社会時評エッセイ

憲法を改正して独立した軍を持てる国家を目指せ

藤 誠志

このエッセイに書いた事がどんどん現実になっている

 五月十一日の産経新聞朝刊の一面トップの記事の見出しは、「日米欧一〇一円台大台突破、歓迎と警戒」「株高、一万四千六百円台」とある。これは私が先月号の本稿に「第一次安倍内閣が終焉を迎えた二〇〇七年八月二十七日の日経平均株価の一万六、四三五円やドル円相場/一一四円から考えると、まだまだ好転が期待される」と書いたが、まさにその状況が、現在進行中である。
 同じく先月号の本稿では北朝鮮の挑発行為にも触れ、「あの戦争瀬戸際政策は、核に拘わる金正恩を見限り、親中派政権の擁立を図ろうとする中国からの指導による軍のクーデターを未然に防ぎ、金正恩体制の確立が目的で、米韓軍事演習が四月三十日に終了すれば振り上げた拳を下ろすだろう」と書いたが、五月に入って北朝鮮は明らかにトーンダウンした。
 日本にとって望ましくないのは、北朝鮮が一層中国の傀儡国家となる事や朝鮮半島南北統一が実現し、核兵器を持つ南北朝鮮連邦国家が誕生する事だ。今の金正恩の政策はこの両方に背を向ける事であり、日本にとって好ましからざる国ではあるが、北朝鮮からの恫喝などをチャンスに憲法改正を図り、軍事力を養い、真の朝鮮半島からの危機に備えるためにも、金正恩には日本が真っ当な国家となるまで頑張ってほしい。
 先月号には金正恩が中国からの自立を図ろうとする理由として、核開発をやめない父・金正日が中国の軍事委主席江沢民の工作によって、二〇〇四年、龍川駅で高性能爆薬八〇〇トンも使った列車爆破で暗殺されそうになった事件をあげ、自らも中国から核の廃棄を迫られ、身の危険を未然に防ぐために「軍幹部の指示によるテロやクーデターを恐れて総入替を図った」と書いたが、五月十一日付けの産経新聞には、「北の女性警官『英雄』キャンペーン」「広がる憶測…金正恩氏テロ未遂説」という記事が掲載されている。「北朝鮮では過去、要人の交通事故がしばしば伝えられその都度、交通事故を装った暗殺計画などテロ説が流されてきた」が、「今回、北朝鮮の英雄キャンペーンでは出来事の詳細には一切触れず、『不意の状況で身をていして革命の首脳部(金正恩氏)の安全を決死保衛した』となっている」。私は、この北の女性交通警察官は金正恩襲撃計画を通報して未然に防いだものと思う。金正恩の身辺も常に暗殺の危険が満ちているようだ。様々な事柄で、本稿で書いたことが現実となってきていると感じる。

憲法九十六条改正に反対する議員には刺客を送れ

 先月の本稿のタイトルは「安倍首相は憲法改正をテーマに衆参同時選挙に打って出よ」だった。「〇増五減」の区割り法案を、参院で否決されても参院選挙までに衆院の三分の二の賛成で再可決出来る四月二十三日に衆院を通過させた事で、私は同時選挙への強い意志を感じた。衆参同時選挙となったなら、公明党と連立を解消すれば五十議席が危ないと言う人もいるが、自民党は憲法改正に必ずしも賛成ではない公明党と毅然と決別し、単独で衆参共に三分の二の議席の確保を目指すべきだ。小泉郵政選挙の時と同じように、各候補者に「憲法改正、賛成か反対か」を問い、反対する候補の選挙区には刺客を送り込むのである。ここまで覚悟を決めて選挙に臨めば、衆院で自民党単独でも三分の二の議席の確保は夢ではないし、改憲派議員で三分の二は確保できる。参院の改選議員は半分だから、大勝利したとしても全体の三分の二はかなり難しい。しかし、大きな流れが生まれれば、非改選議員の中に改憲を支持する議員が増え、参院でも改憲派議員が三分の二となる可能性が高い。
 先月は「この衆参同時選挙に反対する最大の難敵は自民党内の護憲勢力だ」と書いた。五月十一日の産経新聞にはこんな記事も出ている。「憲法改正より復興を―。自民党の小泉進次郎青年局長は十日、同党が夏の参院選で争点として掲げる憲法改正に関し、当面は東日本大震災の復興加速を優先すべきだとの考えを示した。小泉氏は『安倍晋三首相は(憲法改正を)争点にしたいだろうし、自民党は憲法改正を党是として掲げている。それは理解する』とした上で『被災地の方々には響かないだろう。憲法改正の前に目の前の生活がある』と述べた」という。安倍首相はこんな人気のある護憲派にも、憲法改正に反対すれば刺客を送るという強い決意が必要である。
 私は衆参同時選挙によって衆参共に改憲派議員が三分の二の議席を確保出来てもその後の国民投票の方が問題だと思う。メディアはアベクロ経済の光と影とかで、輸出産業の疲弊を訴え、所得格差の拡大や、反原発・反改憲などと煽ってくる。「誇れる祖国日本の興廃はこの一戦にあり」と一大国民運動を興して、国民投票で過半数を獲得し、真の独立国家とならなければならない。私は、「景気も上昇し続け、支持率も上がり続けている今を除いて憲法改正のチャンスはないと思う。三年後に衆参同時選挙に打って出ても両院で三分の二の議席の確保は無理だ」と思う。
 首相は、解散に関しては嘘をついても良いとされている。ここは参院選に専念するふりをしておいて、いきなり解散するものとは思うが、ちょっと心配で先日、安倍首相に直接電話で、「今度こそ衆参同時選挙に打って出るべきです」と強く進言した。

