社会時評エッセイ

藤誠志 社会時評エッセイ242:外交とは軍事力を背景に国益を追及する事である

藤 誠志

世界は再びインフレへの道を歩み始めた

 今年はアメリカ大統領選挙の年だ。オバマ大統領は再選には景気回復が最も大事と、FRB(米連邦準備理事会)を利用して、金融緩和策第三弾(QE3)としてゼロ金利を約束する期間の延長に加えて、住宅ローン担保証券の購入額に総枠を設けないと決めた。
 今回はオバマ氏にとって最後の選挙となるだけに、『絶対に悔いの残る戦いはしたくない』と、無原則な金融緩和策を採るなど、気合を入れてきた。これで再び世界はインフレへの道を歩み始めた。オバマ大統領は、二〇〇八年の指名受諾演説では、キャッチフレーズの「チェンジ」を連発して、聴衆を熱狂の渦に巻き込み、初の黒人大統領によってアメリカが大きく変わると、人々に期待を与えたのである。翌二〇〇九年の日本の総選挙で民主党が勝利して政権を獲得できたのは、このオバマ大統領誕生の影響が大きいが、それよりも大きな原因は、日本のバブル経済が崩壊し、その後のデフレ政策による経済力の衰退と自民党が左傾化して支持を失ったことにある。メディアの誘導と実現不能のばらまき公約で民主党政権が生まれた。しかし「日本列島は日本人だけのものではない」とか「少なくとも県外・できれば国外」などと主張し日米関係を破壊させた鳩山元首相や「脱原発」を主張する経済音痴の菅売国政権の誕生により、日本の近隣諸国(中国・韓国・ロシア)が相次いで領土問題や自国の歴史観の押し付けで圧力をかけて来ているのである。

同盟国アメリカは常に自国の国益第一の政策を押しつけてくる

 ポツダム宣言受諾後にも拘わらず、ソ連が日本固有の領土である北方領土に侵略することを容認し、日本を占領統治してきたアメリカは、日本に再軍備を禁止する憲法を押し付け、日米安保の必要性をいつまでも日本に感じさせるために北方領土でも領土紛争の火種を残し、ロシアが譲れない四島返還論を固持せよと、二島返還で問題を解決しようとした森喜朗氏は一年で首相の座を追われた。反日の亡命政治家李承晩などはアメリカの傀儡だったのだから、アメリカが一言言えば日本固有の領土(竹島)を取り込む李承晩ラインなどすぐに変更になり、韓国が竹島を実効支配することなどなかった。尖閣諸島についても、アメリカは日米安保の適用対象と言いながら、八月に香港の活動家が尖閣諸島に上陸した時にも「特定の立場は取らない」などと発言し、問題を助長する態度を取り続けている。これらはアメリカ伝統のdivide and conquer、すなわち分割統治手法なのだ。
 日本が経済的に衰退すると同時に、アメリカもその力を失いつつある。中国が経済力、軍事力で台頭してきている今日、今なおアメリカ経済の最大の力はグローバリゼーションの名の下、金融を世界的に支配していることだ。衰退しながらもこの力を維持するために、アメリカはなりふり構わずに冷戦時ソ連に打ち勝つべく育て、力をつけたCIA(中央情報局)やNSA(国家安全保障局)などの情報機関を使い、電話、FAXからインターネットに至るまでの全ての情報を盗聴し、国際入札などでアメリカが有利になるように、それらの機関からの情報をリークしている。ジョージ・ソロスなどのアメリカの投資家は国の情報機関と組んで、グローバルスタンダードという名の下で自国に都合のいい金融システムを押し付け、他国から富を収奪してきたのである。その一例が一九九七年に起こったアジア通貨危機だ。アメリカの投資家はタイのバーツやマレーシアのリンギットなど、アジアの通貨を空売りして暴落させ、底値で買い戻して大きな利益を得、その国の経済を崩壊させたのである。
 そもそもユダヤがメディアと金融と法律を握るアメリカは、莫大な金と汗と血を流して冷戦を戦い勝利したのに、いつの間にか冷戦漁夫の利で、日本が経済繁栄を謳歌するようになっていた。大きな犠牲を払ってソ連には勝利したのに日本に負けた…と、ならないように、冷戦に勝利の見通しが出てきた一九八八年、日本経済の強みが間接金融(銀行融資)にあると見たアメリカは銀行の自己資本比率を八%以上に、と指導するBIS規制を導入することで日本の銀行貸し出しを抑えて日本経済を崩壊させ、さらに毎年「年次改革要望書」を突き付け、経済政策から社会制度まで、国柄に合わない要望を次から次へと押しつけ、日本を衰退させてきたのだ。ワーキングプアの拡大を招いた労働者派遣法の改正や耐震偽装の温床となった建築確認検査機関の民営化、日本を訴訟社会とする弁護士大量生産の法科大学院の乱立、裁判員制度、そして郵政民営化などは、「年次改革要望書」に従って日本が実行させられた数々の日本弱体化政策だ。憲法違反ともいえる、全国で次々と施行された暴力団排除条例も、アメリカの指示で作られたものだ。オバマ大統領は日本の暴力団をイタリアやロシアのマフィアと同様の組織として排除を決定、日本に押し付けてきたのだが、一説には暴排条例はアメリカ資本が日本市場に入り込む際の「防御壁」となっている暴力団の除去作業だとも言われている。

