JOURNEY TIME

Vol.5[2026年8月号]

各業界で活躍する賢人の方々にお集まりいただき、日本を元気にするための施策や
日頃こだわっている仕事観について語り合うJOURNEY TIME。非常にユニークな新卒就活サービスを担う事業を立ち上げ、
将来が期待されるスタートアップとして注目を集める株式会社ABABA代表取締役社長の久保駿貴氏、創業から九十六年、
今の代表は三代目になる弁理士法人井澤国際特許事務所代表の井澤幹氏、展開する十五店舗で全て味が異なるラーメン運営企業・株式会社麺屋武蔵Chief Executive Officerの矢都木二郎氏、有名化粧品ブランドの黒子としてOEM専門で化粧品を製造する
株式会社コスメグローバル代表取締役会長の宇田栄治氏をお迎えし、出張と旅について語り合いました。


株式会社ABABA 代表取締役社長
久保 駿貴氏

弁理士法人井澤国際特許事務所 代表
井澤 幹氏

株式会社麺屋武蔵 Chief Executive Officer
矢都木 二郎氏

株式会社コスメグローバル
代表取締役会長
宇田 栄治氏

いろいろ旅をすることで出会う人との距離が縮まる

久保駿貴氏が社長を務める株式会社ABABAは、最終面接まで進んだ就活生だけが登録可能な就活サイトを展開、企業側は最終面接まで進んだことを評価、一次面接や二次面接を省略するなど、効率的に採用活動を行うことができるというサービスだ。累計約二十万人の就活生が登録、企業は三千五百社がこのサービスを利用している。兵庫県明石市出身の久保氏は、岡山大学の四年生の時にこの事業を創業、将来性に期待した多くの出資者を集め事業を拡大している。二〇二四年に久保氏は、過去には大谷翔平氏も選出された、フォーブスジャパンの「世界を変える三十歳未満の三十人」の一人に選ばれた。また、ABABAはサッカーJ1のヴィッセル神戸のオフィシャルスポンサーにもなっている。久保氏は非常に豊富な人脈を持っているが、人脈構築のコツは「仕事の話をしないこと」だ。

久保氏は、二月の衆議院選挙で初当選した友人の古井康介氏が富山を拠点に活動していることもあって、その縁で何度も富山を訪れた。その際に宿泊したのが、アパホテルステイ〈富山〉だ。オールインクルーシブシステムのホテルで、時間制限はあるが、ソフトドリンクやアイス、スナック、アルコール、アパ社長カレーを宿泊費のみで楽しむことができる。またサウナも大きなものと個室の二種類を備えている。アパホテルの新ブランド、アパホテルステイだが、二〇二六年九月には、今のアパホテル〈小松グランド〉が「ステイ」にリブランドする予定だ。

久保氏が考える旅の効用は、「仕事を達成する」「ゆっくり過ごす」に加え、人と仲良くなるきっかけができるということが大きい。初めての人と話をする時にも、富山出身の方に富山出張の話をするなどで、距離感を縮めた経験が数多くある。今後も積極的にフットワークも軽く、お誘いを受けたものも自分が行きたいところも、どんどんいろいろな場所へ行って、自分の可能性を広げたいと考えている。

就活サポートの仕事をする久保氏が「あればいいな」と思うのは、ホテルの学割だ。東京で就職活動を行う地方の学生が、なんらかのイベントでホテルの宿泊代金が高騰、泊まることができずに困っているという話をよく聞くからだ。就活生だけが宿泊できるホテルがあってもいい。そうした宿泊関連のサービスが、今後さまざまな形で広がっていくことを期待している。

出張先での一人飲み地元の人との交流も楽しい

井澤幹氏は祖父の代から弁理士をやっており、事務所は今年九十六年目だ。代表を務める弁理士法人井澤国際特許事務所の特徴は、他の特許事務所では弁理士資格を持たない特許技術者が明細書を作成することが慣行となっているが、弊所では在籍する九名の弁理士のみが、発明の棚卸しから特許明細書の作成・出願までワンストップで担当する、当たり前のようで当たり前ではないことを実現している数少ない特許事務所である。そのため一人の弁理士が担当できる件数には限りがあるが、それこそが強みでもある。特許出願の件数よりも質を重視し、発明の数は少なくても一つひとつの発明を大切にしたい中小企業やスタートアップ企業に対して、発明の本質を1から丁寧に掘り起こし、その発明を守り抜く明細書作成に全力で向き合っている。一方商標出願に関しては、テレビなどメディア関連やエンターテインメント関連、政党など政治関連など、幅広く業務を行っている。商標登録はなかなか奥深く、アパホテルも「私が社長です。」を商標登録している。

井澤氏は知財コーチングで月一回、北陸新幹線で三時間半かけて、福井県敦賀市に行っている。仕事を済ませた後、一人で食事をするのが最近の楽しみだ。先日も一人で寿司店に入ったが、結局左右に座っている人が話しかけてきてくれて、仲良くなって楽しむことができた。また別の時には、イタリアンで一人でワイン一本を空けたこともある。井澤氏は、北陸新幹線ではいつも往復、グランクラスの席を予約する。こちらの方が仕事が捗るからだ。

