BIGTALK

帝国主義国・中国への
絶え間ない圧力が必要だ
特別対談[2019年5月号]

元アメリカ首席戦略官 兼 上級顧問 スティーブ・バノン
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APAグループ代表 元谷外志雄

保守系ネットメディア「ブライトバート・ニュース」の経営者兼論客からトランプ大統領の選挙対策本部長に就任、見事彼を勝利に導いたスティーブ・バノン氏。世界情勢についても独自かつ卓越した見識を持つ氏に、二月の米朝首脳会談の内幕や膨張する中国の目的などをお聞きしました。

スティーブ・バノン氏

1953年アメリカ・バージニア州生まれ。大学卒業後1976〜1983年、海軍に所属、士官として第7艦隊の駆逐艦の乗組員となる。1983年ハーバード大学ビジネススクールに入学、卒業後はゴールドマン・サックスで投資銀行業務に従事、1990年に独立。メディア業界への投資会社経営や映画プロデューサーとして活躍。2012年保守系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」の経営権を取得、論客としても頭角を現し、2016年大統領選挙のトランプ陣営の選挙対策本部長就任。トランプ政権では首席戦略官を2017年8月まで務めた。

ここ数カ月を乗り切れば
トランプ大統領は必ず再選

元谷 今日は特別対談にご登場いただき、ありがとうございます。

バノン お招きいただき、非常に光栄です。

元谷 バノンさんは二〇一六年のアメリカ大統領選挙でトランプ陣営の選挙対策本部長を務め、考え抜かれた戦術で見事に勝利を収めました。まずはそのことに敬意を表したいと思います。大統領選挙は総得票数ではなく、州ごとに決められる選挙人の数で勝敗が決まります。その仕組みを熟知して、もう少しで勝てる州には力を入れ、全く見込みのない州には注力しなかった。これが功を奏したのですね。

バノン 民主党とクリントン陣営はこの仕組みを理解していなかったのでしょう。総得票数と選挙人数では、ゴルフならストロークプレーとマッチプレーほどの違いがあります。

元谷 歴史を見ても、共和党政権の方が日本に友好的な政策を採ります。民主党政権は中国寄りで日本を外した外交を展開しがちです。そのことから私は以前から共和党支持で、トランプ氏には是非大統領になって欲しいと思っていました。しかしアメリカも日本もメディアは挙ってクリントン勝利を予想。私はトランプ勝利を言い続けていて、見事に予想を当てることができました。民主党オバマ政権の八年間で、世界は混乱しました。中国は軍事力を増強して膨張を続け、北朝鮮は核兵器を小型化し、大陸間弾道ミサイルに搭載できるようにしました。これでさらにクリントン政権になっていれば、世界は大変なことになっていたでしょう。

バノン 一〇〇%代表の意見に同意します。

元谷 七カ月ほどで首席戦略官を辞任された時に、メディアは更迭されたかのように報じましたが、私はそうは取りませんでした。バノンさんが影の大統領であるかのような報道が溢れていたので、役職を退いて裏からサポートした方が、トランプ政権も動きやすいと判断したからではないでしょうか。

バノン ご指摘の通りです。私は二〇一六年八月十四日、選挙の八十八日前に選挙運動に参加しました。その時にはトランプ氏は支持率で一四ポイント、クリントン氏に負けていました。私はポピュリストとナショナリストが支持する「ブライトバート・ニュース」という保守系ネットメディアの会長でしたから、これらの層がトランプ氏を支持するよう刺激したのです。そして二〇一七年八月一日に政権を去りました。公職にあるよりも、裏に回ったほうが効果的にトランプ大統領を支援できるとわかったからです。

元谷 私の睨んだ通りだったわけです。ということは、首席戦略官を辞任されてからも、ずっとトランプ大統領をサポートしているのですね。

バノン むしろ辞任してからの方が支援のための仕事は増えています。トランプ政権を維持するためにはポピュリストやナショナリストの支持は不可欠なのですが、先程お話したように私はこの人達と密接な繋がりを持っていますから。今でもトランプ大統領のために働いています。

元谷 バノンさんがトランプ大統領と知り合ったのはいつだったのでしょうか。

バノン 二〇一〇年です。二〇一二年の大統領選挙に出たいというトランプ氏にアドバイスを求められて、オバマ大統領には絶対勝てないから出るなと言ったのです。二〇一四年にトランプ氏は次の大統領選挙のキャンペーンの準備を始めたのですが、私はエリート層ではない普通の人々をターゲットに定め、彼らがトランプ氏の政策を理解できるよう、様々なサポートをしていました。

