社会時評エッセイ

憲法改正ではなく 自主憲法制定を 目指せ

藤 誠志

プレスコードの呪縛が 今の日中、日韓関係を形成

 六月十三日、参議院本会議で改正国民投票法が可決、成立した。この法律によって、国会での審議から国民への発議、国民投票まで、憲法改正までの具体的な手順が、憲法施行から六十七年掛かって、ようやく定められたことになる。しかし十四日の読売新聞朝刊の見出しにもなっているように、「実現なお高いハードル」というのが実情だ。衆参それぞれで、総議員の三分の二以上の賛成を得ることは、「戦後、衆参両院で三分の二以上の議席を確保した政党はなく」非常に困難だ。さらに国民投票で、有効投票数の過半数の賛成も必要となる。実質的には改憲不能と言っても良いだろう。誕生から一年半、未だに国民の支持が衰えない安倍政権だが、当初からの悲願である憲法改正を、まず憲法九六条で定められた「国会の総議員の三分の二以上」を「過半数」に変えようとしたが、この壁も厚かった。今は国民の理解が得られやすい環境権(良好な環境の中で生活を営む権利)や非常事態に対応するための国家緊急権を、憲法を改正して明文化しようという流れになっている。しかし本当にこれで良いのか。
 ウィキペディアの日本国憲法の項目によると、「一九四五年(昭和二〇年)八月一五日にポツダム宣言を受諾した日本政府は、そこに要求された『日本軍の無条件降伏』『日本の民主主義的傾向の復活強化』『基本的人権尊重』『平和政治』『国民の自由意思による政治形態の決定』などにより、事実上憲法改正の義務を負うことになった。そこで連合国軍占領中に連合国軍最高司令官総司令部の監督の下で『憲法改正草案要綱』を作成し、その後起草された新憲法草案は、大日本帝国憲法第七三条の憲法改正手続に従い、一九四六年(昭和二一年)五月一六日の第九〇回帝国議会の審議を経て、一一月三日に日本国憲法として公布され、その六か月後に施行された」というが、そもそも帝国憲法第七三条に「将来、この憲法の条項を改正する必要がある時は、勅命を以て議案を帝国議会の議に付さなければならない」とあり、この過程は勅命によったとは言い難い。
 一方でGHQは、終戦一カ月後の一九四五年九月十九日にプレスコード(新聞編集綱領)を発令している。これにより、まだ始まってもいない極東国際軍事裁判の批判が禁じられているし、「GHQが日本国憲法を起草したことに対する批判」も、禁止項目として明記されている。最初からGHQは自分の手で日本の憲法を作ることを決めていた。このプレスコードについて、私はApple Town2014年4月号に「プレスコードの呪縛が解けない反日メディア」というタイトルのエッセイを書いた。これを読んだ日本維新の会の杉田水脈議員が、四月十一日、衆議院内閣委員会での質問でプレスコードに触れ、現在も効力を持っているのかと尋ねたところ、政府参考人の外務省大臣官房参事官の水嶋光一氏が「サンフランシスコ平和条約の発効に伴って失効している」と答弁した。しかしそれは事実ではない。プレスコードについて、大手新聞やテレビなどマスメディアが報道したことはこれまで一度もない。そこで私は、「記事で報じられないなら広告で」とその禁を破って、今年四月十二日の産経新聞の広告に掲載した。これが、マスメディアに初めてプレスコードの三〇項目を文字にして出すこととなったのだ。プレスコードには、第八項目として朝鮮人、第九項目として中国への批判を禁止する項目がある。呪縛が解けないメディアがプレスコードを守ってきた結果、中国が捏造した南京大虐殺に関するプロパガンダや日本の固有の領土である尖閣諸島への挑発、二十万人が従軍慰安婦として強制連行され性奴隷にされたという朝鮮人の虚偽の主張が、日本が有効に反論できないことを良いことに世界に広まった。韓国人はアメリカにまで慰安婦像を造った。

 

