社会時評エッセイ

国家・国民を守る 緊急事態基本法を制定せよ

藤 誠志

震災直後のエッセイを三年ぶりに読み返した

東日本大震災から早三年が経過した。復興も思うようには進まない中、震災直後の二〇一一年四月五日発売号に掲載した私のエッセイ「この国難を日本復興のチャンスに」を検証してみた。
復興時には防災マンションを二〇〇メートル間隔で建設せよ
三月十一日に日本を襲った、千年に一回ともいわれる規模の東日本巨大地震で、東北地方を中心に大きな被害と多数の犠牲者が出た。亡くなられた方のご冥福を祈るとともに、被災地の一刻も早い復興を願ってやまない。
今回の地震では、津波が平野部で五~六キロメートルにわたって押し寄せていた所もあり、場所によっては全く高台のない地域もあり、大きな被害へと繋がった。
従来から津波に対しては防波堤の建設が効果的という考えがあり、例えば岩手県宮古市では全長約二・五キロメートルに及ぶ高さ十メートルの防波堤を数十年がかりで建設、津波対策は万全と思われていた。しかし今回の津波はこの防波堤を乗り越え、破壊し、地区全体に壊滅的な損害を与えた。私が提唱したいのは、着手して十カ月もあれば建設できる鉄筋コンクリート六階建てで、一、二階を駐車場とする防災マンションを、二〇〇メートル間隔で海岸線に対して直角に建設することだ。直下型の地震だった阪神淡路大震災でも、新しい建築基準法に則って作られた鉄筋コンクリートの建築物の被害はほとんどなかった。また津波に対しても強いことは、今回の地震でも証明されている。これまでも十八メートルを超える津波がほとんどなかったことを勘案し、これらの防災マンションは六階以上の高さとする。いざ津波警報が出された場合には、住民は近くの防災マンションの屋上を目指す。緑あふれる都市計画で二〇〇メートル間隔に防災マンションを建設するのは、誰もが何処からでも百メートル以内にあり一分程度でマンションに避難できるためである。これだけ近ければ、津波を目視してからでも逃げることができるだろう。被害地の土地を区画整理して今まで所有していた土地とこの防災マンションを交換で無償で供与すれば、造ってもしばらくしたら壊さなければいけない仮設住宅よりも多くの人から喜ばれるだろう。莫大な費用と長い時間をかけスーパー堤防を建設するよりも、防災マンションの方がはるかに少ない予算で出来る。
震災から三年が経ったが、私が提案した防災マンションは建設されず、票集めの選挙対策とはいえ、各所で巨額な費用で高さ十メートルを超えるスーパー堤防が建設されようとしているし、まだ仮設住宅に住んでいる人も多い。人は繰り返し出される津波避難警報で避難しているのに、津波が来なかったら、いずれ「オオカミ少年」となる。
震災後即座に方針を決めて、被災した土地との交換で防災マンション建設を進めていれば、被災地に住宅が建ち並んでいたはずだ。
想像を絶する天災にも耐えられる原発がこれからも必要だ
この東日本巨大地震によって、福島第一原子力発電所が深刻な事故に見舞われた。同時に六基もの原子炉で事故が起こった今回の件は、一九七九年スリーマイル島での一基の事故よりも重大であるが、一九八六年の格納容器もなく核分裂中の状態で事故が起こったチェルノブイリの事故を超えることはない。しかし周辺諸国にも大きな不安を与える大惨事となった。
今の時点では予断は許さないながらも、事態は一時の緊迫状態からは脱しつつあるようだが、世界の目は日本の津波による死者の数よりも、この原発事故がどのように収束するかに注がれている。特に関心が高いのは米仏中英露の核保有五カ国であり、このデータと日本の高い原子炉技術を喉から手が出るほど欲しがって色々と援助を申し出てきている。
