二〇一四年十月八日、恒例「日本を語るワインの会」が代表自邸にて開催されました。ジェトロで長年世界の経済動向を研究してきた関西学院大学国際学部教授の鷲尾友春氏、誇りある国づくりを目指す日本会議のブラジル支部であるブラジル日本会議理事長の徳力啓三氏をお迎えし、中国やロシア、そしてアメリカと日本は今後どのように対していけばいいのか、白熱した議論が交わされました。


 

アメリカ大統領が弱い今が日本にとってチャンス
「戦後レジームからの脱却」をスローガンにした第一次安倍政権は、ストレートに日本を変えようとして失敗した。その反省から、第二次政権での安倍首相は迂回戦略をとり、慎重に物事を進めている。第一次政権では最後は体調不良で辞任せざるを得なかった安倍首相だが、今は非常に体調が良さそうだ。時間を掛けて戦略的に大きな仕事を成し遂げようとしている。日本の世論はゆっくりとしか動かない。日本を変えるためには、安倍政権は長期政権にならなければならない。そもそも一年ごとに些細な事で追求されて首相が代わるというのは、非常にバカバカしいことだ。
鷲尾友春氏が関西学院大学で教えているのは、国際政治経済論だ。世界中を駆け巡る様々なニュースをいろいろな角度から検証してその構図を捉え、自らの立ち位置を明確にした上で、最大の利益を得ることができるシナリオを構築することができる力を、学生達につけさせようとしている。そんな構想力が、これからの日本には大いに必要になるだろう。
最近の国際情勢の混乱はアメリカのオバマ大統領に原因がある。ウクライナに関しても、アメリカは最初にロシアをしっかりと牽制するべきだったのに、そうしなかったためにクリミア半島はロシア支配下となってしまった。しかしオバマ政権が弱いということは、日本にとってはチャンスだ。アメリカ大統領が強力な場合には日本は影響力を発揮できないが、逆の場合は違う。このチャンスをどう活かすかが課題だが、明確な世界観のある安倍首相ならできるはずだ。就任からもうすぐ丸二年だが、その間に歴代首相として最も多く諸外国を歴訪し、中国包囲網を築き上げてきた。膨張する中国と撤退するアメリカの狭間で、戦争の要因となる力の空白域を作らず、バランス・オブ・パワーを保ち続けることが東アジアの平和には不可欠だ。
迂回戦略をとりながらも軍事力の増強を図っている日本だが、その質を変えて、防御兵器だけではなく抑止力を高める攻撃兵器の保有も始めるべきだ。これができれば、GDPの一%という予算枠内で十分力の空白域を埋めることができる。軍事費算出のベースとなる日本のGDPがこの二十年間伸びなかったというのも問題だ。かつてGDPが世界第二位だった時には、中国も韓国も日本に変な文句は言わなかった。三位に転落したタイミングで、いろいろと難癖をつけはじめたのだ。世の中は力の論理で動いている。まず日本は経済力を高め、それに見合った軍事力を持たなければならない。
ポストオバマの外交政策はいずれにせよ強硬路線だ
日本が最も優先的に実行しなければならない国家戦略は、子供の数を増やすことだ。人口減少を防ぐために移民をという人もいるが、移民政策はどの国も失敗している。子供を増やすためには大家族制の復活が一番だ。税制によって二世帯、三世帯同居できる大規模住宅の建設へと誘導するのだ。大家族になれば、個家族化して、孤独死することもない。家族の相互扶助によって、社会負担を軽減することができる。日本の高齢者はお金を持っている。大きな家を作ることを推奨すれば、個人金融資産一千四百兆円が動き出す。そしてさらに、子供も産み育てやすくなる。大家族制度復活のためには、家督相続も復活させるべきだ。長子が全てを相続する代わりに、親の面倒を見るのだ。もう一つの子供増加策は、フランスやスウェーデン、イスラエルが行っているように、子供に関する費用は全て無料にすることだ。これは社会が子供を育てるという考え方に基づく。
アメリカ大統領は一期目が強い場合、二期目が弱くなる。これは日本にとってチャンスだ。オバマ大統領の後二年の任期の間に、安倍首相は子供を増やす計画を核とした、日本の国家戦略を練り直すべきだ。若手官僚などで優秀な人をフルに活用すべきである。安倍首相の最終目的は憲法改正であり、そのためには二年後の国政選挙には何が何でも、勝たなければならない。そこで国会議員の三分の二を押さえたとしても、憲法改正に必要な国民投票の過半数は非常に難しい。
