2013年9月号 第157回
「どぶ板とネット選挙」

馳 浩 衆議院議員

「はせ、選挙は歩いてナンボや。草票集めて、お礼とお願いの電話入れて確認して、最後はやっぱり握手や。握手した数だけ、会った人の数だけしか票は出んと思ってがんばれや!!」
 これは、私の後援会長の名言である。
 わずか一代で財を成したこの後援会長は、高名なディベロッパーであり、戦略家でもあるが、こと選挙に関しては、徹頭徹尾、ドブ板派である。
「選挙に魔法はない。当選に近道はない。運動した分だけ、成果は票に出てくる!!」
 と、常にハッパをかけて下さる。
 マニフェスト選挙で政権交代した時ですら、「あきらめるな、歩け!!」
 と励まして下さり、私はくつを3足はきつぶすほど歩いた。NHKの出口調査では、ライバルに15ポイント差もつけられていたのに、最終結果は2ポイント差だけですみ、きわどく比例復活を果たしたことも記憶に新しい。
 そのドブ板こそが勝敗を左右すると信じて疑わない我々に、一つの革命が起きた。
 ネット選挙の解禁である。
 時代はとっくにIT社会。なのに、選挙運動だけはいつまで経っても時代遅れのアナログ戦法だった。
 ビラ配り、街頭演説、ポスター掲示、そして個別訪問。
 まさしく、汗を流せば流すほど、顔の見える選挙だ、票読みができると思っていた。
 しかし、いつのまにか、ブログもフェイスブックもメールも全て、日常生活の中にあたりまえのように入り込んでいる。
 候補者の名前も経歴も、いや、街頭演説の様子ですらも、動画で共有できるようになった。パソコンやスマホの普及のおかげ。
 今まで葉書きや郵便で出していた案内文書も、ラインを使えばあっという間の瞬時に、なんと、無料で仲間内の有権者に配信されるように法改正された。
 なりすましの心配もあるため、いまだ不特定多数へのメール配信は許されていないが、セキュリティ対策ができれば、そのうち解禁もされ、もしかしたら、投票行動ですら、「ネット投票OK」の解禁となるだろう。
 で、わが石川県選挙区で実際に起こったネット運動の威力をお伝えしておきたい。
 当代一の人気応援弁士、小泉進次郎代議士が金沢市の中心繁華街、香林坊交差点にやって来たときのことである。
 選挙が公示され、3日後の七月七日の昼下がりのことであった。
 小泉さんの登場は午後4時半であるにもかかわらず、バーゲンセール真っ盛りの繁華街には、進次郎見たさの10代~50代までの女性陣が、場所とりに集まって来て、すでに大歓声。この三日後に同じ場所に安倍晋三総理もやって来たのであるが、その動員数は、倍以上も小泉さんが上回った。
 そして何よりもびっくりしたのは、にわか小泉親衛隊?なる女性陣は、手に手にスマホをかざしていたことである。
「カッシャーン」「チャリーン」
 と、演説の声を上回るスマホのシャッター音の嵐。うるさいったらありゃしない。
 しかし、本当の嵐は、その直後に始まった。
 フェイスブックやラインで、次から次へと小泉進次郎の写メールが送信されて来たのである。それもコメント付きで。
「しんじろう、香林坊なう!」
「小泉さん、さわやかでステキ!」
「グッチのお店で高額商品が売れるとか、スタバのサイズもグランデが売れるとか、さりげなくアベノミクス宣伝!!」
「私の方を見て手をふってくれた?」
「私の目を見てうなずいてくれた?」
「進ちゃん、カッコイー」
「進次郎、演説もお上手‐!」
「で、候補者、だれ?」
 ……とまぁ、まるで、お祭りさわぎ。
 何と申し上げたら良いのだろうか?!
 お祭りさわぎが悪いと言っているのではない。ネット選挙運動なるもの自体が、あまりにも政策の実相とかけはなれすぎているのではないか?!と思えたのである。
 候補者の姿や声、応援している弁士の様子をリアルタイムに届けるには、まことに便利なツールではある。
 でも、国益をかけて一票を奪い合う闘いであることを考えると、もっと、
「良く見て、良く聞いて、よく考えて、選ぶ!」
 という作業が必要なのではないだろうか。
 参議院選挙が、人気取りのイベントになってしまってはまずい。
 ネット投票も、高齢者や障害者や在外投票ならやむをえないだろうが、私は断じて、便利な投票方法や、便利な選挙運動がベストだとは思わない。
 目を見つめ合い、語り合い、うなずいて、そして思案のあげく投票所に足を運ぶ!!
 そういうドブ板こそが、民主主義の原点ではないだろうか?!

(了)