日本はこれまで原子力発電所の安全性が世界から高く評価されていた原発大国で、海外への技術の輸出も検討されている最中だった。スリーマイル島やチェルノブイリの事故で各国が原発推進を抑制する間隙を縫って原発技術を磨くことで、日本は世界有数の原発大国となった。近年高まったエネルギー危機対策と地球温暖化抑制のためのCO2排出抑制対策として原発が見直され始め、中国やインド、ベトナムでも原発建設の機運が高まっていた矢先だった。地震大国・日本は地震に強い原発を作ってきたはずなのに、今回、炉心溶融(メルトダウン)を起こし、放射性物質を周囲に拡散させてしまうかもしれない深刻な事故を起こしてしまった。
この原発事故の不幸は、事故直後、民主党政権が避難指示を事故原発から半径三キロ、翌日には十キロ、二十キロとわずかの間にどんどん拡大したことだ。しかも本来なら、文部科学省のSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)などを参考に風向きなどを考慮して、放射能の測定値を基に必要に応じて一日や二日遅れてもゆっくりと避難すべきなのに、一律に同心円で避難地区を決定し、急速避難の指示を出すなどの非科学ぶりだった。また統計学的にも、百ミリシーベルト以内の被曝で「癌の発生率が増えた」というデータはない。にもかかわらず、強制連行にも匹敵するような、急激かつ強制的な避難によって、病院の重篤な患者や老人ホームの高齢者らに避難によるストレスなどで犠牲者が出るなど、一千人を超える災害関連死を出したことは、悔やんでも悔やみきれない。日本のメディアはチェルノブイリの悲惨な映像を流し続けているが、そのウクライナで当時十三基だった原発は現在十五基を保有し、二〇三〇年までに新たに二基建設する予定で、同国の原発は増え続けている事を報じていない。
非常時に平時の基準に拘るな
地震が発生した十一日には、私はアパリゾート栃木の森ゴルフコースを訪れていたのだが、そこから普段であれば一時間半で赤坂の本社まで戻れるところが、この日は九時間かかった。その理由は地震によって高速道路がすべて通行止めになったからだ。一般道は通行可能な中、平時の基準に従い、高速道路を通行止めにして、あれだけの大渋滞を引き起こした。こういう非常事態を想定した非常事態法をあらかじめ定めておいて、メリット・デメリットをトータルに判断し、決定することが必要なのではないだろうか。これはJRや地下鉄などの鉄道についても同様だ。渋滞の発生や多くの人間が帰宅難民になることを考慮し安全基準を緩和し、高速道路であればまず徐行運転を決定、その後パトロールカーが試しに走って問題のない区間はすべてOKサインを出し、鉄道なら低速の運転を指示し、その後問題のない線から順次通常運転に切り替えていく。平時の基準にとらわれ、安全に配慮しすぎることは、経済的損失や人的損失を考えても、マイナスが大きすぎる。
計画停電も、何事にも平等・公平を重んじる民主党らしい天下の愚策だ。料金体系を一時的に変更し、昨年の電気使用量の半分以下であれば無料とし、昨年の八〇%を超えればもとからの電気料金を二倍とするようにすれば、二〇~三〇%の電力などすぐ節約できる。市場原理に基づく節電策である。そして非常時においても運輸と通信は絶対に確保すべきなのに計画停電で電車を止めたり、まだ使える部分の高速道路まで閉鎖するなどは絶対にやってはいけない。
