二〇一四年一月二十二日、恒例「日本を語るワインの会」が代表自邸にて開催されました。この一月にシリア和平会議が開催されるなど、内戦の収拾に向けて世界中が注目しているシリア・アラブ共和国大使のワリフ・ハラビ氏、「世界で活躍する日本人」100人にも選ばれたNEPAD総裁付特別顧問の池亀美枝子氏、長く外務省でODAを担当、現在はアメリカで教鞭を執るカンザス大学准教授の柴田孝男氏、外国語習得の画期的な方法を発見したKSメソッド普及財団理事長の川村悦郎氏、川村氏と共にフィリピン人に日本語を教える事業を推進する長谷川ビジネスソリューションズ社長の長谷川幸夫氏をお迎えし、シリアを中心に最近の国際情勢に関して活発な議論を交わしました。


 

シリア問題に対して日本は独自の姿勢を

「アラブの春」は結局国に混乱をもたらしただけだった。リビアのカダフィが独裁者だというが、彼はいわば部族長であり、古の部族支配の方法に従っていただけだ。悪い指導者ではない。代表はアラブの春が勃発する数週間前にチュニジア、リビアを巡って、自分の目で様子を観てきた。カダフィ支配下のリビアは、欧米からの投資も増えていて、街は近代化され活気に溢れていた。そもそも男女ともきちんと教育を受けることができる国家体制を作ったのは、カダフィだ。それが今、リビアは内戦で、街並みは見る影もなくなっている。シリアも同様で、アサド大統領はしっかりと統治を行ってきた。現在の副大統領も駐日大使も女性で、イスラム国家でありながら、女性の権利を非常に大切にしている。しかしシリア政府を支援するロシア、中国、イランに対抗して、ヨーロッパ各国が反政府軍を支援。政府と反政府に分かれ、すっかり内戦状態になってしまっている。
 七千年の歴史を持つシリアは、多くの宗教を持つ人々が入り混じりながら、平和に暮らしてきた国だ。今回の内戦の根源にあるのは、イスラエルの存在だ。シリア領だったデカン高原を、今イスラエルが占領しているが、イスラエルはシリアに対するさらなる領土的野心を持っている。それがあるから、アメリカやヨーロッパなどイスラエルの肩を持つ国々が、反政府側を支援して、シリア政府を悪者にして転覆しようとしているのだ。一方、イスラエルに対抗するレバノンのシーア派組織「ヒズボラ」やイランがシリア政府側で参戦。より混乱を増すことになった。だからシリア内戦は、決してシーア派(アラウィー派)対スンニ派の宗教対立ではない。
 シリア政府が日本に期待しているのは、アメリカとは異なる独自のスタンスとポジションだ。多くの日本人がメディアの報道を信じていて、シリア政府や先代から「世襲」して大統領になったアサド氏は悪者だと考えている。シリアのハラビ大使は、自国の立場を日本に伝えたいと考え、日本の外務省の高官に面会を申し入れているが、なかなか会えない。外務省や政府だけではなく、メディアもハラビ大使を無視している。流れと異なるアクションを取れるのは、安倍首相しかいない。安倍首相の叔父である岸信介氏は、日本国中で沸き起こった反対闘争をはねのけて、より日本にとって有利な新日米安全保障条約の調印を実現した。この血が安倍首相にも流れているはずだ。シリア政府も、安倍首相に大きな期待を寄せている。
 

自国の国益のために他国の安定を乱しては駄目

内戦を外から見てどちらが正しいなどと言うのは、武田信玄と上杉謙信のどちらが正しいかを議論するようなもので、意味がない。しかしこのままでは、シリアはスーダンのように分裂した国家になってしまう。クルド人の独立の動きもあり、二つに分裂とは行かず、もっと多くの国に分かれてしまう可能性もあるだろう。それも全て石油のためだ。リビアもイラクもシリアも、元々安定した国だったのに、欧米諸国とイスラエルによって、すっかり混乱させられてしまっている。自国の国益のためとはいえ、安定している他国に手を突っ込んで乱すような行為は、決して行ってはいけないだろう。
 一月にジュネーブでシリア和平会議が行われた。反政府勢力はアサド大統領の退陣を求めているが、政府側は再度大統領選挙を行うことを求めている。選挙には組織が必要だが、政府側主導での選挙には、反政府勢力が反発するのは確実だ。国連管理の下での選挙の可能性はあるが、その場合、アサド大統領の出馬は禁じられることになるだろう。  国家にとっての一番の悲劇は内戦など国内での殺し合いだ。アメリカがこれまでの戦争で最も多くの戦死者(約六十万人)を出したのは、内戦である南北戦争だ。ルワンダでは国内の虐殺で八十万人以上が犠牲になった。カンボジアでは政府が百万人以上の自国民を虐殺した。その他にもソ連のスターリンや中国の毛沢東の虐殺など、枚挙に暇がない。また戦争で死ぬよりも、飢餓や疫病で死ぬ人の方がはるかに多い。
 

