馳浩の永田町通信

2014年11月号 第171回「人事の秋」


 永田町通信
171

人事の秋

馳 浩 ハセ ヒロシ・衆議院議員

 安倍内閣は、大臣が一人も辞職することなく、9月3日に大幅改造をなしとげた。
 戦後はじめてのことである。
 私も昨年、オリンピック招致活動で海外出張をくり返していた頃、必ずこう言われた。
「日本のプライムミニスター(首相)は、もう一年ごとに交代しませんよね?!」と。
 この念押しは、何を意味するのか。
 日本を信用して外交交渉をするのに、トップが一年ごとに替わり、外相や経産相がしょっちゅう入れ替わるようでは、腹の内をさらけ出して話し合いなんてできるものではない。
 生き馬の眼を抜く外交の現場は、斬った張ったの修羅場の連続。
「日本は安全で治安も良くて平和だけれど、首相がコロコロ替わってはねェ……」
 とイヤミを言われたものだ。
「今度のアベノミクスは、違う!!」と、安倍総理とアベノミクスの継続性を主張したことが、いかほどに信頼を得、いかほどに国益を保持することにつながった事か。
 一年八ヶ月、ただの一人の脱落大臣も出さなかった政権のおかげで、経済指標も上昇数字を叩き出すことができた。
 だのに、何故、改造に踏み切ったか。
 それは、改造後の世論調査の数字にはね返ったことで、理解されようかと思う。
 一つには、地方創生担当大臣の石破さん。
 一つには五人の女性大臣の誕生。
 キーワードは、人口減少社会対策、だ。
 日本の国が、今、すぐ目の前にかかえている困難な問題に直面していることへの対策を、人事で明確に浮き彫りにしたことが大きい。
 改造前日の午後6時3分。ケータイが鳴った。私のスマホに「安倍晋三」の文字が光った。
「お?! 閣僚か?」と一瞬私のほほがほころんだのは、事実。
 だって、改造人事の前日夕方に、総理から直接ケータイに電話をいただいたなんて、53年間の人生で初めてのこと。
「ハイッ、馳浩ですッ!!」と思いっ切り元気よくごあいさつ。
(我ながら、調子イイ男だなァ……と反省。)そんな私の心中を推し量るかのように、「ところで馳さん、党の役員をやっていただけますか?」と安倍総理。
(党役員かぁ……ちょっと残念! でも、総理直々に人事を申し渡されるなんて、光栄至極。)
「ハイッ、何でもやります。」
「ありがとう。馳さんには広報本部長やってもらいたいんだけど。いいかな?」
「もちろんです。一生懸命やります。」
 と、電話の向こうにいる安倍総理に対して深々と一礼。
「そうか。良かった。ありがとう、受けてくれて。党の職員は優秀だから、今までの流れを聞いた上で、馳さん
らしく、やってね。」
 と、わざわざおっしゃっていただいた。
 閣僚適齢期の一人と言われてはいたが、いざこうして総理直々に「頼むよ!」
 なんて言われると、感激に打ちふるえてしまって、大臣じゃなかったことの残念感なんて、こっぱみじんに消えてしまった。
(そっか、前任は小池百合子さんだった…)
 とも思い出した。
 さっそく、党本部に20名以上もいる広報本部職員と業務の打ち合わせをし、5階にあった二〇二〇、五輪本部長室から、6階にある広報本部長室に引っ越しも果たした。
 一階上がっただけなのに、なんか、グレードアップしたような気分。
 党役員と言えば、執行部七役。
 週3回も役員会に出席しなければならないし、毎週安倍総理や谷垣幹事長とも顔を合わせることになる。党の重要な情報交換や決裁にも立ち会うことになる。
 これは、今まで以上に責任重大。
 政府与党、足並みをそろえながら、今日本が直面している政治課題を適時適切に国民に伝えていかなければならないし、同時に、伝えるだけではなくて、聞く力、聞いて政策や国会質問に昇華させる力も発揮していかなければならないのだから。
● 朝日新聞の誤報問題と国益のあり方
● アベノミクス第二章と、内閣改造
● デフレ脱却と消費税10%の道のり
● 北朝鮮との拉致再調査交渉
● TPP交渉の妥結に向けて
● 地方創生の具体策
● 法人税減税とその穴埋め財源
 ……上げればキリがないほどの課題山積。
①わかりやすく
②くり返しくり返し伝える
③納得していただけるように
④ネットメディアもSNSも有効活用
⑤そして最後は人と人。聞く力。
 これが私の方針。この人事をステップにがんばります。
(了)