日本を語るワインの会200

ワイン200二〇二○年一月十日、代表邸で恒例「日本を語るワインの会」が行われました。実は日本と意外な結びつきがあるアラビア半島の国、オマーンの特命全権大使、モハメッド・アルブサイディ氏とアイシャ・アルバルミ夫人、第二回アパ日本再興大賞優秀賞を杉原誠四郎氏との共著『対談・吉田茂という反省』で受賞した現代史研究家の阿羅健一氏、世界各国の駐日大使と親交を深めている山元学校学長の山元雅信氏をお迎えし、歪められた日本の歴史やオマーンについての話に花が咲きました。
約二七〇年続く王朝を持つ
アラビア半島の国オマーン
 年明けからイランとアメリカを巡る中東の情勢が慌ただしい。アメリカによるイランのスレイマニ司令官殺害と、それに対するイランの弾道ミサイルによる報復で事態が収まったかのように思えたが、ウクライナの民間機をイランが誤射で撃墜したことが判明して大騒ぎになっている。一九八八年のイラン・イラク戦争の最中には、アメリカのミサイル巡洋艦がイランの民間機を撃墜したことがあった。ミサイルを発射されても戦闘機であればチャフと呼ばれる金属片を散布したり、フレアと呼ばれる熱源を打ち出したりでミサイルをかわすことができるが、旅客機では無理だ。紛争が発生しつつあるエリアの旅客機には搭乗しない方が良いということかもしれない。オマーンでは過去五十年間、航空機の墜落のような深刻な事故は起きていない。この年初、アメリカとイランの関係が緊迫した時、アメリカは湾岸六カ国の内五カ国に警告を行ったが、オマーンには行わなかった。その理由は日本とも似ているオマーンの外交ポリシーにある。オマーンはアメリカと友好な関係を結んでいるが、イランとも良好な関係を保っている。世界中に敵がいない国であり、国内にテロリストが存在しないという国でもある。
 アラビア半島の東に位置するオマーンの国土の面積は日本の約八五%とかなり広く、そこに四百六十七万人の人々が住んでいる。海沿いの国であり、海岸線が三千㎞にも及ぶ。首都のマスカットの人口は約百七十万人。公用語はアラビア語だが、イギリスの保護領だった歴史から英語も広く使われている。宗教はイスラム教のイバード派であり、これはスンニ派やシーア派よりも先に興ったものだ。正式にはオマーン・スルタン国であり、元首はスルタン(国王)の君主制の国だ。
 オマーンは古くから海洋王国だった。首都・マスカットの港は二千年以上の歴史があり、交易の要所として発展してきた。十六〜十七世紀にはポルトガルがマスカットを占領、要塞を築いて海上交易を百五十年間支配した。しかし一六五〇年、アラビア人はマスカットを奪還する。現在の王朝、サイード朝は十八世紀半ばに興ったもので、二百七十年以上の歴史がある。サウジアラビアのサウード家の現王朝の歴史が約九十年であることを見ると、このオマーンの王朝の長さはアラブ世界でも特異なものだ。この王朝下でオマーン帝国は領土を拡大、最盛期には北は海峡を挟んだイランやパキスタンの一部、西はアラブ首長国連邦まで、南はイエメンの一部から、東アフリカ(ソマリア、ケニア、タンザニア)の海岸沿いエリアやザンジバル島、マダガスカル島の一部にまで及んだ。当時のザンジバルは奴隷や象牙等の交易の中心地として栄えていた。一八五六年にザンジバルがサイード朝の君主がオマーンとは離れて治世を行うようになる等、次第にオマーンはその領土を失い、数々の内乱で国力は低下、十九世紀末にイギリスの保護領となる。その後も様々な政変があったが、一九七〇年に前国王のカブース・ビン・サイードが即位、積極的な国際社会への復帰を行い、一九七一年に国連に加盟する等オマーンの近代化を行った。二〇一一年「アラブの春」の波はマスカットにも押し寄せ反政府デモが発生したが、カブース国王は次々と新しい施策と閣僚の交代、議会権限の拡大等を行い、デモの沈静化に成功した。しかしそのカブース国王は二〇二〇年一月十日に死去、いとこであるハイサム・ビン・ターリク・アール=サイードが王位を継承した。その直後に中東を歴訪した安倍首相はオマーンも訪れ、ハイサム新国王を弔問している。
現国王の大叔母は
元国王と日本人女性の娘
 オマーンと日本は不思議な縁がある。カブース前国王の祖父であるタイムール・ビン・ファイサル元国王は、一九三二年、四十代で息子に国王を譲って退位、インドやシンガポール等を訪問後、一九三五年に日本を訪れた。神戸のダンスホールで十九歳の大山清子と知り合い、翌年再度訪日して清子と結婚、神戸で暮らし始めた。一九三七年に娘・ブサイナ(日本名 : 節子)が生まれたのだが、すぐに母・清子は結核で亡くなり、三歳のブサイナはタイムールに連れられてオマーンに移住、以後は完全にオマーン人として育てられた。今も王女として八十二歳で健在、オマーンで暮らしている。
