社会時評エッセイ

「Gゼロ時代」に対応した独立自衛の日本を

藤 誠志

特定秘密保護法の成立でスパイの処罰が可能に

 十二月七日の新聞各紙の一面トップは、秘密保護法成立の見出し一色だ。産経新聞には「深夜の採決、みんな造反」という小見出しも付けられて、以下のように報じている。「機密を漏らした公務員らへの罰則を強める特定秘密保護法は六日深夜の参院本会議で採決され、自民、公明両党の賛成多数で可決、成立した。賛成一三〇票、反対八二票だった。本会議での採決に先立ち、日本維新の会とみんなの党は退席。ただ、みんなの一部議員は議場に残り反対した。民主党は『強行採決を是認できない』(郡司彰参院議員会長)との理由で一度は退席したが、途中で議場に戻って反対票を投じた」。
 特定秘密保護法は、十二月に発足した国家安全保障会議(NSC)との一体運用で、情報面から安全保障を強化するものだ。これまでの日本はスパイ行為を禁止するスパイ防止法がなく、スパイ天国と呼ばれていて、海外から機密情報の提供が躊躇されていた。どの国にもスパイ防止法はある。今後国家安全保障会議が円滑に機能するためにも、アメリカやイギリスとの情報共有が必要であり、この共有を行うためのルールが求められていた。これまでも国家公務員法や自衛隊法で、情報を漏洩する行為を違法として処罰する規定はあったが、民間人が様々な策を弄して秘密情報を探りだして奪う行為を処罰する法律はなかった。それがこの特定秘密保護法には、きちんと定められている。特定秘密保護法の第二十四条には「外国の利益若しくは自己の不正の利益を図り、又は我が国の安全若しくは国民の生命若しくは身体を害すべき用途に供する目的で、人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取若しくは損壊、施設への侵入、有線電気通信の傍受、不正アクセス行為(不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成十一年法律第百二十八号)第二条第四項に規定する不正アクセス行為をいう。)その他の特定秘密を保有する者の管理を害する行為により、特定秘密を取得した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する」と定められている。秘密情報を取得したり、取得しようとした人(未遂犯も処罰対象)に罰則を与えることができるようになったのだ。これまでこのような法律がなかったこと自体がおかしなことだろう。

 

