BIGTALK

歴史上の偉人を 目標にして 国家的な見地で 物事を考える

四十八名もの所属弁護士を抱える国内屈指の法律事務所の 代表として活躍しながら、勝兵塾の講師特待生となるなど、 代表と志を同じくした活動にも精力的に参加している弁護 士の鳥飼重和氏。今の税務当局に対する企業の心構えから、 安倍政権への期待、そして未来を担う若い人達へのエール などを、たっぷりと語っていただきました。

法律の枠内で節税を行うことは企業家として株主への責任を果たすこと
税務当局のスタンスが今から大きく変化する

元谷 今日はビッグトークへのご登場、ありがとうございます。鳥飼さんには勝兵塾の講師特待生として、幕末の備中松山藩の財政を立て直した山田方谷のお話などをしてもらったことがありました。財政再建の前には政治がきちんと機能することが必要という鳥飼さんの主張は、とても印象に残っています。いつもは勝兵塾などで歴史や日本の将来の話ばかりをしているのですが、今日は鳥飼さんのお仕事上の専門についても、少し教えてもらえますでしょうか。

鳥飼 よろしくお願いします。私達の事務所の専門は、一般的な言い方をすれば企業法務ということになります。それにさらに税務を加えた2つを専門分野としています。

元谷 企業法務というと、具体的にはどのような内容になるのでしょうか。

鳥飼 かなり幅広いのですが、会社法に始まり、知的財産権であったり、労務・人事関連法規であったり。特に会社法の範疇では株主総会や取締役の責任はもちろん、内部統制やコンプライアンスにまで、扱う範囲は広がっています。

元谷 なるほど。税務の方ですが、近年グローバルに活動する企業が増加しているために、所得を海外に移転してそこで税を支払おうとする企業がある一方、その利益は国内で出したのだから、本国で支払えという税務当局の主張もあり、税を二重取りされるという話を聞いています。

鳥飼 確かに税務当局は、国内での租税回避、俗に言うタックスヘイブン対策をかなり真剣に考えています。

元谷 法律から逸脱した脱税はもちろん行ってはいけないことですが、法律の枠内で節税を行うことは、企業家として株主に対する責任を果たすことです。もっと節税できたのに行わなかった…ということがあれば、株主代表訴訟を起こされてもやむを得ないことでしょう。そこで経営者は節税のために様々な手を考えるのですが、税務当局との解釈の相違を指摘される経営者がいて、時々メディアを騒がせることになります。

鳥飼 脱税ではなく、税務当局との見解の相違の場合も、国民からすれば脱税イメージのある「課税逃れ」とマスコミ報道されます。

元谷 そうなのですが、企業にとって節税は当然の行為という社会的なコンセンサスを作るべきでしょう。税率が低い国でちゃんと納税をしているのに、日本で税金がとれないから脱税だというのは、かなり乱暴な論理ではないでしょうか。

鳥飼 租税回避の是非という問題ですね。法律に従って税金を安くしてキャッシュを増やし、投資を行ったり、株主に配当したり、将来に備えておくというのは、企業活動としては合理的なことで何の問題もありません。問題となるのは、ある経済目的の達成に対して様々な取引形態や組織などを選ぶことで、税額が変動する場合です。例えばある企業に別の企業が資本投下を行う場合、貸付金として行う場合や新株発行で株を買い取る場合、または匿名組合契約を結んで名前を出さずに出資する場合など様々な形態が考えられます。どの形をとるかで税金は変わってきますから、できるだけ税金が安い方法を選ぶのは、企業にとっては合理的なことです。

元谷 企業経営の実務者としては、税務に非常に詳しければいいのですが、知識が少し足りないが故に必要がない税金を支払うこともあるのではないでしょうか。顧問の税理士に事前にチェックしてもらえるのは、企業にとって非常にありがたいことです。

鳥飼 その「事前に」というのが非常に大切なのです。弁護士としては、税金の問題に関して争いが起こって不服申立てを行う、あるいは税務訴訟を行う…というところから関与するケースが従来非常に多かったのです。しかしそれでは遅すぎる。国の処分がおかしいと相談を受けて案件を精査するのですが、企業側に経理上のミスがあるとか、訴訟に勝つために必要な重要な証拠が少ないために、裁判にしても勝ち目がないという場合が多いのです。逆に言えば、事前に専門家がチェックをして証拠も固めていけば、余分な税金を払わなくてもいいケースが多いということなのです。

