2011年9月号 第133回
「されど、教科書」

馳 浩 衆議院議員

義務教育。
 小学校六年間と、中学校三年間。
 九年間も、税金を投入して、無償化。
 教科書も無料なら、教えてもらう先生にもお金を払わなくて良い(あたりまえ)。
 たとえ外国人であっても、学校教育法を根拠にして、公立小中学校は受け入れている。
 素晴らしい、日本の教育制度の根幹。
 ポイントは、義務教育小中学校で行われる教育の内容と、質の向上。
 まず、内容。
 平成十八年に、教育基本法が全面改正。
 安倍内閣最大の成果。
 第二条において、五項目の「教育の目標」が定められた。
・ 豊かな学力、健やかな体、道徳心
・ 公共の精神
・ 職業倫理
・ 生命の尊重、環境への配慮
・ 伝統と文化、国を愛し、他国を尊重
 教育をする、教育を受ける、教育を受けさせる。教師、子どもたち、保護者それぞれに、明確に、具体的に教育の目標を示したことこそ、安倍内閣の意図であった。
 日本国の将来を託す子どもたち。
 自国の歴史を正しく理解し、誇りを持ち、他国を尊重し、友好な外交関係を維持してほしい。
 もちろん教育の目的には、個人の能力を伸張させることも同様に重要である。
 しかし、個人は、家族や地域や国家や会社など、組織の一員でもある。従って、個人の潜在能力を開発しつつ、社会の構成員としての良識、教養、知識、健康を保つことが教育目標として求められる。
 だからこそ、義務教育の内容と、その資質の向上については、不断の努力と情報公開がなされなければならないのだ。
 まず、教員の質向上については、現場に出て、一〇年ごとの免許更新制度が始まった。
 教育の成果を測り、評価をし、フィードバックするシステムとして、学力テストも始まった。
 そして、最も重要な「教育の内容」については、教科書採択のプロセスを問題視せざるを得ない。
 平成十八年に教育基本法全面改正。
 平成十九年に教育振興基本計画立案。
 平成二十一年に新学習指導要領制定。
 そして平成二十三年。
 新学習指導要領を根拠にした、中学校の教科書検定と採択。
 このスケジュールは、法律に定められている。
 法律に定められているから、公平、公正に教科書が執筆、検定、採択されているのかと思いきや、必ずしも、そうではないのである。
 文科省の言う「教科書検定」とは、民間の出版社のお抱え学者が執筆した文章の「明らかな正誤」をただすことであり、資料の正誤をチェックすることである。
 だから、以下のような歴史認識や国家のかたちについてのいびつな表現が堂々とまかり通っているのである。
※外国人参政権の記述
「日本国籍を持たないため、選挙権や公務員になることなども制限されています。日本で生まれ生活していることやその歴史的事情を配慮して、人権保障を推進していくことが求められています」(東京書籍)。
……憲法第十五条第一項が選挙権を、国民固有の権利、と規定していることや、最高裁判決が外国人への制限を合憲としていることを教えないのは、不充分極まりない。悪質だ。
 育鵬社は「外国人にも人権は保障されますが、権利の性質上、日本国民のみにあたえられた権利は、外国人には保障されません…ただし、外国人であっても日本国籍を取得すれば、日本国民として選挙権をはじめとするすべての権利が保障されます」とていねいに記述してある。同じ検定を通っているにもかかわらず、雲泥の差。
※自衛隊についての記述
「平和と安全を守るためであっても、武器を持たないというのが日本国憲法の立場ではなかったのかという意見もあります」(東京書籍)
 国際貢献についても、
「このような自衛隊の任務の拡大は、世界平和と軍縮を率先してうったえるべき日本の立場にふさわしくないという声もあります」(東京書籍)
…時代遅れの違憲論や否定的な見解を紹介しており、現実とかけはなれた認識にびっくりしてしまう。検定って何なのだ?!
 この教科書で、国民としての教育がなされることに、不安を禁じえない。
 ましてや、この教科書を使って、日教組の教員が自虐史観の授業を展開すれば、この国の未来はいったいどうなってしまうのか。
 もっと、教科書採択に一般国民の厳しいチェックが必要なのである。

(了)