先の大戦の背景には宗教と人種の問題がある

 日露戦争に勝利した直後にアメリカが日本を仮想敵国とする「オレンジ計画」を立てたことは、太平洋の覇権を握るためだが、その根底にはアメリカと日本の間の宗教と人種の問題があった。キリスト教では白人が人間として選ばれたのであり、豚や牛など家畜は、神がその人間のために与えたもので、白人ではない有色人種は非常に劣っていて、白人が奴隷としたり植民地として支配することは、キリスト教上、全く問題がなかったのである。世界の多くが西欧列強によって植民地化される中、独立自衛の力で唯一植民地化されなかった有色人種の国・日本が日露戦争でロシアに勝利したことは、白人国にとっては大きなショックだった。またその後、日本が打ち出した「大東亜共栄圏構想」では、「八紘一宇」という、全ての民族が平等であるとの思想が謳われ、日本が国際連盟で人種的差別撤廃提案を出して、賛成多数となったのに、アメリカのウィルソン大統領が「このような重要な法案は全会一致が必要」と主張して廃案としたことは有名である。キリスト教から生まれた白人優越主義からは、この八紘一宇という考え方は許しがたいものだったはずだ。西海岸から太平洋へ、ハワイ、グアム、フィリピンと次々と支配を拡大してきたアメリカが日本と対決することとなるのは必至だった、太平洋の覇権争いもあったが、白人優越主義対八紘一宇という側面も大きかったのである。

