2011年11月号 第135回
「どじょう総理」

馳 浩 衆議院議員

「敵をあざむくにはまず味方から、ってどうなのよ?!」
 衆議院正面玄関エレベーターに乗り合わせた民主党の松本剛明国対委員長代理は、となりに私がいるのを多分に意識しながら、取り巻く記者諸子にまくし立てていた。
 この日は、本来ならば四日間の臨時国会最終日。てっきり、四日間で幕を閉じるとばかり思い(込んで)いた松本さんは、自分が知らない延長情報をマスコミ側から聞かされて、怒り心頭の様子。
 私といえば、聞かぬフリ。
 というのも、開会日の本会議で、会期四日間の議案に断固反対の討論をしていたから。
「……新内閣のスタートが、たった四日間で閉じてしまうとは言語道断。論戦に耐えられないならとっとと千葉に帰り、駅前街頭演説でもしていなさい。逃げるな民主党!!」と。
 で、結局、あまりの野党の抵抗ぶりに、これでは第三次補正予算の成立や、ねじれ国会の運営や、三党合意の実行に暗雲たちこめると判断した輿石幹事長が、野田どじょう総理と連絡を取り合って勝手に十四日間の延長を決めてしまった次第。
 その十四日間延長情報は、昨夜から私も知っていたので、松本剛明さんの剣幕に知らんぷりしたのだ。
 その瞬間、私は民主党政権崩壊の始まりの音を聞いた気がした。ガラガラ、ボロボロと。
 会期決定という、基本中の基本、こんな大切な事柄すら党内で合意できないのであるから、与野党協議の実務、段取りを仕切れるはずがないからだ。
 ねじれ国会が常態化している。
 民主主義の原点は、過半数の力、でもある。
 だが、参議院では大幅に過半数割れをしている民主党政権。公明党と連立を組めば衆参で安定過半数を得られる。しかし、鳩山、管と不信を助長した民主党にすり寄る公明党ではない。せめて民 そんな緊張感の中で、仲間である松本剛明代理から、この件で辞表を叩きつけられた輿石幹事長。内輪モメしてる場合? アホらしい。
 つかみどころのないどじょう総理。
 見ためは低姿勢で好感度も高い。保守政治家を自認し、経済界の期待も高い。
 ところが、代表質問でもう、馬脚を表した。
 外国人地方参政権について問われ、
「国会の議論に結論をゆだねる。」
 と下を向いて答弁し、集団的自衛権にも、
「検討を要する。」
 と従来の政府答弁をくり返した。
 これにはがっかりさせられた。
 どじょう総理がまだ財務大臣だったこの六月、財務金融委員会において正反対の答弁をしているのだ。質問者は、日本のサッチャー女史と評される、自民党の稲田朋美代議士。
「外国人地方参政権どう思いますか?」
「反対です!!」
「では、集団的自衛権どう思いますか?」
「憲法解釈を見直して、認めるべきです。」
「では、総理になったら靖国参拝しますか?」
「それは慎重に判断します。」
 という具合。
「A級戦犯は、戦争犯罪人ではない!」
 と質問趣意書で政府見解を引き出したのが野党時代の野田佳彦さん。だから、靖国参拝だけは慎重という言い回しに終始し、意外だった。でも、外国人地方参政権反対と、集団的自衛権容認を明言していただけに、総理就任一発目の答弁で、いずれも前言をひっくり返したのには、びっくり、がっかりした。
 本会議場では、この答弁に対し、こういう野次まで出てしまった。
「総理になるためだけの松下政経塾か?!」
「松下さんに何を習ってきたんだ!!」
「変節漢! 言行不一致!!」
「総理になって、何をするかを勉強するのが塾じゃないのか?」
「エセ保守!!」
 ……と、まぁ、さんざんの言われよう。
 おそらく、ここまでこき下ろされたのが、会期延長を決断した一因となったのだろう。
 プロレス大好きおじさんの野田さんは、どのようにベビーフェイス(善玉)とヒール(悪役)を使い分けようとしているのだろうか? 前任者の菅直人さんほどの思いつき政治を連発する気配はなさそうだが。
「私はこれをやりたい。」
「私の国家論はこれです。」
 という大黒柱を感じない。その人事や言動からは。
 だからこそ、国会は十二月末までの通年国会とし、論戦から逃げてはいけないのである。
 被災地復興と、原発事故収束と、放射能除染対策のためにも、決断実行が必要なのだ。
 期待を込めて一句。
民主党 どぜうが出て来て どこへ行く

(了)