2012年9月号 第145回
「子どもの未来に責任を」

馳 浩 衆議院議員

 日本の未来は、子どもである。
 望まれて産まれ、父母のもとですくすく育ち、学校で知識と社会性を学び、やがて自立し、自分の家族を持ち……。
 そんなあたりまえの未来が、あたりまえではない時代。あたりまえって、誰?
 親と子の関係を、多様な価値観でとらえざるを得ないケースが、現代社会には多すぎる。
 国会議員として活動していると、個別のケースが持ち込まれ、深く考えさせられることがしばしば。二例、紹介したい。
 愛媛県在住のAさんが、わざわざ上京し、窮状を訴えに来てくださった。
 Aさんは塾の経営者。奥さまが子どもを連れて勝手に家を出て、実家に帰ってしまった。以来三年。一度も娘に逢わせてもらえず、絶望のドン底。自殺でもしかねないようなメールの様子に、「私で良ければ。」と返信し、わざわざ上京して、現実とこれからを伝えてくださることになった。
「一度妻に手を挙げてしまいました。反省しています。でも、それをきっかけに娘を連れて家を出、実家に帰り、一方的に離婚を求められています。」
「手を挙げてしまった理由は?」
「妻が塾の高校生と仲の良さそうなメールのやり取りをしている証拠を突き止めたから。」
「……夫婦でも、メールの盗み見はよくないですね。それに、暴力は、DVとして被害届を出されたら、保護命令の根拠になります。」
「その事は重々私も反省しています。その一度の暴力が妻のトラウマになったとして、家を出て行く理由だとしたら、申し訳なく思っています。でも、最愛の娘に、あんなにパパのことを大好きだった娘に、いきなり引き離されて会わせてもらえないなんて、辛すぎます。」
「家庭裁判所に調停してもらっているの?」
「もちろんです。相手の弁護士がヤリ手で、いっさい面会させてもらえません。このまま慰謝料も養育費もとられて、その上面会交流までさせてもらえなかったら、生きる希望がありません。馳さん、私のことを何とかしてほしいのではありません。女性側の一方的な主張ばかりが認定され、子どもに一切面会交流できなくなるなんて、おかしいです。馳さんが国会でこの問題の解決策である法改正を主張しているのをネット中継で観たものですから、直接、僕の気持ちを伝えに来ました。」
 と、すがるような、そしてどこかに希望を見出したいようなまなざしに、私は冷静に話しかけた。
「あなたの奥さまの話も平等に聞かなければ、個人的なトラブルにはコメントできません。でも私の考えはこうです。日本の国も、離婚をしたら、原則、共同親権制度が必要です。離婚をしたら男と女ですが、子どもにとっては父と母。未成年の子どもにとって、別居親との定期的な面会交流は、第三者が介入する機関で、権利として認められるべきです。親権と、親責任とのせめぎ合いの中で、一方的に連れ去った側の主張だけが認定されるのは、不公平です。DVについては、両者の調整が公正になされた上で、面会交流の判断がなされるべきでしょう。とにかく、自殺を考えることなんてやめて、どうしたら、自分のような不幸な夫が救われるのか、法改正のための立法事実取りまとめの活動など、出来る限りの努力をモチベーションとして続けて下さい!!」
 とお願い申し上げ、愛媛に帰ってもらった。
 もう一例は、石川県里親会BBQ大会。日本海沿いの公園で、バーベキューを楽しみながら三時間、里親ファミリーの声に耳を傾けた。
「実の親と、私たち育ての親とのカベを、どうやって乗り越えるか、です。」
「児童養護施設も必要です。でも、家庭的な人間関係の中で育ってこそ、立ち直れる子どももたくさんいるのです。」
「自分の子どものいない里親よりも、やっぱり子どもを持ち、その上で里親をしている方が、子どもの気持ちをわかることができていますね。」
「うちは特別養子縁組をしました。覚悟を決めました。この子とは、生涯責任をもって親子として関わって行きます。」
「三歳未満児で預かったほうが、お互いに打ちとけやすいですね。」
 ……。
 あまりに壮絶な実例をお聞きするにつけ、親子って何だろう、家族って何だろう? と、多様な価値観を認めざるを得ない気持ちになった。
 離婚、DV、虐待、発達障害、犯罪、倒産。
 さまざまな要因で家族はこわれて行く。
 そのほとんどは、親の原因。
 取り残される子どもの気持ちをどうやって汲んであげるべきか!?
 それは、プライベートな事案でありながらも、社会全体の覚悟でもあるのではないか。
 子どもの最善の利益は、日本の未来につながっていなければならない、絶対に!!

(了)