BIGTALK

日本国民は安全保障
意識を変えるべきだ
Vol.308[2017年3月号]

衆議院議員 山口泰明
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APAグループ代表 元谷外志雄

二十年に及ぶ長い議員生活の中で、数々の要職を歴任してきた衆議院議員の山口泰明氏。自民党の要として、党と国民との交流を深めるという重要な任務を持つ自民党組織運動本部長を務める氏に、トランプ米大統領誕生後の東アジアの情勢と日本の在り方についてお聞きしました。
山口 泰明氏

1948年埼玉県川島町生まれ。1973年日本大学法学部政治経済学科卒業。坂戸ガス、武州ガス取締役を経て、1996年衆議院議員初当選。外務大臣政務官、自民党副幹事長、内閣府副大臣などを歴任して、現在自民党組織運動本部長。

トランプ次期大統領は
メディアを敵に回して勝利

元谷 本日はビッグトークへのご登場、ありがとうございます。

山口 よろしくお願いします。

元谷 山口さんには、Apple Townの二〇一六年五月号に掲載している「日本を語るワインの会」にも登場してもらいました。この会は昨年の三月二日に行ったのですが、まだ予備選だった段階のアメリカ大統領選挙のその後の行方について、かなり正確に予測しています。少し引用しますと「アメリカ大統領選挙予備選でのドナルド・トランプの勢いが止まらない。この様子では共和党の大統領候補となるのは確実で、実際に大統領になるかもしれない。勢いというのは、そういうものだ」と書いています。

山口 素晴らしい先読みの力ですね。

元谷 その理由としては「トランプはバカではなく、暴言は計算されたものだ。三回の結婚と四回の倒産を経験、テレビタレントとしても人気のトランプは、実は大統領選挙に出馬するのが三回目。選挙戦について酸いも甘いも噛み分けることができる人物だ」「弱々しい印象を与えたオバマ大統領の後には、国民は強い大統領を求めている」ということを挙げています。その後も私はワインの会で四回、勝兵塾で五回、ビッグトークで四回、エッセイで五回と合計十八回、トランプ勝利が日本の独立に繋がると主張してきました。

山口 私も同感です。

元谷 二〇一六年十二月九日に目黒雅叙園にて「トランプ新政権の『新日米関係』を聞く」という、トランプの政権移行チームのピーター・フークストラ氏など三人のメンバーも参加するシンポジウムがあったのですが、私もここでスピーチを行い、トランプ氏はレーガン大統領を目指しているという話をしました。レーガン大統領は、二流の俳優あがりと言われながらも、スター・ウォーズ計画などの大軍拡でソ連を経済的に追い込み崩壊させ、冷戦を勝利に導き、近年の大統領では最も尊敬を集めています。これに倣ってトランプ氏も、大軍拡競争を中国に仕掛けて、中国の共産党一党独裁体制を崩壊させようとするのではないでしょうか。ここ二十年で中国の勢力が拡大する一方、アメリカはオバマ大統領時代となり、ここのところ毎年軍事費を五兆円ずつ削減してきた結果、米中の力関係が逆転しそうになってしまいました。トランプ氏はこれを正そうとするでしょう。

山口 なるほど。

元谷 トランプ氏は私と同業です。実業家としてプラグマティックな発想をする人ですから、いわゆる政治家とは考えが異なります。最初は強気に出たとしても、現実的判断で引くべきところは引くでしょう。

山口 政治家というのは発想を選挙に縛られる傾向があり、あまり大胆なことが言えないのです。

元谷 日本でも衆議院では小選挙区ですから、選挙区の有権者の半数以上の支持を得なければならない。どうしても大衆迎合的になってしまいます。大衆迎合とはメディア迎合とイコールですから、元々左翼的なメディアに近い主張になっていってしまうのです。しかしトランプ氏は、アメリカでも左翼的である新聞やテレビなどのマスメディアの全てを敵に回して、勝利しました。トランプ批判を行ってきた主要メディアはクリントン勝利を確実として、予想を大外ししたのです。どうしてこうなったか。マスメディア以外のSNSなどのネットメディアが力を持ってきたということでしょう。また、マスメディアがトランプ氏は暴言王だとかと批判を繰り返すほど、トランプ支持を表明しにくい雰囲気が作られ、それが俗に言う「隠れトランプ支持層」を生み出して、世論調査の結果を狂わせました。

山口 私は沖縄でも同じことが起こっていると思います。メディアの報道によって、米軍基地反対が全体のムードとなっているために、日本の安全保障上基地が必要だと考えていても、周りを慮って言い出せないのです。