元谷 私とトランプ大統領は共に不動産王でホテル王です。同じ分野での実業家ですので考え方も似ているからでしょう、私は彼のアプローチが非常に良く理解できます。私はトランプ大統領の再選を願っていますし、実際にそうなると予測しているのですが、バノンさんはどう見ていますか。

バノン 元顧問弁護士・コーエン氏の議会証言などこの数カ月危機を迎えていますが、これを乗り切れば再選への障害は全くなくなるはずです。

元谷 きっと乗り切れるでしょう。再選すれば、任期は二〇二四年までとなります。四選となったロシアのプーチン大統領の任期は二〇二四年です。安倍首相の任期は、今は二〇二一年ですが、自民党の綱領を変えて四選を可能にし、総裁選に勝てば、二〇二四年まで伸ばすことができます。トランプ大統領もプーチン大統領も安倍首相も二〇二四年まで今の地位にあれば、世界の流れを変えることが可能でしょう。

バノン その通りだと思います。

中国の軍事費は全て
侵略準備に使われている

元谷 中国への厳しい姿勢も、私とトランプ大統領の共通点です。二〇一七年一月、アパホテルの部屋にある私の著書に「南京大虐殺はなかった」と書かれていることを中国政府が批判、中国からアパホテルの予約が出来なくされました。私は言論の自由の下、自身が正しいと思うことを主張しています。根拠ある反論があれば教えて欲しいと表明したのに、中国政府は何も言ってきませんでした。バノンさんも中国に対して厳しい意見をお持ちだと聞いていますが。

バノン 中国は最悪の敵だと考えています。

元谷 鄧小平の後ろ盾のあった江沢民や胡錦濤は五年二期で十年の主席の任期を守っていたのに、今の主席の習近平はその任期を廃止しました。習近平帝国を作ろうとしているとしか思えないこの流れは、日本にとって脅威です。

バノン 明らかに帝国主義ですね。習近平など中国共産党の過激な一派は、一帯一路で東アジアからヨーロッパ、アフリカまで勢力を伸ばし、世界覇権を握ろうとしているのです。

元谷 この動きを抑えないと。中国は南シナ海では岩礁を埋め立てて、軍事基地としました。これは日本のシーレーンや自由航行を阻害するものです。アメリカも「航行の自由」作戦を南シナ海で実施して対抗していますが…。

バノン 南シナ海と東シナ海をコントロールして、日本のシーレーンを妨害するというのが、中国の戦略です。

元谷 今の中国海軍では台湾海峡を越えられないため、まだ台湾は独立を維持しています。しかし国産空母を少なくとも二隻建造する等、中国は海軍力を急速に増強して海洋進出を強めようとしています。台湾が奪われれば、日本は危機に陥ります。早晩沖縄を占領され、さらに日本は中国の一自治区になってしまうでしょう。

バノン 代表は一〇〇%正しい。中国の軍事費は全て侵略の準備のために使われていて、一ドルたりとも防衛のためには使われていません。ご指摘の通り、台湾だけではなく日本やフィリピンに食指を動かそうとしています。日本やアメリカは海軍国ですが、中国はそうではない。だから南シナ海の岩礁を埋めたて航空基地とすることで、海軍力を補おうとしているのです。

元谷 日本の海上自衛隊は当面は中国海軍に負けることはないでしょう。しかし中国はどんどん予算をつけて、軍拡を続けています。一九八〇年代、アメリカのレーガン大統領は軍拡を続けることでソ連を経済的に追いつけなくして屈服させました。今は米中新冷戦時代という認識なのですが、アメリカを中心に、同盟国が同様に軍事力の増強を行って中国を屈服させるべきです。そしてソ連がそうだったように、民主化に伴って中国がいくつかの国に分裂して、それぞれの国が民主化するのが望ましいと考えています。日本はGDPの一%という防衛費の上限を撤廃して、海上自衛隊の拡充、特に潜水艦の増強を図るべきでしょう。

バノン 現状、アメリカは軍事面でも経済面でも情報面でも十分な力を持っていますが、中国のは「張子の虎」です。しかしアメリカには政治的な意志が欠けている。これが問題なのです。ソ連が崩壊したのは、レーガン大統領、イギリスのサッチャー首相、そして日本など西側諸国が絶え間ない圧力を与え続けたからです。同様に中国に強い圧力を掛け続けないと。

元谷 そのプレッシャーがまだ弱いのではないでしょうか。また中国は内政では弾圧によって人権侵害を繰り返しています。百万人が収容所に入れられていると言われる新疆ウイグル自治区やチベット侵略から七十年を迎えたチベット自治区、法輪功への弾圧も行われています。しかし日本のメディアは中国と日中記者交換協定を結んでいて、記者駐在と引き換えに中国批判を行わないと協定を交わしているため、真実の報道ができないのです。一方の国の都合で真実が報道できない協定は、言論の自由に反します。日本政府が介入して、この日中記者交換協定を破棄させるべきだと私は主張しています。