東アジアの力の均衡維持が日本にとっての急務だ

 世界は今、リーダー不在のGゼロ時代に入ろうとしている。これまでは、アメリカが圧倒的に強い軍事力を持って世界支配をしていたが、これももう終わりだ。化学兵器が使われたということで、シリアへの空爆を計画したオバマ政権だが、イギリスが議会の承認を得ることができず共同歩調が取れないとなると、すっかり腰が引けてしまった。本来必要のない議会の承認を求めるなど迷走し、結局オバマ大統領はシリア攻撃を断念してしまった。今アメリカでは、オバマ大統領の指導力に疑問符が付けられている。これからも明らかなように、アメリカは次第に世界の警察官という役割から手を引こうとしている。もう一つの大国である中国は、リーダーシップを執る理念も資格もない。Gゼロ時代として、これからはそれぞれの国がそれぞれ自分の国を守っていかなければならない。
 シェールガスやシェールオイルの技術開発によって、アメリカはサウジアラビアなど中東の石油に依存する必要がなくなり、これら資源の輸入国から輸出国へと変わろうとしている。一方日本は石油や天然ガスのほとんどを海外からの輸入に頼っているが、石油の八割はシーレーンを経由して、中東から日本に運ばれている。アメリカ第五艦隊はバーレーンに司令部を置き、中東の治安維持に当たっているが、中東への資源の依存度が減れば、この地域に対する兵力を減じることを考えるだろう。依然この地域への依存度が高い日本へ軍事上の分担を求めてくることは、間違いない。こういった意味でも日本は、軍事力の強化を急がなければならない。
 十一月下旬に中国は突然尖閣諸島上空を含む空域に防空識別圏を設定した。これは当然、日本の以前からの防空識別圏と重なる。また十二月に入って韓国も防空識別圏を拡大し、それによって日中韓の防空識別圏が一部重なることになった。十二月四日に中国の習近平国家主席と北京で会談したアメリカのバイデン副大統領は、防空識別圏の突然の設定は地域に重大な影響を与えると、習氏に深い懸念を表明し、緊張緩和を要請した。バイデン氏は、訪中前の安倍首相との会談では中国の態度を一切黙認しないということで一致しているが、防空識別圏の撤廃を求めるような強い論調は避けることで合意している。この設定と同時に、中国は防空識別圏を飛ぶ民間航空機の飛行計画の事前通告を求めていて、行わずに飛行した場合強制措置も辞さないことを表明、緊張が一気に高まった。日本政府は日本航空や全日空に対して、飛行計画を中国側に提出しないことを求めたが、これは中国の防空識別圏を認めないためには当然の措置だ。しかし、アメリカは中国への飛行計画提出を民間航空会社に促しており、日本との足並みの乱れが指摘されている。
 防空識別圏は領土問題に繋がるため、融和的な対応はあり得ない。中国に続いて韓国も防空識別圏を拡大したことで、三国の鬩ぎ合いという流れになってきている。尖閣諸島という日本固有の領土を含む形で中国が防空識別圏を設定した事に対して、日本は座視せず、強く抗議して撤回させるべきだ。しかし韓国と中国がお互い拡大した防空識別圏を容認し合う形で妥協、それに対して日本だけが突っ張っているような印象を与えるようになっては不利だろう。そもそも防空識別圏は、それぞれの国が領土、領海に関係なく定めるものだが、他国の領土を取り込むような形で防空識別圏を定めることは、国際的なルール違反だ。
 東アジアの緊張が益々高まっている。その根本の原因は、アメリカの力の衰退だ。これに中国が付け込んでいる。日本はアメリカへの依存度を減らし、自らの力で防衛を行っていく必要がある。これまでのように、日米安保があるからとか、核の傘があるからとか、アメリカにすがっていれば、平和が保たれるという時代ではなくなっている。バランス・オブ・パワーによってのみ平和が守られることを、多くの日本国民は早く理解する必要がある。国家安全保障会議の創設や特定秘密保護法の成立など、安倍政権は日本が国益を守るために必要な措置を、着々と積み重ねている。バランス・オブ・パワーを踏まえた安倍首相の積極的平和主義の実行が、さらに重要になっていくだろう。

 

人間が人間である以上戦争は必然的に必要だ

 先週久しぶりに台湾を訪問し、元総統の李登輝氏と十一年ぶりに対談をした。その中で李氏は戦争についての深い考察を述べられた。曰く「人類と平和を論じる前に、戦争と平和を人間はどう考えているかを言わなければならない。戦争はいけない、戦争はやむをえない、戦争は戦うべきだ、などと話す人の価値判断ばかりが先走った議論が多いなかで、現実の世界における平和がどのように可能となるのかを考えなければならない」として、トルストイの「戦争と平和」の結びの言葉を引用している。「私は進行している歴史上の事件の原因は、我々の理性の理解の及ぶものではないことが明らかだと悟った。数百万の人間がお互いに殺し合おうとし、五十万を殺した事件が一人の人間の意志をその原因としているはずがない。何のために数百万の人間がお互いに殺し合ったのか、世界の創造の時から、それは肉体的にも、精神的にも悪だということがわかっているのに? それが必然的に必要だったからであり、それを行いながら、人間たちはミツバチが秋になる頃、お互いに殺し合い、動物の雄たちがお互いに殺しあう、あの自然の、動物学的法則を実現していたからである。それ以外の答えを、この恐ろしい問いに答えることは出来ない」と。古今東西、人間が人間である以上、戦争は必然的に必要だったというのが、李氏の考えだ。
 日本は先の大戦以降、米ソの冷戦により、西側のショールームとして、アメリカ主導の下経済的繁栄を社会主義国家に見せつける役割を果たしてきた。そしてその後も東西代理戦争と言ってよい朝鮮戦争やベトナム戦争の特需で冷戦漁夫の利を得て、日本は経済的に急速に発展した。しかし冷戦終結後、アメリカは主要な敵をソ連から日本とドイツに変え、情報機関も動員して日本の経済的な優越性を削ごうと経済戦争を仕掛けてきた。李登輝氏は次のように分析している。「そもそも『失われた二〇年』といわれるほど、日本が長期低迷に陥った原因とは何だったのか。遡ると、それは一九八五年のプラザ合意に行き着く。それまで一ドル=二五〇円前後だった円相場は、八七年末には同一二〇円近くにまで急騰した。円高によって国内でやっていけなくなった日本企業からの資本と技術の導入によって、台湾や韓国、シンガポール、香港など東アジア諸国は恩恵を受けたが、日本にとっては大きな重荷になった。以後も日本企業は一生懸命コストを下げ、モノづくりを続けてきたが、それも限界が近づいていた。やがて日本では、『デフレの原因は人口減である』という人が現れた。だが、これは問題を見誤っている。経済成長の主要因は、国内投資、輸出、国内消費、技術の変化(革新)の四つであるが、日本にとって一番重要なのは輸出である。資源のない日本が経済を発展させるためには、外国から資源を輸入し、新しいモノをつくって海外にどんどん輸出するしかない。これは台湾も同じだ。しかし日本では円高によって、輸出が伸び悩んでいた。日本がこの苦境を打破するには、為替を思い切って切り下げるしかないということを、私は繰り返し建議してきたのである」と李登輝氏は述べた。