国際社会では 壮絶な情報宣伝合戦が展開

 日本国憲法と日米安全保障条約をセットで作ったアメリカの意図は、日本が再び強国となることを防ぎ、いつまでもアメリカを頼る国にすることだった。そのために、アメリカは日本と近隣諸国との争点を意図的に作った。先の大戦が、日本のポツダム宣言受諾によって終戦を迎えた時には、世界で唯一核兵器を保有していたアメリカには軍事的な敵はいなかった。だからそのアメリカがソ連に対して北方四島への侵略を認めなければ、今の北方領土問題はなかっただろうし、日本とソ連は国交を回復し、平和友好条約を締結していただろう。しかし現実は北方領土問題が棘となり、日本とロシアは未だに平和友好条約の締結ができていない。朝鮮戦争下の一九五二年に、アメリカの傀儡だった韓国の李承晩大統領は李承晩ラインを引き、竹島をその中に含めて韓国の固有の領土だと言い出したが、アメリカはこれを黙認した。このために今に至っても、日本と韓国は竹島を巡って争いを続けている。尖閣諸島に関しても、アメリカは日本が実効支配はしているが、どこの国の領土であるかを決して明言せず、それが日中の対立を深める結果になっている。このことからも、アメリカが日本を永遠に封じ込めようと考えていたことがよくわかる。
 就任一年半という短い期間の中で、安倍首相ほど、多くのことを成し遂げた首相はいない。またここまで自分の意見を明確に主張した首相もいなかった。そして安倍首相は国際的な宣伝戦の重要性を理解している。六月十四日の読売新聞朝刊に、「[政治の現場]宣伝戦の実態〈六〉日本 積極反論に転換」という記事が出ている。「六月六日に放送されたオーストラリア公共放送のテレビ番組。秋元義孝オーストラリア大使はインタビューに応じ、『東シナ海と南シナ海では、近隣諸国間で緊張が高まっている。日本は、武力行使や強制により一方的に現状を変更しようという試みを懸念している』と述べ、名指しは避けながら、強引な海洋進出を進める中国を牽制した。その一週間前、五月三〇日付のオランダのフォルクスラント紙に、辻優オランダ大使の寄稿が掲載された。辻氏は安倍首相が掲げる積極的平和主義について『方針の転換ではない。我が国の戦後七〇年間の支柱でもあった平和国家としての根幹は不変だ』などと丁寧に説明した。今年に入り、世界各国に駐在する大使らが地元メディアに積極的に情報発信する例が増えている。米紙ニューヨーク・タイムズが先月、安倍首相が目指す集団的自衛権を巡る憲法解釈見直しを批判する社説を掲載した際も、佐々江賢一郎駐米大使が直ちに反論を寄稿した」。私はさらに進めて、職員数三千人、年間予算三千億円規模の情報省を新設して、世界中のあらゆる言語の報道をチェックし、何かあれば二十四時間以内にその国の言葉で反論する体制を作るべきだと考えている。
 国際社会の勢力争いの主戦場は、すでに武力による戦争ではなく、経済戦争で、宣伝合戦、情報謀略戦となっている。日本の大使も積極反論に転じているが、如何せん、日本の大使は、受験競争を記憶力で勝利してきた「エリート」であり、ディベート教育を受けていない。世界の現実は力の論理に立脚する世界で、ガキ大将の世界であり、口喧嘩が強く、腕っぷしの強い者が他の者を従わせているのである。  六月十三日に参院で改正地方教育行政法が可決した。これは教育委員の互選で決まる現行の教育委員長と教育委員会が任命する現行の教育長の二つを統合した「教育長」という役職を新設、首長が議会の同意を得て直接任免できるようにするものだ。首長の意向を反映した教育長の誕生によって、戦後の間違った教育体制が正されることを私は期待している。

 

