社会時評エッセイ

国際政治は力の論理で差配されている

藤 誠志

住まい面積倍増十カ年戦略

 昨年十二月に発足した安倍晋三政権は政策の一丁目一番地を経済の活性化と定め、緊急経済対策を打ち出した。その骨子は「大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を『三本の矢』に円高・デフレ脱却を目指す」「日銀に物価目標導入と積極的な金融緩和を要請」などだ。二十兆円規模の経済対策によって、GDPの二%押し上げを見込むという。私としては、参院選挙まで経済第一を掲げる政策は理解出来るが、そうであれば、もっと分かりやすい大目標を前面に掲げて、国民を鼓舞すべきだと思う。
 一九六〇年に池田内閣が打ち出した所得倍増計画に倣い、住まい面積倍増十カ年戦略を発動し、規制緩和や税による誘導によって、これから新築する住まい面積を十年後には現在の二倍の面積とする戦略を打ち出し、この目標を達成に導くのだ。
 なぜ住まい面積倍増なのか。それは大家族制度の復活のためである。先の大戦後、アメリカによる家督相続の廃止によって大家族制度はどんどん崩壊し、核家族化、さらに最近は単身赴任と偏差値教育によって個家族化が進んでいる。
 六人家族の祖父母の実家を離れて、東京に借家住まいの家庭の父親は単身赴任で仙台に、二人の子供はそれぞれ進学で京都と札幌に離れて暮らしている。そうすれば相当収入があっても生活する負担は大きく、豊かな暮らしは送れない。大きな家に三世代、四世代で住めば、親から子供、そして孫へと知恵の伝承が行われるし、子供はたくましく育ち、引きこもりも少なくなり、相互扶助も可能だ。お互いがお互いの面倒を見るようになれば、老人ホームや介護の費用負担が少なくなるし、小さい子供を託児所に預ける必要もなくなる。様々な費用負担が減る分、豊かな暮らしのために収入を使うことができるはずだ。しかしなぜか日本の税制では、大型家屋に対して減税が適用されない。例えば延べ床面積が二百四十平方メートルを超えると、不動産取得税の減額措置が適用されなくなり、固定資産税についても、土地や家屋の面積が大きくなると、急に税金が高くなる。一家族一住宅という持家政策を進め、小さな家をたくさん作ってきたのが戦後の日本の住宅政策だ。しかしその結果はどうか。一人暮らしの人は急病となった時、手当てが遅れて死ぬ確率は高い。統計はないが、おそらく毎年十万人近い人が寂しく孤独死を迎えているし、年間三万人近い人が自殺している。地方に特徴のある大学とか産業とかを税の誘導で誘致し、大家族制度を復活することで、これらの人々を救い、少子高齢化からくる人口減少に歯止めをかけるのだ。また大型住宅を造って三世代・四世代で住めば、固定資産税も取得税も半額とか三分の一になるようにすれば、建設が促進され、景気回復を先導することもできる。
 

