徹底的に研究・開発した「アパ社長カレーヌードル」はキャベツが大事なアクセント!
アパグループ 専務 元谷 拓
1962年群馬県生まれ。1985年立教大学社会学部卒業。株式会社富士銀行(現みずほ銀行)入行。1992年サンヨー食品株式会社入社。1998年代表取締役社長に就任。『サッポロ一番』ブランドを展開する同社グループは、エースコック、マルタイ、康師傅控股有限公司(中国)など国内外で食品事業を展開するほか、日米でゴルフ場を運営するリゾート事業も手掛ける。公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン理事長、立教大学経済学部客員教授、在群馬モロッコ王国名誉領事等を務める。2021年藍綬褒章受章。
アパ社長カレーヌードル
元谷 本日はありがとうございます。サンヨー食品とアパホテルとのコラボ商品「サッポロ一番 アパ社長カレー ビーフカレー味ヌードル」が六月二十二日より、全国で発売になります。去年からアパグループ五十五周年に向けて何かコラボができないかと井田社長にご相談していたのですが、こんな形で結実いたしました。ありがとうございます。このカップ麺のおいしさの秘密を教えていただけますでしょうか。
井田 この「サッポロ一番 アパ社長カレー ビーフカレー味ヌードル」は「汁まで完食できてしまうカップ麺」です。絶妙な辛さと味わいで、最後の一滴まで楽しんでいただけます。これは私どもの研究開発陣が、レトルトのアパ社長カレーのおいしさの理由を徹底的に研究して、その結果導き出した「要素」を全て取り入れているからです。スープはビーフをベースにオニオンの甘みとデミグラスソース風のコクを加え、さらに隠し味に粉末リンゴ果汁と赤ワイン風味の粉末酒を入れて、複雑なアパ社長カレーの味を巧みに再現しています。
元谷 私もいただきましたが、深みととろみが出ています。
井田 このとろみが細めの麺に絡み、カレーライスを食べているような感覚が、カレーラーメンで再現できています。手前味噌になりますが、とても上手く商品化できたなと感じています。
元谷 カレーライスの再現というと、アパ社長カレーは金沢カレーをイメージして作ったものなので、キャベツとの相性が抜群です。今回このカップ麺に入れていただいたキャベツがちょうど良いアクセントになって、食感を楽しめるように仕上がっています。これもあって、最後まで食べ飽きることがありません。
井田 キャベツに加え肉具材も入っていて、非常に満足度の高いカップ麺になったと思います。辛さもそんなに強くなく、まろやかな味ですので、お子様たちにも食べていただきたいと思っています。またカップの商品写真の両側に、アパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉とアパホテル&リゾート〈大阪なんば駅前タワー〉があるのもいいですね。
元谷 こっそりアパホテルの宣伝をさせていただきました。いずれのホテルも、新築で作った客室数二千室越えのホテルです。
井田 五十五周年にふさわしいと思います。
元谷 「サッポロ一番 アパ社長カレー ビーフカレー味ヌードル」は、アパグループ五十五周年記念として開発したのですが、サンヨー食品の歴史はずっと古いものだとお聞きしています。
井田 はい、サンヨー食品のルーツは井田家。群馬県玉村町にある井田酒造という三百年以上続く造り酒屋です。私の祖父である井田文夫は、長男ではなかったので家を継がずに、実家と近い商売ということで業務用の酒の卸を行う泉屋酒店を創業して独立しました。祖父が一から事業を立ち上げて大きくした泉屋酒店は、今でも群馬県の中堅卸として営業していて、私が社長を務めています。一九五三年、私の父の井田毅が「新しいことをやりたい」と主張、祖父が社長となって始めたのがサンヨー食品です。創業から今年で七十三年になります。七十三年は長いようですが、井田酒造の三百年から見るとそれほど長くはありません。今後もサンヨー食品をもっともっと大きく、そして継続する事業にしていきたいなと考えています。またアパグループ同様、サンヨー食品も上場していません。私は三代目なのですが、四代目となる息子も三十歳近くになってきまして、バトンタッチをいつにするかを考えているところです。
