二〇二〇年のオリンピックパラリンピック(オリパラ)東京大会開催が決定。
さっそく安倍総理より、スポーツ基本法制定以来の課題であった、スポーツ庁設置について、その実現に言及するコメントが公表された。
スポーツ庁とは何か?
それは、スポーツ基本法の理念にしたがって、一元的にスポーツ行政を展開する官僚組織のこと。政策実現のための司令塔である。
スポーツの社会的価値観を高め、スポーツの力を発揮する事によって平和な社会をつくりあげることに貢献︱スポーツには自主性が求められており、ともすると個人の自由、好きでやっているんでしょ、スポーツは強制するものじゃないわよ、と一面的なとらえられ方をしていた時代もあったことを想い起こすと、隔世の感。
今や、浅田真央ちゃんの演技に涙し、サッカー日本代表チームとともにワールド杯にのぞむというような高揚感や一体感は、スポーツの価値観を国民に十分浸透させている。
ましてやオリパラ大会も一体的に開催し、成功させようとしている今が、チャンス。
そしてもう一つ。
オリパラ開催の陰にかくれてしまったが、昨今の日本のスポーツ界は不祥事にゆれた。
大相撲の八百長。金メダリストの暴行事件。部活動での体罰自殺。日本代表チーム内でのパワハラ、セクハラ、いじめ事件。競技力強化公的資金の不正経理。競技団体内の紛争。
これらの相次ぐ不祥事を根絶させるとともに、国民に対して説明責任を果たすための公益性も求められるようになった。
そこで。
超党派のスポーツ議連のもとに、スポーツ庁創設プロジェクトチームをおき、さらに有識者懇談会も並行して開催し、専門家からのアドバイスも参考にすることとした。
事は、役所を一つ新たに作るという一大事。
スポーツ庁設置の目的、機能、役割分担、組織などについて議論を深め、有識者より、以下の論点について提言を得た。
①スポーツの教育的価値観にかんがみ、文部科学省の外局とすべき。
②学校体育や部活動は、一体的に所轄すべき。
③障がい者スポーツは、普及と強化を両輪としてとりくむべき。
④アスリートや指導者のキャリア形成を含む職域拡大に取り組む。
⑤各省庁のスポーツ関連施策と連携し、人事交流を通じて情報共有を図る。
⑥国際交流、国際競技大会の招致、人材養成を図るなど、国際貢献体制を備える。
⑦オリンピックとパラリンピックの競技力強化には、一体的・戦略的に取り組む。
⑧スポーツ団体のガバナンス強化については、法整備も含めて簡素化し、競技団体のバックオフィス業務を支援する体制が必要。
⑨競技力強化のための公的資金は、独立行政法人に一元化する。配分については、独法から競技団体に直接配分するか、JOCなどの統括民間団体を通じて配分する。
⑩競技力強化に関わる役職は、専門的知識を有する高度常勤職が担うべき。
⑪スポーツ参加促進施策を戦略的に。
⑫アンチ・ドーピング対策は、法的整備もふまえ、スポーツにおけるインティグリティを守る体制にすべき。
⑬政策立案を行う国(スポーツ庁)、政策を執行する独法、配分された公的資金を活用するスポーツ団体という3階層に分類。
⑭必要な組織は「政策企画部門」「学校体育スポーツ部門」「地域スポーツ部門」「国際スポーツ部門」 「スポーツ産業部門」「総合スポーツ会議」。
以上、日本を代表する有識者が提言をまとめて下さった。
これでスポーツ庁設置に向けてひと山超えた。二〇一五年四月にスタートさせるために、どんな組織が必要か明らかにされた。
しかし、政治的ヤマ場はこれからだ。
政府の行政改革の観点から、組織と定員の「スクラップ&ビルド」が求められるからだ。
文部科学省の外局にする場合には、少なくとも二つの局+αのスクラップが求められるのだ。
PTの場で久保スポーツ青少年局長にそのことを問いつめると、
「馳さんのおっしゃる通りです。二局+αのスクラップが求められます。」
と苦し紛れに声をしぼり出した。宮仕えをする一局長の立場で発言できるギリギリであり、最終的には財務省や行革大臣を巻き込んでの政治的決着が待っている。
東京五輪があるから、税金を何にでも注ぎ込んで良いという代物ではない。
しかし、スポーツには希望があり、フェアプレー精神があり、教育効果は高い。ぜひともスポーツ庁の価値を認めさせて行かなければならない。
(了)
馳浩の永田町通信