2012年12月号 第148回
「安倍再選」

馳 浩 衆議院議員

自民党の総裁に、安倍晋三さんが返り咲いた。五年前の辞め方が無責任極まりなかったがゆえに、十字架を背負った逆転劇でもあった。負けはしたが、同じ派閥の町村信孝会長のアシストも絶妙だった。
 そのエピソードを記しておきたい。
 下馬評では、党員投票で石破茂さんが独走するだろうと見られていた。
 しかし、五人も立候補者が乱立したことにより、一回目の投票で石破さんが過半数の票を確保する見通しはゼロとなった。
 決選投票が現実味を帯びてきた。
 一回め投票の一位は石破さんで間違いない。
 じゃ、二位争いはどうなるのか?!
 この時点でマスコミ力学と永田町派閥力学の二つ同時にうごめき始めた。
 マスコミ力学とは怪文書に似ている。
 本人の軽率な片言隻語がことさら大げさに取り上げられ、人格をも傷つける。
 今回ねらわれたのは、二位有力候補だった石原伸晃さん。
「谷垣さんのために政治をやっているのではない」で、明智光秀よばわり。
 福島第一サティアン発言で、原発事故被災地とオウム真理教を同列視。
 あげくの果ては、尖閣に人は住んでいないのだから中国が攻めてくるはずがない発言。
 いずれも、国家のリーダーとなるにふさわしくないと、国民に印象付けられ、落選。
 せっかく、派閥長老力学でバックアップを約束されていたのに、党員投票を失ってしまうようでは、悔やんでも悔やみ切れまい。
 でも、自業自得。
 その間隙をぬって、あれよあれよという間に支持を集めたのが、プリンス安倍晋三。
 五年前、投げ出した最大要因がかいよう性大腸炎という健康不安。
 しかし、三年前から服用し始めたお薬の劇的な効用で不安解消。
 所信演説でのおわび表明も好感が持てた。
「安倍さんの健康が問題ないならば、外交と安保と成長戦略で実績のある信頼感!!」
 で一気に石原さんを抜き去った。
 そこにもう一つ、思わぬ援軍となったのが、町村さんの体調不良=エコノミー症候群。
 総裁選前半戦での発症であり、リタイアしてもおかしくなかった。
 しかし、町村さんはリタイアせず、支持票を、決選投票では安倍さんへと誘導した。
 悔しかったに違いない。
 しかし、石破か安倍かという選択肢になった場合、二つの考え方なら安倍という結論しかなかった。
①町村派を将来は安倍派へと衣替えすることは、衆目の一致する暗黙の了解。
②離党→復党の出たり入ったりを繰り返してきた石破さんでは、時期尚早。
 本当に悔しかったに違いないが、体調を崩してしまった以上、国家のかじ取りを任せられるのは仲間の安倍さんしかいないとの決断を導き出した町村さんの判断は、正しかった。
 そこで。
 安倍再選が内外に与える影響をシミュレートしておかねばならないだろう。
 まずは、アメリカと中国。
 アメリカとは、集団的自衛権の行使について議論を重ねることになる。日本国内の反対勢力がまたぞろ騒ぎ出すだろう。しかし、日米同盟強化のため、国際社会において応分の責任を果たすためにも、避けて通れぬ課題。
 安倍さんは、本気で成しとげる覚悟だ。
 そして中国。
 中国も、困っている。あらゆるチャンネルで日本側に関係改善のメッセージを寄越している。従って、中国のメンツを理解しながらも、尖閣諸島の領有権については外交問題として取り組む。過去、総理時代の反省もふまえ、静かに鎮魂の心を以て靖国神社にも参拝する。加えて、経済対策については、よりいっそう、相互依存関係を深め、中国にとっても日本はなくてはならない隣人としての自覚を要請するのが安倍外交だ。
 内政においては、党員投票でダントツ一位だった石破さんとのコンビで、衆議院解散の約束を果たさせることが最大の使命。
 三党合意で消費税関連法案を成立させた前提は何か、を野田総理に自覚させることだ。
「マニフェストは財源見通しが甘く不可能。」
 と謝罪し、協力を求めてきたから、合意をしたのだ。法案が成立すれば解散するというのは無理な注文でも何でもない。
 三年前に国民に約束した事ができなかったのだから、増税法案を成立させた以上、新たなマニフェストで信を問いなおすことは憲政の常道であり、民主主義の原点。
 ぶれない保守路線を貫き通す力強さが、安倍再選の錦の御旗。
 再チャレンジ。
 野党に転落した反省を自覚し、新しい安倍晋三が日本再生を果たす事は、時代の要請でもある。

(了)