次の大統領選の候補者では、民主党のヒラリー・クリントン氏ばかりが目立つ。一方共和党の候補ではこれといって光る人がいない。日本にとっては民主党より共和党の大統領の方がいいという人は多い。しかしオバマ後のアメリカの外交政策は、共和党だろうが民主党だろうが変わらない。オバマの弱腰外交の後には、誰が大統領になろうが強硬路線を取らざるを得ないからだ。その強硬路線というのは、あくまでも中国に対してのものであって、日本に対してではない。アメリカにとって日本は重要なパートナーであり、日米同盟の重要性は変わらない。アメリカのスタンフォード大学フーヴァー研究所は共和党寄りだと言われるが、民主党の左派でも耳を傾ける提言をする人もいる。オバマ大統領の外交姿勢はあまりにも弱く、もっと強くなければ駄目だという意見で、民主党も共和党もコンセンサスができていると思う。
アメリカは日本が真の独立国家であることは求めないが、強力な同盟者ではあって欲しい
アメリカの外交政策は社会のムードを繁栄している。今のアメリカのムードは中国に対して強硬路線をとることだ。アメリカは西欧のジャーナリストを惨殺したイスラム国やシリアなど中東に厳しく対応していると思われがちだが、本当に厳しいスタンスをとっているのは対中国だ。アメリカは弱まったとはいえ、その軍事費は世界のそれの約半分を占める。
アメリカは朝、中国と談笑しながら、昼には軍事的に攻撃できる唯一の国だ。日本はそんなアメリカと良い関係を築かなければならないが、隷属してはいけない。しかし中国は日本を属国にしたいと考えているし、中曽根康弘氏や小沢一郎氏など日本の政治家の一部も、それに同調した動きをしている。小沢氏が多くの民主党の国会議員を連れて「中国詣で」をしたのは記憶に新しいし、中曽根氏は中国を慮って靖国神社参拝を断念した。中曽根氏は保守のように装っているが中身は中国派だ。
アメリカは日本が真の独立国家であることは求めないが、強力な同盟者ではあって欲しい。日本の保守は日本の真の独立を願うという点では異なるが、アメリカとの対等な同盟は望んでいる。尖閣問題によって日本が中国に強い姿勢で臨んでいることは、アメリカも歓迎している。さらに膨張する中国に対抗してこの地域のバランス・オブ・パワーを維持するために、アメリカは日本の憲法改正やニュークリア・シェアリングを認めるべきだ。
アメリカはもはや韓国を同盟国とは思っていない可能性が高い。ベトナムやフィリピン、インドネシア、マレーシアはアメリカ側だが、韓国はもう中国側の国という認識を持つ人も多い。韓国の政治的・軍事的エリート層の意識は極めて反米的と言える。だから今、中国に対して朝貢外交を始めている。韓国の慰安婦像建設に対抗して日本が、今の朴槿恵大統領の父親である朴正煕元大統領を称える銅像を東京に建設するのも一策だ。朴正煕は日本の帝国陸軍士官学校を卒業した忠実な日本軍人だった。日本を愛し、日本に忠実だった朴正煕を記念して、日本軍の軍服姿の彼の銅像を、韓国大使館の前に建設するのは面白い。
日本とロシアとが接近することにはアメリカは警戒している
安倍首相はプーチン大統領との個人的関係もあって、ウクライナ問題で世界から孤立しているかのように見えるロシアとの関係を、さらに伸展させようとしている。核戦力で考えれば、ロシアは中国より遥かに多くのものを保有している。強いロシアとの絆は、日本にとっては強力な対中国カードになる。アジアにおいてロシアはアメリカの脅威にはならないが、日本とロシアとが接近することにはアメリカは警戒している。
五月にイスラエルのネタニヤフ首相が来日したが、その際に両国にもっとロシアに制裁を行えというアメリカからの圧力があったという説もある。しかし安倍首相もネタニヤフ首相もその圧力を撥ね付けた。今日本はアメリカの属国だが、今後は中国の属国になってしまうかもしれない。そうならないために、日本派の政治家を増やし、安倍政権をサポートして長期政権にするべきだ。その間に憲法改正をし、国産兵器の輸出も可能にして兵器の国産率を高め、軍の自立を行う。そうして日本を真の独立国家に変えていくことが、日本の安全保障上の急務だ。
代表のエッセイファンでもあるブラジル日本会議理事長の徳力氏は、ブラジル日本会議の終身名誉常任顧問である村崎道徳氏とともに金沢を訪れ、代表の指示で大東亜聖戦祭実行委員長の諸橋茂一氏が案内して、金沢の兼六園に隣接する石川護国神社に立つ大東亜聖戦大碑を訪れた。この大碑は長年愛国活動を行ってきた日本をまもる会会長の中田清康氏が二〇〇〇年に建立したものであり、この建立を機にさらなる啓蒙活動を展開するために作られた大東亜聖戦大碑護持会の最高顧問には代表が、会長には田母神俊雄氏が就いている。
大東亜戦争の直前、アメリカに移民をしていた日本人がアメリカでの黄色人種排斥運動によってブラジルへ逃れてきたという経緯もあり、村崎氏はこの大碑建立に際して寄付を行っていた。今回の訪問で村崎氏は碑の自身の名前が刻まれた部分に手を当てて、聖戦で亡くなった尊い御霊を弔った。二〇一〇年に作られた副碑には世界地図が描かれているが、大東亜聖戦の前には約八十カ国しかなかった世界の国が、日本による解放のための戦いによって植民地が独立したことで、今では国連加盟国だけで二百カ国近くになった。