社会時評エッセイ

今や世界は 情報謀略戦争を戦っている

藤 誠志

多くの日本企業が訴えられ法外な罰金を払わされている

今年の四月八日に「武田薬品に六二◯◯億円の賠償金‐糖尿病薬『アクトス』で米陪審」という見出しの記事をブルームバーグが配信している。「武田薬品工業が売り上げへの影響を避けるため糖尿病治療薬『アクトス』に関連するがんリスクを隠していたとして、米国の男性が同社を相手取って起こしていた訴訟で、ルイジアナ州ラファイエットの連邦地裁の陪審は七日、武田に六◯億ドル(約六二○○億円)の懲罰的損害賠償金の支払い義務があると認定した」と報じられている。
この一年だけでも数多くの日本企業が、アメリカで多額の罰金や和解金を支払わされている。昨年六月二十一日配信のロイターの記事によると、「三菱東京UFJ銀行は、イランなど米経済制裁対象国に関連した取引で適切性を欠いた処理があったなどとして、和解金二億五〇〇〇万ドルを支払うことで米ニューヨーク州と合意した」という。同じくロイターの昨年七月十九日配信の記事では、「米司法省は一八日、電機大手パナソニックと同社子会社の三洋電機、韓国のLG化学がそれぞれ、自動車部品やリチウムイオン電池の価格カルテルへの関与を認めたと発表した。これに伴ってパナソニックは約四五八〇万ドル、三洋は一〇七〇万ドル、LG化学は一一〇万ドルの罰金を支払うことに合意した」と報じられている。
その他、昨年九月に自動車部品を巡る国際カルテルとして、日本企業十八社を含む二〇社が有罪を認めて、総額十六億ドルもの罰金支払いに合意したり、十二月にタイヤメーカーの東洋ゴムが価格カルテルに関与したとして、一億二千万ドルの罰金を支払ったり、今年になっても三月に丸紅がアメリカの海外腐敗行為防止法で有罪を認め、八八〇〇万ドルの罰金の支払いに合意、トヨタもアメリカでの急加速問題の件で一二億ドルの制裁金を支払うことでアメリカ司法省と和解した。これらの争いに際して、日本企業は必ずアメリカの弁護士を雇っていたと思われるが、その費用は罰金額の一割から二割にも上る。罰金と弁護士報酬を併せて約一兆円の金が、日本からアメリカに流れ出してしまっている。
冷戦終結から二十二年。アメリカは、厳しい冷戦を血と汗と多額の金を掛けて勝ち抜いたにも拘わらず、日本に冷戦漁夫の利で経済的に優位に立たれた。冷戦終結後、アメリカは主要な敵は日本とドイツの経済力だと見なし、経済戦争を仕掛けてきた。日本の経済力を奪うことに注力し、ソ連に向けられていたアメリカが誇る軍事通信傍受システムであるエシュロン(アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドのアングロサクソン五カ国の諜報機関が参加している)を駆使して新商品開発情報を手に入れたり、国際入札でアメリカ企業に有利な情報を流したりするなど情報収集活動を行うようになった。また、企業から盗み出した情報からネタを見つけ、法的な網を掛けて、法外な罰金を課すようにもなってきている。元CIAとNSA職員のエドワード・スノーデン氏が暴露したように、エシュロンによって電話やネットでのやりとりが盗聴されているのは、もはや周知の事実。ドイツのメルケル首相の携帯電話まで盗聴されているのだから、日本の首相や閣僚、アメリカと取引のある企業のトップの携帯やパソコンの情報は、当然アメリカに漏れているだろう。

 

