2014年2月号 第162回
「スポーツ外交」

馳 浩 衆議院議員


特定秘密保護法で明け暮れた臨時国会。
「成長戦略国会」、ないしは「デフレ脱却国会」と名付けたはずの安倍総理の目論見は、完全にはしごを外された。
「同盟国との信頼関係を保つために、約束は守るという、秘密は守るというこの法律を制定することは絶対必要なことなのに。国家安全保障会議設置とのセットで用意することはあたりまえなのに、どうしてマスコミはわかってくれないんだろう……」
 国会終了後に緊急記者会見をセットして、その心情を吐露してみせたが、やはり、常に説明を尽くすという与党としての責任を意識しながら国会運営をしなければならないと感じたのではないか。
 自分は正しいと思っても、それが国民に伝わらなければ、権力にすきま風が吹いてしまうという典型。
 その安倍総理の記者会見を、私はジュネーブのホテルの一室で感慨深く見つめていた。
 世界平和を目指す国際機関の集合体、国連。
 国連本部をはじめ、さまざまな機関がここ永世中立国スイスには存在する。
 私の今回の出張任務は、五輪に絡む。
「スポーツを通じて日本が世界平和に貢献」
 だ。
 二〇二〇年オリンピックパラリンピック東京大会。その実施本部長として、大会成功に導くための黒子役。多額の税金を投じて施設やインフラ整備をする以上は、 「どうしてそんなことに税金を使うの?」
 という納税者の疑問に答えなければ理解は得られない。
 私のねらいは、UNOSDP(スポーツを通じて開発や平和を実現する国連機関)との提携である。スポーツ基本法を制定し、五輪の開催が決定し、いよいよスポーツ庁を設置しようかという今この時、
「スポーツを通じて貧因克服や青少年教育や相互理解を深める」
 という理念を持つこのUNOSDPに日本が積極的に関与することは、日本の国益に大きく貢献する。
「日本の資金援助や人材派遣のおかげで、多くの途上国の国情が安定し、子どもたちに希望を与え、社会や経済が発展する基盤となった。」
 という実績が上がれば、日本への信頼はとうぜん高まる。人と人との信頼関係こそが、世界平和の原点。
 オリンピックは、一過性のイベント、祭典として「よくできました」と評価されるだけの存在ではない。
 オリンピックの開催を通じて、オリンピックムーブメントを世界に広め、浸透させる。という明確な開催目的があるのだ。
 理念が伝わらなければ、どんな有益な活動であっても受け入れられない。
 私はジュネーブでの活動でそのことを痛感することになった。
 UNOSDP事務局は、国連総本部の巨大なビルの真ん中にある小さな一軒家。
 ドイツ人であるレムケ代表はあいにく留守。
 事務局長をつとめる早口のマーレン女史は、まだ30代そこそこの若さ。スタッフのベン君はフィンランド出身で、障害者スポーツのボランティア歴が長い。インターンをつとめる丸山さんは、エジンバラ大学出身で、国際政治学を修め、将来は政治家を目指しているというエリート。
「スタッフは8人しかいないんですよ!」
 とマーレン女史は組織の小ささに肩をすくめるが、果たすべき役割がいかに大きいかは、事業内容を聞いてよくわかった。
「アスリートスポーツだろうが障害者スポーツだろうが、あらゆる国際大会にレムケ代表やスタッフを派遣して人脈を広げることが第一。二つめは、ユースリーダースキャンプを開催して、世界のどこであってでもUNOSDPの理念を具現化できるリーダーを育成すること。三つめは、そういった人材を途上国に派遣し、スポーツ指導者の役割だけでなく、教育者や地域開発のコーディネーター役をさせることに尽きます。」
 聞けば聞くほど、その活動は我が国の青年海外協力隊が担ってきた派遣事業とピッタリ符合する。
 人脈?リーダー育成?派遣。
 この好循環こそが、世界平和の人的インフラであり、倫理観や道義やおもてなしの心を行動規範に据える日本人ならではの貢献。
「二ヶ月後には東京で第8回ユースリーダースキャンプを開催します。ぜひお越し下さい」
 とご招待をいただいたので、
「もちろん。安倍総理、岸田外務大臣、下村文部科学大臣にもレムケ代表がごあいさつできるよう、働きかけます。」
 と約束する。
 点がつながって線となり面となり立体へ。
 そういうスポーツ外交を展開して行きたい。
(了)