集団的自衛権行使の限定は 手の内を敵に晒すこと

 中国の軍事的な台頭、アメリカ・民主党オバマ政権の内向き姿勢によって、大きく世界情勢が変化してきた。シリア内戦に関して、化学兵器を使用すれば空爆と国際公約をしていたオバマ大統領が、いざ実際に使用されると、政権側か反政府側がどちらが使用したのか分からないと空爆を尻込みした。その結果がイラクでのスンナ派組織「イラク・シリアのイスラム国家」(ISIS)の勢力拡大だ。首都バクダッドでの攻防戦もかなり現実味を帯びてきた。アメリカは地上軍の派兵を一旦は否定しながらも、仕方なしに軍事顧問団を三〇〇人を限度に派遣することを決定した。しかしこの規模では、アメリカはかつての世界の警察官としての役割を放棄したように見える。そんな小出しにしか決断できないオバマ大統領を見て、ウクライナからクリミア半島をもぎ取ったロシアのプーチン大統領や、勝手に重ねて決めた尖閣を含めた防空識別圏に日本の自衛隊機が侵入したとスクランブルをかけて異常接近したり、南シナ海でフィリピンやベトナムと対立を強めてきている中国など、世界各地で様々な勢力が活動を開始している。安倍首相は第一次政権の反省から、ストレートにやりたいことを押し出すのではなく、巧みな迂回戦術をとりながら、靖国参拝を行い、集団的自衛権行使についても公明党に配慮し、かなり限定的でありながらも、実現できる見通しとなった。しかしこの限定が曲者だ。妥協によって集団的自衛権の行使に制限を設ければ、「敵」はそこに抵触しない方法で日本を脅かそうとするだろう。制限を作ることは、日本が手の内を晒すことに他ならない。ネガティブリストによって禁止された事以外は何でもできる他国の軍隊と異なり、ポジティブリストによって決められたことしかできない自衛隊は、優れた装備や訓練された隊員がいても、法に手足を縛られて有効な行動ができないのだ。独立国家とは戦争ができる国家で、戦争ができる国は戦争に巻き込まれずに済む。強い人間がいじめられないのと同じだ。バランス・オブ・パワーが平和を守ることになる。攻撃力が抑止力となるのに、日本の場合はその部分をアメリカに任せ、自衛隊は専守防衛というスタンスだ。これでは有事に日本を守ることはできない。

 

日本に必要なのは エネルギー源のリスク分散

 かなりの成果を上げている安倍自民党だが、保守勢力の先頭を走り続けるには、公明党など手枷足枷が多すぎる。アパグループ主催「真の近現代史観」懸賞論文の第一回の最優秀賞を獲得した田母神俊雄氏が、ブラジル・サンパウロで「新しい日本を創るには」というタイトルの特別講演を行い、地元のサンパウロ新聞の記事にもなっている。帰国してすぐ、田母神氏は新党「日本真正保守党」の結党を宣言した。二年後は衆参同時選挙とも言われる国政選挙に向けて、保守勢力の先頭に立つべく準備を開始した。安倍船長の自民党丸が「タイタニック号」とならないために、さらに「右」の「日本真正保守党」が砕氷船となるというのが田母神氏の覚悟だ。私も全面的に彼を支援するつもりだ。日本の経済が今よりも強かった時には、中国も韓国も歴史問題を持ちだして日本を批判することはなかった。靖国参拝や従軍慰安婦に関する批判が始まったのは、日本の経済力が弱まった時からだ。これを考えると、日本真正保守党の方針は、一に経済、二に経済、三・四も経済で、五・六がなくて、七に外交・国防による安全保障だ。安全保障のためにはまず交渉力による外交力を持ち、その後ろ盾として軍事力を蓄えるという順になる。大切なのは、経済力によるソフトパワーを身につけることだ。現行憲法に捉われていると、ソフトパワーを強化できず経済力も高まらない。自主憲法の制定が何よりも望まれるだろう。  経済力強化のためにまず急がれるのは、何の法的根拠もなく停止させられている原子力発電所の再稼働だ。この停止によって、年間三兆六千億円もの石油代金を余分に石油メジャーに支払っていることが、日本経済の足を引っ張っている。定められた安全性が確認できた原発は、速やかに再稼働させるべき。原発が重要なのは、エネルギー源のリスク分散の要だからだ。石油や天然ガスなど日本の化石燃料の約九〇%は、ホルムズ海峡を通過する。この付近にはアメリカ海軍の第五艦隊がバーレーンを基地として、陸軍の第三軍がサウジアラビアやカタール、クウェートに展開し、地域の安定を担ってきた。しかしシェール革命で中東の資源への依存度が減ったアメリカは、中東への関心を失い、いつこれらの軍隊を撤退させるか、わからない。撤退となれば誰がホルムズ海峡を守るのか。シーレーンを必要とする日本が守るしかないだろう。集団的自衛権の行使は当然のこととして、憲法改正により、必要な時に必要な軍事力を展開できるようにするべきだ。そしてホルムズ海峡への依存度を下げることも重要だ。そのためには原発の再稼働はどうしても必要になる。また中韓の劣悪な原発の増加により事故のリスクが増えることは、偏西風の風下に位置する日本をはじめ、世界中の脅威だ。最先端の原発技術を持つ日本が、その安全技術をさらに磨き、世界にどんどん輸出をすることが世界への貢献となる。