日本は再び世界第二位の経済大国を目指せ

 景気刺激策として即効性のある政策は、都市部建築物の容積率の一段の緩和である。それと東京都心の大深度地下に、用地買収費用の必要もなく、二百キロメートル造っても一兆円程度で出来る縦断・環状道路と山手線を地下鉄化して造ることで、物流スピードのアップと物流コストのダウンを狙えて経済活動に大きなメリットを与えることになる。資本主義経済の歴史はインフレであり、デフレの時はあっても長期的にトータルで見れば必ずインフレである。この事業の原資を、デフレ超低金利時代の今だからこそ可能な超長期の、五年以上保有すれば相続税評価額を半額とする百年償還の建設国債で賄う。ゼロ金利に近いこの建設国債を百年に亘り、地下道路や地下鉄の通行料によって償還していくのである。こうして出来た施設の運営権を民間に譲渡して、初期投資の一部を回収するスキームで公共事業に着手するべきである。
 日本経済は、この二十年間デフレが続いていて、その間に世界の実質GDPは三倍近く、中国の実質GDPは十倍になっているにも拘わらず、日本の実質GDPはほとんど変わっていない。その結果、中国に追い抜かれ、世界第二位から三位に転落してしまった。中国は日本などから進出してきた企業の最新設備の下、安い人件費で作った製品を世界中で大量に販売して経済成長を遂げてきた。一方の日本は、老朽化した機械設備で、国内の高賃金の労働力を利用することで競争力を失っている。そこで、減価償却期間を大幅に短縮することによって、最新の設備の導入を促すべきだ。また、研究開発費はその設備も含めて初年度一括償却を認め、企業の未来に対する投資も勧めるべきである。国も予算を大学などの研究機関にもっと投入すべきだ。定年退職により、多くの優秀な技術者が中国や韓国に流出、家電を中心に日本の多くのメーカーが苦境に立たされている。しかし昨年京都大学の山中伸弥教授がノーベル医学・生理学賞を受賞したことで、日本の自然科学系のノーベル賞受賞者は十五名となった。これは世界では六番目の多さだ。一方中国や韓国は、自然科学系のノーベル賞を一つも獲得していない。日本が持つ基礎的な研究開発力はアジア随一である。この力を活かして新しい産業を興し、世界に発信をしていくべきである。

 

領土に対する侵犯には毅然とした態度で臨め

 経済問題の他に今日本が直面しているのは領土問題だ。これらは全て日本が周辺国と緊密な関係を結ばないように、アメリカが画策したものだ。過去において日ロ両国で北方領土問題の交渉中に出された様々な解決策が悉く潰されてきたのも、アメリカの存在があったからだ。その交渉に関わり、ロシア情勢に詳しい鈴木宗男氏や佐藤優氏が刑事事件で裁かれることになったのも、プーチン大統領との親密な関係から解決を図ろうとした森喜朗首相の政権が一年しか持たなかったのも、アメリカの意向に背いたからだ。竹島問題も、アメリカの傀儡政権だった李承晩大統領が李承晩ラインを策定した時に、トルーマン大統領が一言「NO」と言えば済んだ話だ。これを行わなかったのは、大日本帝国の復活を永遠に阻止しようとしたアメリカが、白人国家の伝統的な植民地政策である「デバイド&コンカー(分割して統治せよ)」に従って、日韓を対立状況に置いたままにしたかったからに他ならない。
 尖閣諸島も、沖縄の一部としてアメリカが日本に返還した島であり、歴史的にも中国領だったことは一度もない。一九六九年に実施された国連の機関による調査で海底油田の存在が明らかになったため、その翌年から中国が領有権を主張し始めたのだ。その時の中国には経済力も海底油田発掘の技術力もなく、結論を先送りにするのが得策と考え、「棚上げ」にした。その後一九九二年に施行した領海法で中国は尖閣諸島を自国の領土と明記し、先に「棚上げ」を一方的に破棄したにも拘わらず、昨年の民主党政権の尖閣諸島国有化に意図的に反発。監視船などによる領海侵犯を繰り返し、さらにこれまでなかった領空侵犯まで行なっている。この中国の強硬姿勢について、日本の中でも、「棚上げを先に破棄し、国有化した日本が悪い」とか、日本が今は実効支配しているのに、「国際司法裁判所に提訴すべき」と主張する人や政党がある。まさに「日本人の敵は日本人」という言葉のままの馬鹿げた主張だ。
 このままだと中国は常時領海侵犯をして、自分達が実効支配しているという主張をしかねない。日本は古くなった海上自衛隊の自衛艦を海上保安庁に払い下げて、この事態に備えるべきだろう。中国機が防空識別圏に侵入することに対する航空自衛隊のスクランブル発進も増えてきた。経済を優先している安倍政権だが、外交・安全保障面で遅れをとって、尖閣諸島を実効支配されるような事態を決して招いてはいけない。ここで毅然とした姿勢を示さないと、次は対馬、そして沖縄と、中国の要求はどんどん広がっていくだろう。
 