パニック状態を呈した首都圏では、「ガソリンがなくなる」とタンクにまだ七割も八割も残っている車が給油に行くために、ガソリンスタンドには三時間、四時間待ちの車列ができ、二〇リットルの給油制限が行われていた。こういう緊急時には、タンクに半分以上ガソリンが残っている車には給油しないというルールを作ったらいっぺんに列がなくなる。これらのパニックも政府の施策のまずさを示している。正確な情報を素早く出すことが、パニック回避には一番である。やはりこういう事態には、集中して情報を収拾、判断して事態をコントロールする達観できる強いリーダーのもと全てを仕切る司令塔が必要だろう。 
この震災の最も大きな教訓は、非常事に対する緊急事態基本法が決まっていない事であり、早速制定すべきである。責任を取りたくない官僚の定めた平時の基準を非常事態法を作って、「本震を超える余震は無い」との確信の下、地震で少々支障が出来ても、徐行箇所を作ってでも高速道路等の交通を確保し、公共交通の運行停止をしてはならない。
マスメディアが作り出す風評被害は人災だ
とある新聞に元防衛大学教授が『残念ながら、この福島原発事故では日本政府は真実を語っていない。危険性を低めに述べている。
この乖離の最も顕著なのは危険地域の設定である。日本政府は発電所から二〇キロ内からの立退きを勧告している。他方、米国は自国民に対して八〇キロ内からの立ち退きを勧告している。十七日付米国の星条旗新聞は一マイル(約一・六キロ)内は一、二週間で死亡、三マイル(約四・八キロ)内は口、喉から吐血、三〇マイル(約四十八キロ)内は体内化学変化と報じた。五〇マイル、つまり八〇キロ内は明らかに体に障害を与える。主要国が自国民の立ち退きを勧告したのは現状に不安があるだけではない。原子炉の温度が高くなると爆発し、放射線が大量に漏れる可能性がある。温度を下げるため、放水が必要だ。この任務を自衛隊が実施している。すでに見たようにここでの任務には危険が存在する。死も覚悟である。しかしこの任務がなければ爆発する可能性がある。文字通り命がけでこの任務に従事する自衛隊員に感謝します』と、あたかも福島で巨大原爆が爆発したような、全く科学的根拠のない米国の三流新聞の記事を紹介して不安を煽っている。この元防大教授は、今回米国が日本にいる自国民に対して第一原発から八〇キロメートル圏内からの退去勧告を出したことをさも正当であるかのように『日本政府は真実を語っていない』と書いて不安を煽っているが、私は日本人は嘘をつけないと思う。参考までに述べるなら、米国は本土で起きたスリーマイル島事故のときには、避難距離を事故現場から十六キロメートルとしていた。
今回の原発事故に際して、アメリカからの援助は実に第七艦隊だけで一万人を超える人員の投入、原子力空母ロナルド・レーガンの派遣、無人偵察機グローバル・ホークによる二十四時間体制での現場情報収集、FA18戦闘機で上空から十三万一千枚の現場写真撮影、さらに艦艇二十隻、航空機百四十台、第七艦隊旗艦「ブルーリッジ」や強襲揚陸艦「エセックス」などが沖縄の第三十一海兵遠征部隊や救援物資などを積み込み、被災地沖に展開…ここまでの援助を行うのは、アメリカにとってこの事故が重大な放射能事故・核戦争のシミュレーションとして千載一遇の機会であり、ここでデータ集めをするのが自国の国益に沿うからなのではないかと勘繰りたくもなる。特に米・中・仏での報道はひどく、東京からの外国人が逃げ出している。
菅総理はどうせパフォーマンスを行うのであれば、テレビで『放射能』に『汚染』された牛乳やほうれん草を食べてみせれば、あるいは人気が出たかもしれない。