科学的根拠もなく不安を煽り多くの犠牲者を出した

 東日本大震災の被害に関しては、もっと冷静な目で見るべきだ。復興庁のまとめによれば、東日本大震災の際の福島第一原発の事故による放射能で死亡した人が一人もいないのに、事故後の避難生活において様々な要因で亡くなったり自殺したりした「震災関連死」が、一都九県で二千六百八十八人に及ぶという。その内、福島県の方は、千三百八十三人と五十一%を占める。これは原発事故による放射能から避難のため、強制的に急速移動させられた事で亡くなった方が多いからである。年間で一〇〇ミリシーベルト以上の被曝となる地域であっても、一カ月間程度自宅の屋内外で滞するならば被爆は10ミリシーベルト以下となり、健康被害が出る可能性はない。津波などの危険がなく、急いで避難する必要もないのに、病院で点滴などの治療中の重篤な人々までも強制的に急速移動させた為に、バスの中や避難先で亡くなる方が続出したのだ。このように科学的根拠もない事で不安を煽って犠牲者を出した責任は重い。
 年間一〇〇ミリシーベルト以下の被曝量では、明確なガン死亡率の増加が確認できないという科学的なデータがあるにも拘わらず、年間一ミリシーベルト以上の線量があれば除染するという民主党の馬鹿げた愚かな政策によって、何兆円もの税金が費やされている。強い反対のため全国五十四基の原発の内、五十二基が定期点検などから再稼働できないままでいるが、発電を停止しても各原子炉の中には核燃料が残っており、その崩壊熱の冷却を続けなければならない。その分コストだけが増大するという最悪の状態にある事を、多くの人が認識していない。また十数万年も前に起こった地震の活断層の上に原発があるといって、正常に運転していた原発を廃炉にするなど、原発に関わる多くの事で、科学的根拠や確率計算に基づき考察するという視点が欠けている。これらができていれば、例えば避難する範囲も絞ることができ、震災関連死の犠牲者も大幅に減らす事ができたのではないだろうか。

津波の恐れのある沿海部に防災マンションを

 地震で亡くなる人の多くは、木造家屋に住んでいる人であり、鉄筋コンクリートでできたマンションの居住者が、家具が倒れて怪我する事はあれど、建物の下敷きになって圧死したり、焼死したり、津波にさらわれて亡くなったケースはない。津波対策で何兆円もかけて、海が見えなくなる高い防波堤を設置しなくても、その高さ以上の鉄筋コンクリートのマンションを半額程度の補助金を支給して造れば、屋上に避難する事で助かる。私の提案は、そんな防災マンションを沿海部に二百メートル間隔で建設することだ。高台がないエリアなら、マンション居住者はもちろん、付近の一戸建てに住む人も実際に津波が来ている事を見たり、押し寄せる音で気付いてからでも駆け込んで階段を上れば難を逃れる事ができる。漁師の方も内陸の高台に住むよりは、海岸沿いの防災マンションかその付近に戸建て住宅を造って住む方が便利だろう。六階建てマンションは十カ月もあれば建設できると地震の直後に本誌に書いたが、そんな計画が進行しているという話を聞いた事はない。
 原発の再稼働に向けて安倍首相には英断を期待している。一方、日本政府の金星は、サウジアラビアと原子力協定を結び、トルコから原発建設受注を得るなど、原発技術の輸出に大きな道筋を拓いた事だ。最新の原発は、非常時に炉心の崩壊熱による蒸気を使用したタービンによってポンプを駆動する改良型沸騰水型軽水炉や非常用の炉心冷却装置のついた加圧水型原子炉で、福島の沸騰水型軽水炉と比べて非常に安全性が高い。日本は今、事故の直後で原発アレルギーになっており、流れ星が頭に当たるのと同等の天文学的に低い確率の事故を恐れている状況だ。勇気を持って原発を再稼働させ、輸出もどんどん進めていくべきだ。

