元谷 本日はビッグトークにご登場いただき、ありがとうございます。
上野 以前ビッグトークに登場されていた杉田水脈議員、松田学議員、そして先月号の田畑裕明議員とも親しくさせていただいています。全員、衆議院議員としては同期です。
元谷 私の今の目標は、一人でも多くの日本派の国会議員を育てることです。
上野 我々の子供や孫の世代に、安心して暮らせる日本、この国に生まれて良かったと思える日本を引き継ぐためにも、党派を超え、同じ思いで行動できる議員が増えることは重要です。
元谷 今後日本派の議員を増やす役割を果たす党として私が一番期待しているのは、「日本人の、日本人による、日本人のための政治を目指す」と宣言している、西村眞悟さんが代表を、田母神俊雄さんが代表幹事を務める太陽の党です。今、来年の統一地方選挙に向けて候補者の擁立を行っているところだと思います。その次は国政選挙です。再来年までに必ず行われる国政選挙は、衆参同時選挙になる公算が大きいと考えています。しかし太陽の党では候補を立てきれません。西村さんや田母神さんが考えているのは、例えば次世代の党の上野さんや民主党の長嶋昭久さんなど、「これは」という日本派の政治家を、党を問わずに推薦することです。同じことをぜひ次世代の党も実行して欲しいですね。
上野 党利党略ではなく、まさに政治理念や基本的政策が一致する候補者を支援することこそ政党の役割だと思います。
元谷 私が考える太陽の党の推薦基準は次の通りです。まず日本が再び世界第二位の経済大国になること。原発をエネルギー政策の中心に据え、電力の五〇%を原発で賄うこと。税の誘導で大家族制度を復活させ、日本を天皇中心の大家族国家とすること。自主憲法を制定し、独自の防衛力を得て真の独立国家となること。医療と先端科学技術で世界一になること。観光大国となること。そして教育とメディアの正常化です。
上野 原発について言えば、福島のような事故は二度とあってはなりません。しかしあの事故を契機に、日本の原発技術を将来にわたって完全に消滅させてしまうのは、日本の、そして世界にとっての損失です。日本の原発技術、安全に廃炉にする技術があれば、世界に貢献することができるはずです。
元谷 その通りです。事故前はこのことを民主党も理解していて、電力の五◯%を原発でと計画していました。今これを再び大胆に主張する政党が必要なのですが、政権与党である自民党は思っていてもなかなか言えない。自民党が言いたいことを代わりに言う勢力が必要です。安倍政権は中韓から右翼政権だと批難されていますが、さらに右寄りの主張をする政党があれば、安倍政権と自民党は中道になります。この「さらに右」の役割を果たすのが、太陽の党と次世代の党だと思うのです。
上野 安全保障や経済政策などで、我々は安倍政権と非常に近い考え方を持っています。是々非々で、支えるところは支えていく。一方で修正すべきところは修正を求めていく。次世代の党は、代表が良く仰る自民党の先を行く砕氷船の役割を果たすべく、機動的に動くことができるところに存在意義があると思います。
元谷 日本派によって、政治が真っ当にならなければ。二〇〇九年に民主党は「政権交代」だけをテーマにして選挙に勝ち、政権を奪取しました。しかし民主党は所詮選挙当選互助会であって、党の綱領すらありません。結局日本をぐちゃぐちゃにした挙句、三年で政権を失い、今や弱小政党です。やはり政党は政策が一致する政治家の集まりであるべきです。日本維新の会と結いの党が一緒になって、「維新の党」となりましたが、これは正に第二の選挙当選互助会でしょう。この合併に異を唱えて分党して誕生した次世代の党ですが、統一した政策を持つ党となって、すっきりしたと思います。橋下徹さんの破壊力は素晴らしいですが、原発政策や移民政策など次世代の党とは、考え方が違い過ぎるでしょう。
上野 以前、元谷代表が主催する勝兵塾で、維新の会が結成されるまでのお話をさせていただきました。その際に、代表から砕氷船の役割についてのアドバイスを頂戴したのですが、その考え方は大変重要だと思っています。
元谷 人口減少を移民で補う考えに維新の党は賛成のようですが、次世代の党は反対しています。私も同感です。技術や学問で高いレベルの層を計画的に移民として受け入れることはあり得ると思うのですが、一般の労働力としてはどうか。ドイツではトルコからの移民が、フランスでは旧植民地からの移民が問題になるという先例があります。私は日本の人口を増やすためには、大家族制度の復活を税による誘導で行うべきだと主張しています。大きな家の税金を安くして、三世代、四世代で暮らすことを奨励するのです。そうすれば、世代間の相互扶助によって、子供が産みやすくなります。また家族同士で介護ができるようになり、社会としての福祉への負担が減ります。
