バルカン半島の東側に位置し、黒海に面するブルガリアは、日本の三分の一の面積の国土に約七百万人の人々が暮らす国だ。言語はブルガリア語、宗教はブルガリア正教を信じる人が多い。日本ではヨーグルトで知られているように酪農の盛んな国ではあるが、良質のワインの産地でもあり、ワイン造りの歴史は四千年以上にも及ぶ。一九八九年の社会主義体制崩壊後にワイン産業は急速に成長、技術も向上し、今や二百七十のワイナリーがあり高品質なワインを製造、輸出も行っている。また製造業も発展してきており、ソーラーバッテリー等を開発、販売している。ブルガリアはサニーブルガリアと呼ばれるほど晴れた日が多く、一年で三百五十日ほどがお天気だ。ヨーロッパのワイナリーやヴィンヤードがある町では、必ず毎年ワインフェスティバルを行う。小さなワイングラスを購入するだけで、その町で作っている全種類のワインを飲むことができる。日本のワインもどんどん品質が向上している。日本のウイスキーは既に世界一という呼び声もあり、手に入れにくくなっている。
　ロシアのウクライナ侵攻の基礎には、プーチン大統領の「ロシア人とウクライナ人は同一民族」という考えがある。しかし同じ漢民族であったとしても、長年イギリスの統治下にあり、民主主義の空気を浴び続けてきた香港の人々は「香港人」であって、中国人とは根本的に異なる。ウクライナにせよ香港にせよ、民族が同じだからといって大国が飲み込もうとするのは誤りだ。
　黒海沿岸であるブルガリアにもウクライナ侵攻の影響がある。ウクライナからの難民が、モルドバ、ルーマニアを経由して七万人ぐらいブルガリアにやってきている。ポーランドやルーマニアにはもっと多くの難民が来ているが、ブルガリアはその両国よりもかなり人口が少なく、七万人の影響は大きい。ほとんどの男性はウクライナから出国できないので、難民は女性と子供ばかりだ。ブルガリアはウクライナと親しい関係にあり、港湾都市・オデッサを中心に多くのブルガリア人がウクライナに移り住んでいる。

　「SWIFT」からの締め出しに同調する等、日本も積極的にロシアへの経済制裁を行っている。ロシアと国境を接している日本にとって、ウクライナ侵攻は全く他人事ではない。近年、日本の安全保障は中国をターゲットとして南西諸島にばかり、力点が偏っていた。しかしこれからは、南が動く時には北も同時に動くと考えるべきだろう。ロシアの通信大手・ロステレコムは、中国のファーウェイと業務提携をして、サハリンと北方領土を結ぶ光ファイバー回線を敷設、二〇一九年から運用を開始した。このようなことに、日本人は全く着目していない。
　北朝鮮が三月に打ち上げた弾道ミサイルは、高度六千㎞に達して、北海道沖に落下した。明らかに技術が洗練されてきている。また北朝鮮のハッカー集団「ラザルス」は、他国に対してランサムウェアを仕掛けたり、暗号資産を強奪したりと活発に活動をしている。これまで北朝鮮のインターネット接続は中国経由のみだったのだが、二〇一七年プーチン大統領が手を差し伸べて、ロシア経由のインターネット回線が敷設された。もちろんこちらの方がより高速な回線だ。ロシアと中国はまるで北朝鮮を暴力団の「鉄砲玉」のように活用して、西側諸国を攻撃する可能性が出てきている。
　そのロシアと中国の軍事的な連携も強化されている。例えば頻繁に中露の爆撃機が、合同で日本の防空識別圏に侵入している。二〇一九年七月二十三日には、ロシアのA50早期警戒管制機が竹島付近で領空を侵犯、同時にロシア軍と中国軍のそれぞれ二機、計四機の爆撃機が日本の防空識別圏に侵入、航空自衛隊の戦闘機がスクランブル（緊急発進）した。韓国軍の戦闘機も緊急発進して威嚇射撃を行ったが、日本は竹島問題を武力で解決しないという基本方針に従って、自衛隊機は撮影をしたのみだった。北海道付近でロシア機に対してスクランブルがかかることも多く、これはプーチン大統領が北方領土に多額の投資を行っている証だと見られる。
　中露の新兵器導入スピードも早い。中国はウクライナから未完成の空母を購入し、完成させて「遼寧」として二〇一二年に就役させた。さらに国産空母「山東」を二〇一九年に就役させ、他にも二隻の空母を建造中だと見られている。この三隻目の空母には、世界初となる電磁式のカタパルトが搭載されるとも言われている。ウクライナでも使用した超音速ミサイルは、世界で唯一ロシアだけが実戦配備をしている最新兵器だ。このミサイルへの核弾頭の搭載に成功しているのも、ロシアだけだと言われている。