元谷 沖縄の新聞二紙がどちらも左翼系というのが大きいですね。さらに本州から活動家が入って、世論を煽っています。機動隊と揉めている場面を撮影し、口汚く機動隊員を罵って、売り言葉に買い言葉の発言があれば、「差別用語を使った」と過大に喧伝しているのです。

山口 大阪府の松井知事が、差別発言をしたとされる大阪府警の機動隊員に「出張ご苦労様」とねぎらいの言葉をかけたのは、もっともなことだと思います。

元谷 この発言をいかにも悪いことのように報道するメディアのニュースが、公平性を欠いているのです。このようなメディアのスタンスが、アメリカ大統領選挙での予測の間違いに繋がったということを、メディア関係者自身が反省すべきでしょう。

政界再編も睨んで
憲法改正を確実に進める

元谷 また特に財界人の多くが読んでいる日本経済新聞は、明らかに中国寄りの記事を報じています。これら財界人は、中国からモノを買っているか、中国にモノを売っているか、中国で事業をしている人で事業を人質に取られているようなものです。日本の財界人がトランプ氏に対して「対中政策を穏便に」と口を揃えるのは、アメリカの強硬姿勢による中国の経済減速が、日本に直接影響するからなのです。

山口 確かに皆さん、そうおっしゃっています。

元谷 中国経済の原動力は低賃金の労働力でしたが、経済発展に伴う賃金上昇によって、その原動力が失われつつあります。さらに急激な少子高齢化の進展で労働力人口の増加が鈍化、急速な経済発展を後押ししていた低賃金労働者の増加の終わりを迎えようとしています。これからさらに中国が成長して世界の中心になるという人もいますが、私は、それは難しいと考えています。

山口 鈍化は統計にも現れてきています。

元谷 最近の国家主席は全て鄧小平のお墨付きのある人物でした。しかし習近平主席にはそんなしがらみはなく、自由に権力を振るっているのです。そして西側ではトランプ大統領の誕生に現れているように、ポリティカル・コレクトネスと呼ばれる民主主義のルールや人権の重視が、なおざりにされようとしています。中国やアメリカを発信源として、力の論理が優先する世界が広まろうとしているのです。日本も平和憲法を唱えていれば済む時代ではなくなります。トランプ氏はアメリカの負担軽減のために日本に自衛力の強化を求め、現行のGDP比一%ではなく、他国同様の二%を防衛費に充てることを求めてくるでしょう。

山口 トランプ氏の発言は表現的には問題がありますが、内容的には的を射ている部分もあります。

元谷 この流れの中、せっかく安倍首相の任期が三期九年になるのですから、何が何でも憲法改正を実現させなければならない。憲法改正には国会議員、国民、アメリカの三つのハードルがあります。憲法を作ったアメリカの支持なしには改憲は無理。しかし防衛力の強化を目的とすれば、トランプ氏は承認するでしょう。今、国会議員の三分の二が改憲勢力となっていますが、改憲ポイントはばらばらです。まずは前文や緊急事態条項など多くの国会議員も国民も同意を得られそうな点で一回改憲を行い、改憲を実感したところで、九条を含む本格的な改正に臨むべきです。やはり一番の課題は国民の半数の賛同を得られるかどうかですから、このようなステップを踏む中で、世論を喚起して改憲に向けていく必要があるでしょう。

山口 そういう流れになるでしょう。同感です。

元谷 自民党総裁任期が三期九年になれば、安倍さんは二〇二一年まで首相をやることが可能になります。あと五年です。となれば、衆議院の解散は安倍首相の任期中は選挙をやらなくても済むように、今年の十月以降になる可能性が高いと見ています。昨年十二月の安倍・プーチン会談でもっと実のある成果があれば、今月の解散もあったかもしれませんが、あの結果では先延ばしの方が良いでしょう。

山口 安倍首相や菅官房長官は一月に拘ってません。むしろ麻生さんは早期解散論者だったかも知れません。確かに蓮舫代表、野田幹事長体制でガタガタになっている民進党と戦うには、今がチャンスなのでしょうが。前回の総選挙では安倍人気で当選した議員もいます。自民党は良い政策を打ち出しているのですから、後は各議員が地元で地に足の付いた活動を行って、いつ選挙があってもいいように備えることが大切だと私は言っています。

