GOOD TALK

素材の魅力を巧みに引き出し、商品としての価値を高める努力を惜しまない。Vol.18[2026年11月号]

ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社 代表取締役社長 佐藤 雅志
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アパグループ専務 元谷 拓

二〇一三年に二社が経営統合、来年七十周年を迎える「ポッカレモン」や発売から五十四年の缶コーヒー「ポッカコーヒー」、三十年のスープ商品「じっくりコトコト」など、ロングセラー商品を多数持つポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社。二〇二五年から同社代表取締役社長を務める佐藤雅志氏が今回のゲストです。「じっくりコトコト」のリニューアルなど佐藤氏の商品戦略の真髄に、アパグループの元谷専務が迫ります。
佐藤 雅志氏 Sato Masashi
1967年三重県生まれ。1989年工学院大学工学部を卒業、サッポロビール株式会社に入社。仙台工場長、サッポロホールディングス株式会社取締役などを歴任、2024年にポッカサッポロフード&ビバレッジ取締役常務執行役員を経て、2025年より現職。
「じっくりコトコト」が狙う
生活のクオリティアップ

元谷 本日はありがとうございます。ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社は、創業からまだ十三年の会社だとお聞きしています。

佐藤 ありがとうございます。ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社は、二〇一三年に旧サッポロ飲料株式会社と旧株式会社ポッカコーポレーションが統合されて誕生した会社になります。それまで両社が製造・販売してきた主な商品ブランドを、継続して展開しています。一九五七年発売の「ポッカレモン」をはじめとするレモン関連の商品、缶コーヒーのパイオニア的存在である「ポッカコーヒー」、また一九九六年発売の「じっくりコトコト煮込んだスープ」が今は「じっくりコトコト」という名称となり、これらが主力商品になっています。この「じっくりコトコト」は、今年三十周年を迎えるタイミングで、この春に大きく商品をリニューアルしました。

元谷 「じっくりコトコト」は、発売当初に田原俊彦さんや薬丸裕英さんがCMに出演されていたことで覚えています。リニューアルでどのように変わったのでしょうか。

佐藤 「じっくりコトコト」の箱シリーズとして、「感動コーンポタージュ」「旨深クラムチャウダー風」「濃醇海老のビスク」「甘熟かぼちゃポタージュ」の四種類が三月に新発売になりました。「食べる人のことを想い、手間を惜しまず、時間をかけて丁寧に作った濃厚な味わいの洋風スープ」というのが、この「じっくりコトコト」のコンセプトです。食事として十分なおいしさを提供できるだけでなく、食事や生活のクオリティを上げる存在を目指しています。今回の四品はそれぞれ厳選した素材そのもののおいしさが引き立つように、独自開発をした特製ブイヨンと特製クリーム加工品※で濃厚で奥深い味に仕上げました。例えば「感動コーンポタージュ」であれば、たっぷりと溶け込んだスイートコーンの甘みをじっくり味わうことができると思います。

元谷 お湯を入れるだけで、ここまで奥深い味を出すことができるのですね。

佐藤 お湯を入れた時に溶けやすく、ダマができないようにするために、原料の粉末を固めて小さな粒にします。これは「造粒」という技術なのですが、弊社は長年培った造粒技術によって、素材のおいしさを引き出しながら、溶けやすさやなめらかな口当たりを実現しています。この「感動コーンポタージュ」は新しく開発した特製のコーンパウダーを使用、食べていただくと従来との違いがはっきりとわかると思います。造粒は静岡にあるグループ会社の工場で行い、商品自体の製造は名古屋工場で行っています。