 

指導者が躊躇してきた円安政策を安倍首相が実施

 これまで隣国の中国や韓国、そしてアメリカからの批判を恐れて、歴代の日本の指導者は円安政策に踏み切れないでいた。この状況も安倍政権によるアベノミクス導入によって、大きく変わった。円安が進むに従って、一年間で株価も倍に、輸出も増えてきた。日本は先端科学技術立国、観光立国として成長していくべきで、二〇二〇年の東京オリンピック開催決定により、世界中から観光客を集める国になるだろう。韓国はこの日本の円安政策にも抗議をしているが、批判すればするほど日本の資本が逃避し、自国の経済が悪化することがわかっていない。サムスンなど韓国メーカーは日本製の部品を使った製品作りで、世界のシェアを獲得してきた。日本との関係がさらに悪化してこの供給が止まれば、韓国経済も崩壊するだろう。日本と東アジアは一体化して、運命共同体として経済成長していくべきなのだ。
 これまでの日本の指導者は、外国から「押される」と「引く」ことしかできなかった。間違ったことでも、内政干渉に近い事でも言うことを聞き、近隣諸国条項によって自分の国の教科書でさえ、自分では決められない状況だった。しかし朴政権が反日強硬路線を貫く韓国と尖閣諸島問題に拘る中国に対して、安倍政権は真っ当な対応をとっている。両国をこの対応に慣らして、東アジアの力の均衡を取り戻すことが、平和を維持するための唯一の道だろう。
 河野談話の根拠となった調査がでたらめだったことが、産経新聞のスクープとして報じられていたが、そもそも従軍慰安婦というものはなく、あったのは戦時売春婦だ。強制連行や性奴隷というのも、事実無根である。しかしアメリカでは地方議会の議決で次々と慰安婦像が建てられている。とんでもないことだ。南京大虐殺についても、国民党の戦時中の情報謀略戦の一環として作られたデマであることが明らかなのに、謝罪要求を繰り返している。その結果が村山談話、河野談話だ。これらの手枷足枷を外すべく日本は、河野談話、村山談話の破棄を宣言すべきだ。一時は中国や韓国との摩擦が高まり混乱するかもしれないが、毅然と真実に基づく事実を発信して対処していくべきだろう。
 強い日本を取り戻すための国家安全保障会議と特定秘密保護法だったが、今回のメディアを中心とした反対の大号令は、まさに異様だった。まともな国家のための法律制定時のこれだけの大騒ぎは、オスプレイの導入やサーズや新型インフルエンザ、原発事故などの時と全く同じ。メディアの煽りによって、日本は多くの国益を失っている。こんなメディアを中心に、日本が真っ当な国になることを阻止したいと考える反日日本人がいることが、最大の反日国家は日本と言われる理由だろう。良識あるメディアを作っていく必要がある。安倍政権は反日に屈せず、真っ当な国への施策を、一つずつ確実に進めていって欲しい。

12月20日(金)午前1時00分校了