馳浩の永田町通信

2013年3月号 第151回「いじめるなよ!!」

 いじめて楽しいのか?
 いじめられた人の身になってみよ。
 いじめるなよ。
 ……
 どうしてその一言が出て来ないのか。
 見て見ぬふり。
 さらに、大人の隠ぺい体質。
 先生のほっかむり。
 まぁまぁ、なぁなぁ。
 いじめ自殺の遺族がポツンと取り残され。
 総選挙が終わり、政権再交代。
 自民党も民主党も与野党を体験した。
 わかっただろう、お互いの気持ちが。
 政権攻撃は、ともするといじめ。
 逆に、野党に対する数の圧力もいじめ。
 いじめる側といじめられる側は入れ替わる。
 さて、
 下村博文文部科学大臣は、
「こういう事案だからこそ、こういうねじれ国会だからこそ、議員立法でやろうよ。」
 と方針を示して下さった。
 自民党がまだ野党時代、下村さんは党教育再生本部のリーダー。四つの分科会のうち、いじめ対策の座長が私。
「今すぐにでもできる、スクールカウンセラーの配置とか教員研修は、すぐにやるべき。もうひとつ、法律を作っていじめ対策の総合的なシステムを動かせるようにしようよ、全国で!!」
 と、いじめ対策の方向性を確認していた。
 大臣となった下村さんにすぐ相談した。
「文部科学省が基本法をつくり、国会で議員修正するというやり方と、野党時代に分科会でこさえた議員立法の原案を各党に示して理解を求め調整し、委員長提案の議員立法として成立させるやり方と、二つありますよ!!」
 と申し上げると、以心伝心。
 下村大臣は定例記者会見の初っぱなにこう発言した。
「スピード感を持っていじめ問題に対応する。」
 と。その上で、対策を予算にした。
 補正予算に、スクールカウンセラー派遣事業を入れた。
 そして、議員立法での対策を指示された。
「児童虐待防止法も、本来の児童福祉法で対応し切れなくなった虐待事案への対策のために、横出し方式で議員立法にした。役所の論理では解釈し切れない複雑な家庭内の人間もように切り込んで成果をあげている。いじめもいっしょ。与野党の壁をこえ、お互いの問題意識を共有し、歩み寄りながらまとめることこそが、本当のいじめ対策につながる!!」
 と。
 同感である。
 イデオロギーや経済対策では政党は反目し合うのは必定。それは国益のため。
 しかし、子どもの健全な成長を阻害するいじめ対策で、みっともない足の引っ張り合いや悪口の言い合いを永田町ですべきではない。
 大臣のアドバイスを参考にしながら、まずは野党時代に書き上げた原案を要綱にしあげる作業に入った。
 法律を作る目的、用語の定義、国や地方自治体や教育委員会や学校の責務、具体的な対処方法、文科省と連携すべき他省庁との文言調整。
 想定外を想定しながら。
 いくつかのポイントには特に気をつけた。
 まず、あらゆるいじめの態様を想定し、
「何人も、児童生徒をいじめてはならない」
 という訓示規定を入れた。
 次に、被害者の立場になっていじめの定義を設定し、できるだけ広い意味でいじめをとらえ、早期発言、早期対応を促すことにした。
 また、ネットいじめも含む、とした。
 さらに、重大事案(刑法犯相当や、生命にかかわる事案、自殺絡みなど)には、すみやかに校内委員会(学校)、第3者委員会(首長部局)を立ち上げ、複数の教員による対処、アンケート調査の実施、関係機関の連係をするものとした。
 やはり、迅速な対応をできる体制が必要。
 そして、学校現場が密室とならないように、子どもや保護者や教職員が、それぞれ孤立しないように、個人情報を守りながらも、情報を共有し合わなければなるまい。
 また、刑法犯相当と判断されたならば、ちゅうちょすることなく警察介入させるべき。
 さらに、出席停止措置など、現行法で対応できることを、現場の学校で決断、実行できやすくするように配意した。
 もちろん、教育現場は継続性があるのだから、再教育プログラムの実施の重要性も明文化した。
 上位の法律ができれば、自治体も条例を制定しやすくなろうし。
 いじめは世の中、どこにでもあろう。
 しかし、絶対許してはならない。
 いじめをしてはいけない。
「いじめるなよ!」と言える人間になろう。

(了)