米国は尖閣で中国と直接戦闘に入る事はない

 五月上旬にアメリカを訪問した韓国の朴槿恵大統領が絶えず口にしたのは米韓中という表現だが、日本を無視するのは韓国にとっても利口な方策ではない。五月十一日の産経新聞のコラム「緯度経度」には「『尖閣』揺れるオバマ政権」というタイトルでこんな記事が出ている。「オバマ政権ではだれも『尖閣への武力攻撃には米軍もその防衛にあたる』という具体的な誓約までは言明しない。日本側としてはなんとも気になる曖昧さが残る」「この点での不安材料は中国の海洋戦略の専門家マイケル・マクデビット氏の四月の証言である」「同氏は議会諮問機関『米中経済安保調査委員会』の公聴会で『米国はこの無人島をめぐって中国人民解放軍との直接の戦闘に入ることは避けるべきだ』と述べた」という。「無人島」などと呼び、尖閣諸島の重要性が理解できないオバマ政権には非常に失望した。日本列島と沖縄、そして尖閣諸島を結ぶラインによって、中国が太平洋に進出してくるのを抑えているのである。アメリカがこのような認識では、膨張する中国と撤退するアメリカという流れにも合致するように、ハワイと日本の間に線が引かれ、太平洋を中国とアメリカが分割統治する事も現実になるかもしれない。日本にとってはアメリカが民主党政権の時に不利益を被ることが多い。

報復攻撃用兵器を保有して侵略されない国家を目指せ

 衆参同時選挙で三分の二の議員数を確保できるかもしれないという絶好のチャンスを掴み、安倍政権は憲法改正への道を切り拓き、自分の国は自分で守るという普通の国になる第一歩を踏み出すべきだ。七月の衆参同時選挙に勝利すれば、三年間は選挙がない。この間に経済を立て直し、GDPを増加させれば、GDPの一%以内という枠がある国防予算も増やす事が可能だ。これまで日本は侵略しない国と評価されてきたが、さらに侵略されない国としての地位も固めなければならない。そのためにも憲法とセットで結ばれた日米安保条約は、日本を真の独立国家となる事を阻む軛であり、憲法九条改正後は日英同盟の様な条約に改定しなければならない。
 軍の独立を図るためには、独自のGPS衛星を打ち上げ、コンピュータシステムの独自化を図る必要がある。これまでのようなアメリカ製のイージス艦やミサイル防衛システムのような防御一辺倒の兵器を多額の費用を使って備えても、同時に多くのミサイルを打ち込まれた場合には役に立たない。自衛目的の兵器の購入を一切やめて、その予算で独自の攻撃的な兵器を開発すべきだ。まず北京や平壌など特定の地域だけに壊滅的な打撃を与える事ができる、報復攻撃用兵器として巡航ミサイルや弾道ミサイルを開発し、配備する。これだけで中国側の侵略意欲を大きく挫くことが出来るだろう。更に「全ての爆弾の母」とも呼ばれるMOAB(大規模爆風爆弾兵器)のような強力な通常兵器も備えるべきだ。日本の先端科学技術を駆使した弾道ミサイル迎撃用レーザー砲のような効率の良い対ミサイル兵器の開発も重要である。日本は即座に核兵器を造る事ができる部品は用意するものの、公式には核を保有しているとも保有していないとも、一切言及しない潜在的な核保有国家を目指すべきだ。核兵器は使われる事のない政治的兵器であり、持っているかもしれないと思わせる事で抑止力が働く。これらの攻撃用兵器を保有すれば抑止力が高まり、日本の安全度が増す事は間違いない。日本の高い技術力を使ってアメリカが認めない戦闘機の開発にも乗り出し、武器輸出禁止三原則を変えて、友好国にも武器を供与する事で、日本は台湾などの近隣友好諸国と集団的な安全保障を図るべきだ。
 安倍首相の最初の外遊先はベトナム、タイ、インドネシアだったが、さらにGW中にはロシア、サウジアラビア、UAE、トルコを訪問した。これらを見ると、中国を取り巻く形で外遊を行ない、包囲網を築いている事がわかる。これから日本にとって重要なパートナーはロシアだ。ロシアはシベリアの人口が減少する一方、国境線付近の中国領の人口が増加している事に人口圧力による脅威を感じている。またアメリカでシェール革命が起こり、世界の資源地図が書き換わろうとしている中、サハリンの天然ガスを日本に購入して欲しいのだ。ただプーチン大統領は冷徹な政治家であり、十分気を付けなければならない。北方領土問題においても「引き分け」という言葉で面積等分論に流れるのではなく、あくまでも原則を貫き四島返還を求め、これが叶う見込みが出たところで資源の購入や開発の援助を約束するべきだ。ロシア以外でもトルコの原発をはじめ、三菱商事がモンゴルの空港建設を、双日がインドの貨物鉄道建設を受注するなど、各国で日本の強みを活かした関係構築を進めている。このような流れで、日本はアメリカとの友好を基礎としながらも独立した軍を持ち自衛のできる強い国家となり、東アジアのパワーバランスの核として、(謂れなき先の大戦における非難を払拭して)世界から期待と信頼が集まる国家を目指していくべきである。
5月24日(金)午後11時59分校了