元谷 少し苦言を呈すれば、自民党は公明党と連立することで、選挙に関して足腰が弱まっているのではないでしょうか。公明党から基礎票をもらうことに慣れ、自身の選挙区での活動量が減少してしまっている議員がいるように思えるのです。これではいざという時に公明党を切れない。私は安倍さんの思いは、日本維新の会を育てることだと見ています。そして民進党内の保守的な議員の離反も呼びかける。自民党と日本維新の会が本格的に手を組み、さらにそこに保守的な民進党議員が加われば、公明党も考えを変える必要が出てきます。こういう構図が描ければ、憲法改正が確実になるのではないでしょうか。

注目点は包囲網の強化に
中国がどう対応するか

山口 私が懸念しているのは、国民の左傾化です。憲法を改正すると戦争に巻き込まれるのではないかという誤った言説が、まことしやかに語られています。これを正すためにも、安倍首相が真珠湾を訪れ、不戦の誓いを行ったというのは良かったと思います。

元谷 安倍首相は真珠湾訪問の際、攻撃時に被弾し燃料切れで帰投を断念して再びアメリカ海兵隊の基地に引き返し、格納庫に突入して自爆した旧日本軍の飯田房太中佐の記念碑も訪れ、献花を行いました。このような記念碑が海兵隊基地の中にあることは、これまであまり知られていなかったことです。これで思い出すのが、戦争末期に戦艦ミズーリ号に特攻したのに爆弾が不発でバラバラとなった石野節雄二等飛行兵曹のことです。ミズーリ号の艦長は彼の勇気を称え、遺体を集めて日の丸を描いた星条旗に包み、水葬を行ったのです。敵ながらあっぱれという精神はアメリカ軍人にもあることに改めて気づかせてくれたということで、安倍首相の記念碑への献花は当を得たものだったと思います。

山口 その通りです。

元谷 敵味方を問わず英雄を賞賛する考えは、どこの国にもあります。最近亀井静香氏や石原慎太郎氏が中心となって、西南戦争で敗れた西郷隆盛や白虎隊や彰義隊など「賊軍」とされていた戦没者を靖国神社に合祀して欲しいという活動が行われています。また私が主催する「真の近現代史観」懸賞論文の昨年の最優秀賞は、戦後のGHQの日本国民洗脳と同様に勝者が歴史を作るとして、明治維新後も薩長史観が人々に植え付けられたというスタンフォード大学フーヴァー研究所教授の西鋭夫氏の論文に贈られました。これまでこの懸賞論文では戦後がテーマになることが多かったのですが、これからは明治維新以降の日本の近現代史にまでテーマの幅を広げる動きになっています。

山口 非常に興味深いですね。

元谷 懸賞論文の受賞作品集をお渡ししますので、ぜひお読みになってください。また先の日米戦や第二次世界大戦が勃発した理由については、ルーズベルト大統領の前任だったフーヴァー大統領の回顧録を読むべきです。そこにはルーズベルト大統領がいかに日本を含む世界を戦争に導いていったかが描かれているのですが、日本のメディアは誰も報じません。本当のことがわかれば、皆保守になります。正しい歴史を伝えるべく始めた勝兵塾を毎月東京、大阪、金沢の三箇所で開催しており、参加した方は延べ一万二千人になりました。山口さんもぜひ一度勝兵塾に来て、講演をしてください。

山口 はい、わかりました。ぜひ。先程も言いましたが、勝兵塾のような活動で、憲法改正イコール戦争に結びつくという国民の意識を変えていきたいですね。

元谷 教育もメディアもアメリカの占領政策にずっと従ってきたために、そういうことが国民に刷り込まれてしまったのです。普通に考えれば、独立国家であれば自国を自分達で守るのは当たり前なのです。

山口 そうです。しかしあえて自分の子供や孫を戦争に出したいと考える人がいるわけがない。政治家も皆そうです。

元谷 戦争を知る人ほど、戦争を避けようとします。戦争をしないために、戦争に備える必要があるのです。非武装中立というのが一番危険であり、バランス・オブ・パワーの原理に基いて、力の空白域を作らないことが戦争抑止のためには重要なのです。今日本が注力すべきは、東アジアの力のバランスの維持なのです。

山口 北朝鮮は論外ですが、中国にも自粛を促さなければなりません。

元谷 核開発をはじめとする北朝鮮の行動は、自存自衛のためでしょう。その対象は常に海を隔てたアメリカではなく、陸続きの中国からの干渉を跳ね返すために、北朝鮮は核開発を続けているのです。