資源のない日本にとってはエネルギーの選択肢が必要

 冷戦に勝利したアメリカは、昔からヨーロッパの縄張りである中東に、石油を求めて手を出してきた。そして組んだのはサウジアラビアだ。ユダヤとアングロサクソンが牛耳るメディアのフィルターを通して見ると、いい国に思えるサウジアラビアだが、実際には宗教的戒律が非常に厳しい専制国家だ。しかし、世界の石油の安定供給には、絶対必要な国家であり、中東の安定のためにも政権の安定が求められる。
 今アメリカはシェール革命によって、中東からの石油への依存度が低下している。サウジアラビアの石油を守ることがバーレーンに司令部を置くアメリカの第五艦隊の任務だったが、その存在意義が希薄になってきた。シーレーン防衛については、早晩アメリカは日本に対して負担を求めてくるだろう。エネルギー問題はコスト問題だ。シェールオイルの採掘コストは一バレル当たり約三十ドルだが、北海油田は六十ドルも掛かる。しかしサウジアラビアのコストは十ドルだ。つまり本気でサウジアラビアが石油輸出量を増やしたら、シェールオイルは太刀打ち出来ない。
 エネルギー資源を全て海外に依存している日本にとって大切なのは、エネルギー源を一つのものに頼るのではなく、常にいろいろな選択肢がある状況にしておくことだ。だから「脱原発」という道は、日本にとってはあり得ない。今回の東京都知事選挙の候補者で、原発について真っ当な意見を主張していたのは、田母神俊雄氏だけだ。
 オバマ大統領はシリアを空爆すると宣言したのに、結局果たせなかった。すっかり世界の警察としての地位を失っている。昨年末の安倍首相の靖国参拝時にも、アメリカの力の衰えが浮き彫りとなった。従来は中国や韓国に靖国参拝で日本を非難させていたのだが、結局安倍首相の決意を変えることができず、「これはまずい」と感じて、自ら「失望した」というコメントを出したのだ。日本が再び強国となることがないように、アメリカは常に「日本に感謝しない」中国と韓国を裏で支援して、従軍慰安婦問題などが両国間の火種になるように仕組んできたのだ。アジアにおけるアメリカの衰退による空白を放置してしまったら、戦争になる。日本はこの空白を何としてでも、埋めなければならない。
 国連憲章の旧敵国条項撤廃の妨げになっているのが、先の大戦の戦勝国であり、核保有国でもある国連安保理常任理事国で拒否権を持つ五カ国だ。その影響もあって、一九九五年の国連総会で旧敵国条項の撤廃は採択されているのに、加盟国の三分の二の批准がまだ終了していないという理由で、未だに撤廃されていない。日本はもっと批准を求めて頑張らなければならないし、日本のメディアもこのことをもっと報じて、政府の後押しをするべきだ。
 先の大戦時の日本とドイツでは、降伏のやり方が大きく異なる。日本はシルクハット姿の重光葵外務大臣が、戦艦ミズーリ号の上で調印を行ったが、これは日本に政府があったからだ。ドイツは降伏時にナチス政府が崩壊していたために、降伏文書に調印する正式な政府がなかった。結局、臨時で軍人が文書に署名している。戦前から現在まで日本政府には継続性があるが、ドイツの現政府はナチス政府とは無関係ということになっているのだ。その後のマッカーサーによる東京裁判は、いわば戦勝国によるリンチだ。国際法にも全く準拠していない。もう七十年も経とうとしているのだから、日本はそろそろ東京裁判史観から脱却して、真っ当な国家になるべきだ。
 

日本語と漢字を広めて東アジアの安定を目指す

 大韓航空が保有資産の大半を売り払い急速に倒産へと近づくなど、韓国経済は悪化の一途を辿っている。こういう事態になってから日本とよりを戻そうと思っても、もう遅い。一九九〇年代前半までは、中国は日本のODAに対して、率直に感謝を表していた。状況が変わるのは、江沢民が国家主席になってからだ。軍歴もなく、共産党員としての業績もなく、鄧小平の引き立てだけで出世した江沢民は、その政権基盤の脆さを補完するために、「反日」を全面的に打ち出したのだ。この反日教育の影響が、今にまで続いている。
 日本が直面している少子化が進行すると、中小企業から人がいなくなってしまう。海外から労働力を日本に招きいれればいいという話もあるが、そこで障害となるのが言葉の問題だ。川村悦郎氏が開発したKSメソッドを使って、フィリピン人に英語で日本語を教えたところ、百八十時間学んだだけで、話すのはぺらぺら、漢字まで読めるようになるという。現在着々とフィリピンで実績を積んでいる。アメリカ統治時代があったフィリピンは、英語が通用し、法体系も英米法に準じているために、海外からのビジネス投資が集まりやすい。言語と法律と通貨を他国に広めることができた国は、大きな利益を得ることができる。特に言語だ。漢字圏ではないASEAN諸国の五億人の人々に、このKSメソッドによって日本語と漢字を広めることができたなら、日本は大きな利益を得ることができるだろう。
 韓国人が自国の歴史について不明なのは、ハングルが普及しすぎて、漢字が読めなくなっているからだ。古くからの文書を全く読むことができない。韓国はハングル文字の使用を制限するべきではないか。貧しい国の人々は英語など語学の習得スピードが非常に早い。一方豊かな国の人々は語学の習得が苦手だ。アメリカ人や日本人はその典型だろう。日本人は最近日本語も怪しく、携帯に出てくる漢字や言葉しかわからなくなっている。東大を出て「豪放磊落」を知らない人もいるほどで、これは嘆かわしいことだ。