重視したテレビCMが共感を呼ぶ
元谷 サンヨー食品は創業からすぐ、即席麺の製造・販売を行ったのでしょうか。
井田 最初は乾麺を製造していました。最初に開発した即席麺は、一九六三年七月に発売した「ピヨピヨラーメン」です。お湯をかけて待つタイプのラーメンでしたが、テレビCMを行ったこともあって大ヒットしました。また一九六四年に発売した「長崎タンメン」は、業界初の「塩味」かつ「ご当地ラーメン」ということで、こちらも大反響を巻き起こしました。そして一九六六年に「サッポロ一番(しょうゆ味)」を発売、その後発売した「みそラーメン」「塩らーめん」のシリーズで、全国区での人気即席麺メーカーとして定着していきました。
元谷 サンヨー食品は「不易流行」で、いいものを残しつつ、新しく挑戦を行う姿勢でいるように思えます。最近はサッポロ一番(しょうゆ味)のテレビCMに、ダウンタウンの浜田雅功さんや元プロサッカー選手の小野伸二さんが登場しています。プロモーション戦略は、どのようにお考えですか。
井田 サッポロ一番のプロモーション戦略としては、やはり発売から六十年のロングセラーらしさを前面に出すようにしています。変わらぬおいしさなので、安心して召し上がってくださいというメッセージの訴求です。CMの曲には斉藤和義さんの「ずっと好きだった」を採用、俳優やお笑い、スポーツ選手などの著名人の方々が、この歌を歌いながら、自分のいつもの作り方でサッポロ一番を作って、自分で食べるというスタイルが、共感を得ているのではないでしょうか。今流れています浜田さんと小野さんのCMは、お二人ともサッポロ一番(しょうゆ味)好きだと公言されていますので、特にリアリティのあるものになっていると思います。
元谷 皆さん、おいしそうに召し上がっていて、本当に好きだというのが伝わってきて、私も一緒に食べたくなってきます。
普遍的な経営理念に
元谷 次に環境対策についてお聞きしたいのですが。アパグループのAPAはAlways Pleasant Amenity(いつも気持ちのよい環境を)の略です。アパホテルは、客室から出るCO2を様々な工夫によって削減しようと挑戦しています。サンヨー食品で最近力を入れている環境対策は、どのようなものでしょうか。
井田 サンヨー食品でも環境への配慮を、極めて重要な経営テーマだと考えており、原料調達から製造・販売・輸送まで、バリューチェーン全体で様々な環境対策を実施しています。例えば原料に関しては段ボールの軽量化、包材の薄膜化、森林認証紙やバイオインクの使用など、製造に関しては工場への太陽光発電の導入、照明のLED化、空調機の代替フロン化、ボイラーのLNG化など、さらにパレット配送の導入、他社との共同配送、営業車両のハイブリッド化、資料のペーパーレス化など、できるところからやっていくという姿勢です。持続可能な経営を行うということで、私もトップとしてどんどん力を入れて、環境への配慮を進めていきたいと考えています。
元谷 数多くの食品メーカーがある中、井田さんが考えるサンヨー食品らしさ、他社との違いは何になるのでしょうか。
井田 先ほどお話しましたように、サンヨー食品は創業七十三年ですが、井田家自体は江戸時代中期から三百年以上の歴史を誇っていて、家業として長く事業を続けるということが、一つの大きな目的になっています。長く続ける秘訣は、近江商人の経営哲学である「三方よし」でしょう。この「三方よし」は現在のSDGsにも繋がる普遍的な経営理念だと思います。サンヨー食品にも井田家にも、「三方よし」の精神が、脈々と受け継がれていると考えています。