　日本にとっては中国、ロシア、北朝鮮は等しく恐れるべき国々だ。これらの国が日本国内に諜報網を構築して、リアルタイムに情報を得ているのは確実だ。例えば中国が台湾侵攻を行った場合にどうなるか。台湾と日本の最西端の与那国島までの距離は約百十㎞しかなく、東京から熱海ぐらいの距離だ。これをどう守るのか。また中国が台湾侵攻を行う時には、必ずロシアが北方領土で軍を動かすだろう。アメリカは台湾については曖昧な態度を崩しておらず、独立には反対で、現状であれば武器は供与し、いざとなったら…という守りの姿勢だ。これが抑止力になるかどうかも問題である。
　一九八九年の天安門事件では、広場の学生を応援するために多くの北京市民が集まってきた。当時は役人の汚職が蔓延しており、それを正すには民主化による世論の形成が必要だと、多くの市民が考えたからだ。中国人は個人主義で、なかなか集団で心を一つということをしないのだが、この時だけは中国人が一つに団結した。しかし鄧小平はこの学生と市民の動きをアメリカの工作だとして、軍事力を行使して鎮圧した。一説には一万人以上が殺されたと言われる。
　二〇一五年、IS（イスラム国）に拉致された日本人の開放のために、外務副大臣だった中山泰秀氏はヨルダンのアンマンに派遣された。ISが使用していた武器・弾薬二十五種類の内、十五種類が中国製だったことから、中国がISを緩やかにサポートしているのは明らかだった。イラク戦争後、フセインが持っていた油田をISは占拠、ここから産出される石油を購入していたのが中国だ。その石油で中国は安価なプラスティック製品を作り、日本の百円ショップに出荷していた。
　三月にトヨタ系列の部品メーカーがランサムウェア（身代金要求型ウイルス）に感染し、トヨタの全工場のラインがストップするという事態に発展した。サイバーセキュリティ対策は、今や企業にとって最優先課題だ。インターネット上には一般人には見えないダークウェブとサイトがあり、犯罪者が活用していることが多い。ネット上の闇市のような使われ方もされており、原子力研究者のリスト等、注意を要するものも売買されている。日本の大学の研究室は基本無防備で、某ノーベル賞受賞者の研究室の中国人留学生が、ある日突然雲隠れをすることもある。海外の大使館でお土産にもらったサーマルカップに、盗聴器が仕掛けられていたという話もある。こういったお土産にも要注意だ。
　世界のサイバーセキュリティ投資が集まっているのはイスラエルで、そのシェアは四一％だ。世界はイスラエルなしではサイバー戦争に勝てない。イスラエル製のソフトウェアでセキュリティの検査を行えば、セキュリティホールがどこにいくつあるかがすぐに分かる。日本の某省の納入業者をこのソフトでチェックしたところ、三千以上のセキュリティホールが見つかったという。常にチェックをして、メンテナンスを行い続ける必要がある。しかしメイド・イン・ジャパンのセキュリティ会社が生まれてこない。日本に留学してIT企業を興した中国人になぜ日本のデジタル産業は今ひとつなのかを聞くと、デジタルエンジニアに社会的なステイタスがないために、勉強ができる人材が皆医学部に行くからだそう。その辺から改める必要があるのかもしれない。

　アパホテル＆リゾート〈東京ベイ幕張〉の「鉄板焼 七海」が評判で、予約が取りにくい店になっている。個室も六部屋あるからか、驚くようなスーパースターも来店していることがある。この客室数二千七室のホテルは、丹下健三が設計した地上五十階、地下二階のセントラルタワーを中心に、増築したウェストウィング、イーストウィングが横に控え、上から見るとアルファベットのMの形に見える。
　アパホテルが最初にビジネスマンをターゲットとしたのは、彼らが出張で利用する平日が、休日よりも多くあるからだ。五万円を使えば五千円のキャッシュバックがあるというシステムが、会社の経費で宿泊するビジネスマンの心をがっちりと掴んだ。そして週末は観光客が、曜日に関係なくインバウンドの海外の旅行者が宿泊するようになり、一年を通じて高い稼働率を誇るようになった。今特に力を入れているのは、用事がなくてもアパホテルを利用してもらうキャンペーンだ。オンデマンドの映画が見放題なので、映画館に行く代わりにアパホテルに来て、ベッドに寝そべって好きなワインを飲みながら、大きなテレビで映画を鑑賞することができる。近くにいる人が遊びに来れるようなホテル利用を提案中だ。