元谷 ここまで本格的な味だと、料理などにも使えそうな気がします。

佐藤 商品のホームページをご覧いただくと、「濃厚コーンパスタ」や「簡単炊き込みコーンピラフ」など、商品を使ったアイデアレシピを見ることができます。

元谷 ぜひトライしてみたいですね。

ホテルで便利なカップタイプは
非常食としても利用可

佐藤 ホテルでお客様が召し上がるのに便利なのは、カップタイプのスープだと思います。二月に発売しました「じっくりコトコト 超盛ベーカリー」シリーズは、パンが主役の「食事スープ」であることを前面に打ち出した商品です。従来から「じっくりコトコト こんがりパン」シリーズというパンが入った商品はあったのですが、もっとパンをいっぱい食べたいというお客様の声があり、それに応えてパンの量を増やしたものです。パンを一部取り出しておいて、お湯を入れてかき混ぜて一分経過した「あと」に、取っておいた「パン」を入れる「あとパン」という食べ方で、食感の違いを楽しむこともできます。この「超盛ベーカリー」シリーズには、「たっぷりパンと濃厚コーンポタージュ」、「バターとチキン香るカレーパン風スープ」、「あめ色玉ねぎオニオングラタン風スープ」の三つの味があります。

元谷 スープはどの季節でも味わうものだと思うのですが、特に冬に売れそうなイメージがありますね。

佐藤 ご指摘の通りです。私たちのスープ商品の課題はまさにそこ。特に近年、夏が長く冬が短くなり、四季ではなく二季とも言われるように、気候が変わってきています。そんな中でどう通年で商品を売っていくかということで、暑い時期に販売しているのが缶入りの「冷製コーンポタージュ」と「冷製じゃがいものスープ」です。暑い時にはこの冷えたおいしいスープを、普通に飲料として飲んでいただきたいという提案です。また、夏でも空調の効いた部屋であれば、夜は少し温かいものを飲んだ方がホッとする…という提案も行っています。背景にあるのは夜、カフェインを含んだ飲み物を避ける方が特に女性に多いと言われていることです。このようなアプローチで、スープを通年楽しむ環境を作っていきたいと考えています。

元谷 賞味期間が長く場所も取らないスープは、非常食にもぴったりだと思うのですが。

佐藤 私も様々な任地で大きな震災に遭遇してきていて、支援物資の中のスープの存在の大きさはしっかりと認識しています。特に現在七種類あります「じっくりコトコト」のカップタイプの商品は、容器を準備しなくて良いという側面が非常食に適しています。このような用途も、もっと打ち出していければと考えています。

耕作放棄地を活用した
レモン栽培を支援

元谷 ポッカサッポロフード&ビバレッジのもう一つの柱は、レモン関連商品だと思います。

佐藤 その代表が、発売から六十九年となるロングセラーにもかかわらず、まだ売上を伸ばしている一〇〇%レモン果汁の「ポッカレモン一〇〇」です。臨床試験によって「ポッカレモン一〇〇」に含まれるクエン酸に、血圧が高めの方の収縮期血圧を下げる機能があることがわかりました。臨床試験では、一日三〇mlの「ポッカレモン一〇〇」を十二週間継続摂取したところ、有意に高めの血圧(収縮期血圧)が下がりました。この試験結果に基づき、機能性表示食品として届出をしています。私のおすすめの摂取方法は炭酸水に加えることです。

元谷 私も血圧は高めですので、ぜひ試してみたいと思います。

佐藤 研究のきっかけは、お客様より「『ポッカレモン一〇〇』を使っていると調子がいい」とのお声からでした。二〇二四年に機能性表示食品としてリニューアル発売をして以降、販売は好調に推移しています。レモンでの新たなドレッシングカテゴリーへの挑戦としての商品「ポッカレモン食彩レモンとオリーブオイル」 「ポッカレモン食彩クリーミーレモネーズ」も発売しています。

元谷 レモンとドレッシングは相性が良さそうですね。

佐藤 また昨年、ポッカサッポロフード&ビバレッジは、社外パートナー様と共に、国産レモン生産振興を目指す農業法人「株式会社LEMONITY(レモニティ)」を設立して、静岡県磐田市でレモンの栽培を始めました。特に近年、農業現場において、耕作放棄地が課題となっています。これまで、ポッカサッポロとしても耕作放棄地を再生しレモン栽培地を広げる支援等を行ってきましたが、この農業法人設立によって、国産レモンの生産振興を加速させるとともに、国産レモンの更なる商品群の拡充と安定供給を実現し、お取引先、更にその先にいらっしゃるお客様のご要望に応えられるように努めていきます。これは国産原料の確保と耕作放棄地の再利用という、経済性と社会性を両立させた事業になると考えています。静岡では煎茶需要の変化などを背景に、レモン栽培への関心が高まっており、お茶農家の方がレモン栽培に取り組まれるケースも見られます。私たちはそうした取り組みの支援も行っています。

