GOOD TALK

「社長は社員の七光り」を金言に
社員の「働きがい」をサポート
Vol.4[2025年9月号]

赤城ホールディングス株式会社 代表取締役社長 赤城乳業株式会社 代表取締役社長 井上 創太
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アパグループ専務 元谷 拓

ブランドアップと 知名度アップが 商売の鉄則

アパグループ 専務 元谷 拓

看板商品のかき氷をアイスキャンディーでコーティングした氷菓「ガリガリ君」は、一九八一年の発売以来、百五十種類を超えるフレーバーを展開してきた「国民的アイス」。二〇二四年には持株会社を設立してグループとして組織を強化、国内はもちろん「ガリガリ君を世界へ」をキャッチフレーズに、アジア圏での展開にも力を入れている赤城ホールディングス株式会社 代表取締役社長の井上創太氏の戦略を、アパグループの元谷専務が深掘りします。
井上 創太氏 Inoue Souta
1973年埼玉県生まれ。1998年早稲田大学政治経済学部卒業。製パン会社勤務を経て、2004年赤城乳業株式会社に入社。常務取締役開発本部長などを歴任した後、2016年に代表取締役社長に就任。また2024年には赤城ホールディングス株式会社を設立し、代表取締役に就任。
様々な業界とのコラボが社員の学びに繋がる

元谷 今日はグッドトークにご登場いただき、ありがとうございます。社長に就任されてから、もう九年が経つのですね。

井上 はい、早いですね。赤城乳業は創業が一九三一年ですが、会社としての設立は一九六一年で、私が三代目になります。父が会社を大きくして、その勢いのある中で私が社長に就任しました。来年は赤城乳業として六十五周年、私も社長十周年を迎えます。

元谷 「ガリガリ君」といえば、数々のコラボが注目を集めてきました。

井上 社長になる前から「ガリガリ君」の商品開発には携わってきて、その中で唯一、私が社内に新しい風を吹かせるきっかけを作ることができたのが、コラボレーションだと思います。これもまず元谷さんとお知り合いになれて、さらにその縁で株式会社ポケモンの福永晋さんにお会いできたからです。福永さんの方からコラボの話が出てきて、非常に驚きました。二〇一一年に最初の「ポケモン」とのコラボ商品である「ガリガリ君」を発売したのですが、箱入りのマルチパック等が前年度の五倍売れるという大きな反響を呼びました。また、弊社よりも規模が大きい株式会社ポケモンとの仕事は、私や社員にとっても非常に大きな学びとなりました。特にいろいろと制限のある「ポケモン」のキャラクターの使用に関し、根気よく社内を説得していただいた福永さんの姿勢は、私も見習いたいと考えています。

元谷 この「ポケモン」とのコラボが、その後の「スター・ウォーズ」や「シン・ウルトラマン」、サッカー日本代表等と「ガリガリ君」とのコラボの端緒となりました。

井上 「スター・ウォーズ」からのお話は、予想外の出来事でしたね。

元谷 コラボだけではなく、「ガリガリ君」を使った玩具や文房具も販売されていて、一つのキャラクターとしても「ガリガリ君」がその世界を広げています。

井上 「ガリガリ君」グッズに関しては、基本的には広告宣伝だと考えています。アイスクリーム売場以外にも、いろいろなところに「ガリガリ君」を出現させたいという思いからです。このグッズの販促用に「ガリガリ君」の着ぐるみも複数用意、販売店等に出向いています。

元谷 以前、アパホテル&リゾート〈東京ベイ潮見〉のイベントに、「ガリガリ君」の着ぐるみに来てもらいました。

井上 グッズに関しては、こちらからお願いするのではなく、メーカーからオファーがあった場合にお受けする形で進めています。また最初にお声掛けいただいた会社にお願いするようにしていて、後から別の会社が安価な提示をしてきてもお断りしています。とにかく「ガリガリ君」の露出を増やしたいという意図です。