元谷 なるほど。税務当局と揉めてから相談に行くのではなく、その前に鳥飼さんなど専門家のアドバイスを求めればいいのですね。

鳥飼 はい、そうです。誤解をしていただきたくないのは、国と見解の相違があって裁判で争うというケースも、もちろんあります。他方で、税務の専門家が法的なチェックを予めしておけば、そもそも国から処分を受けない場合が多いということなのです。法律は先手必勝であり、先手を取った方が勝つのが原理原則です。この背景には、税務調査のスタンスが昔と今では異なっているということがあります。私の父は国税局に勤めていて、法人税の担当をしていました。聞くと、昔は税務調査に行って企業側のミスを発見した場合、それを指摘はするものの税金は取らず、次回までには改善してくださいと指導して帰っていたというのです。つまり、通常の税務調査は指導が中心で、各企業を正しい納税に導くというスタンスでした。もちろん、脱税に対する強制捜査は徹底的に行っていたと思いますが。

元谷 そのお話はよくわかります。

鳥飼 ところが今は国の財政が逼迫していますから、とにかく税を取りに行くという姿勢に変わっていて、簡単なミスでも許さない。場合によってはミスかどうか判断が非常に微妙なケースなのに、争いを避ける納税者の心理につけ込んで、ミスと断じてゴリ押しで課税しています。このように税務調査のスタンスが指導から、税金を取るに変わっていますから、真っ当な企業や相続税の対象となった真っ当な個人が、払わなくてもいい税金を妥協によって払わされているのです。これはすぐにでも正していかなければならないことだと思います。

税金を意識することで経営に緊張感が生まれる

元谷 
税金について私は自分なりの考えを持っています。創業の時に考えたのは、十年間は儲けて税金をとにかく払おうと。自分の持っている資金だけで事業をしても、なかなか大きな事業はできません。どうしても他人資本が必要になります。銀行から資金を借りることになるのですが、金融機関は信用状態を税金の支払いで見るのです。だから銀行に認めてもらうために税金を払い続けたのです。まず事業は人のふんどしを借りて行わないと。もう今から四十二年前の話です。

鳥飼 スタートアップ企業については、おっしゃる通りですね。

元谷 儲けは資産に変わっていっていますが、税金を支払うにはキャッシュが必要ですから、どうしても借り入れをすることになります。しかしいつまでもこれではつらい。そこで節税効果が高い資産、つまり減価償却できるものを持つように努めました。償却分だけキャッシュが浮くからです。次の十年間は資産価値の増加を背景にして、金を借りることができるようになりました。そして資産をどんどん増やしていって第三段階となった今は、借り入れを行うことなく資産を購入できる「自己増殖」体制になることができました。ようやく最近のことです。非常に時間がかかりましたが。

鳥飼 企業の成長のステージに合わせた考え方は、とても素晴らしいことです。

元谷 私は創業から税理士に依頼して、しっかり帳簿をチェックしてもらっていました。実は創業時から同じ税理士に見てもらっているのです。一旦お付き合いをしたら、こちらからお断りはしないというのが私のポリシーですから。税金を払うことで信用を得て事業を拡張してきたのですが、税金を払うということには、さらに別の側面もあります。社会的なインフラを使って商売をさせてもらっているので、その対価として払うのは当然ということもありますし、税によって企業に緊張感が生まれるという面もあります。税金を払うということは帳簿を作ることであり、これによって経営の振り返りと将来への計画が可能になります。税を払わなければ帳簿もなく、無計画で甘い経営になってしまうでしょう。

鳥飼 確かにそういう見方もありますね。さすがに慧眼をお持ちです。

元谷 一方必要のない税金は支払わないよう、専門分野の方の指導は受けています。キャッシュが潤沢だったので、二〇一〇年にスタートしたアパグループの頂上戦略「SUMMIT5」では、都心の土地を全てキャッシュで購入しました。そして十年返済のプロジェクト融資で建物を建てています。十年ですから高い収益力のあるプロジェクトでないと、キャッシュフローに悪影響が出てしまう。いい立地で効率のよい建物を作って高い収益力を得て…ということを常に考えなければならないですから、緊張感がすごいですよ(笑)。だから一生懸命に事業をやるのです。もし二十五年とか三十年の借り入れだと、金が回っているから大丈夫と油断して、効率の良い経営を行わなくなるのです。

鳥飼 経営は変化に対して適切に対応することですから、いかに緊張感を持続的に持っていることが重要です。その意味では、代表のお考えに全く同感です。

元谷 しかし日本の減価償却は期間が長すぎます。時間が経てば簿価があったとしても、実際にはその価格では売れません。含み赤字がどんどん増えていくことになり、黒字が続いていても財務体質としては危険です。もっと加速度償却を認めるような税制に変えることが、日本の成長戦略のひとつになると思います。

鳥飼 税制についてもおっしゃる通りです。また最初におっしゃっていた企業の成長のステージによって税金や金融機関との関係を考えなければならないというのも、ご見識の通りだと思います。税が緊張感を生むというのもそうで、そんな真面目な企業を税務署がきちんと指導を行っていくならいいのですが…。