世界から植民地を無くし人種平等に導いた日本の功績は大きい

 正月休みに『なぜアメリカは、対日戦争を仕掛けたのか』という本を読み始めたらやめられなくなり、一気に読み切ってしまった。
 この本の論調は私と全く同じであった。第一部は「アメリカに強要された日米戦争の真実」として外交評論家の加瀬英明氏が、第二部は「ペリー襲来から真珠湾への道」としてヘンリー・スコット・ストークス氏が執筆している。まず、大東亜戦争はルーズベルトの謀略によって日本が追い込まれて始まったものだが、その背景にはキリスト教に基づく人種差別があったとし、日本はアジア解放のために戦い、戦後アジア諸国が独立し、その波はアフリカ諸国にも及んで植民地主義が終焉し、今日の人種平等社会が実現した、と日本の功績を大きく評価している。第一部では、真珠湾を奇襲することで日米戦争が始まったとされているが、昭和天皇は一貫して平和を望み、日本政府と軍部は直前まで日米戦争を回避しようとして、真剣に努力していたという。一方、その傍らで一九四一(昭和十六)年七月二十三日、ルーズベルトは蒋介石政権に爆撃機を供与し、アメリカの「義勇兵」に日本本土を爆撃させる「JB‐三五五計画」にサインして、「真珠湾」より先に日本を攻撃する計画を承認していたのだ。またアメリカは当時日本の外交暗号の全てと日本海軍の暗号の一部を解読していて、日米開戦を回避しようと日米交渉に臨む日本を、「赤子をあやす」ようにして時間を稼ぎ、戦争の準備をして日本を暴発させ、日本が真珠湾を攻撃する事を知りながら、全ての空母と新鋭艦を離脱させた上で、ハワイの太平洋艦隊を生贄にしたのである。東京裁判の判事の一人であるオランダのバート・A・レーリンクは、「人種差別が太平洋戦争の主因の一つだった」とし、歴史家のアーノルド・トインビーは、「日本は白人のアジア侵略を止めただけではなく、帝国主義、植民地主義、人種差別に終止符を打つことを成し遂げた」と日本の功績を称えている。「今日、ゴルフでタイガー・ウッズが活躍し、黒人の大統領まで登場したのは、日本の功績である。日本が先の大戦で大きな犠牲を払って、幕末から夢見てきた人種平等の世界を、招き寄せたのだった」と第一部は結ばれている。
 第二部では、ストークス氏がアメリカ人の立場から、ペリー来訪から大東亜戦争に至るまでの日本の功績を綴っている。イギリス軍に所属していたストークス氏の従兄弟は、一九四一年半ばにビルマのラングーン飛行場にアメリカ軍戦闘機と爆撃機が翼を連ねているのを目の当たりにし、ルーズベルト大統領がアメリカ国民を欺き日本に対する戦争の準備をしていたことに、義憤に駆られたという話をしたという。アメリカは、イギリスから大西洋を渡った清教徒が自分勝手に「約束された地」と呼んだ北アメリカ大陸を侵略して築いた国であり、領域を広げるに当たって、天賦の権利を有していると信じていた。またペリーも、白人キリスト教徒だけが文明世界の家族でそれ以外は野蛮人だという世界観を持っていた。一九四五(昭和二十)年九月二日に、戦艦ミズーリ号艦上で挙行された日本の降伏文書調印式には、マッカーサーはペリーが浦賀に来航した時に掲げた国旗の現物を取り寄せ、アメリカ国民に対してペリーの再来であるかのように演じてみせた。アメリカはペリー来航以来、一世紀を隔ててその悲願を達成したのだ。日本は日露戦争に勝利し、大東亜戦争においても緒戦で目覚ましい勝利を上げたことで、白人の不敗神話という幻想を叩き潰した。さらに日本はアジアの国づくりに取り組み、日本軍は現地の青年たちに軍事訓練を施した。このことが、アジア諸国が独立するにあたり強力な助けとなった。人類がこの地上に植民地が存在せず、人種平等の理想の世界を迎えることができたのは、日本が大東亜戦争に立ち上がった成果だった。そして、日本が立ち上がるきっかけを作ったのがペリーである。ストークス氏は、大東亜戦争における日本の功績を称え、「ペリーは『パンドラの箱』を開けたのだった」と結んでいる。
 