日本も情報省をつくり、情報戦を勝ち抜け

経済に関することだけではない。国家間の争いも、かつてのように武力を使って行われる戦争ではなく、主力は情報謀略戦へと変化してきている。ようやく三月に自衛隊が九十人体制の「サイバー防衛隊」を発足させたように、各国の軍隊がコンピューターやインターネットに関わるサイバー戦争への対応を強化している。アメリカをはじめ多くの国々が、あらゆる国のあらゆる情報を集め、自国に有利なように情報を操作する。そして時にはその情報を利用して、他国の企業に罰金を課すことを行っている。昨年日本でもようやく国家安全保障会議が発足し、特定秘密保護法が国会を通過し、本格的な情報戦参加への準備が整ってきた。安倍政権となって、これまでの五億円の海外向け広報予算を十五億円と三倍にしたが、これを更に二〇〇倍くらいに増やし、三千億円の予算で三千人規模の情報省を創設し、世界中で日本に関するメディアの報道も含む、あらゆる情報を収集して分析し、日本に不利な報道や誤った報道があれば二十四時間以内にその国の言語で反論するような体制を構築するべきだ。このような対応を取っていかないと、どれだけ日本企業が努力して市場を開拓しても、情報謀略戦による難癖で、罰金を払わされ、その市場から締め出しをくらってしまうだろう。
アメリカはWASP(ホワイト、アングロサクソン、プロテスタント)が支配する国だと言われている。歴代のアメリカ大統領はWASPで、例外はカトリックだったケネディ大統領と黒人のオバマ大統領だ。しかしベトナム戦争不拡大の方針をとったケネディ大統領は暗殺され、選挙をせずに副大統領だったジョンソン氏が自動的に大統領になり、ベトナム戦争を拡大していった。アメリカにとって戦争はいわば公共事業だ。だから第二次世界大戦後も、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争を戦ってきたのだ。冷戦期はイデオロギーの対立から、冷戦終結後は中東での石油確保や対テロ戦争という名目で、戦いを続けてきた。しかしそのアメリカが大きく変化してきている。湾岸戦争の英雄で黒人のコリン・パウエル統合参謀本部長は、その後国務長官となり大統領選挙で共和党候補として依頼されながら、妻から「WASPでないあなたが出馬すれば、ケネディのように暗殺される。」と大反対されて辞退した。その一方で、黒人ではあるがプロテスタントの民主党のオバマがそのリスクを取って初の黒人大統領となり、イラクやアフガニスタンから軍隊を引き上げて軍事予算を大幅に削減し、沖縄の海兵隊を削減するなど、今や世界の警察官と言われていた時代の面影はない。
シリアにおいて化学兵器が使用されれば空爆を行うと明言していたにも拘わらず、結局決断を下せなかった。政権側も反政権側も、双方が化学兵器を使用したとの非難合戦を行っていたが、サウジアラビアの情報機関のトップが二月に解任された。これはシリア問題でアメリカに空爆をさせる工作に失敗したからだと思われる。シリアの反政府勢力を支援しているサウジアラビアの情報機関は、アメリカに空爆をさせようとしたが、果たせなかったのだ。その責任問題で情報機関のトップが更迭されたのでは、というのだ。衰退していくアメリカと膨張してくる中国との狭間にある日本は、そろそろ独立自衛のできる真の独立国家としての体制を整えなければいけない。日本は、安倍政権下で憲法の改正ができなければ、この先一〇〇年掛かっても真っ当な国家となれず、アメリカの植民地か中国の日本自治区に転落してしまうだろう。

 

日本の貢献によって世界で人種差別が撤廃に

四月十二日付けの読売新聞の国際面に、「公民権法のおかげで自分はここに立っている」と、公民権法成立五〇周年の記念イベントで演説したオバマ大統領の記事が出ている。これによると「公民権運動が自らの黒人初の大統領就任への道を開いたと述べた」という。公民権法とは「人種や宗教などを理由に、公共施設への入場を拒否するといった差別を違法とする内容。一九六三年にケネディ大統領が提案し、六四年にジョンソン大統領が署名して成立した」「『私には夢がある』の演説(六三年)で有名なマーチン・ルーサー・キング牧師を中心とした公民権運動の高まりが原動力となった。かつては奴隷が多かった南部を中心に、学校、ホテル、バスなどで白人と黒人が分離されていた」という。しかし私はオバマ大統領の認識には少し欠落していることがあると思う。人種差別撤廃についての日本の貢献に触れていないからだ。第一次大戦後の一九一九年、パリ講和会議の国際連盟委員会で、日本は国際連盟規約に「人種差別撤廃」を明記すべきだと提案し、参加十六カ国の内、十一カ国と多数の賛成を得たが、議長であったアメリカのウィルソン大統領が「この提案は全会一致でないため不成立」と勝手に決めたために、否決されてしまった。
十九世紀、西欧諸国の植民地化の波は、アフリカ、中南米からアジアにも及んできた。日本にもアメリカからペリーがやってきて、フィリピンのようにキリスト教国化して植民地とすべく、様々な要求を突きつけてきた。ロシアをはじめ、その他の国々も日本に開国を求めてきた。開国はなされたが、天皇を中心とする伝統ある家族国家であり、文化レベルの高い日本を植民地にすることは、ついにできなかった。それどころか、明治維新により体制を一新し富国強兵策をとった日本は、日清・日露戦争に勝利した。特に世界最大の陸軍を持つロシアに勝利したことは、世界中の植民地となっていた有色人種国の人々を勇気づけ、独立運動の機運が高まった。先の大戦中でも、日本は大東亜共栄圏を掲げ、一九四三(昭和十八)年には、東京で大東亜会議も開催し、アジア各国の西欧からの独立を支援したのだ。
ヨーロッパの戦争には参戦しないと公約して当選したルーズベルトだが、ナチス・ドイツのヒトラーがヨーロッパを席巻、イギリスの運命は風前の灯となっていた。そんなヒトラーの勢いから間もなくヨーロッパはドイツが支配するとみた日本は三国同盟を結んだ。
ヨーロッパの戦争には参戦しないと公約して当選したルーズベルトは、三国同盟が結ばれたことをチャンスに、日本を追い詰めて対米戦の戦端を開かせることで、自動的に裏口からヨーロッパでのドイツとの戦争に参加しようと画策。ABCD包囲網や石油の全面禁輸などの措置をとり、日本の外交暗号を全て解読した上で事実上の宣戦布告とも言えるハル・ノートを日本に突きつけて、日本を戦争に引きずり込んだのだ。この戦いで日本は敗れたが、戦後数多くの国々が植民地支配から独立し、人種差別撤廃が世界共通のコンセンサスとなった。この流れの果実がアメリカの公民権法なのだ。オバマ大統領はこの事実をきちんと捉え、日本のお陰で人種平等になり、自分が大統領になれたと明言するべきだった。