元谷 それが変わってきているのですね。アパグループの場合は大体三年に一回税務調査が入っています。自らを見直すいい機会だと考え、緊張感を持って社内の経理・財務の整備を常に心がけています。

鳥飼 融資を受ける場合は金融機関からチェックを受けますが、これも大切ですね。とにかく最近の税務調査は指導ではなく税金を取りに来ますから、事前に金融機関を利用したり自分達でチェックをして、しっかりとした財務体質を築いておくことが重要です。代表のやられていることは、極めて正
しいです。

元谷 それを聞いて安心しました(笑)。

他国ではあり得ないことが当たり前に
世界から見れば日本は素晴らしい国だ
不況の根本的な原因は経営者の心の腐敗

鳥飼 上場企業の場合は投資家の信頼を得るためにも、内部統制やコンプライアンスの強化が必要になります。会計監査人としての公認会計士の厳しいチェックなど外部のチェックも重要なのですが、本来このチェックは自律的な経営のステップであるにも拘わらず、最近外部チェック自体に重きがおかれ、企業内でのきちんとした運用が疎かになっています。これでは本末転倒です。

元谷 サラリーマン社長の場合は何年かの任期制です。在職中は業績を上げることのみに腐心し、マイナス要素は隠すでしょう。任期中はなんとかなったとしても、後任が蓋を開けたらびっくりということもよく聞きます。その点アパグループは私が創業者でオーナー経営者なので、一点の曇りもなく健全です。

鳥飼 思うに私は不況の原因は金融とか財政ではなく、根本的には、経営者のマインドの問題ではないかと考えています。戦前の著名なエコノミスト・高橋亀吉は、一九三〇(昭和五)年に「株式会社亡国論」という著作を著し、昭和初期の金融危機の分析として、企業の経営者の腐敗が原因と看破しています。人々の心の暗黒面を取り除かないと、経済は立ち直らないと思うのです。

元谷 しかし今日本は経済状況が改善されていることなどで、人々の心も明るくなり、再び世界第二位の経済大国を目指すべく歩み始めていると思うのです。今第二位の中国では地方政府が不要な建築物の建設を乱発、計画の過程には賄賂が蔓延り、その金を官僚達は国外に持ちだしています。経済が大きく見えるのは見せかけだけで、二桁成長などと言っても実態はゼロかマイナスのはずです。日本は必要な投資を実施し、先端科学技術立国を行って、付加価値の高い技術を正当な価格で世界中に販売していくべきなのです。世界から見れば、日本は素晴らしい国ですよ。電車は数分遅れただけでお詫びのアナウンスが入り、どんな食べ物も美味しくて安心、夜一人で歩いていても犯罪にあう可能性は非常に低いなど、どれも他の国にはあり得ないことばかりです。

鳥飼 日本民族は、世界的にみると倫理観が非常に高いです。江戸時代の儒教思想が開明的な明治を創り、現在にもその名残が残っているからでしょうか。

元谷 そうだと思います。訪日外国人観光客が今年は一千万人を超えるペースだと報じられていますが、これはいずれ二千万人に達するでしょう。すでに東京へは多くの観光客が押し寄せていて、東京都心のアパホテルは毎日満室です。東京に資産を持ちたい人が増えてきていて、地価も上昇してきました。アパグループでは二〇一〇年の日本経済がどん底の時にキャッシュで土地を仕込んだのが功を奏しています。事業はタイミングです。買い時、売り時を間違えないように。そこはやはり先見力が必要となります。

鳥飼 代表には先見力があります。このApple Townのエッセイも毎月読まさせていただいていますが、そこでも遺憾なく先見力が発揮されていますね。

元谷 ありがとうございます。毎月のエッセイが大変ではないかという人も多いのですが、正に先見力を磨くために書いているのです。金融、経済から政治、軍事と様々な分野の知識を吸収し、そこにさらに熟慮を重ねて書いていますから。毎回いろいろ調べて、十?二十回、書き直していますよ。書いたものは後々にまで残りますから、やはり慎重になります。エッセイのテーマは常に「日本民族がどうしたらもっと自国に誇りを持つことができるか」です。

鳥飼 同感です。民族の誇りを持つことが立国の基本です。その誇りが、その民族の一員である自分の自信の基礎となり、その自信の上に立派な人物を輩出し、国家を勃興させるからですね。