山口 この情勢もトランプ大統領の誕生で変わりそうです。

元谷 その通りです。トランプ氏は金正恩と直接対話をする可能性があります。それを一番嫌がるのは中国でしょう。中国の膨張を許さない包囲網が強化されてしまうからです。トランプ氏がプーチン大統領と対話して、米ロ関係の修復を図ることも中国には脅威でしょう。もちろん最近の日ロ関係の親密さもそうです。この包囲網に対して習近平主席がどのように対抗してくるかに注目すべきでしょう。

山口 東アジアでの鬩ぎ合いが活発化するということですね。

元谷 そうです。日本もそれに備えないと。戦争は近年武力を行使するものから心理戦やメディア戦、法律戦やサイバー戦など人を殺さない絡め手からのものに変わっています。今もまさに戦争の真っ最中と言っても過言ではないのです。トランプ氏はこれに気づいていて、日本に応分の負担を求めてくるでしょう。日本はこれに応じるべきです。またさらに、トランプ氏が日本を訪問する際には、安倍首相と共に靖国神社に参拝することを提案すべきです。かつて小泉首相にブッシュ大統領が靖国参拝を申し入れたことがあったのですが、中国などの反応を恐れて外務省が拒否、参拝先を明治神宮に変更してしまったのです。それでも、小泉首相は中・韓の反発を恐れて車に待機して、ブッシュ大統領一人での参拝となりました。

山口 元谷代表のお考えは、首相に伝えておきます。

安倍首相に倣って
七転び八起きの精神で進む

元谷 私は以前から自民党総裁任期の三期九年への延長を主張していたのですが、二階幹事長が今回それを取り上げて実現してくれました。しかしそもそも安倍首相と二階幹事長は、いろいろな面で意見が異なります。第一次安倍政権はお友達内閣と言われたのですが、第二次では安倍首相は菅官房長官にせよ、二階幹事長にせよ、意見の違う人を非常に上手く活用しています。安倍さんの人間としての器が大きくなったなと感じます。

山口 全く同感です。私は安倍首相とは派閥が異なるのですが昔から親交があり、体調不良で辞任し、通院直後の安倍首相を自宅まで菅さんと一緒に見舞いました。そしてまだ若いのだから、もう一回首相を目指そうと励ましたのです。今の安倍首相はその時とは見違えるほど自信に満ち溢れています。一月五日の自民党の新年仕事始めの挨拶も、ところどころにウィットに富んだ言葉が入っていたりして。大塩平八郎の言葉を引用して「山中の賊を破るのは易し、心中の賊を破るのは難し」とおっしゃっていたのが印象的でした。

元谷 「心中の賊を破る」というのは自分自身への戒めであるのと同時に、自民党の結束を促す言葉なのでしょう。このタイミングで安倍首相が再登板になって、本当に良かったと思っています。少し前の一年交代の首相では、困難な情勢は乗り越えられず、今頃中国にすっかり蹂躙されていたかもしれません。

山口 就任以来、安倍首相は百カ国以上を訪問しています。あまり報道もされないのですが、同じぐらいの数の国から要人が日本を訪問して、安倍首相に会っているのです。これは諸外国も長期安定政権である安倍政権に高い評価をしている証左なのです。

元谷 在任も長くなり、国際会議でも経験豊富で指導的な立場になっています。日本の政治や世論はいい方向に向かっていると思うのです。今年はアメリカが好景気に向かう予兆もあり、日本は経済面でも期待が持てると思います。波乱があるとしたら、トランプ大統領誕生による中国の反応でしょうか。

山口 あと選挙が続くヨーロッパの情勢ですね。

元谷 力の論理が幅を利かす新帝国主義時代の到来です。これに備えないと。

山口 代表のようなしっかりとした歴史観を持ったオピニオンリーダーの存在が益々重要になります。

元谷 一緒に日本国民の意識を、安全保障を正しく理解する方向に変えていきましょう。最後にいつも「若い人に一言」をお聞きしているのですが。

山口 安倍首相は最初に首相になった時には体調の悪化で辞任したのですが、その後心身共に鍛えて再び首相に返り咲き、今正に日本のトップリーダーとして、大車輪で日本を牽引しています。日本の総理も挫折から立ち直って大活躍をしている。一回や二回上手くいかないからといって、諦めてはいけないと言っています。

元谷 再び立ち上がる勇気を持つということですね。

山口 私の人生も七転び八起きですから(笑)。

元谷 今日はいろいろ素晴らしいお話を、ありがとうございました。

対談日2017年1月6日