Essay

安倍首相はトランプ大統領に公開限定空爆を進言すべきだVol.304[2018年1月号]

藤 誠志

第一次朝鮮半島核危機の
二の舞いは避けるべきだ

 今年も余すところあとわずかになってきた。今回は七月に発行した八月号から十二月号までの本稿を参照して、今年後半を振り返ってみたいと思う。基本議論の中心に上がるのは、北朝鮮問題だ。十一月四日付の朝日新聞朝刊の社説は、「大統領訪日へ 『日米蜜月』だけでなく」という見出しだった。その中では「何より大事なのは、北朝鮮への軍事力行使は避けるように釘をさすことだ」「武力行使をほのめかすトランプ氏の背中を押してはならない」「圧力はあくまで、対話に導くための手段である」などの言葉が並ぶ。しかし歴史的事実はこの朝日新聞が考える対応にこそ問題があることを物語っている。一九九四年の第一次朝鮮半島核危機では、核施設の精密打撃という軍事力の行使を準備していたアメリカのクリントン大統領に対して、韓国の金泳三大統領が「ソウルが火の海になる」と懸命に反対し、結局軍事攻撃は行われなかった。しかしその十数年後、金泳三が自ら、あの時反対したことは間違いだったと反省の弁を述べるのを私は聞いた。しかも北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルの性能は、一九九四年の段階に比べて格段に向上してしまった。それ故に、今回の核危機では前回の二の舞いとなってはいけないと私は主張してきた。
 八月号のエッセイのタイトルは『世界は昔も今も情報謀略戦を闘っている』だった。「日本は冷戦漁夫の利で高度経済成長を満喫してきたが、冷戦終結によってこの構造は崩れた。冷戦後、各国の諜報機関は生き残りを懸けて産業スパイと化し、彼らの活動によって、日本の海外での事業の多くが失敗に終わり、経済の縮小を余儀なくされるようになり、追い込まれて疲弊して今日に至っている。この状況を打破するため、日本の近現代史の真実を多くの人に伝え、日本の誇りを取り戻さなければならないと考え、二〇〇八年に『報道されない近現代史』を著し、その中でかなり大胆な切り口で真実の歴史を見る眼を読者に提供した」「例えば北朝鮮の金日成・金正日親子の確執だ。折しも大飢饉に見舞われ、国際援助を引き出すために、カーター元大統領が仲介者となった米朝枠組み合意を結び、核兵器開発を凍結する代わりに、提供される核拡散の恐れが少ない軽水炉への転換を図り、毎年重油五十万トンの供給も受けるという条件で、核開発を断念した父金日成を排除して、金正日は合意直後から密かに核兵器開発を継続し、完成間近になった二〇〇三年にはNPT脱退を宣言した。これに危機感を覚えた中国の江沢民は金正日に訪中を命じ、核を断念させようと説得したのだが、金正日が同意しなかった為、訪中の帰途に爆殺することを計画し、二〇〇四年四月、龍川駅の本線沿いの支線の地下深くにかねてから準備をして仕掛けていた、高性能爆薬TNT八百トンを使って一列車全てを破壊する列車大爆発事件を引き起こした可能性が非常に高い」と、今の北朝鮮問題の背景を整理した。

欧米列強に左右されてきた
東アジアの平和

 九月号は『先の大戦は日本を叩く白人国家の謀略だった』というタイトルだった。「白人支配の世界を維持するため日中分断を図った白人国家」という小見出しに続けた文章は以下のものだ。「日中戦争に関しては、歴史を冷静に振り返る必要がある。日本と中国の関係が悪化し出したのは、一九二八年の張作霖爆殺事件からだ。この事件の犯人が関東軍の河本大作大佐というのが歴史学上の通説だが、最近、関東軍の仕業に偽装したソ連の特務機関による犯行だということが明らかになってきた。二〇〇七年にイギリスの公文書館で公開された、イギリス陸軍情報部の極東課が事件直後に本国に宛てて送った報告には、ソ連の犯行だと記載されていたという。日本が自ら犯行を認めたために、イギリス本国は再調査を指示したのだが、その結果は、ソ連製の爆薬が使用されていることを根拠に、同じくソ連の特務機関の仕業だというものだった。一方ロシアの作家、ドミトリー・プロホロフ氏は独自の調査で、張作霖爆殺がソ連の特務機関の仕業であることを突き止め本に書き、この記述が、世界的ベストセラーとなったユン・チアン、ジョン・ハリディ夫妻の共著『マオ 誰も知らなかった毛沢東』にも引用されている。私はロシアのサンクトペテルブルクまでドミトリー・プロホロフ氏を訪ね、その後日本に招いて記者会見も行ったが、日本の大手メディアはこれを完全に無視した。張作霖爆殺の結果、反日に燃える息子の張学良は西安事件(東北軍の張学良が国民党の蒋介石を西安で監禁し、国共内戦の停止を迫り、同意させたクーデター)を起こして、一九三七年の第二次国共合作への流れを作り、対日統一戦線が生まれた。ソ連によって、日中の分断が深められたのだ」「ではなぜソ連は日本と中国との関係を裂いたのか。ジャーナリストの高山正之氏の著書『世界は腹黒い―異見自在』の中には、『日本と中国について古くは十九世紀、松前藩に捕まった(ヴァシーリー・)ゴロブーニンが「両国が手を握れば、百年といわず白人国家の最大の脅威になる」と報告している。後にムッソリーニが同じことをいい、第二次世界大戦前にはハリファクス英外相が「日中の争いは長引いた方がいい。この二国間の仲直りは欧米国家の利益にならない」(C・ソーン「形だけの連合国」)とも語っている』という記述がある。元々二〇世紀の前半まで、世界は白人のものだった。中国の清王朝は実質的には権益を求める白人国家に分断統治されていた」「この分断統治体制下の、一八九四年に起こった朝鮮を巡る戦い、日清戦争の勝利によって得た日本の権益に対し、白人国家のフランス、ドイツ、ロシアは三国干渉を行って遼東半島を清に返還させる一方、ロシアはしたたかにも旅順の租借権を得た。これが遠因となり一九〇四年に日露戦争が勃発、日中両国を疲弊させたかった白人国家にとって日本の勝利は大きな脅威となった。そこで中国と日本を分断して、それぞれの力を削ぐことに、白人国家が注力するようになる」と、先の大戦以前より存在する白人国家のアジア戦略を暴いた。

