BIGTALK

ビッグトーク235(BIG TALK) 民主党の保守勢力が力を持ち 党内改革を推進するべきだ

松下政経塾で学び、三十一歳の若さで衆議院議員に当選、以後数々の要職を経ながら、現在は衆議院災害対策特別委員長を務める吉田おさむ氏。現在民主党の中枢に巣食う左翼系議員とは一線を画する保守のホープとして期待される氏に、政権与党としてこれから民主党が何を目指していくのか、そのための課題は何かをお聞きしました。

独自の投資基準によって確実に儲かる物件を購入

元谷 本日はビッグトークへのご登場、ありがとうございます。吉田さんは松下政経塾ご出身の民主党の国会議員ということで、私は非常に期待をしています。元官僚や松下政経塾出身の議員たちが民主党のイメージアップに貢献したからこそ、昨年の政権交代が実現したと私は考えています。新しい政権では、多くの人々が吉田さんのような人の活躍に期待していたのですが、最近の状況を見ていると、民主党の古い部分が政権を牛耳っているようにしか見えません。この国のためには、民主党の保守が結束して今の政権の軌道修正を行い、昨年の総選挙での国民の期待に応える責任があるのではないでしょうか。そして吉田さんこそ、民主党の暴走にストップをかけるという重要な役割を担うホープだと。そういう意味で、今日はお声をかけさせていただきました。
吉田 お招きいただきありがとうございます。先ほどから今進行されているアパグループの頂上戦略「サミット5」の概要を拝見していたのですが、素晴らしいですね!
元谷  今都心の一等地でホテル十三棟、マンション八棟の合計二十一棟の建築を同時に進行しています。これだけの計画を一気に進めるということは、約四十年のアパグループの歴史の中でも、初めてです。
吉田 松下幸之助氏は「景気よし、不景気またよし」という言葉を残していますが、代表はそれを地でいっていますね。今のように景気がよくない時に、一気にそれまでの蓄積を開花させてらっしゃる。
元谷 その通りで今は不景気ですから、土地も金利も建築費も安い。私は百年に一回の三低現象と呼んでいるのですが、これをチャンスとみて、一気に事業拡大を行っているのです。だから好景気になって土地や金利や建築費が値上がりしたら、即座にこの戦略はストップしますよ。
吉田 なるほど。
元谷 好景気の時にはみんなが競い合って高値買いに走るので、どうしても無理が出る。実際数年前にファンドバブルが崩壊した時には、高値買いをしていた新興ディベロッパーは全滅状態になりました。私はその高値の間の三年ぐらいは、あえて事業らしい事業を行わなかったのです。ところがその後の地価の下落で、かつてはそこにホテルやマンションを建築するなんて夢のまた夢と考えていた山手線の内側の一等地で、大規模な事業ができるようになりました。これは大きな喜びです。
吉田  しかもアパホテルは、最高のロケーションにあっても、非常にリーズナブルな価格で宿泊することができるのが魅力です。
元谷 「利は元にあり」、商売の利益は上手な仕入れからです。最初に可能なかぎり安価に土地を購入していますから、お客様に低価格でお部屋を提供することができるのです。アパグループには、収益還元法をベースとした独自の投資基準があって、これに合わない場合は一切土地購入を行いません。都心の土地もかつては基準に合わなかったのですが、世の中がアパに歩み寄ってきたのか、ここ数年で基準を満たす物件が多くなりました。だから二十一カ所同時進行のようなことが可能になったのです。

吉田 何事もそうですが、行動原則を持つことは非常に大切です。それを実践されているのですね。
元谷 はい。またホテルの場合、成功するかどうかは九割方、立地と投資額によって決まります。その点からみても、今建設している十三のホテルは、どこも将来有望です。
吉田  その立地の良さというのは、どのようにわかるのでしょうか?
元谷 地図からわかることもありますが、実際に現地に立ってみて、五感で感じるということが非常に重要です。最近「経験、勘、度胸」をKKDと略すそうですが、ウチの場合は投資基準付きKKDですね(笑)。ただこの基準をしっかりと守ってきたからこそ、アパグループは創立以来一度の赤字も、一人のリストラ者も出さず、累計で一千億円の納税義務を果たしてきたのです。