 

日本真正保守党は 石原・平沼新党との連携へ

 自主憲法の制定が急がれるのに、日本国憲法の規定に従えば、改憲はほぼ不可能だ。そもそも現行憲法は、占領下の国に恒久法を押し付けてはいけないという国際法に反してアメリカが制定したものだ。であれば、現行憲法下で定められた法律は一旦すべて有効とした上で、国際法違反の現行憲法を停止させ、明治憲法の改正手続きに従って自主憲法を制定するのだ。その後、この新憲法に合致しない法律は、順次改正していく。強い経済力の獲得と自主憲法制定こそ、日本真正保守党が目指すものだ。自主憲法下では独立国家としては当然のことだが、自衛隊は国軍となるし、その武器・装備も国産が主体となる。世界のGDPがこの二十年間で二倍となる中、日本は増えなかった。国防費も現行GDPの一%以内でも、日本のGDPの伸びが世界の平均となっていれば、少なくとも国防予算は二倍以上使えることになっていただろう。日米安保条約も片務条約から平等互恵の条約に変える。攻撃的兵器も導入して抑止力を強化すると共に、世界で最も核戦争の可能性が高い東アジアにいる以上、核武装も可能にすべきだろう。まずNATO四カ国とアメリカで運用されているレンタル核システムであるニュークリア・シェアリングの導入を検討すべきだ。日本のような抑制がとれた国が、核武装して適切な軍事力を持つことが、東アジアの平和に大きく貢献することになる。
 日本真正保守党は今の自民党が主張できない、しかし日本が本来あるべき姿を先鋭的な政党として堂々と主張すべきだ。今の日本の大きな問題は、間違った教育と間違ったメディアの報道だ。これを正すことは、自公連立政権では無理であり、日本派の政治家からなる保守連立政権でこそ達成できるものだ。私は二十年以上このApple Townを出し続け、このエッセイや世界の有識者との対談であるビッグトークなどで、真実を伝えてきた。その他数々の著作や東京、大阪、金沢の勝兵塾での私の活動が広がりをみせ、六月二日に開催した「誇れる祖国 日本復活への提言Ⅱ」出版記念パーティーには、十七名の駐日大使、二十五名の国会議員をはじめ、各界からの著名人が一千人以上集まり、田母神俊雄氏も結党宣言直後の講演を行った。
 その直前に東西への分裂が必至となった日本維新の会だが、元々思想が異なる人々が合流したのであり、当たり前の流れだ。維新は結いの党と合流し、さらに民主党と一緒になって、大きな野党勢力とするつもりだろうが、これではかつての民主党と同じだ。政策が一致しないために党綱領もなく、できもしない公約で政権をとった挙句に、国民から見放された選挙当選互助会が民主党だ。今はきっちりと日本の行く末を見せる党に支持が集まる。日本真正保守党は、石原慎太郎氏や平沼赳夫氏の政党と連携することになるだろう。保守同士手を取り合って、安倍政権を側面から支えていってもらいたい。

2014年6月25日(水)15時00分校了