バノン そのような協定の存在は知りませんでした。

元谷 調べればわかると思います。中国の実態が伝えられない一方、捏造の南京大虐殺や従軍慰安婦性奴隷説が中国や韓国によって流布され、それを信じて自虐的になる日本人が多いのです。トランプ政権は最初の頃、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官を顧問にしていたと思うのですが、彼は中国からも顧問料をもらっていた人物です。

バノン キッシンジャー氏の方から顧問にして欲しいと依頼があったのです。彼が主張していたのは、日本とアメリカが落ち目である一方、中国は伸びている。それを認識して、日米が変わるべきだというものです。同様の戦略で、アメリカはソ連を屈服させることができたのですから。

元谷 中国の十三億人の人口の内、九億四千万人が農村戸籍です。残りの都市戸籍の人の内八千万人が共産党員で、その中の上位のたったの二、三千万人が、大多数の農村戸籍の人々から搾取した金で贅沢三昧をしているというのが今の中国の構造です。富裕層は子女をアメリカの大学に入れ、財産も海外に移転して、いつでも中国から逃げられる状態にしています。こんな歪な構造を許す共産党一党独裁体制は崩壊させるべきではないでしょうか。

バノン 一〇〇%その通りです。

トランプ大統領の狙いは
「ビッグディール」だった

元谷 二月の二回目の米朝首脳会談が行われたベトナムのハノイまで、北朝鮮の金正恩は列車で行きました。この間に中国からいろいろとレクチャーを受けたのではないでしょうか。習近平主席とトランプ大統領が北朝鮮の争奪戦をしていて、その状況を巧みに金正恩が利用しているように私には思えるのですが。

バノン 私の見方は少し異なっています。北朝鮮は中国の属国です。核兵器や大陸間弾道ミサイル等、北朝鮮の全ての技術は中国から来ているのです。

元谷 私は北朝鮮が最も嫌っているのは中国で、核兵器も対中国のものだと考えています。二〇〇四年に中朝国境近くの龍川駅で大規模な爆発がありましたが、これは中国の軍事委員会主席の江沢民が核開発を止めない金正恩の父親・金正日を爆殺しようとしたものです。とにかく核兵器を一度手にした国は絶対に破棄しません。例外は南アフリカですが、これは白人政権が黒人政権に核を引き継ぎたくなかったために破棄したのです。

バノン 核の破棄については全く同意見ですし、独裁者が自身を守るために核を持つことには意味があります。核開発を断念したリビアのカダフィ大佐は非業の死を遂げました。

元谷 日本が恐れるのは、北朝鮮が韓国を併合して人口約八千万人の核保有国・朝鮮連邦が誕生、中国の手先となって日本を脅してくることです。

バノン アメリカは、北朝鮮が核兵器を保有している限り、朝鮮統一を認めません。

元谷 もし北朝鮮が核兵器を隠し持ったらどうでしょうか。それを防ぐためには、厳格な査察が必要になると思います。

バノン 米朝首脳会談では北朝鮮は寧辺の核施設の廃棄を条件にしていましたが、トランプ大統領がそれ以外の二つの核施設の存在について言及すると、金正恩は非常に驚いたそうです。アメリカにはそれだけの情報収集能力がありますが、あらゆる施設を査察する権限を持った査察官を北朝鮮に置くことが重要な米朝合意の条件になるでしょう。

元谷 私も同意見です。米朝首脳会談でトランプ大統領が安易な妥協を行わずに席を立ったのは、非常に立派な態度だと思いました。バノンさんが何かアドバイスをしたのでしょうか。

バノン していません。あれはトランプ大統領のスタイルですから。彼が今回狙っていたのは「ビッグディール」で、核兵器はもちろんミサイル、生物兵器、化学兵器も含む全ての大量破壊兵器の廃棄と交換に、アメリカが日本と一緒に経済援助を行うという完全包括的な合意でした。しかし金正恩は納得しなかった。トランプ大統領は政治家ではなくビジネスマンです。「早く始末するのではなく、一番正しい形で決着する」が目標ですから、今回席を蹴ったのです。

元谷 中国や北朝鮮の核に対抗してバランス・オブ・パワーを維持すべく、日本も独自の核抑止力を持たなければと私は考えています。憲法を改正、非核三原則も廃止して、NATO四カ国が採用しているニュークリア・シェアリング協定をアメリカと結ぶ必要があると思うのですが。