これからの六年間が日本再生のチャンスだ

 日本人はあまり認識していないが、国際政治は力の論理で差配されている。何が正しいかではなく、どちらが強いかで物事は決まっていくのだ。嘘も公然と繰り返せば事実になる。韓国は日本大使館の前に慰安婦像を作り、アメリカの下院で非難決議を行わせたりして、ありもしない従軍慰安婦強制連行を史実化しようとしている。南京大虐殺説も同様だ。政権が一番強力なのは、政権を獲得したばかりの時だ。私が安倍政権に期待したいのは、真実に基づかない全ての非難に対して、論陣を張ることだ。朱学勤・上海大学歴史学部教授は南京大虐殺の犠牲者名簿が一名分もないと指摘している。これが真実である。どの国も国のために尊い犠牲を払った兵士をしっかり弔っているのだから、靖国神社参拝を咎められる謂れもない。自国の教科書なのに、近隣諸国条項によって自由な記述ができないというのもおかしい。『なぜアメリカは、対日戦争を仕掛けたのか』でも書かれているように、日本は本来世界から称賛されるような道を歩んできたのである。このことをそろそろ前面に押し出して主張すべきではないだろうか。
 安倍首相がこれらの主張をあまり口にしないのも、七月の参議院選挙までのことだ。このままいけば、自民党は参議院でも過半数を獲得できるだろう。その後は三年間選挙がない。そしてその後は衆参同時選挙に打って出る可能性が高い。そうすればさらにまた三年間選挙がない。この六年間は日本再生のチャンスの時である。小泉首相以降六人も毎年首相が交代するのは、日本のメディアが偏向しているからだ。真実に基づく主張を一気に出せば、反日メディアも反論の矛先が分散してどこから批判すれば良いかわからなくなる。メディアを敵に回すことは逆に国民を味方にすることに繋がり、三年半後の衆参同時選挙で、自民党と改憲勢力が衆参共に三分の二の議席を獲得することで、憲法改正への道筋をつける。このことが日本が再び中国を抜いて世界第二位の経済大国に返り咲くことに繋がる。そのために安倍首相には、これからできるだけ長くその地位に留まって、誇れる祖国日本の再興の為に頑張って欲しい。
 一月十二日の朝日新聞の朝刊に、主筆の若宮啓文氏が、「もしかすると本当に憲法が変わり、国防軍が登場する日は遠くないかもしれない」と、「改憲」について、定年退職直前の最後の一文を掲載している。「九条を改めることがすべて危険などとは思わない」としながらも、「九条は過去に軍国主義で失敗した日本のメッセージ」と本音を述べている。そして「北朝鮮の核や中国の軍拡、韓国の反日など日本を刺激する東アジア情勢があっても、日本から近隣国を刺激する行動は慎むべき」と結んでいる。しかし教科書問題誤報で明らかなように、マッチポンプ的に東アジアの反日感情を作り出してきたのは朝日新聞自身であり、これは彼らが真摯に反省すべきことだ。「朝日が変わる時が日本が変わる時」というのが私の持論だが、「安倍晋三叩きは朝日の社是」と言った若宮氏が、引退にあたって訳の分からない記事を載せた事からも、彼の引退が朝日新聞の変わり目となるのでは、と私は願っている。
〈参考資料〉
「世界のGDP」
・IMF World Economic Outlook Databases(2012年10月版)
1月20日午後7時00分校了