中国を慮った対応が逆に事態を悪化させた

吉田  今代表がおっしゃった「基準が大事」というお話は、民主党の政治にとっても大事なポイントをついています。「民主党の基準は何か」というのが、今まさに大問題なのです。日米関係や日中関係、この国の在り方から領土問題まで、民主党の基準によって指針を示すべきなのに…。
元谷  この日本をどうするのかという基本の部分が、民主党政権からはなかなか見えてきません。逆に普天間や尖閣問題で、圧力に弱くブレやすいという印象ばかりが目立っています。そもそも民主党は構成員の考えがバラバラ、政党というよりは選挙当選互助会になっていることが弱点なのです。
吉田  そう見えるかもしれません。ご指摘には素直に反省をして、党を変えていかないと。野党の時に決めたことを、本来であれば与党になってもきっちり守っていかなければならないのに、政権を担うための日々の業務に追われ、浮ついてしまっています。そろそろ本来の自分たちのスタンスを見つめ直す必要があります。
元谷 内部調整に大きなパワーを割かれ、対応がすべて一歩遅れになっているように思えます。尖閣諸島での巡視艇と中国漁船の衝突事件でも、船長を逮捕したのはいいけれど、結局は釈放。逮捕するなら、どのような形で処遇するのかを見越した上で行うべきでした。また衝突や逮捕時の映像もいち早く公開すべきでしょう。二◯◯六年に根室の漁船がロシアの警備艇から銃撃を受けて日本人漁師一人が射殺されたように、世界各国の領海侵犯への対応は日本ほど甘くはありません。警告に従わずに逃げた場合、銃撃され撃沈されてもやむを得ないのは国際常識であり、日本も二◯◯一年には北朝鮮の工作船を撃沈し、いち早くその映像を公開したという先例があります。同様に尖閣のケースでもすぐに映像を公開すれば、どちらに非があるかは一目瞭然であり、中国での反日デモが起こることもなかったでしょう。事実、海上保安庁は事件当日に映像を公開する準備をしていたのに、首相官邸からストップがかかったといいます。中国を慮って公開を控えたために、逆に事態がおかしくなり、結局中国人船長を釈放せざるを得なくなったのです。菅首相にリーダーシップがあれば、こんなことにはならなかったでしょう。法治国家として、非常に情けないことです。
吉田 代表だけではなく、多くの人が同じお気持ちでいらっしゃいます。私個人としても、あの事件の対応は少し違うと感じています。巡視艇が威嚇射撃をしてもよい案件だったのではないでしょうか。
元谷 北朝鮮の船であれば、発砲していたでしょう。中国相手だから腰が引けたのは明らかです。結局ネットに映像が流出しましたが、四十四分のみで肝心の逮捕シーンがありません。海上保安官は、相手がどんな武器を持っているのかわからない中、命を賭して逮捕に向かったはずです。それが見たかった。
吉田 最前線で日本の領土と国民を命懸けで守っている人々を萎えさせるようなことをしてはならないでしょう。映像については公開するしないの他に、どう上手く外交上の駆け引きに使うのかという視点も重要でした。まず中国に「これを公開していいのか」と問いかけ、そこから交渉を始めるべきだったのです。戦後の日本外交はアメリカ追従一辺倒で、日本独自のものは一切ありませんでした。また二国間外交に終始して、世界に目を向けることもなかった。自国の国益のためなら平気で嘘をつくような通常の国の外交官的な発想や能力が、日本では育成されてこなかったのです。
元谷 この結果、仙谷官房長官と馬淵国土交通大臣に対する問責決議案が可決することになりました。この二人を更迭しないことには、参議院での審議が進みません。私の目にはもう衆議院の解散は秒読み段階のように見えます。しかし今解散すれば、政権の左翼化で人気を急激に失っている民主党は必ず大敗します。負け具合をどれだけ減らすことができるかが、民主党の緊急の課題でしょう。
吉田 また厳しいお話を…(苦笑)。
元谷  私は要は、吉田さんのような民主党内の保守派の動きだと考えています。民主党から離党するのは簡単ですが、それでは力を持つことはできません。党の中にいて、いざという時にいい代表を選べるように、徐々に勢力の拡大を図るのです。そして民主党の体質を改善し、それが公に評価されるようになった上で解散すれば、議員数を減らすにせよ政権は維持できるかもしれません。その中心
には吉田さんなど松下政経塾出身者や、官僚出身者がいて、党内をどんどん改革していって欲しいのです。民主党も不人気、さりとて自民党にも票が戻っていない現状では、総選挙を行っても混沌さが増すばかりですから。