バノン 私は日本が核抑止力を持つことには、政治的なコストが大きいと考えています。また北朝鮮が日本を核攻撃すれば、アメリカが中国の都市に核の報復を行うことを中国は知っているのです。私は核の傘はしっかり機能していると信じています。さらに大陸間弾道ミサイルだけではなく、日本の脅威となる中距離ミサイルの破棄もアメリカの交渉の条件に入っています。一部には「入っていない」という報道もありますが、それはフェイクニュースです。

元谷 最後に「若い人に一言」を。

バノン 勇気を持ちましょう。勇気があれば、世界のためにいろいろなことができるはずです。

元谷 今日はありがとうございました。

対談日 2019年3月8日

「トランプ政権を誕生に導いた
元首席戦略官 兼 上級顧問
スティーブ・バノン氏」講演会

選挙対策本部長としてトランプ大統領の選挙戦での勝利に貢献、トランプ政権でも七カ月間、首席戦略官兼上級顧問を務めたスティーブ・バノン氏が緊急来日。アパグループなどが主催する特別講演会が、二〇一九年三月八日東京本社にて行われました。

真実を語る三つの方針で
大統領選に勝利

 トランプ大統領が当選したのは、ウィスコンシン州などアメリカ中西部の、雇用を中国に奪われた声なき人々に光を当て、労働者階級のチャンピオンになったからだ。一方のクリントン候補の敗因は、彼らを「情けない人達」と切り捨てたから。私は選挙の八十八日前に選挙対策本部長になった。トランプ氏がレーガン大統領以来、最も偉大な候補者だと確信していたからだ。そこからの選挙キャンペーンでは三つのシンプルな方針を打ち出した。一つ目は雇用を奪う不法移民の取り締まり、二つ目は中国から工場を取り返すこと、三つ目は意味がないのに七兆ドルと一万人の犠牲者を費やした中東紛争からの撤退だ。これらの真実を語る勇気を持っていたから、トランプ氏は大統領選に勝利した。しかし反対陣営についていたマスメディアや進歩派の左派、ウォール街はこの勝利を認めず、今でもトランプ政権を批判している。
 安倍首相は慣例から外れて、就任前のトランプ氏と面談した。トランプ氏は先進民主主義国で初めてナショナリストが主導する政権を作ったとして、安倍首相を非常に尊敬している。その結果大統領就任後初の公式な首脳会談の相手は、通常はイギリスやカナダの首脳だが、今回は安倍首相になった。今の対日政策の陣容は、ポンペオ国務長官、ボルトン補佐官、ハガティ駐日大使、ライトハウザー通商代表と最高の陣容だ。

覇権主義国・中国には
日米が団結して対抗すべき

 二〇一七年一月、トランプ政権誕生直前に中国の習近平主席はダボス会議で演説、グローバリスムの大切さを語り、世界中のメディアはあたかも彼がグローバリスムの救世主であるかのように報じた。しかしその直後に就任演説でトランプ大統領は、中国の覇権主義的な姿勢を指摘した。トランプ大統領が守ろうとしている自由な市民を基盤とした国民国家体制に対して、全体主義国・中国は、全てが自国に還元するようなネットワークを形成しようとしている。ハルフォード・マッキンダーが指摘したユーラシア大陸のハートランド、アルフレッド・マハンが指摘した「海のホットスポット」等、地政学的な重要な戦略を、歴史上初めて中国が一国として取りまとめ、実行しようとしている。その手段が一帯一路、中国製造二〇二五、そして5Gの普及だ。一帯一路では、返済できないほど借金漬けにして資産を奪うというかつてのイギリスの東インド会社同様の略奪的な手法で、アジア、太平洋、そしてユーラシア大陸への自国の覇権を拡大しようとしている。また高度な製造技術・5Gの通信技術によって世界を制覇しようともしている。ファーウェイやZTEといった中国のIT企業は人民解放軍そのものであり、ファーウェイのCFOがカナダで逮捕されたのも、ネットワークを通じて世界中で行ってきた詐欺行為が理由だ。
 経済的に見た中国の問題は、奴隷のように働かされている労働者と彼らを搾取するエリート層という経済構造によるデフレ効果と供給過多であり、そのためにアメリカや日本の賃金が上昇しない。トランプ大統領が今行っている中国との交渉は、従来の貿易交渉とは大幅に異なり、中国の経済構造自体を変えるものだ。日本が独立した強靭な国だからこそ、今アメリカは同盟を組んでいる。北朝鮮に対しても、日米が対話の道を築いてきた。さらに日米が団結して共産党一党独裁国家・中国に対抗、自由主義を我々の将来の世代に引き継がなければならない。