北朝鮮は中国からの侵略に備えて
核兵器を手放さなかった

 十月号のタイトルは『東アジアの力のバランスに核シェアリング協定を』だった。小見出し「トランプ大統領の過激な発言はロシアゲート疑惑隠しである」に続き、「一昨年の米韓合同軍事演習の際には、短距離弾道ミサイル(スカッドC)を日本海に向けて発射し、昨年の米韓合同軍事演習の時には、北朝鮮は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)『北極星一号』を発射したが、今年は中距離弾道ミサイル『火星一二号』をグアム島周辺三〇〜四〇㎞の公海に落とす計画を完成させ、金正恩に報告し決断を待つと言う。恒例の北朝鮮の抗議の発表へのトランプ大統領の対応はこれまでの大統領にない過剰と言えるものであり、さらにメディアも、あたかも北朝鮮がグアム島を標的に弾道ミサイルを打ち込み、すぐに戦争が起きるかのように大騒ぎをしている。日本の報道もアメリカメディアのコピーであり、テレビでは無知なコメンテーターが馬鹿馬鹿しい議論を繰り広げている。しかし、トランプ大統領は、『グアムで何かやれば世界で見たことのないようなことが北朝鮮で起こる』とか『北朝鮮は炎と怒りに見舞われる』などと言ったりする一方で『北朝鮮との交渉に常に考慮する』とか『悪い解決策』ではなく『平和的な解決策』で『丸く収めることを望む』と硬軟取り混ぜた発言を繰り返している。北朝鮮軍がグアム島沖の公海に長距離弾道ミサイルを打ち込む計画を作って金正恩に報告しただけなのに、一連の発言により大々的に話題を煽るトランプ大統領の意図はロシアゲート疑惑隠しである。トランプ大統領の反応に一番驚いているのは、金正恩だろう」と、今回の朝鮮半島核危機の本質を突いた。
 十一月号では『非核三原則を見直し核シェアリング協定締結を急げ』というタイトルで、「今、世界を揺るがしている北朝鮮の核とミサイルによる挑発だが、その対策を考えるためにも、北朝鮮の核開発の歴史を時系列に沿って振り返っておくことが必要だ。第一次朝鮮半島核危機と呼ばれるのは一九九四年、アメリカのクリントン政権が北朝鮮の核施設に対して精密打撃という軍事力行使を検討したことを指す。その前年の一九九三年三月、北朝鮮は核拡散防止条約(NPT)からの脱退を表明、五月に日本海に向けてノドンミサイルの発射実験を強行した。また一九九四年三月に板門店で行われた南北会談実務者レベル会議の席で、北朝鮮代表の朴英洙は『戦争が勃発すればソウルは火の海となる』と発言。更に同年六月に、北朝鮮は国際原子力機関(IAEA)からの即時脱退、その後の査察の拒否を表明した。この緊張する事態を踏まえてクリントン大統領は核施設精密爆撃を計画したが、ソウルへの反撃を恐れた韓国の金泳三大統領の懸命の反対で、最終的には断念した」「その代わりにクリントン大統領は、一九九四年六月十六日、カーター元大統領を北朝鮮に派遣して、この危機を収めようとした。カーターは金日成と会談、この席で金日成は『我々は核を作る能力がない。核を造る必要もない』と主張した。北朝鮮は大飢饉に襲われており、金日成は農業を立て直し、食料供給を安定化させることを体制維持のための最優先事項だと考えたのだが、息子の金正日は核開発こそが体制維持の唯一の道だと確信していた。この親子の間では、極めて激しい政策対立があったという。そしてカーター会談から半月しかたたない七月八日、ジュネーブで第三回米朝協議が始まるという日に、金日成は心臓発作で死去する。ジャーナリストの萩原遼氏は、金正日が父である金日成を暗殺したと主張する」として、一九九四年の核危機の詳細を描写した。
 『核兵器は自国を護る為の究極の防衛兵器である』というタイトルの十二月号では、小見出し「北朝鮮の核保有容認は東アジアを不安定化させる」に続き、「日本は北朝鮮だけではなく、中国やロシアという核保有国に囲まれている。核兵器は自国を護るための究極の防衛兵器であると同時に、核兵器を持たない国に対する威嚇兵器である。これを考えれば、中国と国境を接する、地政学的に不安定な場所にある北朝鮮が核武装を行う理由も理解できなくはないが、日本の安全保障の観点からは全く容認できない。これを認めることは、将来に亘る脅威もさることながら、戦前戦後の補償として不当な賠償金を請求されることを意味する。すでに日本はこれまで中国からは南京での三十万人虐殺、韓国からは二十万人の慰安婦強制連行と、捏造された歴史によって不当な攻撃がなされている。それに北朝鮮が加われば、東アジア情勢は一段と不安定さを増すのは確実だ」と私の分析を書き綴った。

