日本を語るワインの会154

ワイン153二〇一六年三月二日、恒例「日本を語るワインの会」が代表自邸にて開催されました。二〇一二年に代表が国賓として訪問したバーレーン王国大使館の特命全権大使、ハリール・ビン・イブラヒーム・ハッサン氏、多くの国民との交流を通じて党の支持を広げる役目を持つ自民党組織運動本部長も務める衆議院議員の山口泰明氏と令夫人の律子氏、沖縄メディアの問題をはっきりと主張している自由民主党厚生労働・内閣・国防副部長で衆議院議員の長尾敬氏、日本とインドのさらなる経済関係の深化を進めるインド大使館公使(経済)のアルヴィンド・シン氏をお迎えし、今、世界中で話題になっているアメリカ大統領選のことを中心に、語り合いました。
トランプ大統領の誕生は日本が独立するチャンスだ
 アメリカ大統領選挙予備選でのドナルド・トランプの勢いが止まらない。この様子では共和党の大統領候補となるのは確実で、実際に大統領になるかもしれない。勢いというのは、そういうものだ。彼は日本が攻撃された場合はアメリカが守るが、アメリカが攻撃された場合は日本は守らなくてもよいという日米安保は不公平だと主張している。大統領になったら、日本に応分の負担を求めてくるだろう。日本にとっては、独立自衛の国になるチャンスではないか。民主党のヒラリー・クリントンが大統領になった場合には、根っから親中派の彼女は日本の独立など認めないだろう。またトランプはバカではなく、暴言は計算されたものだ。三回の結婚と四回の倒産を経験、テレビタレントとしても人気のトランプは、実は大統領選挙に出馬するのが三回目。選挙戦について、酸いも甘いも噛み分けることができる人物だ。対外的に弱々しい印象を与えたオバマ大統領の後には、国民は強い大統領を求めている。そのイメージに合わせて、メキシコからの不法入国を壁を作って阻むだの、イスラム教徒を入国させないなどという強硬な主張を繰り返している。日本と中国をごっちゃにして、アメリカ人の職を奪っていると主張するのもその一環だ。アメリカ国民のマジョリティを占める貧しい白人層が、そんな彼に拍手喝采を送っている。同じく共和党候補のマルコ・ルビオは一番日本に理解のある候補だが優等生的で、弁論大会には勝てるだろうが、ガキ大将の罵声合戦には勝てないタイプだ。今回ルビオは、大統領候補にはなれないだろう。中国はトランプ大統領の誕生を一番警戒している。しかしトランプはプラグマティストだ。共和党の大統領候補になったら一気に言うことを変え、もっと実現可能な主張をしてくるだろう。
 トランプは元々大金持ちの息子だ。アトランティックシティのカジノの破綻など、事業において、何度も失敗を経験している。しかしアメリカは敗者復活戦を許す世界だ。トランプは自分の企業を上場させているし、有名なニューヨークのトランプタワーも上層階は分譲マンションとなっていて、彼の持ち物ではない。メディア的には大金持ちとされているトランプだが、アメリカには彼以上の金持ちもたくさんいる。昔から自分の名前の宣伝は巧みで、例えばリムジンの後ろにトランプマークをつけて、ニューヨーク中を走り回っていたこともある。自分のビジネスの成功談を書いた本も出版している。

衆参同時期選挙で自民党は憲法改正を目指せ
 菅義偉官房長官は非常に頭の良い人で、余計な発言をせず、やっかまれないように立ち回るのも上手い。日本の官僚はいい意味で菅官房長官を一番恐れている。二回目の安倍政権は、人事配置が非常に巧みだ。「お友達内閣」と呼ばれた最初の政権時の反省を踏まえ、安倍首相は谷垣禎一幹事長など主張が合わなさそうな人も要職に配している。政治家は議席を維持して初めて政治家たりえる。今年は衆参「同時期」選挙になるだろう。自民党は公明党の支持を失いたくないために、同日選挙は行わない。同時期選挙になれば、衆議院議員も自分の選挙のように参院選を応援するだろう。七月に参院選、八月に衆院選となるのではないだろうか。安倍首相は最近、憲法改正に意欲的なことを表明している。今年の衆参同時期選挙で勝利して三分の二の議員を得、同意を得られそうな部分の憲法改正の発議を行い、国民投票で過半数を得て第一回目の憲法改正をするのでは。
 トランプが大統領になった場合、激しく対立する相手は中国になり、その際に日本を重要なパートナーと位置づけるだろう。現在の日米安保は日本を真っ当な国にすることを阻止している。トランプは不公平だと言うが、では誰がそれを決めたのか。アメリカではないか。そこまで言うならトランプが変えるべきだ。日米安保を相互的なものに変えたいと安倍首相が提言すれば、トランプはOKを出すのではないか。そうなれば日本はアメリカとの植民地と宗主国のような関係を脱却して、対等な独立国家になることができる。内向きなオバマ大統領の「世界の警察官」放棄発言で、ロシアにクリミア半島を占拠され、ウクライナで内戦が起き、シリアやイラクでISが台頭するなど世界は大きく混乱した。トランプが大統領選に勝てば、世界のルールがまた変わるだろう。
 原油安の進行が止まらない。かつては供給量の調整で価格の高止まりを演出していたOPEC(石油輸出国機構)は、価格調整力を失っている。そうなった理由は、アメリカのシェールオイルやロシアからなど石油の供給源が増えてきたからだ。OPECを牛耳るサウジアラビアは石油シェアを失いたくないという理由で減産を行わない。もう一つの大国であるイランも、経済制裁が解けたばかりで、石油生産を拡大することにだけ関心がある。サウジアラビアの石油採掘コストは低く、一バレルあたり四~五ドルだ。シェールオイルの場合、これが五十~六十ドルになる。石油を減産しないという「チキンレース」はサウジアラビアの方が有利だ。このチキンレースで被害を被っているのはアメリカだけではなく、最もダメージを受けているのはロシアだ。そこでロシアはシリアでの停戦を主導、アラブにおける影響力を増やしてサウジアラビアに対抗しようとしている。