東京裁判史観を覆す歴史修正主義を
アメリカは絶対に許さない
瑣末な問題の批判は避け
景気の腰折れを防ぐべき

元谷 私は安倍政権を言論で支えようと考えているのです。安倍さんが終戦記念日に靖国神社へ参拝しなかったことを詰る保守の人もいるようですが、それではまた第一次安倍政権の時のようになってもいいのかと問いたい。あの時はアメリカの見えない「ガラスの壁」にぶち当たって、政権を維持できなくなったのです。今回も「週刊東洋経済」にリチャード・カッツというニューヨーク在住のジャーナリストが、私と下村博文文部科学大臣とのビッグトークを挙げて、こんな歴史修正主義者を安倍首相は閣僚にしていいのかと糾弾しています。それがアメリカの本心なのです。

鳥飼 代表はこのビッグトークを英訳、インターネット上にも掲載していますから、それを読んでいろいろ言う人も出てくるでしょう。

元谷 そういう時代なのです。ですから日本政府も大規模な情報機関・情報省を作るべき。年間予算三千億円で三千人のスタッフを擁して、新聞からネットからテレビまで、様々な言語で流れている世界中の主要なメディアによる情報をチェック、日本の国益に反するような言論があれば、すぐに反論を行うのです。これをやってこなかったから、未だに南京大虐殺や従軍慰安婦問題が続いてしまっているのです。戦後間もない頃に全てをはっきりさせていれば、当時は多くの生き証人もいたので、速やかに問題は解決したはず。それをしなかったために、今金目当てにあることないことを主張する人が出てきているのです。

鳥飼 おっしゃる通りで、東京裁判史観を覆す歴史修正主義者は許さないというのが、アメリカのスタンスですね。

元谷 はい、そうです。このままでは日本は半独立国家ですよ。いろいろ問題はありますが、憲法を改正、自衛隊を軍隊に変え、日米安全保障条約を双務条約として、日本は自立した国になるべきです。その端緒として、先の広島での平和記念式典で安倍首相は原爆投下を「非道」と断じました。アメリカのルース駐日大使がいる前でのこの発言は、非常に立派だと思います。

鳥飼 国家が自立しないで、国民の自立はあり得ません。自立しない国民が多いと、国家は衰退するでしょう。その意味では、どのようにして自立するかが重要だと思います。

元谷 安倍首相は今は迂回戦略に出ています。村山談話や河野談話を踏襲と表明、さらに靖国神社にも参拝しない一方、内閣法制局長官に集団的自衛権行使賛成派の小松一郎氏を任命、また海上保安庁トップに初めて生え抜きの佐藤雄二氏を充てるなど、着々と体制を固めてきています。安倍政権の瑣末な問題をつつく人を諌めるなど、景気の上昇気運への妨害を排除するようにしないと。そのために私は自らの主張を公に発表しているのです。金曜日の夕刊フジへの連載もその一環です。

鳥飼 渡部昇一さんと相通じるものを感じますね。

元谷 その通りです。日本の保守の中にはアメリカで学んだアメリカ派が多いのですが、日本派の人がいません。渡部昇一さんのようにドイツで学んだとか、中西輝政さんのようにイギリスで学んだという方の方がバランスがいいですね。

鳥飼 そうかもしれません。

元谷 渡部昇一さんには私が主催する「真の近現代史観」懸賞論文の審査委員長を、第一回目からお願いしています。第一回の懸賞論文で田母神俊雄さんの論文が最優秀賞を獲得した時から、世間の保守化が進んできたと思います。またこのApple Townも全国のアパホテルの各部屋に置いてあり、年間のべ七百万を超える人が読めるわけですから、毎号六万部の発行部数以上の影響力があります。さらに勝兵塾も併せて行うことによって、安倍首相を支え、日本を正しい方向に向かわせたいと考えています。今後ともご協力をお願いします。

鳥飼 もちろんです。

元谷 最後にいつも「若い人に一言」をお聞きしているのですが。

鳥飼 若い人にはぜひ自分はこの人を目指すという、目標となる尊敬する人物を持って欲しいですね。歴史上の人物、例えば坂本龍馬でも勝海舟でもいいのです。外国人でもいいのですが、日本人の中に素晴らしい人物がたくさんいます。私の場合は勝兵塾でもお話した山田方谷が尊敬できる人物です。このように偉人を意識して生きると、間違いなく骨のある人生が送れますよ。

元谷 昔は尊敬できる人物として歴史上の偉人を挙げる人が多かったですが、最近は自分の両親と言うことが多いとか(笑)。それでは駄目です。もっと大志を抱かないと。

鳥飼 そうです。歴史上の人物を目指せば、国家的な見地でものを考えられるようになりますから。

元谷 全く同感です。今日はありがとうございました。

鳥飼 重和氏

1947年生まれ。中央大学法学部卒業、税理士事務所に勤務後、司法試験に
合格。司法修習後弁護士として登録。所属弁護士48名を擁する鳥飼総合法律
事務所の代表を務める。

対談日:2013年8月23日