運が良くなる秘訣は、運の良い人のそばにいて、自分は運が良いと思い続けること。そうやって自分に魔法をかけると、実際にどんどん運が良くなっていく。井澤氏は最近自分の強運を実感した。二〇二五年に初開催、今年第二回目を迎えたゴルフの「ダンヒル・ジャパン・カップ」に誘われて出場、ダンヒル・ジャパン社長の伊知地徹氏と同じ組でラウンドしたところ、三位になった。賞品はスコットランドのセント・アンドリュースのオールドコースでプレーできる権利だ。井澤氏はゴルフが大好きで、四年前にゴルフの全英オープンの観戦でセント・アンドリュースのオールドコースを訪れたことがある。その時思った「いつかプレーをしてみたい」という夢が、早速叶った。

余計なものがないことがアパホテルの大きな魅力

矢都木二郎氏がCEOを務める麺屋武蔵は、東京と神奈川に十五店舗を展開しているが、店ごとにいる店主がそれぞれ味の権限を持っており、全店味が異なる。当然、セントラルキッチンも持っていない。今年創業三十年を迎えるが、矢都木氏は社員として入社、その後頭角を現した二代目のCEOだ。大変なアイデアマンで、二〇〇九年のバレンタインシーズンのチョコレート&味噌味のラーメン「味噌ガーナ」で、ロッテとの毎年のコラボをスタート、十八年目の今年は「つけガーナ二〇二六~ラム肉とスパイスの香り~」が登場した。二〇一二年にはアパホテルとのコラボで、麺屋武蔵監修のカップラーメン「アパ社長ラーメン」も発売されている。

矢都木氏はアパホテルの大ファンだ。その最大の理由は必要なものが全部揃っているのに、余計なものや余計なスペース、余計なサービスがないことだ。さらに大浴場があり、部屋の全ての照明を一つのスイッチで消すことができるのも、矢都木氏は大変気に入っている。

自由な時間を満喫できる一泊三日の一人ハワイ旅

宇田栄治氏が会長を務める株式会社コスメグローバルは、OEMで有名化粧品メーカーの商品を製造している会社だ。創業は十六年前、現在二つの工場があり、約百五十名の従業員が製造に携わっている。コスメグローバルの名前は表に出ないが、従業員は店頭やCMで自分達が製造したものを見ることが、モチベーションの源泉になっている。宇田氏や従業員の夢は、いつかアパホテルに採用される商品を開発・製造することだ。

宇田氏が最近ハマっている旅は、一人で行く金土日の一泊三日のハワイ旅行だ。羽田空港を夜出発する便に乗って、朝十時にホノルルに到着、二十四時間ほど滞在して、次の日の朝のホノルル発の飛行機で日本に帰る。到着して空港から出て、ホノルルの空気を吸い込むことが宇田氏は大好きだ。行程も金土日のため、周囲の誰もが宇田氏がハワイに行ったとは気づかない。以前は一人で食事もできなかった宇田氏だが、今やハワイでは一人でどこへでも行くことができる。自由な一日は、昼間に二カ所買い物に行き、十七時に行きつけの寿司店へ。そしてヒルトン・ハワイアン・ビレッジ・ワイキキ・ビーチ・リゾートに上がる花火を見て、ホテルに戻って就寝、翌朝には空港へというスケジュールだ。逆にハワイで三泊すると、時間は持て余すし時差ボケにもなるし、良いことがないという。

会長が生涯実践した「発想は移動距離に比例する」

故元谷外志雄会長は世界八十二カ国を訪問し、その国の要人とディベートを行ってきた。その多くに同行したホテル社長も、六十カ国以上の国を訪れている。会長は車の運転が好きで、例えばオーストラリアを訪問した時も、大きな街から街へ、朝の三時半から夜の八時までレンタカーでずっと移動するような旅だった。オーストラリアは東海岸はシドニーやブリスベンのような街があり、西側にはパースという街があるが、真ん中はほとんど砂漠という国だ。特に海外への旅は、行ってみないとわからないことがたくさんあり、人生観が大きく変わるきっかけにもなる。

元谷専務がこの四月に上梓した著書『1秒で突破する覚悟』(あさ出版)の第一章の冒頭は、「十四歳の夏。父に突然こう言われました。『お前、ニューヨークに行ってこい。ホームステイだ』」で始まる。塾の夏期講習に申し込んだ後だったり、受験勉強もあるし、海外に行ったこともないと専務は行きたくないと抵抗したが、父親である会長は「決まったことだから」と考えを変えない。仕方なくニューヨークでホームステイをした専務だが、セントラルパークのホットドッグの屋台は人種によって値段が変わるとか、ヤンキー・スタジアムの二階席なら六ドル程度で行くことができたとか、日本に帰って鍋焼きうどんが妙に美味しかったとか、その時の体験が年を経てから大切に思え、今では当時の会長の考えが分かるようになった。次に専務がアメリカ旅行で覚えているのは、約三十年前の一九九五年八月十五日、大リーグ一年目の野茂英雄投手がドジャー・スタジアムで、シカゴ・カブスを相手に十勝目を挙げた試合を見たことだ。昨年再び専務は、ドジャー・スタジアムを訪れた。名物のドジャー・ドッグは変わらなかったが、その他の設備などは大きく変わっていた。二〇二八年にはロサンゼルス・オリンピックの開催も予定されている。北米地域では、アパホテルが運営するコーストホテルグループのホテルが、年々充実してきており、多くの日本人が北米旅行を楽しむことが見込まれる。

会長の「アパ的座右の銘」で三番目に掲げられているのが、「発想は移動距離に比例する」という言葉だ。いつも同じ人々との会合に明け暮れていても、新しいアイデアは生まれてこない。日本国内でも海外でも、多くの旅を重ねた人に、素晴らしい着想が舞い降りてくる。