紆余曲折を乗り越えてきた
「ガリガリ君」ブランド

元谷 そんな企業努力もあって「国民的アイス」となっている「ガリガリ君」は、酷暑が当たり前となった日本では、もはや夏の必需品になっています。

井上 「ガリガリ君」を食べることで水分を補給しながら、体を冷やすことができます。熱中症対策を考える方もいて、やはり夏にはよく売れますね。また、二〇二二年に亡くなったアントニオ猪木さんが病室で、好んで「ガリガリ君」を食べていたという報道もありました。水だと飲む時にむせてしまう人でも、かき氷が少しずつ口の中で溶ける「ガリガリ君」であれば、むせずに水分を得ることができます。緩和ケア食として医療現場で重宝されていて、二〇一九年に日本緩和医療学会から感謝状をいただいたこともあります。このように「ガリガリ君」が社会で役立っているとお聞きすることを、とても誇りに思っています。

元谷 そんな様々な顔を持つ「ガリガリ君」ですが、禁止事項が三つあるとお聞きしています。

井上 酒、タバコ、暴力の三つに関連することとは、絶対にコラボはしません。「ガリガリ君」を仕入れて、それでカクテルを作ったりするのは、もちろん問題ありませんが。

元谷 ロゴやキャラクターを使用するのは、今ある「ガリガリ君」の世界観に合致したものだけだということですね。「ガリガリ君」はその豊富なフレーバーが大きな特徴だと思うのですが、井上さん自身は一番どれがお好きなのでしょうか。

井上 たまに出す味なのですが、「ガリガリ君リッチ ミルクミルク」です。それと「大人なガリガリ君 もぎたてぶどう」でしょうか。変わったフレーバーでは、二〇一二年に出した「コーンポタージュ」は大ヒットになりましたが、二〇一四年の「ナポリタン味」は在庫の山ができました。「コーンポタージュ」を出す時は役員からも大反対があったのですが、今の会長の鶴の一声で発売することに。反対意見がある方が売れる場合があります。

元谷 それまで住宅に専念していたアパグループがホテルを始める時も、同様の反対がありました。リスクを恐れて何もしないよりも、多少のリスクがあっても覚悟を決めて挑戦しないと、いい商品が生まれないということですね。

井上 はい。また、赤城乳業に入って私が学んだのは、ブランドには紆余曲折があるということです。「ガリガリ君」も苦戦した時期がありますし、今は順調ですがその伸びは以前よりもダウンしています。厳しい状況の中で何を行うか。「ポケモン」も苦しみながら、ブレない部分を維持してその価値を伸ばしてきたキャラクターだということを、コラボで学びました。この経験を「ガリガリ君」にも生かしたいと考えています。

昨年犬専用アイスを
新発売
海外展開も加速していく

元谷 「ガリガリ君」の周辺キャラも、増えているそうですね。

井上 従来からの妹の「ガリ子ちゃん」に加え、姉の「シャキ子さん」といとこの「ソフト君」の商品があります。昨年発売を開始したのは、飼い犬の「ワンワン君」というキャラの、犬専用のネット販売のみアイスのラインナップです。犬は牛乳がNGなので、ヤギのミルクを使っています。(※乳製品は使用しています。)

元谷 海外展開も強化していくのでしょうか。

井上 二〇一六年にタイのバンコクにAkagi Ice Asia Pacific Co., Ltd.を設立、その後、法人自体の黒字化も達成しました。これからも、弊社が提供する「アイスドリーム」を日本だけではなく、東南アジアのより多くの人にお届けしたいと考えています。

元谷 最後に社長として、今何を最も大事にされていますか。

井上 会長である父に言われたのは、「社長は社員の七光り」という言葉です。自分ひとりじゃ輝けないのだから、社員のために尽くせということだと解釈しています。ただ、社員に迎合するのではありません。最近は私は「働きやすさ」ではなく「働きがい」が大事だと言っています。「働きがい」は自分で作っていくもの。これを会社がフォローするという考えで施策を進めています。

元谷 アパグループも来年で設立五十五周年。何かコラボができればいいですね。

井上 是非やりましょう!

元谷 今日はありがとうございました。

井上 ありがとうございました。