社会時評エッセイ

安倍首相は 盤石の保守政権を目指せ

藤 誠志

武器輸出や核戦略で 新しいスタンスを表明

安倍政権が誕生して十カ月が経過した。満を持しての再登板ということもあって、自らの信念を戦略的な手段によって、着実に実現してきているというのが私の印象だ。第一次安倍政権時に正面切って掲げた「戦後レジームからの脱却」を、日本が独立自衛の国家として自国の影響下から逃れようとしていると見たアメリカは、見えない「アメリカの壁」によってその意図を阻むべく、安倍首相を辞任へと追い込んだ。その経験から今回安倍首相は、巧みな迂回戦略を取りながら政権を運営している。村山・河野談話は間違っていると分かっていても踏襲を明言し、靖国神社には春季と秋季の例大祭に真榊を、八月十五日の終戦の日に玉串料を奉納して、参拝を行わなかった。このようにアメリカや中・韓を過度に刺激することを避ける一方、日本の保守化に向けて着実に手を打ってきた。内閣法制局長官に集団的自衛権行使を容認するとしている外交官出身の小松一郎氏を起用、海上保安庁長官に初めて制服組の佐藤雄二氏を充てた。
武器輸出にも道を拓こうとしている。国際大学学長の北岡伸一氏を座長とする政府の安全保障と防衛力に関する懇談会は、武器輸出三原則の見直しを提言する見込みだ。十月十日付けの日本経済新聞朝刊の政治面では、「会合では三原則について『自由と民主主義など基本的な価値を同じくし、平和愛好的で、非膨張主義的な国と協力を深めるのはいいことだ』などと再検討を求める意見が相次いだ。北岡氏は会合終了後、記者団に三原則の見直しに関し『(国家安全保障戦略で)方向性を打ち出すことになる』との見通しを語った」と報じられている。
八月六日、アメリカのルース駐日大使も参列した広島の平和記念式典の挨拶の中で、安倍首相は原爆投下を初めて「非道」と表現した。また産経新聞の十月十一日付け朝刊一面には「核不使用声明に署名へ」という記事が出ている。「政府は一〇日、核兵器の非人道性と不使用を訴えるため、有志国が国連の場で準備を進めている共同声明に署名する方針を固めた。同趣旨の声明に日本が同調するのは初めて」で、「これまで米国の『核の傘』に依存する日本の安全保障政策と一致しないとして署名を見送ってきたが、核の抑止力を認める方向で声明が修正される見通しが立ったことから、賛同することにした」という。日本は徐々にではあるが、核兵器に対しても、独自のスタンスを取りつつある。
国民の関心が最も高い経済政策に関しても、安倍政権は抜け目なく対応を行っている。十月一日安倍首相は、二〇一四年四月から消費税を八%に引き上げることを発表したが、同時に数々の減税措置を取ろうとしている。十月十日付けの日本経済新聞朝刊の一面には、「交際費、大企業も損金に」という記事が掲載されている。「企業の交際費は一九九二年度には六・二兆円あったが、一一年度には二・八兆円にまで減少。零細企業が多い飲食店の経営を圧迫するとともに、消費の伸びを抑えた一因との指摘も出ていた」という。そこで十四年度の税制改正では、これまで認められていなかった資本金一億円以上の大企業の交際費の損金算入も認めるようにするアイデアが有力とのこと。私も効果が見込める減税措置だと思う。

 

