2014年8月号 第168回
「最終日」

馳 浩 衆議院議員


平成26年6月20日、金曜日。
通常国会の最終日。
一五〇日間の総仕上げの一日。
与野党の思惑がからみ合い、同時に衆参の足並みをそろえる必要のある最後の一日。
そんな緊張感のある一日、国会生活19年の私から見た永田町の景気を記しておきたい。
『捨てゼリフ』
これは、石原伸晃環境相の「最後は金目でしょ」との、ぶら下がりでの一言が引き起こした大事件。
何を言わんとしたかは、想像がつく。
中間貯蔵施設をどこに建設するかの問題で、住民への損害賠償や補償を考えると、金額の折り合いを適切につけなければいけない、との決断が、大臣には求められる、ということ。
しかし、「金目」という表現は、いかにも住民の心情にとげを刺す言いぶりであり、品がないと言わざるを得ない。
さっそく野党に指摘を受けて、謝罪と発言撤回に追い込まれ、委員会で頭を下げた。
失言のツケはこれだけでは収まらない。
今国会の法案成立率は97%を超えて、安定した運営であったにもかかわらず、最終日に参議院で問責決議案を提出されてしまった。
軽率。
政権基盤は、いくら数の力で与党が優位であったにしても、簡単にアリの一穴からほころびていく。その典型が閣僚の失言。
第一次安倍政権も、その後の短命政権も、何気ない捨てゼリフ、売りことばに買いことばで崩壊していった。敵失、オウンゴールはいけない。石原さんの失言を重く受けとめて、誠意ある回答を福島県民に届け続けなければいけない。権力者は、謙虚でなければ。
『過労死等防止対策推進法、成立』
劇的ではあるが、問責決議案でゆれる参議院本会議において、最後の最後で、議員立法である過労死対策法が成立した。
国会議員のやりがいは、こういう一瞬に立ち会えることでもある。
前日、私は法案の提出者代表として、参議院の厚生労働委員会で、急きょ答弁に立った。
昨年10月末から、およそ八ヶ月間、取り組ませていただいた。
昨年、国連からも日本の「KAROSHI」問題について勧告を受けていた。
「働き過ぎ、働かせ過ぎで死に到るなんて、日本は何て国なんだ?!」
と、ILOに勤務している友人も、KARAOKEと並ぶ国際用語となったKAROSHI問題に懸念を示して、私に国際電話をかけてきたくらい。
超党派の議員連盟の代表世話人となり、民主党の泉健太事務局長と共に、法案の成立に向けて根回しを続けてきた。
とりわけ、過労死で家族を亡くしてしまった遺族の団体の皆さま方の、
「働きすぎ、働かせすぎで命を落としてしまった家族の無念、国家の損失はいかばかりか。」
との主張は、与野党のカベをこえて国会議員の心に直撃した。
衆議院でも参議院でも全会一致。
そして、参議院では、全会一致にもかかわらず、特例で、立法提案者の「熱い想い」を、質疑という形で議事録に残していただくことになった。
平成24年、労災認定された、いわゆる過労死は、216件。
これは、氷山の一角と言わざるを得ない。
「働きすぎで死なない」
「因果関係がわからない」
などという論評はもう通用しない。
ホワイトカラーエグゼンプションという、労働時間と成果を対比させない新たな制度が産業競争力会議から提案されている。こういう時代だからこそ、「働きすぎ」「働かせすぎ」で、死に到るという現象を許してはならない。
『JOC対JSC』
国会最終日になって浮上した対立が、日本オリンピック委員会(JOC)と日本スポーツ振興センター(JSC)の、競技力強化権限をめぐる論争。
「従来どうり、強化資金はJOCに一元化し、東京五輪に向けて体制強化を!」
とくり返すJOCに対し、
「JSCを改組した新たな独法に、強化に関わる公的資金一元化。不正経理やガバナンスに問題を残すJOCは、ふさわしくない」
と主張するスポーツ議連の報告書も、最終日に今後の火ダネを残した。
通常国会最終日は、まさしく
「終わりの始まり」
でもあるわけだ。
そういえば、秋の臨時国会に向けての宿題は以下のとおり。
○集団的自衛権の限定行使容認
○TPP交渉の妥結
○消費税10%再増税のシナリオ
……重い宿題をかかえたまま国会議員は地元に帰る。
(了)