上野 とても良いアイデアだと思います。
元谷 こういう話をすると、復古主義だと言う人がいます。しかし平等主義や民主主義など西欧から生まれた思想が全て正しいのかと言えば、私は疑問を持っています。政治体制にせよ、民主主義&自由経済が社会主義&計画経済よりも優れていることは歴史が証明していますが、では民主主義が究極の政治体制かと問われれば、それは違います。キリスト教国から見ればとんでもないことでも、イスラム教国にはイスラム教国の考えがあります。キリスト教とイスラム教では、キリスト教の方が残酷ではないでしょうか。中世ヨーロッパでは魔女狩りが行われ、アメリカではネイティブ・アメリカンの虐殺が行われ、彼らに代わる労働力としてアフリカから黒人が輸入されました。WASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)は白人以外は白人に奉仕するための民族で、奴隷にしてもいい、奴隷には肌の色でわかりやすい黒人がいいという発想です。異なる宗教の人間には何をしてもいいという考えは、日本人の持つ八百万の神の感覚とは相容れないものです。
上野 アメリカやヨーロッパからの視点だけでものを考えるのではなく、もっと広い視野を持つことが求められますね。
元谷 そうです。特に政治家には公平な目で歴史観、世界観、国家観を確立していくことが求められます。何が本当なのかをしっかり見極めていくべき。私はそのために勝兵塾を開催しているのです。
上野 私も月例会に講師として参加させていただいておりますが、大変素晴らしい事業だと思います。
元谷 そんな中、特に日本において変わることが求められるのはメディアです。日本人自身の自覚が薄いですが、日本の先端科学技術はアメリカも最先端兵器に導入するほど、凄いものです。こういった日本が誇るべきことをメディアは取り上げず、マイナス面ばかりを取り上げるから、国民が自虐的になるのです。また日本で報道されるニュースは、世界のメディアを牛耳るアングロサクソンとユダヤが認めたものだけです。偏向したニュースしか目にしていないのに、公平だと思い込んでいるところに問題があります。このメディアの中心にいたのが朝日新聞で、他の報道機関が異なる論調の報道を行うと、徹底的に抗議を行ってきました。そして二十年も前からわかっていた誤った従軍慰安婦の報道をそのままにしてきたのです。その他南京大虐殺にせよ、靖国参拝にせよ、どれも朝日新聞が中韓を焚き付けて始まった問題です。
上野 慰安婦問題については、次世代の党の山田宏幹事長が衆議院予算委員会で、河野洋平元官房長官と朝日新聞の木村伊量社長の参考人招致を求めるなど、真実を明らかにして誤りを正すべく活動を行っています。こういった動きもあり、国益を大きく損なってきた慰安婦問題について多くの方々が関心を持つようになりました。
元谷 その通りです。
上野 今年の夏に訪れた台湾の台南市で日本の素晴らしさを改めて教えられました。終戦まで台南市長だった羽鳥又男さんは、私の地元・群馬県の前橋市(旧富士見村)の出身ですが、今でも末代市長(最後の市長)として市民に親しまれるなど、台南市では日本統治時代が高く評価されています。客観的に見ても、日本は朝鮮半島や台湾で将来の発展への基盤整備を行っていました。
元谷 疫病の島と本土からも化外の地として見放されていた台湾を日本は開発し、インフラだけではなく、内地同様に学校を建設し教育を充実させました。西欧列強の植民地経営では、現地人の教育などしません。しかし同じ政策を取り、台湾からは感謝されるのに、なぜ韓国からは批難されるのか。
上野 日本は台湾や韓国を植民地支配したのではなく、自分の国として平等に扱い、同じレベルまで発展させようとしました。
元谷 徴兵を一番最後にするなど、むしろ日本は朝鮮半島や台湾を優遇していました。西欧列強であれば、まず植民地軍を最前線に送り出すはずです。
上野 慰安婦問題についても、あったことをなかったと主張するつもりはありません。ただし、不当な評価を是正していく必要はあると考えます。
元谷 その通りです。テキサス親父として知られるアメリカ人のトニー・マラーノさんが、アメリカの公文書館から一九四四年のアメリカ軍がビルマの朝鮮人慰安婦に尋問をした時の調書を発掘しました。ちゃんとお金を稼ぎ、借金がなくなれば自由になる彼女達のことを、この尋問調書は「追軍売春婦」に他ならないと結論づけています。決して性奴隷ではない。こんな活動を一人のアメリカ人が行って成果を上げているのに、日本の外務省は何をやっているのか。
上野 この二十年間、国益が大きく損ねられました。