グローバル化した金融で世界経済は繋がっている

 アメリカが冷戦の最中に作った諜報システム「エシュロン」(アメリカ合衆国を中心に構築された軍事目的の通信傍受システム)は、アングロサクソン同盟とも言えるアメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダに張り巡らせた情報収集のための巨大アンテナ網で、世界に飛び交うあらゆる電波を解析して電話・FAX・ネットから情報を収集するものであったが、冷戦終結でアメリカはこれを自国の国益の追求に使い、同盟国であるイギリスとさえ経済的衝突を始めている。雑誌「月刊日本」の二〇一二年九月号に藤井厳喜氏が「米英金融戦争勃発 英中連携を叩く米戦略」という記事が掲載されている。それによると「ニューヨーク州金融サービス局のベンジャミン・ロースキー局長は、六日、スタンダード・チャータード(以下、スタンチャート)が七年間に亘ってイランの銀行と二、五〇〇億ドル(約十九兆五、〇〇〇億円)相当の取引を行ない、マネーロンダリング防止法に違反した為、ニューヨーク州の銀行免許を撤回する可能性があると公表した」というのである。またLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の不正問題でも、アメリカはイギリスを強く批判している。これはイギリス・バークレイズ銀行が二〇〇五?〇九年に意図的に実際とは異なる低い金利を報告し、複数行の金利の平均となるLIBORを操作、利益を得ていたというものだ。またLIBORの日本版であるTIBOR(東京銀行間取引金利)にも不正疑惑が囁かれたりと、この事件は日本にも波及してくる。その結果不利益を被った先から巨額の損害賠償請求訴訟が起こされる可能性がある。
 グローバル化した金融の世界では、一国の問題がすぐさま世界中の問題となることが多い。金融派生商品とも呼ばれるデリバティブは、もともと売り手にとってはローリスク・ハイリターン、買い手にとってはハイリスク・ローリターンの詐欺とも言える金融商品であるにも拘わらず、日本の巨大銀行はこぞって優良企業に売り込み、手数料稼ぎに勤しみ、これらを組み込んだ金融商品によって、日本の多くの優良企業が巨額の損失を被っている。リーマンショックの背景にあった金融不安も、サブプライムローンの債権を優良債権と混ぜた金融商品を作り、高い格付けを付けさせて、世界中で販売したことが原因だ。サブプライムローンは、信用の低い低所得者層向けの高利の住宅ローンであり、数年経過して購入した不動産の価値が上がったところでそれを担保に、他のもっと利子の低いプライムローンに借り換えを行うことが前提のものだった。不動産価格が上昇している間は良かったが、一旦価格が停滞、下落し始めると、担保価値が上昇しないので借り換えができず、高利のサブプライムローンを返済できなくなる人が続出、さらにその焦げ付いた債権が入った金融商品への不安が増大し、リーマンショックという形で世界中に影響を与えたのだ。

世界は昔も今も力の論理で動いている

 世界は力の論理で動いていて、それが正しいだの正しくないだのと評価することは、ほとんど無意味だ。アメリカが日本に原爆を投下したのは、ベルリンを制覇した勢いでヨーロッパ全土を、そして中国だけではなく朝鮮半島から日本までもを赤化しようとしていたソ連に対する牽制だった。事実この原爆の投下によって、第三次世界大戦が冷戦で済んだという見方もある。原爆投下がなければ、日本も北方四島だけではなく、北海道から本州までが赤化されただろう。力が物を言う世界情勢の中、日本が現行憲法を変えることなく、海外からの無理難題をお金とお詫びによって解決していくことにも限界がある。衰退するアメリカと膨張する中国の狭間にあって、このままでは日本はいずれ中国の一自治区になってしまう。この二十年だけをとっても、世界のGDPは二・六倍に、中国のGDPは八倍になっているのに、日本では一九九一年水準のままである。中国は毎年二桁の伸びで軍事費を拡大させていて、防衛費の対GDP比は四%を超えてきているのに、日本の防衛費は削減が続き、対GDP比はかつての目標だった一%も下回り、〇・八%に過ぎない。核戦力と陸軍は強力だが、海軍と空軍が未整備だった中国人民解放軍だが、最近の増強は著しい。航空母艦が完成し、第四世代戦闘機の配備が進めば、日本も尖閣諸島を守りきれなくなってしまうだろう。