今のアメリカの望みは日本の独立自衛だ

吉田  さすがに代表は現状をよく分析されています。昨年風が吹いて、民主党は政権を担うチャンスを国民から与えてもらいました。このことをもう一度しっかりと受け止めて、党内で心ある人が立ち上がり、本当の政権政党にならなければ。アパホテルがビジネスマンの心を掴んだように、政権も独りよがりではなく、国民のニーズに最大限応えられることを目指すべきです。
元谷 アパホテルが成功した理由のひとつは、利用客の三大ニーズに確実に応えたことです。ビジネスマンがホテルに求めるのは、飲んで帰ったあとゆったりと入ることができるお風呂に、その後のリラックスタイムに楽しむテレビ、そしてゆっくり眠れるベッドです。だから大浴場を作り、大画面テレビを各部屋に入れ、ベッドのサイズも大きめにしたところ、多くの利用者の支持を得ることができました。部屋の広さや食事の充実など、その他にもお客様からの要望はありますが、すべてに応じていれば宿泊料金がどんどん高くなってしまいます。絞り込みが大切なのです。政策も同じで、すべてに応えようとしても無理。精査して絞り込み、重点的なものには惜しみなくお金を使うべきです。
吉田  政権与党には企業経営的な観点が必要ですね。
元谷 その通りです。野党時代は、とにかく粗探しをして与党を攻撃すれば支持が得られました。今の菅内閣の閣僚は、みんな批判が上手かった人ばかり。しかし一転与党として守勢にまわると、もうボロボロ。早く与党らしく日本の経営者となることはもちろんのこと、将来へのビジョンを日本の国益という観点から構築することも求められています。
吉田 おっしゃる通りです。
元谷 特に急務なのが、安全保障の問題でしょう。東アジアは今や世界で一番戦争の可能性が高いエリアとなりました。先日対談したコスタリカ大使が言っていたように、「平和を望むなら戦争の準備をしろ」です。ところがこれまでの民主党は、平和を望みつつ、戦争の準備には否定的なスタンスでした。平和だから自衛隊は不要、集団的自衛権もいらないし、武器輸出も厳格にして、非核三原則は厳守という考えです。しかし平和は抑止力があってこそ保たれるもの。抑止力とは攻撃力です。ところがこれまでの日本では、ちょっとでも攻撃力があると相手を刺激するなどという理由で、武器の仕様を変更したり輸入を認めなかったりしてきました。PKOに行く自衛隊の装備でさえ、武器輸出三原則に則って厳密にチェックされたそうです。自衛隊の武器使用規定も含め、日本はこんな自縛政策が多すぎる。法律に明記されたこと以外はできない現状の自衛隊は、いくら精強で最新鋭の武器を持っていても、運用で超法規的な行動をとらない以上は、軍事力としての力が発揮できないのです。
吉田  お金があって社屋も立派だけど、社長がしっかりしていない会社のようですね…。
元谷  そうです。このような自縛政策を言い出したのは、社会党や共産党などの野党でした。一方長年与党だった自民党は野党に妥協を繰り返すことで、これらを定着させてしまったのです。
吉田  国を守ることを特に重視しなくても、日本という国が成り立っていたということでしょうか。
元谷 冷戦終結まではそうだったかもしれません。日本をそのような状態に置いておくことは、アメリカの国益に沿っていましたから。しかし冷戦終結から二十年、これまでの世界に対するオーバーコミットメントを解消しようと、アメリカは海外展開を縮小しつつあります。一方中国は、逆に軍備を増強して周辺国への影響力を拡大しようとしています。そこでアメリカはどう考えるか。中国牽制のために、日本が使用可能な軍事力を持つことを認めてもいいと考え始めているのではないでしょうか。これは日本が独立自衛の国になるチャンスです。歴史を振り返れば、力の空白域が生じることが、多くの場合戦争の原因となっています。アジアに力の空白域を作らないためにも、日本がもう一度軍事力をつける必要があるでしょう。本来であれば核武装もするべきですが、理解を得るには時間がかかります。当面はNATO四カ国が導入しているアメリカから有事に核兵器をレンタルする、ニュークリアシェアリングの日本への導入を図るべき。これだけでも、北朝鮮や中国からの不必要な威嚇を受けずに済むはずです。
吉田 なるほど、そうですね。

