これを節操がないと言わずして、何と言おう!!
平成二十三年度の国家予算をめぐる、民主党と社民党の政策協議のことだ。
そもそも、民主党はねじれ国会への対応で、昨年十二月「たちあがれ日本」と連立協議をした。打倒民主党を立党の精神とする平沼代表はもちろん受け入れなかった。
すると、仲立ちをしていたはずの与謝野さんが民主党に一本釣りされた。
「税と社会保障の一体改革をやって欲しい」との菅総理の口説き文句。
総理も総理だ。敵のふところに手をつっこむなんて節操がない。
「任期中の四年間は消費税を上げない。無駄削減の事業仕分けと、一般会計・特別会計の予算組み換えで、十分財源を確保できる!!」
と豪語したマニフェストで政権交代してからまだ一年半。舌の根も乾かぬうちに消費税増税論者の与謝野さんを大臣として閣内に取り込むだなんて、言行不一致もはなはだしい。
ましてや、民主党内の「マニフェスト死守論者」の不満はくすぶったままで、小沢証人喚問も絡んで、いつ火薬庫に飛び火するかわからない不安定な政局。
そして次に民主党が声をかけたのは公明党。
平成二十二年度予算を審議していた昨年三月は、公明党は子ども手当法と高校無償化法に、修正のうえで賛成した。
その甘い過去?が忘れられないのか、平成二十三年度予算への賛成を求めて、衆参での過半数獲得を視野に、すり寄った。
しかし、公明党はことわった。
理由は明確だ。
「菅さんのことが信用できない。子ども手当の法律は、恒久制度(恒久財源を確保する)に平成二十三年度からする、と約束したから賛成した。にもかかわらず、こんどの法案も二十三年度限りの時限立法となっている。約束が違う。」
と。
約束が違うといえば、与謝野さんも五十歩百歩。
まず、議席の正当性。
二年前の政権交代選挙で自民党公認だった与謝野さんは、選挙区で民主党の海江田万里さんに惜敗した。そして比例で復活当選。
それは比例区での民主党票のおかげ。
にもかかわらず、自民党を離党してたちあがれ日本に加わり、今また、たちあがれ日本を離党して無所属となり、民主党政権の閣僚席に収まってしまった。議席ロンダリング?
与謝野さんはたちあがれ日本時代に、さんざん民主党のマニフェストを「犯罪に近い」「財源論がない」と批判していたにもかかわらず、ケンカ相手の民主党の軍門に下った。
ライバルの海江田さんが、
「世の中は不条理……」
とつい口走ったのもムベなるかな。
そしてそして、とうとう社民党との政策協議に突入するという節操のなさだ。
社民党の要求は、以下三点。
(一)米軍普天間基地移設経費は、計上しない。
(二)法人税減税五%反対。
(三)成年扶養控除削減反対。
……
いったい、こんな要求を民主党は呑めるのか?そもそも、鳩山前総理が「最低でも県外」と空約束したのを、アメリカに圧し込まれて翻したから、福島みずほさんは閣僚辞任→連立離脱したんじゃなかったのか?
にもかかわらず、今さら社民党の要求で民主党政権が後退するようなら外交政策をできるはずもないではないか。もし、ここで社民党の主張が通ったとすれば、それこそ、理念も信頼もない。
「数合わせ政権」
と言わざるを得ない。
そんな矢先に、鳩山前総理がまた放言。
「海兵隊の抑止力は、方便!!」
……なんだこりゃ?!
あまりにも口が軽いというか、バカバカしいというか、無礼な暴言。
普天間基地の移設先が辺野古沖と決まったのは、抑止力を守るためだったはず。
その根本理論を、自ら否定するようでは、国民はいったい誰を信用したら良いのか。
政党も政治家も、約束したことは、守るように行動すべきだ。
やむを得ぬ理由で約束が守れなかった場合は、誠意を以って謝罪した上で、その理由を説明するべきだ。
その説明に誠意も説得力もなかったとしたら、政党も政治家も国民の前に立つ価値はなくなる。
だから、政策上の説得力のない数合わせに走ってはならないのだ。
約束したことばも守れず、発言の整合性もなく、社民党をも裏切り、アメリカをも出し抜き、過半数や三分の二の再議決一直線とは……
民主党政権、末期症状。
終わりの、始まり。
ことばは、言霊。
(了)