二〇一三年十二月四日、恒例「日本を語るワインの会」が代表自邸にて開催されました。紀元前千年からの古い歴史を持つアルバニア共和国大使のブヤール・ディダ氏と日本語・アルバニア語の辞書を出版した令夫人のレコ・ディダ氏、バルト三国の一つであるリトアニア共和国大使のエギディユス・メイルーナス氏と令夫人のグリナ・メイルニエネ氏、第六回「真の近現代史観」懸賞論文の最優秀藤誠志賞を獲得した衆議院議員の松原仁氏、百四十年近くの歴史を持つ平安女学院の理事長・大学学長の山岡景一郎氏、平安女学院大学短期大学部保育科学科長・教授の岩渕善美氏をお迎えし、日本と世界との関係について、様々な角度から語り合いました。

 

全世界に同胞を持つ 歴史ある国・アルバニア

アルバニア大使夫人のレコ・ディダ氏は、二〇〇〇年から十二年がかりで日本語‐アルバニア語辞書を編纂、二〇一二年出版した。レコ氏が最初に日本に来たのは一九九五年。ご主人のブヤール・ディダ氏が東北大学に留学する時に、同行して仙台に来たのが最初だった。ご夫婦は仙台に三年半滞在したが、その間レコ氏は一日八~十時間の日本語の集中講座を受けて、日本語が急速に上達した。日本に今いるアルバニア人は約五十人。レコ氏はこれをもっと増やしたいと考えている。アルバニアでもアニメが放映されていて、日本語を学んで日本に来たいという人が多い。奨学金制度を充実させて、もっと多くの学生が来日できるようにすることが、レコ氏の夢だ。
アルバニア共和国の人口は約三百万人だが、アルバニア人は世界各国に合計で八百万人いる。アルバニア以外に多いのは、トルコの約百三十万人や、五年前にセルビアからの独立を宣言したコソボの約百六十万人だ。コソボは人口の九割以上がアルバニア人ということになる。マケドニアにもモンテネグロにもアルバニア人がいる。長い歴史の中で、中世から四百年間オスマントルコの支配下にあったが、一九一二年独立。二〇一二年には独立百周年として、様々な式典が行なわれた。独立後も公国時代、王国時代と不安定な時期が多く、第二次世界大戦後は社会主義国となる。しかし一九六一年の中ソ対立時に中国側に立ち、反ソ連のスタンスをとるようになり、一九六九年ワルシャワ条約機構を脱退。ソ連を仮想敵国として、国民皆兵の軍事政策をとった。国のあちらこちらにコンクリート製のトーチカが作られ、国民全員が軍事訓練を受けた。ディダ大使も化学兵器担当の士官だったという。ソ連崩壊の後東欧の民主化の流れを受け、一九九二年に総選挙による民主政権が成立した。
国の安定と共に、アルバニアは観光にも力を入れようとしている。国土の大半に手つかずの自然があり、数千年前の遺跡もあり、アドリア海にも面していて、これからの開発が期待されている。日本からは、首都ティラナまで飛行機で二時間のイスタンブールトを経由するのが一番便が多くて便利だ。ローマからだと四十五分、ミラノからだと一時間半になる。しては保守というより中道で、強いリーダーシップを発揮するというよりは、調整型の政治家だ。しかしアフリカとの関係を築いたという功績は、非常に大きい。
 

充実した観光資源で 日本でも人気のリトアニア

バルト三国の一つとして知られるリトアニアは、バルト海に面し、北はラトビア、東にベラルーシ、南にポーランド、南西はロシアと接している国だ。一二三六年に建国されたリトアニア大公国は領土を拡大し、隣のポーランドと密接な関係を維持することで、全盛期にはヨーロッパの非常に広い地域を支配していた。しかしその後政治の混乱で荒廃し、分割され、大半がロシア領となってしまった。一九一八年、一旦はリトアニア共和国として独立するが、第二次世界大戦中に再びソ連に併合される。ソ連崩壊に伴って一九九一年に再び独立、西側諸国との結びつきを深めて自由主義経済に移行、NATOやEUへの加盟も果たしている。人口は約三百万人。旧ソ連の共和国の中でも技術力・工業力が高く、石油製品、食品、精密機械類などで高品質の商品を作り出して輸出している。リネンでも有名だ。  三千もの湖や人の手が加えられていない森など、自然が豊かなのがリトアニアの魅力だ。近年ファームインなどの施設も整備されてきていて、釣りやカヌーなどで自然をたっぷりと楽しむことができる。世界遺産が四つあるのもリトアニアの自慢だ。首都ヴィリニュスの旧市街もそのひとつ。ゴシック様式やルネッサンス様式、バロック様式など、様々な形の建築物が美しく立ち並んでいる。全長が九十八キロにも及ぶクルシュー砂州は、自然の奇跡とも呼ばれるエリア。砂州にはニダなどリゾートが点在している。世界遺産以外にも、十四~十六世紀の全盛期にリトアニアの首都だったトラカイは、湖の中に城が浮かぶ姿が他にはない美しさを見せる街。コンサートなど様々なイベントや、ダイビングなどのアクティビティを楽しむことができる。その文化の素晴らしさから、これから日本での人気の急上昇が期待される国だ。
リトアニアと日本の関係で有名なのが、第二次世界大戦中、リトアニアのカナウス領事館に勤務していた杉原千畝だ。彼は、ドイツ占領下のポーランドからリトアニアに逃亡してきたユダヤ人に対し、大量のビザを発給して六千人もの命を救ったことで、日本のシンドラーとも呼ばれている。  平安女学院はアングリカン・チャーチの学校だ。アングリカン・チャーチとは、イングランド国教会を母体として世界各地に広がった教会の総称で、日本では聖公会と呼ばれている。アングリカン・チャーチの最高位はイングランド国教会のカンタベリー大主教で、分類的にはプロテスタントになる。学校としては平安女学院の他に、立教大学や香蘭女学校、病院では聖路加国際病院などが、このアングリカン・チャーチの施設だ。

