2013年10月号 第158回
「留学生は外交官」

馳 浩 衆議院議員

 地元のホテルでパーティーがある。
 給仕はアルバイトでまかなっている。
 名札をみると、中国語か韓国語。
 好奇心旺盛な私は、必ず声をかける。
「あんたさん、どこの大学や?」
「ホクリクタイカクデス!」
「だいがく、でしょ?」
「ソウソウ、ソウデス。」
「ご出身は? 大連かな、北京かな?」
「タイレンです。よくわかりましたね!」
 そう、金沢市内の有名ホテルのほとんどは、中国や韓国からの留学生をアルバイトに使っている。どうして留学生ばっかり使うんですか? と支配人に聞いてみると、答えは三つ。
「だって、よく働きますもん。」
「それに、かしこいし、言うこと聞くし!」
「中国からの観光客も多いですから!」
 と。なるほど。
 イマドキの日本人学生よりも、よっぽど言うこと聞くし、ハングリー精神があるし、礼儀正しいんだとか。なるほどね。
 その金沢でこの夏、日本留学生教育学会が開催された。そのシンポジウムに先駆けて基調講演を行うことになり、その講師として私に白羽の矢が立った。
 全国の大学や研究機関や自治体などで、留学生のお世話をされている方や、政策担当者が一同に会しての勉強会。
 私ごときでお役に立てるのだろうかと思いつつも、政権交代を果たした今こそ、留学生政策を拡充すべきときだとの強い決意を秘め、以下の6ポイントについて話して来た。
①JAPAN TENT
 学会シンポジウムの日は、折しも第26回JAPAN TENTの開会式。石川県が主催する、留学生交流の一大イベント。
「せっかく日本で学ぶ留学生なのだから、衣食住含めて環境整備が必要だ!!」という主旨でスタートし、今年でもう26年目。中曽根内閣が留学生10万人計画を打ち出したと同時に始まったイベント。
②ホームステイ
 このJAPAN TENTはわずか一週間の留学生交流事業。いろんな体験メニューが多い中で、実は、メインとなったのはホームステイなのである。わずか5日間のホームステイなのに、お別れの日は家族同様に抱き合って涙を流すまで交流を深めることになる。この人情深い交流こそが、相互理解。歴史認識や領土問題など、近隣諸国なればこその誤解があつれきとなって横たわる。だからこそ、日本に来て、心開いて歴史の窓を開けてもらう必要があり、このホームステイ精神こそが、留学生事業の根幹でなければならない。我が国のおもてなしの力、人間力は、それこそ長い歴史と伝統と文化の積み重ねそのもの。
③涙、笑顔、感動。
 留学生は、日本という異国において、常に不安を抱えながら生活し、勉学に励むことになる。その不安を信頼に変えて行くには、あらゆる人間的交流を通じて、ともに泣き、ともに笑い、ともに感動を分かち合うという体験が欠かせない。そのために、町会の行事や公民館活動に積極的な活動に参加してもらい、リアルジャパンを知ってもらう必要がある。夏祭り、クリーン作戦、高齢者見守り活動、雪すかしなど、留学生といえども地域の一員としての自覚を芽生えさせること。
④日本語教育基本法(案)
 留学生問題の根幹。学習言語、生活言語として、どの程度の日本語能力が必要なのか、その認定基準が我が国には公式にない。日本語を指導する教員のレベルも、統一されていない。ハイレベルで言えば、海外の大学で日本語講座を開設し、日本語で日本の法律を理解させることも必要。また、日本で学ぶ留学生の日本語能力や、日本で働く外国人や、日系人家族などの日本語能力向上も重要。
 日本という国家が国際社会において名誉ある地位を占めるためにも、留学生の日本語能力を飛躍的に向上させ、卒業後は、日本社会の一員として、貴重な労働力となってもらう選択肢も提示すべき。
 研究開発を担う技術者であったり、あるいは第一次産業やサービス業の担い手であったり、人口減少社会のこれからの日本社会に、外国人労働者を受け入れていく余地は多い。
 その先駆的役割が、留学生に期待される。
 言語とは文化そのものであり、お国柄。
 従って、日本語をきちんと習得させ、日本の文化と伝統と、何より正しい歴史を理解させるための教育体系が、なんとしても急務。
 日本語教育基本法(案)は、その中軸。
 中国が、戦略的に全世界に孔子学院を建設し、言語とともに覇権主義を拡大している政策を、我が国も手をこまねいている訳にはいかない。
 安倍政権が日本の国益を取り戻す戦略の一つの柱として、留学生を日本の外交官として取り込む日本発信政策は、なくてはならない教育事業であるべきだ。

(了)