日はいろいろと深いお話をお聞きすることができました。ありがとうございました。

森 ありがとうございました。