日本経済の復活のためには 原発の再稼働が急務

今の日本にとって、経済政策として最も急務なのは原発の再稼働だろう。事故を起こした福島第一原発の原子炉は、四十年以上前にアメリカのゼネラル・エレクトリック社によって設計された古い型のものだ。近くにある女川原発は日本製で、福島第一原発よりも震源地に近いにも拘らず、地震にも津波にも耐えて、事故を起こさなかった。本来ならばこれで日本の原発の安全性が証明されたと言えるはずだ。にも拘らず、その後日本の全ての原発が発電を停止することになってしまった。  そもそも原発は、核燃料を核分裂させることによって発生した熱で蒸気を発生させ、これでタービンを回して発電を行うものだ。定期点検の際には、制御棒を入れて核分裂を止め、発電を停止する。しかし核燃料は、崩壊による放熱を続けるため、冷却は続けなければならない。福島第一原発の場合も、地震発生時に原子炉には制御棒が挿入されて緊急停止して、核分裂が制御されていた。しかしその後、津波が襲ってきて電源が失われたために、崩壊熱を冷却するための冷却水のポンプが使用できなくなって高熱となり、メルトダウンを起こした。よく誤解されているが、原子炉そのものが制御できなくなり、暴走して爆発したチェルノブイリ原発の事故とは全く異なる。福島の爆発は燃料棒を被覆してるジルコニウムが高熱で還元されて出てきた水素が、建屋に充満して、適切なベントができず、水素爆発したものだ。だから福島第一原発近海の水を検査しても、放射線量はWHOの飲料水の水質ガイドラインの五百分の一しか検出されないのだ。
現在、日本の原発は全て発電を停止しており、再稼働については、七月から行われている新基準による安全審査の結果次第という状況だ。しかしこの安全審査は原子力規制委員会からの追加資料提出要請などで、遅々として進んでいない状況だ。そもそも原子力規制委員会は、脱原発を目指すと言い出した菅直人元首相が、原発再稼働を認めないために作った委員会と言える。メンバー全員を総入れ替えしてでも、一日も早く原発の再稼働を行わないと、折角盛り上がってきているアベノミクスによる景気の上昇の芽が、毎年四兆円増加すると言われている原油や天然ガスの購入によって潰されてしまうかもしれない。これだけは何としてでも、避けるべきだろう。
一九七三年十月に始まった第一次オイルショックでは、一バーレル二ドル台だった原油価格が、十ドルを超えるまで上昇した。世界経済が大混乱する中、日本は省エネ技術を磨くことによってこの価格高騰を克服、オイルショックを乗り越えて経済を発展させることができた。そんな日本であるからこそ、中長期的には今回の福島第一原発事故やその後の原発停止を大きな教訓に、絶対に事故を起こさない原発の開発や効率のよい火力発電所の開発などへと技術力を結集すべきだと思う。

 

オリンピックまでの七年に 日本がやるべきことは多い

従来利用できなかったシェールガスの採掘技術の開発によって、アメリカがこれまでのエネルギー輸入国から輸出国に転じようとしている。これまではサウジアラビアなど中東からの原油を確保することが死活問題だったために、アメリカは中東への介入を積極的に行っていた。しかしその必要が薄れつつある今、アメリカは中東への影響力を弱めつつある。先の大戦以降、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争と戦いを続け、大変な額の戦費と多くの人的犠牲を払ってまでも世界の警察官として君臨してきたアメリカだが、財政の健全さを保つためには海外での軍の展開は縮小し、国内問題に注力するという流れになっている。沖縄駐屯のアメリカ軍も、次第にグアムへと移っているのをはじめ、アジア・中東・ヨーロッパなど多くの地域からアメリカは兵を引き上げているのだ。
それとは逆に、この二〇年間軍事費を年間二桁%増やすペースで膨張を続けているのは中国だ。フィリピンの領土である南シナ海のスカボロー礁を昨年から実効支配し続ける中国は、監視船を留まらせ、環礁入口にロープを張り、フィリピンの漁船が出入りできないようにするなどの圧力を掛けたり、日本の尖閣諸島を自国の領土と言い張って、自国艦船や航空機による領海領空侵犯を繰り返したりと、傍若無人の限りを尽くしている。少し前まで日本は毎年首相が変わり、少し圧力を掛ければ折れる弱腰の国と考えていた中国は、海軍による火器管制レーダーの照射をいち早く公表するなど態度が一変した安倍政権の登場に困惑したのではないか。そもそも安倍政権が誕生したのは、尖閣諸島問題によって中国政府が反日デモを組織して日系企業を襲わせ、破壊したことを見て、日本国民が保守化傾向を強めたからであり、自業自得の感も否めない。また今年本格的にスタートした習近平主席による中国政府の体制は、まだ不安定さが残っている。尖閣諸島問題で威勢よく振り上げた拳の下ろし先に困っているというのが、中国の正直な思いではないだろうか。
迂回戦略を取りながらも妥協はしない安倍政権が目指すべきは、やはりまず景気回復であり、世界第二位の経済大国への復帰だ。その経済成長のためには、国富が無駄に毎年四兆円も消え、電力料金が値上がりするという原発停止という事態は、早急に回避すべきだ。止める必要のない安全な原発を、細かな規制を作り、それを基にした審査で縛り続けているのは、原子力規制委員会だ。これはまさに「日本人の敵は日本人」の典型的な例ではないだろうか。日本人の十数%に及ぶ人々が、悲しいかな「反日」日本人というのが現状だ。真に日本の再興を望んでいる人は五~六%に過ぎず、残りの八割の日本人は、学校の授業で日本人が酷い事をしたと学び、メディアの報道で同じ事を聞いて信じ込んでしまっている。「反日」日本人を宗旨変えすることは難しいが、教育と報道で誤った事を信じ込んでいる人々は十分に啓蒙の余地がある。これらの人々に真実を伝えることが私のライフワークなのだ。
真の歴史に目覚める人が増えれば、間違いなく安倍首相の支持者が増える。真実の啓蒙により、安倍政権は長期政権を目指すべきだ。このまま行けば、二年後の総裁選はもちろん、三年後に行われるであろう衆参同時選挙においても、安倍首相は勝利することができるだろう。そこでさらに三年だ。そこまでいけば、自らのスピーチで誘致に成功した二〇二〇年の東京オリンピックを花道に、首相を引退することを考えても良いのではないか。しかし東京オリンピックまでの七年間に、日本が行わなければならないことは非常に多い。