レモンの成分の効果を
今後も積極的に発信

元谷 もう一つのレモン商品の柱は、「キレートレモン」だと思います。特に「キレートレモン MUK UMI」が、若い女性を中心に「推し活の必須アイテム」として認知されているようです。先日、イベントを控えた私の娘に、コンビニで購入した「キレートレモン MUKUMI」をあげたら、「まじかー」と言われました。どうも最近の若者の最上級の喜び表現は、「まじかー」のようです。

佐藤 そんなエピソードを聞くと、私も嬉しいですね。「キレートレモンMUKUMI」にはレモン一個分の果汁に加え、機能性関与成分としてレモン由来モノグルコシルヘスペリジンが三〇〇mg入っています。レモンに含まれるポリフェノールの一種であるヘスペリジンを水に溶けやすく加工したものが、レモン由来モノグルコシルヘスペリジンです。このレモン由来モノグルコシルヘスペリジンには、一時的に自覚する顔のむくみ感を軽減する機能があることが報告されており、この商品も機能性表示食品の届け出を行いました。二〇二二年に発売したのですが、発売後、イベントやライブなどに向けた準備として飲んでいるというSNS投稿が話題となり、一気に若年層の方々へ広がったようです。

元谷 そういう経緯があったのですね。「キレートレモン」シリーズのマークは緑の十字がのったレモンのイラストなのですが、この緑の十字はどういう意味なのでしょうか。

佐藤 「キレートレモン」という商品のアイデアのルーツは、イタリアのレモン飲料「リモーネスプレムータ」なのです。このこともあって、イタリアに多い緑色の十字の看板をこの商品のイメージとしました。

元谷 なるほど。また「キレートレモン」は健康に留意する人が飲む飲料というイメージが強いです。これはなぜなのでしょうか。

佐藤 「キレート」はギリシャ語で「カニのはさみ」という意味です。レモンに多く含まれるクエン酸には、カニのはさみのようにカルシウムなどのミネラルを包み込む作用があり、この作用から名前を取って、「キレートレモン」としました。牛乳とレモンの組み合わせについては、弊社のホームページ上で「レモンラッシー」のレシピを紹介するなど、推奨しています。弊社のホームページでは、カルシウム補給を目的とした、牛乳と「ポッカレモン一〇〇」を使った「レモンラッシー」のレシピも公開しています。レモン一個分の果汁(約三〇ml)が詰まった「キレートレモン」は、今年で発売から二十五周年で、今後も伸ばしていきたい商品です。そのためにも、クエン酸などレモンの成分の様々な効果を、これからも訴求していきたいと考えています。

元谷 ポッカサッポロフード&ビバレッジは、その他の製品にも他にはない魅力を感じます。特に私が石川県出身ということもあり、「加賀棒ほうじ茶」がおいしいですね。

佐藤 「加賀棒ほうじ茶」は、茶の茎部分を使った棒茶を、職人が伝統的な焙煎方法で仕上げた、石川県・金沢発祥のお茶で、上質な香りと味わいが特長です。また「北海道コーン茶」という北海道産の契約栽培とうもろこしを使用した(焙煎とうもろこしを使用)商品も、カフェインゼロということもあり人気です。これらに代表されるように、弊社は素材の魅力を巧みに引き出して、さらに魅力的な商品として価値を高めていくことに長けていると自負しています。元々は別だった会社が一つになった弊社ですが、どちらもそもそも新しい商品にチャレンジする気持ちが強く、さらに丁寧なモノづくりを行う精神も共通していました。それが結実したのが、今の商品ラインナップだと考えています。

元谷 今後もポッカサッポロフード&ビバレッジの商品から、目が離せないですね。今日は本当にありがとうございました。

佐藤 ありがとうございました。