 オマーンの主要産業は石油と観光だ。原油確認埋蔵量は五十四億バーレル、天然ガス確認埋蔵量は〇・七兆立方メートルで、両方とも今の生産量でも十数年持つ分の埋蔵量がある。アラビア半島は産油国の多いエリアだが、湾岸六カ国(バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)だけで、世界の原油埋蔵量の三〇%を保有しているという。近年の中東の混乱の原因は、シェールオイル、ガスが採れ、石油輸出国となったアメリカが、中東への関心を失ったからだろう。アメリカのシェールガス輸出において、二〇一六年に拡張したパナマ運河の供用が開始されたことは大きい。これによってメキシコ湾で採掘されたシェールガスを、パナマ運河経由で太平洋側の日本等に輸出することが可能になったからだ。広いアメリカの場合、東海岸から西海岸への物資の運搬が必要となる場合も多いが、やはり陸路よりは船を使った方が圧倒的に安上がりだ。
城塞や乳香を巡る遺跡
世界遺産巡りも楽しめる
 観光地としてのオマーンの魅力は、ユネスコの世界文化遺産に登録されているバハラ城塞のような城塞が、国内に五百もあることだ。このバハラ城塞は十三〜十四世紀に建造されたもので、オアシス都市として繁栄していた。都市全体が約十二㎞の城壁に囲まれている姿が壮観だ。また「乳香の土地」として、オマーン南部のドファール地方の遺跡や乳香の群生地も世界文化遺産に登録されている。乳香とは、乳香樹から分泌される乳白色の樹脂のことで、古くから高価な香料・薬剤として扱われてきた。特にドファール地方のものは品質が高いとされ、数千年に亘り重要な交易品となってきた。世界遺産には交易都市の遺跡も登録されていて、多くの外国人観光客が訪問している。オマーンの気温はマスカットでは夏は五十度を超えるが、南に飛行機で一時間飛べば十八度のところもあれば、車で一時間半走れば十七度になる山地もある。オマーン観光のベストシーズンは、マスカット等北部は一〜二月の冬期、ドファール地方等南部は緑が満ち溢れる夏期となる。この一年だけでオマーンには四十七のホテルがオープンしたが、そのほとんどが五ツ星。今、観光地として注目を集めている。特にインドからの観光客が多く、インドの企業が十億ドル投資して、ホテル等の施設を作る「リトルインディアプロジェクト」も進行中。また、オマーン航空が昨年からロシア便を就航させたため、ロシアからの観光客も増加している。日本からマスカットへの直行便はないが、世界中の様々な都市を経由して行くことが可能。ドバイ経由で、十五時間程度で行くことができる。オマーンは、インドの影響を受けた料理が美味しいと言われる。主に鶏肉、魚、羊肉、米を食材に香辛料やハーブ、マリネを使って作られる。ムシカークと呼ばれる牛串が有名だ。またオマニーコーヒーというカルダモンやサフランといった香料の入ったオマーン独特のコーヒーもある。
根拠が提示できない中国は
南京大虐殺カードを失った
 南京大虐殺という事実ではないことを、中国は日本に押し付けてきている。日本軍が、非戦闘員である女性や子供を三十万人も殺したというのは言いがかりだ。二〇一七年、アパホテルの客室に置かれている代表が執筆した本が南京大虐殺を否定しているとのことで、中国政府から名指しで撤去を求められたことがあったが、代表は日本には言論の自由があることと、反論があるなら根拠と共に示してもらえれば参考にさせていただくと回答。その後中国政府は沈黙を守り、習近平主席は毎年十二月十三日に行われる南京大虐殺の追悼式典に、去年、一昨年と参加しなくなっている。これまで日本を攻撃するネタとしていた南京大虐殺だが、根拠を示すことができない以上、もう中国はこの南京カードが使えなくなったと考えるべきだろう。
 昨年九月に自民党幹事長代行に就任した稲田朋美氏は、十一月には新設の女性政策推進室の初代室長になるなど、その活動を活発化している。二〇一六年に防衛大臣に就任した時には様々な批判を浴び、南スーダンPKOの日報隠蔽問題で辞任をすることになった。稲田氏本人が手記で認めている通り、防衛大臣の任命は突然のことであり、経験も知識も不足していたのは否めない。稲田氏はそもそも、「百人斬り」報道に関する名誉毀損裁判で弁護人を務めたことがきっかけで政界入りした弁護士だ。本人的にも法務大臣であれば…と考えていたかもしれない。しかし防衛大臣時のあれだけのバッシングにも負けずに選挙で勝ち、また今政治の最前線に出ようとしている。
 アパ社長カレーを代表とするアパオリジナル商品が充実してきた。モンドセレクションの銀賞を獲得したアパ社長カレーは、とろりとした濃厚なビーフカレー。五百万食を売り上げ、東京、大阪、広島にある専門店も人気だ。アパホテルに連泊する場合、連泊エコ清掃(簡易清掃)に協力していただいたお客様に進呈しているのが、飲みやすいと好評のアパホテル公式ミネラルウォーター「富士川源流天然水」だ。アパ社長コーヒーは酸味と雑味を抑えた華やかな香りのブレンド。胃に優しい感じで何倍でも飲めると評判だ。