元谷 売り手はもちろん、買い手にも世間にとっても「良い商い」ということですね。さらに今であれば、環境にも良いも含んで「四方よし」になるのかもしれません。サンヨー食品にはヒット商品が数多くあると思うのですが、社長が一番お好きな商品やお好きな食べ方というのはあるのでしょうか。
井田 実は私、弊社の商品は全部好きなのです。家にも必ずストックがあり、毎週土曜日か日曜日は、必ずサッポロ一番を食べています。全部の商品にそれぞれのおいしさがあると考えているのです。袋麺であればそのままでもいいですし、野菜を入れたり、卵を入れたり、ハムをのせたりしてもおいしい。いろいろな食べ方の提案があると思っています。私は特定のものに絞らず、満遍なく自社製品を食べるようにしています。そうすることで、それぞれのおいしさを再発見したり、こう変えればもっとおいしくなるというヒントが閃いたりするのです。
ヒット商品の必須条件
元谷 有名ラーメン店監修の袋麺やカップ麺など、コラボ商品も多いサンヨー食品ですが、大ヒット商品を生み出す秘訣は何だとお考えでしょうか。
井田 まず新規性があり、そしておいしいことなのですが、それに加えて飽きないことが大切です。どんなにおいしくても一度食べたらもういいやでは駄目で、もう一度食べたくなる商品を作ることが非常に重要です。ご指摘のように弊社ではラーメンの有名店とのコラボ商品も多いのですが、その際でも新規性、おいしさ、飽きないは大きなテーマとなっています。弊社の商品の中で一番歴史が古いのは、発売から六十年のサッポロ一番です。発売当時は他に札幌ラーメンの味を再現した即席麺はなかったですから、まず新しい味を作り上げました。そしておいしくて、毎日食べても飽きなかった。それが今日までのロングセラーになった理由だと思います。
元谷 私はサッポロ一番塩らーめんが好きで、冷蔵庫に残っているキャベツやもやしを炒めてトッピングしています。あと別添の切り胡麻がいい仕事をしていて、香りや味に深みを与えていると思います。このサッポロ一番塩らーめんの切り胡麻が、日本の切り胡麻の中でかなりのシェアを占めていると聞いたのですが、本当でしょうか。
井田 胡麻には丸い胡麻もすり胡麻もあるのですが、切り胡麻は特殊な分野で、確かにここでのサッポロ一番塩らーめんの使用率は非常に高いです。あの切り胡麻が、塩らーめんの独特のおいしさを演出していると思います。
元谷 おっしゃる通りだと思います。次に会社組織の話なのですが、井田さんは社員の皆さんにどのような姿勢を求められているか、教えていただけますでしょうか。
井田 食品会社はお客様の命を預かる商売だと思っています。口にしてお腹に入って消化されるものですから、安全安心で品質の良いものを作らなければならない。その前提に立つと、食品会社に勤務する社員の最も大切な姿勢は、誠実さだと考えています。
元谷 確かにその通りだと思います。井田さん個人のことなのですが、リフレッシュ方法や健康管理方法を教えていただけますか。
井田 元谷さんもよくおわかりだと思うのですが、経営は大変過酷で神経をすり減らす仕事だと思います。このストレスを発散することが重要で、皆さんいろいろなことをされていると思います。私の場合は裏千家の茶道がストレス発散方法です。月に三回、茶道の稽古があり、これが私にとって最高のリフレッシュの場になっています。静かな茶室でゆっくりとお点前をしていると、自然に心が落ち着いてくるのです。他にやっているのは、スポーツでしょうか。弊社は国内に三カ所、海外に三カ所、ゴルフ場を運営していることもあって、春から秋はゴルフをしています。また十二月から二月は、ほぼ毎週スキーに行っています。ゴルフとスキーもストレス発散と健康管理の秘訣ですね。
元谷 茶道にゴルフ、スキーと多才ですね。私も見習いたいと思います。今日はありがとうございました。
井田 ありがとうございました。