元谷 ですから、正しい考えを持つ日本派の政治家が政権を持つ必要があるのです。自公連立も考え直す時期です。バックにアメリカがいるのではと考えてしまう公明党が政権のキャスティングボートを握る、いわばしっぽが胴体を振り回す状態が続いています。太陽の党と次世代の党が勢力を増し、公明党に代わって自民党と組み保保連立となれば、日本はもっと真っ当な国になるでしょう。
上野 そもそも日本派を増やさなければならないということが、おかしなことなのです。日本の国会議員であれば、国民の生命・財産を守り、国土を守るのが当然です。約七百人の国会議員全員が日本派なのが本当は当たり前なのに、敢えて言わなければならないことが問題ですね。
元谷 その元凶はアメリカの占領政策です。大戦後の冷戦でアメリカがソ連より優位に立つためには、原爆の投下が必要でした。しかし大量の民間人を虐殺する原爆投下を正当化するためには、日本が悪い国でなければならない。終戦前から周到に計画し、GHQはあらゆる手を使って、日本人に自虐意識を刷り込んだのです。プレスコード(新聞編集綱領)を定めて、メディアがアメリカや憲法、中国や朝鮮人の批判を行うことを禁止した一方、日本の国家予算を使い数千人のインテリを雇って、放送や新聞のチェックはもちろん、電話の盗聴や信書の開封にまで及ぶ検閲を行いました。検閲官によるチェックは常に二重で、発見した問題箇所が少ない検閲官はその職を追われました。だから皆が必死になって問題箇所を探したのです。さらに洗脳は教育の場からということで、GHQは日教組を作りました。
上野 特に従来は、新聞・テレビなどのメディアを通じて情報を得るしかなかったので、プレスコードの影響は大きいですね。
元谷 日本派が増えれば、朝日新聞のような反日メディアも無くなります。事実ではないことで不安を煽るメディアの責任者を罰する法律を作ってもいいでしょう。今でもメディアは自主規制としてプレスコードを守っています。森喜朗元首相が神の国発言でメディアに一斉に叩かれたのも、プレスコードで神国日本の宣伝が禁止されていたからです。
上野 事実を正確に伝えられる環境が必要です。
元谷 しかし今、日米関係が変化する局面に来ています。近年、アメリカは軍事費を削減する方向性を打ち出しています、東アジアでのパートナーとして、アメリカの穴は日本が埋めるしかありません。一番効率の良い穴埋め策は、強い抑止力を持った核兵器です。中国とインドの関係や中国とソ連の関係も、お互いが核兵器を持つことで安定しました。アメリカから核をレンタルするニュークリア・シェアリングを日本が導入するだけでも、アメリカは安心して軍事費の削減ができるはずです。このような提案を日本は行うべき。アメリカと喧嘩をするべきではありませんが、友人同士として忌憚のない意見交換は必要でしょう。
上野 まさに日米関係はしっかりと尊重していくべきです。旅客機などのアメリカ製品の重要な部分が日本で作られているのは、高い科学技術が認められているのと、日米両国に強い信頼関係があるからでしょう。
元谷 はい、それは良いことなのですが、もう一段踏み込む必要があると考えています。それは兵器の国産化率を高めることです。日本の独立のためには憲法を改正しただけでは駄目で、軍(自衛隊)の独立が必要なのです。しかし今はアメリカ軍と同じGPS、コンピュータ・システム、敵味方識別装置などを使用していて、自衛隊はアメリカ軍に支配されているも同然です。またミサイル防衛システムにばかり予算を割いていますが、このシステムは同時に数発飛来するミサイルに対応することが、非常に困難です。防衛兵器に予算を費やすのは効率が悪い。攻撃兵器を保有して、抑止力で防衛する方が効率的なのです。核兵器でなくても、例えば衛星軌道から、弾薬も積まず先端をセラミックで覆ったタングステンの弾頭を超高速(マッハ十五)で発射し、ピンポイントで地上の目標物に命中させると、小型核兵器並の破壊力があります。日本の高い科学技術なら、このような核兵器に匹敵する精密誘導兵器を開発することも可能でしょう。また、日本の技術をアメリカの兵器開発に供与するにしても、今よりも公正な値段で購入してもらう必要があるでしょう。
上野 仰る通りだと思います。
上野 はい、経産省在籍時代の二〇〇一年から二年間、アメリカのハーバード大学のケネディスクールに留学していました。
元谷 ハーバード大学は民主党系の大学という印象があるのですが…。
上野 民主党一辺倒ということはなく、例えば私の恩師である政治学の先生は、共和党員で元下院議員という方でした。海外から見ると日本の良さを再認識するのですが、同時に海外での日本の存在感が下がってきていることも感じます。ハーバード大学でも日本に関する研究や授業が無くなる一方、中国に関するものが増えているのです。日本からの留学生の数も減少しており、何らかの対応を取るべきでしょう。
元谷 その通りですね。ハーバード大学ではいろいろな人脈ができたのではないですか?