 

あまりにも厳しすぎる基準に捉われている日本

現在の放射線被曝上限数値は年間で二五〇ミリシーベルト(〇・二五シーベルト)である。放射線は電磁波で強く被曝すれば、細胞のDNAを切断してしまう。東海村の臨界事故で三人が被曝したのは、一瞬(三十秒)のうちに年間被曝上限値の時間あたり平均値を超える百万倍の線量であった。一人は十六~二十シーベルト、もう一人は六~十シーベルトを被曝して亡くなり、一~四・五シーベルトで被曝した人は、治療してその後退院した。この事から、放射線被曝の致死量は六~七シーベルトと推定される。 体にはDNAを修復する能力があり、ダメージが軽度であればDNAがきちんと修復され、傷んだ細胞は排除される。一瞬で大容量の放射能を浴びるのと、毎日少しずつ浴びるその総(容)量が一緒の場合とは全く違う。毎日の気持ちの良い肩たたきの力を一年分まとめて与えると人は圧死する。科学的根拠のない年間二十ミリシーベルトの被曝が予測されると、二十キロメートル圏から強制急速避難を命じた事で起こった悲劇は民主党政権の責任である。
かつて東京オリンピック開催決定から六年、その間に新幹線も高速道路も首都高も出来た。この後六年でまたオリンピックが東京で開催される。これを機に日本再生のグランドデザインを一日でも早く示すべきである。
昨年九月、韓国の朴槿恵大統領は、東京へのオリンピック誘致を妨害するために、開催国決定直前に福島など日本の八つの県の水産物の韓国への輸入を、全面的に禁止する措置を発表した。しかしこの八県の中には海に面していない県も含まれており、禁輸の根拠は無いに等しかった。九月八日にアルゼンチンで行われた国際オリンピック委員会総会のスピーチの中で安倍首相が述べた「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の〇・三平方キロメールの範囲内で完全にブロックされている」という発言に関して、港湾は外界と繋がっているはずと大騒ぎをする人々がいた。しかし福島近海のモニタリングの数値は、最大でも世界保健機関の飲料水の水質ガイドラインの五〇〇分の一しかなく、全く問題がない。アメリカやフランス、中国などの核保有国は日本から原子炉を取り上げようと画策しているが、汚染水で騒ぐ反日メディアも、その片棒を担いでいる。科学的根拠と統計学的確率計算に基づかない、あまりにも厳しすぎる基準に捉われている日本。根拠もないのに不安を煽る報道をするメディアを取り締まるべきだろう。
三年前に書いたこのエッセイだが、今読んでみても、間違っていなかったと思う。放射能に対する過剰な恐怖が煽られたために、今の日本は多額の不必要なコストの負担を強いられている。原発は全て停止、毎日百億円、年間にして三兆六千億円が余分な燃料費として、海外へと流れている。これはシェールオイルの発見で原油がだぶついてくると見た石油メジャーが、日本への輸出を増やすために仕組んだ謀略だろう。被災地の除染の基準を世界基準の二・四ミリシーベルト以下となる自然界の放射線量(日本は一・四ミリシーベルト)プラス一ミリシーベルトという馬鹿げたレベルとし、除染作業でガードレールを拭いたり、表土を剥がすなどの為に多くの人々が高額な日当一万六千円も払って集められた為に、東京などで建築作業員が激減、工期の遅れや建築費の高騰に繋がっている。

 

主義・主張の一致する真正保守の政党を立ち上げよう

日本維新の会は、原発輸出を可能にする原子力協定に反対することを党の方針として決めていたが、石原慎太郎共同代表が公然とこの方針を批判、それに対して党内から「党を出て行け」という声が上がった。そもそも維新の会と党綱領の全く違う太陽の党との合併には無理がある。いずれ日本維新の会は分裂するだろう。
二月の東京都知事選挙で田母神俊雄氏が獲得した六十一万票の意味は大きい。特に二十代の若い世代で、舛添氏に次ぐ大きな支持率を得ていたというのは好材料だ。今のところ二年後の二〇一六年の参議院選挙に合わせて衆議院も解散、衆参同時選挙となる公算が高い。これに合わせて安倍自民党丸がタイタニックとならないための砕氷船となるべくしっかりとした党綱領の下、主義・政策の一致する真正保守の政党を立ち上げれば、その考えに賛同する民主党議員や分裂した維新の会の議員がどんどん合流してくるだろう。全国の十分の一の東京で得た六十一万票は、全国で六一〇万票に値する。これを基礎票に選挙で勝利して、自民党と真正保守の党とが連立を組み、集団的自衛権の行使や憲法改正など真っ当な政策を打ち出していくべきである。
これまで「日本人の敵は日本人」と日本人の敵として左翼を意識してきたが、本当は終戦直後にGHQによって言論統制のために出されたプレスコードの呪縛が未だ解けない反日メディアと、アメリカと阿吽の呼吸で連携してアメリカが突き付ける年次改革要望書を実行してきたステルス複合体と呼ばれる東大法学部出身者からなる偏差値エリート集団(官僚・外交官・法曹界・メディア界・大企業)の体制側が戦後敗戦利得者であり「日本人の敵」である。日本はこの反日支配の構図から脱却して真っ当な国家へと変わるべき時だ。
補足:「 」内は、二〇一一年四月五日発売号のエッセイ引用です。

2014年3月25日(火)午前1時30分校了

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