田母神俊雄氏を中心として保守勢力が将来結集する

元谷 これから否が応でもでも世界は大きな変化を遂げていきます。マスメディアの報道はユダヤとアングロサクソンのフィルターを通っていますから、真実から離れていることがあります。私が世界各国の大使と対談をしていて、「ここからはオフレコ」という時に出るのは、大概アメリカ批判です。まるで日本の公共事業のように、戦争を続けることで軍需産業を潤わせている国でしたから。しかしアメリカから戦争を続ける力が失われようとしています。また中国は農民戸籍と都市戸籍の人々の貧富の差など、あまりの社会的矛盾のひどさから、いずれ内乱によって分裂すると私は考えています。
吉田 中国人が日本の土地・建物を購入するのは、いつでも日本に逃げてこられるようにするためと聞いたことがあります。
元谷  中国共産党の幹部の多くが、子どもをアメリカに留学させているのも、同様に逃げる準備です。中国人は自分の国を全然信頼していない。そんな国に未来があるでしょうか?日本のように、海外に出た誰もが戻ってきたくなる国とは違うのです。中国で内乱が発生、最悪の場合には核兵器の使用も想定されます。とばっちりを喰わないためには、日本に核の抑止力が必要なのですが、アメリカの核の傘はあてになりません。日本を守るために、アメリカが中国に自国を攻撃されるリスクを負うわけがないからです。
吉田 日米安保条約には自動参戦条項がありませんから、最終的にアメリカが日本を助けるために軍事力を使用するかどうかは、大統領と議会が決めることになります。
元谷  まず大統領の判断。そして二カ月以内に議会が承認しないと、それ以上の軍事行動ができなくなります。核ミサイルを持つロシアや中国はアメリカを直接核攻撃できますから、その危険を冒してまでアメリカが日本を守ることはありません。核弾頭を装着したミサイルの開発に成功すれば、北朝鮮にもアメリカは手出しをしなくなるでしょう。そう考えてくると、日本は独立自衛の国ならざるを得ませんし、今はそれをアメリカも望んでいるのです。
吉田 チャンスということですね。
元谷 集団的自衛権行使の放棄や武器輸出三原則、非核三原則など、自民党の妥協の産物である自縛政策から、一刻も早くこの国を解き放たないと。それができる政権を私は望んでいるのです。しかし菅首相にせよ仙谷官房長官にせよ、全共闘世代的思考のマインドコントロールからまだ脱却できていません。「政治は数」という側面もありますから吉田さんのような真実に覚醒した人が、もっと増えていくべきなのです。
吉田 そして、我々が党の議論をリードできるようにならないと…ですね。
元谷 人々も変わりつつあります。前航空幕僚長の田母神俊雄氏が会長を務める「頑張れ日本!全国行動委員会」が主催した中国の尖閣諸島侵略に抗議するデモには、三千~四千人もの人々が集まりました。こんなことは、今までなかったこと。右翼と混同されてきた保守が、田母神氏というリーダーを得て、一気に人々の心を掴んだと考えるべきでしょう。次の総選挙の時には一大勢力となり、自民党や民主党の保守を結集する政界再編の中核となる可能性が高まってきました。これが真正保守政権誕生の原動力となるはずです。次の総選挙までは最長で二年半後ですから、それまでに大きな動きが起こることを私は期待していますし、そのために吉田さんには民主党の保守勢力の結集をぜひお願いしたいのです。
吉田 わかりました。いや、代表が日本を思われるお気持ちが今日は痛いほどわかりました。
元谷 もっと議員の数を減らして、純粋に議論ができる環境を整える必要もあります。そしてきちんと政策の議論を戦わせる中で、政権交代が起こっていくという姿が理想です。とにかく今の政権与党の中の考えがバラバラで、マスメディアの報道で考えがコロコロ変わるという状況がおかしいのです。
吉田 代表をはじめ多くの人の期待を受けながらも「この一年、どうだったのだ?」と言われそうですが、国民から「一度やってみろ」と政権を預かっている身としては、次の期待には応えられるよう、全力を尽くすのみです。
元谷  頑張ってください。最後にいつも「若い人に一言」をお聞きしているのですが。
吉田 では一言で。「夢と希望と志を忘れない」。
元谷 昔は未来は必ず今よりもよい世界だと信じていました。今はみな未来に不安を抱くのみです。これではいけない。先月号のAppleTownのAPA的座右の銘に掲載したように「年毎に楽しくなる人生を」目指していかないと。
吉田 おっしゃる通りですね。
元谷 今日はありがとうございました。

吉田おさむ氏
1962年大阪生まれ。早稲田大学法学部、松下政経塾を卒業後、京都大学大学院法学研究科修士課程在学時の1993年に衆議院議員に初当選。2009年の総選挙では、自民党の中山泰秀氏を破って4度目の当選を果たした。現在衆議院災害対策特別委員長。