上野 今のモンゴルのエルベグドルジ大統領をはじめ、各国を代表する優秀な同級生たちとの交流は刺激的でした。
元谷 私がエンフバヤル前大統領にお会いした時に、エルベグドルジさんは首相でした。そういう縁があるのですね。
上野 はい。もう一つ縁というか運命だと思っていることがあります。ハーバードに留学して初日の授業が九月十一日からだったのですが、この日に同時多発テロが発生しました。世界貿易センタービルに衝突したボストン・ローガン空港発の旅客機に家族が乗っていたという学生が隣で泣き叫んでいるなど、キャンパスは異常な状況でした。そしてこの2年の間にイラク戦争も開戦。戦時下の特殊な雰囲気の中で、世界各国のトップクラスの学生と共に学び議論した経験が、私が政治家を志すことになった原点です。
元谷 世界貿易センタービルは、一九九三年にも地下駐車場の車に仕掛けられた爆弾によって爆破されましたが、ビル自体は無事でした。私はその丁度一年後に世界貿易センタービルに入っているメインバンクの邦銀を訪問したのですが、非常に厳しいセキュリティチェックを行っていました。ビンラディンはこのアメリカの象徴的なビルを執拗に狙い、二回に亘って計画を立て、最終的には目的を達成したのです。恐ろしい話ですが。
上野 日本にいては、一生あの雰囲気を感じることはなかったでしょう。多くの日本人は自分の住んでいる国が戦争に巻き込まれる可能性があるとは考えていないと思います。
元谷 日本人の平和ボケを象徴するようなお話です。また憲法九条があったから、日本は平和だったと主張する、別の意味でボケた人も多い。世界の常識では考えられない盲信です。
上野 単に平和を唱えれば安全が守られるのなら、竹島が韓国に占拠されることも、数多くの人々が北朝鮮に拉致されることもなかったはずです。
元谷 女性を拉致されたレバノンは、国民と政府が一体となって北朝鮮に抗議を行い、政府は国交断絶を宣言、武力行使まで持ちだして圧力をかけ、女性の奪還に成功しました。なぜ日本にはできないのか。また北朝鮮に関しては、他にも一九五〇年代から始まった在日朝鮮人の帰還事業に伴う日本人妻の問題があります。十万人近い人が「地上の楽園」と宣伝された北朝鮮に渡り、飢餓に苦しむなど地獄のような経験をする羽目になったのです。メディアもその時々にスポットライトがあたるものだけに対応しますが、その影で見過ごされることも多い。こんな不公平に救いの手を伸ばすのが政治ではないでしょうか。
上野 国民の生命・財産を守り、国土を守るのが政治の最も基本的な役割です。肝に銘じて行動します。
元谷 頑張ってください。いつも最後に「若い人に一言」をお聞きしているのですが。
上野 日本の素晴らしさをもっと日本人自身が認識すべきです。海外から日本を見て、このことを痛感しました。先人が大変な努力をして守り発展させてきたこの国を、今を生きる我々が更に良いものにして次世代に引き継いでいくことが大事だと思います。
元谷 次世代の党という党名に、引き継ぐ意志が込められていますね。
上野 その通りです。
元谷 今日はありがとうございました。
上野宏史
衆議院議員
※AppleTown本誌掲載のビッグトークの文章に一部誤りがございました。本ホームページでは修正された内容となっております。お詫びして訂正いたします。
対談日:2014年11月7日