脱原発を主張する日本維新の会も選挙当選互助会である

 領土問題から金融、軍事まで、次の日本の政権は上記のような世界情勢をきちんと理解している政党が担当するべきだ。次の総選挙で自民党を中心とする政権となるだろうが、どこと組むかが問題である。日本維新の会として大阪維新の会が国政に進出することが大きな話題となり、人々の期待も集めているようだ。しかし維新の会はこのままでは前回の選挙時の民主党と同じ、「選挙当選互助会」に過ぎない。集まってくる人は「維新の会」と付けば当選できるだろうという思惑のある人ばかりで、党としての国家観や歴史観、世界観が見えてこないのだ。そして国益も経済も顧みずに脱原発を主張している日本は、この先毎年三兆円も四兆円も石油などの燃料代が余分にかかり、貿易収支が赤字に転落、円安へと向かう可能性が大きくなる。その結果、金利が上昇、円安と高金利の結果、膨大な量の国債を抱える日本の金融機関が大幅な含み損を抱えることになり、日本の金融システムが崩壊する可能性が高い。
 日本は廉価とは言えないが安定した電力を背景に、ものづくり立国で経済復興を成し遂げてきた。原発事故でメディアの多くが脱原発を主張、高値買い取りの自然エネルギー(太陽光発電)で賄えると煽っているが、これはそれ以上に廉価な原発からの電力供給があるからであり、ただでさえ高い我が国の電力料金が更に高くなる。維新の会は公明党との選挙協力のために脱原発を打ち出しているのだが、このことはかつて民主党が実現不能なマニュフェストを掲げて、結局は党が空中分解した姿を思い出させる。四年前掲げた耳触りの良い公約のほとんどが実現できなかったオバマ大統領は、本来楽勝が予測される再選選挙なのに、今や再選があやうくなっているのだ。
 経済情勢が厳しい中、消費税の増税が国会で決まったが、消費税増税の際には同時に法人・個人所得税の減税を行うべきだ。更には景気回復で増収を図るためにも大規模な公共投資も進めるべきであり、例えば地下四十メートル以下の公共利用であれば土地の買収を必要としないという「大深度地下使用法」を活用して、首都圏の地下に横断循環道路を建設するのである。物流のスピードアップによって大きな経済効果が期待できるだろう。財源は超低金利の今だから可能な低金利の超長期百年国債を作り、償還資金はこの道路の使用料で賄う。また観光立国を目指して、観光地を外人向けに整備するとともに日本の素晴らしさをアピールするキャラバン隊を世界に派遣、まずは二〇一六年のオリンピックの東京招致を世論を盛り上げて実現することだ。国内のレジャー需要喚起のために、レジャーで使った費用の半額を確定申告によって戻すという政策も考えられるだろう。また私が以前から特に声高く主張しているのは、住宅ローンの優遇と固定資産税の優遇による税の誘導で、三世代が余裕で暮らすことができる大型住居の購入を推進し、大家族制度を復活させることだ。親から子、孫への世代間の相互扶助によって医療費や介護費の低減、保育園予算の削減、いじめや自殺などの減少など、多くの社会的メリットも享受できるようになるだろう。
 大家族制度を破壊したのはアメリカの占領政策だが、彼らは他にも教育によって、日本を自分達の歴史に誇りや自信の持てない贖罪意識の国にしてしまった。強い日本の復活を恐れて行ったことだが、もうアメリカもそれを望んでいないのに、「日本人の敵は日本人」となって、正しいことを主張する人を日本人自身が排除している。そしてありもしない南京虐殺や従軍慰安婦、毒ガス兵器廃棄の問題などを捏造され、責められ、追い込まれているのだ。その結果が今勃発している領土問題に集約されている。これに対抗するには、次の政権がしっかりとした真正保守の考えを持つ必要がある。その実現には大変な困難が予測されるが、それを一番実行出来る可能性が高い安倍晋三氏が再び自民党総裁となることだ。
 メディアの誘導による人気の石破茂の可能性や、石原新党を作るとか作らないとかちらつかせて息子伸晃の総理の道への別動隊を演じてきた石原慎太郎の戦略により、石原伸晃総理の可能性もあるが、安倍晋三氏が勝利し、大阪維新の会や公明党とも下手に連携することなく、政策で一致する人々と連携していき、次回の総選挙で堂々と過半数を獲得して政権を奪取すべきだ。微力ながら私も「真の近現代史観」懸賞論文制度の創設や東京、金沢、そして十二月には大阪にも拠点を作る勝兵塾によって、思いの実現を図っていく所存だ。

9月26日午前1時30分校了