ランドマーク的なホテルを首相官邸前に計画中

 アパホテルは今絶好調だ。利益率三〇%以上と非常に高い水準を維持している。ライバルの某ホテルチェーンの四%、日本を代表する某シティホテルの五%と比べると、その凄さがわかるだろう。インバウンドの増加も、この好業績に貢献している。二〇一六年もインバウンドは引き続き増え、訪日外国人旅行者数は年間二千五百万人に達するのではないだろうか。アパホテルのもう一つの強さの源泉は、カード会員が約一千五十万人にも達していることだ。会員は五万円アパホテルを利用すると、五千円のキャッシュバックを受けることができる。会社が払った宿泊費用がたまれば社員に現金が入るのだ。この一〇%の現金還元が人気の秘密だ。早くからネット予約に注力してきたのも功を奏し、営業せずともネットから予約が入る流れができている。アゴダやエクスペディアBooking.comのような海外のホテル予約サイトでも、日本ではアパホテルが人気ナンバーワンだ。先日、首相官邸の前にあり、竹下登や小渕恵三らが事務所を構えていた永田町TBRビルの跡地をアパグループで購入、ここに十七階で五百室規模のアパホテルを建設する予定だ。アパのフラッグシップとして、ランドマーク的なホテルになるだろう。
 最近アパホテルの宿泊料金が話題になるが、支配人に決定権がある。上限は社内ルールで決められているが、下限はない。これは航空機の搭乗券の販売などで使われてきた、状況に応じて供給量と価格をコントロールする「イールドマネジメント」という手法をアパホテルが導入しているからだ。自動的に宿泊料金の目安を出してくれるソフトウェアも導入している。これら最先端のマネジメント手法を駆使しているため、例えばアパホテル〈新宿御苑前〉のように、オープンしてから二年近く、稼働率一〇〇%を維持しているホテルもある。日本全体の年間宿泊数は約五億泊だが、アパホテルが提供しているのは一千数百万泊でまだシェアは二%程度だ。まだまだ伸びしろがあると言えるだろう。今後は日本最大となる二千四百室を擁するアパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉など大型ホテルのオープンが目白押しだ。アパホテル&リゾート〈東京ベイ幕張〉も今年イーストウイングが誕生し、二〇〇一室に増室になる。

様々な形でネットワーク全国どこでもアパホテルへ
 アパグループはいきなりホテル事業を始めたわけではない。注文住宅から事業をスタート、マンション事業を成功させ、基礎を築いた上でホテル事業に乗り出したのだ。ホテルには初期赤字が大きい。完成して販売すれば一気に利益が出るマンション事業と損益通算することで、税金の圧縮を図ったのだ。今やホテル事業は、売上も人員もマンション事業の十倍の規模に成長した。マンションは代官山など一等地の億ションにシフト。ホテルは新都市型ホテルとして、世界戦略もスタートしている。そもそもホテル事業を考える時、本当に求められているホテルは何かを検討、週末に客が入り平日はガラガラの観光客主体のホテルでは、ペイしにくいと考えた。そこでターゲットをビジネスマンにして、平日に強いホテルのビジネスモデルの構築を行ったのだ。キャッシュバックシステムで会員を増やしていったアパホテルだが、会員の泊まりたい場所にアパホテルが常にある状態にするため、都心は自ら建設して保有、地方は地場のホテルを買収してリブランドしたり、フランチャイジーホテルを増やし、さらにポイントが貯まるパートナーホテルの契約を拡大したりと、何段階もの構えでホテル網を充実させてきた。これも強みだ。
 代表は事業に関して、売上利益の最大化を求めていない。顧客の利便性を追求していった結果として、ホテル業界としては他に類を見ない利益と利益率を実現しているだけだ。さらに大切なことは、このように事業を成功させている事業家が、日本を真っ当な国にするための言論活動を行っているということだ。これに意義がある。日本の上場企業は約三千六百社あり、連結経常利益規模で比較すると、非上場のアパグループは上場企業の三百番目ぐらいに位置する。しかし上場企業には株主が多数存在するが、アパグループは代表一族が全株オーナーだ。かつて資産はアパグループの年間利益の二〇倍といっていたが、最近は二五倍になっている。四十四年間一度の赤字も出していないことで、豊富な資産がある。日本で一番ホテルを所有しているのはアパホテルだと思う。