自民党を補完する 保守勢力が求められている

代表は十一年ぶりに台湾の李登輝元総統と対談をしてきた。李氏はもう九十一歳だが声も大きく非常に元気。自宅の玄関でずっと立ったまま代表の到着を待ち、その後二時間半に亘って話をし続けて、代表と別れた後は会合に出て演説を行っていた。政治・経済の話だけではなく、人間とは何かまでを追求、哲人政治家という言葉が相応しい人物で、オーラが凄い。十一年前に対談してからも代表は氏と何度も会い、月刊Apple Townも毎月送っている。氏は代表のエッセイの大ファンだ。今回会った途端すぐに、氏は「アパグループは大きくなった」と事業の拡大を我が事のように喜んでくれた。また日本の事を常に心配し、「日本はアジアの太陽」と公言、東アジアのリーダーとして活躍することを期待しているといつも言ってくれる。日本人としては、涙が出るほどありがたい言葉だろう。  李登輝氏曰く、台湾には国民党にも民進党にもリーダーがいない。二〇一六年の次回の総統選挙までに新しいリーダーを立てたいと考えているとのこと。日本も安倍首相だけの一枚看板では不安なので、後継者が必要だ。勝兵塾で後継者を育成して首相を輩出することが、代表の大きな目標だ。李登輝氏は代表に「自民党支持か?」と聞いたが、代表は「安倍首相支持だが自民党支持ではない」と答えた。みんなの党から江田前幹事長が離党して、また政界再編の匂いが漂っている。しかし保守合同はこのままでは実現しないだろう。民主党は依然として綱領のない選挙当選互助会だし、日本維新の会は東京と大阪で股裂き状態、自民党にもしっかりと左翼がいる状態で、どの党もおかしい。何より大切なのは東京裁判史観からの脱却だ。刷り込まれている間違った歴史観を正すだけで日本人は保守に共感し、国を誇ることができるようになる。これが進んで国会の三分の二の議席を改憲勢力が占めるようになれば、日本も生まれ変わることができる。自民党と連携する、自民党よりも保守的な勢力の台頭が望まれている。
 

周辺国の脅威に対抗可能な 独立自衛の日本になる

北朝鮮の張成沢氏が粛清された。金正日の死から二年、その棺を担いでいた軍幹部は、全員すでに失脚して表舞台から去っている。金正恩氏による権力基盤の確立は着々と進められてきた。こうなると、何をするかわからない北朝鮮に対する脅威が高まる。また尖閣諸島問題で対立し、防空識別圏を設定してきた中国との緊張感も高まるばかりだ。しかし今の憲法で手足を縛られた状態の日本は、効果的な対応はできない。例えば相手国の一都市だけを徹底的に破壊できるような攻撃力を保有すれば、それが抑止力となる。これは核兵器ではなく通常兵器での話だ。中国に対しては、まだ日本の方が制海権も制空権も握っている。陸軍だけは進化していたが、海軍、空軍ではまだまだ劣っていた中国は、ようやくスクランブル発進が可能な能力がついたので、防空識別圏を設定してきたというのが現実だ。しかし今後はどんどん力をつけてくるだろう。敵基地攻撃能力の保有をアメリカと協議するなど、安倍首相は着々と中国や北朝鮮の脅威への対抗策を打っている。
代表が民間外交として多くの駐日大使と交流することが、日本が周辺国と不幸な事態が起こることを防いでいる。しかし日本の悪口を言うのは世界でも中国と韓国だけだ。周辺の脅威が高まる日本に対してロシアのプーチン大統領は、北方領土問題を二島返還でまとめようとしている。これまで四島一括返還を主張してきたのは、ロシアと日本の接近を嫌うアメリカの差金だ。北方領土も竹島も、日本が周辺国と必要以上に接近しないように、わざとアメリカが残していった火種なのだ。日本はそろそろ衰退するアメリカの支配から脱却しなければならない。まず軍事的な行動が取れるように法体系を整備すること。そして米軍からの自衛隊の独立だ。現在はGPSもコンピューターシステムもアメリカ頼りであり、一緒に戦わないと自衛隊は能力が大幅に落ちてしまう。独自のシステムを早急に導入していく必要があるだろう。
大陸上で膨張することが限界になった中国は、海にその覇権を広げようとしている。尖閣諸島の領有権の主張は、資源問題もあるが、ここが太平洋への入り口となっているからだ。去年就航させた中国海軍の空母「遼寧」は、飛行機を発進させるだけの速力も出せない虚仮威しの船だ。しかしこれをモデルにどんどん有効な空母の開発を行ってくるだろう。日本が今年就航させたヘリ空母「いずも」はF35の垂直離着陸バージョンを導入すれば、立派に空母として運用できる。中国に対抗できるだけの軍事力を、日本は常に保有していくべきだ。