 

プレスコードに縛られ真実の報道ができなかった日本のメディア

中韓の情報謀略戦によって、事実ではない南京大虐殺や従軍慰安婦に関する話が、世界中にばらまかれている。日本のメディアがこれを明確に否定できなかったのは、アメリカ占領軍が定めたプレスコード(新聞編集綱領)三十項目で、それらへの批判が禁止されていたからだ。第九項で「中国への批判」、第八項で「朝鮮人への批判」が明確に禁じられている。他にも多くの項目があり、これは人類史上類を見ない言論弾圧だった。一九五二年のサンフランシスコ講和条約の発効によって日本は独立したが、プレスコードに基づき検閲に従事していた人たちは、ステルス複合体と呼ばれる東大法学部出身者を中心とする官僚、外交官、メディア界、法曹界からなる集団へと引き継がれ、戦後敗戦利得者として阿吽の呼吸で連携し、アメリカや中国に迎合する反日日本人となって今に至っている。
冷戦後経済的な成功の座から引きずり降ろされる対象となった日本は、円高政策を押し付けられて、一ドルの為替レートは二〇一一年十月には過去最高の七五円三二銭にまで達し、日本の輸出企業はすっかり力を奪われた。そんな中、第二次安倍政権の誕生によって、ようやくデフレを食い止めるための超金融緩和が行われ、円安に移行した。一部の輸入関連業種に円安の影響は出ているが、景気回復基調は崩れていない。さらに安倍政権はお金を必要としない数々の経済刺激策も実行している。カジノ解禁に向けての法案が国会に提出されているし、効率の良い建築物を可能にするエレベーターシャフト部分の容積率不算入も決定する見込みだ。国内の経済を上向きにして、情報戦によって多くの日本企業に司法の罠を仕掛けてくるアメリカに対抗できるような国となるべきだ。
実はアメリカ経済は日本によって保たれている部分が大きい。アメリカ人は自分が稼いだ所得以上にお金を使い、それを住宅ローンを多めに借りた分で補い、豊かな生活をエンジョイし、保有する不動産価格の上昇分で最終的には帳尻を合わせている。一方日本人は世界基準の数倍にも及ぶ電気料金や水道料金に耐えつつも、高値の食料品を食べ、住宅ローンを払い、残った収入から老後のために貯蓄を行う。その貯蓄の多くは、結局アメリカ合衆国財務省証券の購入に使われているが、この米国債は償還されることがない。米国債を売ろうとした橋本龍太郎首相は、結局失脚することになった。つまり、日本は儲けた分をアメリカに貢いでいるようなものなのだ。しかし、アメリカに貢いでいる分はともかく、この後、商船三井の戦後補償のように中国に貢がされ続けることになる。
日本の自衛隊は日米安保に縛られて、アメリカの友軍として戦う時にのみ戦力を発揮するアメリカの植民地軍と化している。これを日本の国益に沿うような軍隊にしなければならない。軍の独立があって、はじめて国の独立が成り立つ。その前提となるのは、交戦権の保持だ。戦争をする権利がない国が、独立しているとは言えないだろう。外交交渉も軍事力の背景があってこそなのだ。日本企業への罰金など、情報謀略戦に振り回されるばかりではなく、軍事力の重要性を認識した上で、従来の中国派やアメリカ派の議員を排除して、日本派議員を増やして、真っ当な独立国家への道を進んでいかなければならない。

4月24日(木)23時00分校了