北朝鮮はいずれ韓国を併合して
核保有の連邦国家となる

 これらのことを総合すると、安倍首相がトランプ大統領に主張すべきは、「北朝鮮を核保有国として決して認めないように」ということだろう。北朝鮮の核兵器は、核を持たない日本への威嚇兵器だ。このままでは、いずれ北朝鮮は韓国と連邦国家を築く。そうなれば、日本の脇腹を突くような位置にある朝鮮半島に、明らかに日本に敵意を抱く約八千万人の人口を擁する核保有国家が出現することになる。この朝鮮連邦国家は、韓国から引き継いだ捏造された従軍慰安婦や徴用工の強制連行批判を武器に、日本に謝罪と賠償請求をすることに加えて、北朝鮮から引き継いだ戦前戦後の賠償金として、数兆円を日本に請求してくる恐れがある。実際には、日本は、併合後の朝鮮半島に多額の資金をつぎ込み、当時東洋一と言われた水豊ダムを建設したり、鉄道や道路、上下水道、五二〇〇校の小学校に、四七〇校の中学校の他、師範学校は京城帝国大学を含め、十五校設立した。帝国大学としては 六番目で大阪帝国大学よりも 七年早いだけでなく、その予算は東京帝国大学よりも多かった。その他専門学校も約千校開設し、整備を行ってきた。それが今の朝鮮半島の基盤となっており、終戦により残置した莫大な日本の資産を考えれば、賠償を行う必要など全くない。また当時朴正煕大統領と日韓基本条約締結時に、莫大な賠償金を支払い、それが「漢江の奇跡」と呼ばれる大経済発展となったのである。その後も日本の経済援助や技術援助によって韓国の経済が飛躍的に発展したことを忘れてはならない。だが朝鮮連邦国家はそのような歴史を無視し、核の威力を背景に日本に次々と要求を突き付けてくるのではないだろうか。これはなんとしても避けなければならない。
 圧力や話し合いの背景には軍事力が必要であり、話し合いだけで一旦保有した核兵器を手放す国はない。私は朝鮮半島核危機の日本にとっての最善の解決策は、常々主張しているようにアメリカが公開限定空爆を行うことだと思う。北朝鮮は不都合な政権ではあるが、ロシアと中国とアメリカとの力の均衡のために必要な緩衝国であるので、現行の体制を保障し金正恩を排除することなく政策の変更をさせれば良いので、事前に攻撃日時を宣言して民間人などが避難する時間を確保した上で、核兵器や弾道弾ミサイル関連施設のみを巡航ミサイルや爆撃機で徹底的に破壊するべきだ。安倍首相がトランプ大統領に言うべきは、朝日新聞の社説とは正反対のことなのだ。そうしなければ、世界で唯一の被爆国である日本は、三発目の核攻撃を受ける脅威を未来永劫感じ続けなければならない。もし破壊が叶わないのであれば、日本も核武装をする必要がある。最も現実的な核武装方法は、ヨーロッパではドイツやイタリアといった先の大戦の敗戦国も締結している「核シェアリング協定」を、日本もアメリカと結ぶことだろう。そのためには非核三原則の廃止はもちろん、憲法九条の二項を撤廃して、日本が独立自衛の国になることが求められる。今こそ、将来に亘る日本の安全のために何をするべきか、国民一人ひとりが真剣に考えるべき時だろう。
 アメリカ大統領トランプが、自国第一主義を掲げ、自らの再選戦略のためだけの政策に狂奔していれば、いずれ中国が朝鮮連邦国家を尖兵に反日日本人を抱える日本やアジアを飲み込み、かつて世界は「白人の世界」であったが、今度は、圧倒的な人口を擁する中国を中心とする「有色人種の世界」となるだろう。世界の平和と繁栄のためにもアメリカは中国や核保有の朝鮮連邦国家と力のバランスを取るために日本の核武装化を承認するか少なくとも核シェアリング協定を締結すべきだ。

2017年11月13日(月)10時00分校了