 

東アジアにおける 平和維持は日本の役割だ

私は九月にパキスタン政府に招待され、商務大臣との「ビッグトーク」の対談を行ったり、歓迎の晩餐会で大統領と同じテーブルにつかせていただいた。パキスタンは私の七十八カ国目の訪問国だ。数多くの国々で政府要人や財界人と対談してきたが、多くの人が日本という国を賞賛する。その言葉は決してお世辞ではなく、数々の根拠が伴ったものだ。世界の人々の方が真実の日本を知っているのに、肝心の日本人がそれを知らない。これを周知し、日本民族の誇りを取り戻さなければならない。その上で憲法を改正し、戦争抑止力として攻撃力を持つ軍隊を整備する。それによって、膨張する中国と内向きに軍を撤退させるアメリカの間に立ち、東アジアのバランス・オブ・パワーを保ち、平和に貢献する。これが積極的平和主義であり、日本の役割だろう。
十月十二日付けの産経新聞の「阿比留瑠比の極言御免」というコラムには「安保政策 公明代表の論拠消滅」という見出しがついている。集団的自衛権の行使容認について、公明党の山口代表は「周辺諸国、近隣諸国および同盟国の理解を促す努力も求められる」としていたのだが、ASEAN(東南アジア諸国連合)の首脳会談によって「周辺諸国」の、東京で行われたアメリカとの二プラス二(安全保障協議委員会)で「同盟国」の理解は得ることができている。残りは周辺国だが、そもそも日本への脅威である中国と北朝鮮がOKと言うわけもなく、反日に凝り固まっている韓国は正常な判断ができない状態であり、理解は元々不必要。従って、公明党の集団的自衛権行使慎重論はその論拠を失ったという主張には、私も全面的に賛成だ。公明党は安倍政権の暴走を防ぐことを自らに任じているようだが、最早その必要はなく、単に自民党の高支持率にしがみついているだけだろう。安保政策でこれ以上足を引っ張るようなら、安倍首相も公明党との連立を考え直す必要があるのではないか。
私は女性の政界への進出を促進するためにも、しっかりとした国家観、歴史観、世界観を持った女性政治家に次期首相になって欲しいと願っている。安倍首相からの盤石の保守政権のバトンタッチによって、誤った歴史というこれまで日本に垂れ込めていた暗雲を一掃し、誇れる日本の再興を現実にするのである。二〇二〇年までに自民党が次の政権を担当できる真っ当な政治家を育成することを要望するし、私も助力は惜しまないつもりだ。

10月20日(日)午後10時00分校了