社会時評エッセイ

藤誠志 社会時評エッセイ224: この国難を 日本復興のチャンスに

藤 誠志

復興時には防災マンションを 200メートル間隔で建設せよ

  三月十一日に日本を襲った、千年に一回ともいわれる規模の東日本巨大地震で、東北地方を中心に大きな被害と多数の犠牲者が出た。亡くなられた方のご冥福を祈るとともに、被災地の一刻も早い復興を願ってやまない。これまでも世界各国で大地震が発生しているが、しかし地震で命を落とす人は、倒壊による人よりも津波による人の方が多い。今回の東日本巨大地震でも二万人以上の人々が津波の犠牲となった。  今後この悲劇を繰り返さないための対策が急がれる。被災地の状況をテレビなどで見ていると、木造の家屋の大半が津波で流されてしまっている。今回の地震では、津波が平野部で五~六キロメートルにわたって押し寄せていたところもあり、場所によってはまったく高台のない地域もあり、大きな被害へとつながった。これから被災地の復興が行われることになるが、同じようにまた木造の家を建てても、また同じ被害に遭遇しかねない。阪神淡路大震災の時は木造二階建ての住まいが倒壊し一階で圧死した人が多いが、今回の地震でも被害者のほとんどが戸建ての家にいて津波に遭った人だ。
 従来から津波に対しては防波堤の建設が効果的という考えがあり、例えば岩手県宮古市では全長約二・五キロメートルに及ぶ高さ十メートルの防波堤を数十年がかりで建設、津波対策は万全と思われていた。しかし今回の津波はこの防波堤を乗り越え、破壊し、地区全体に壊滅的な損害を与えた。私が提唱したいのは、着手して十カ月もあれば建設できる鉄筋コンクリート六階建てで、一、二階を駐車場とする防災マンションを、200メートル間隔で海岸線に対して直角に建設することだ。直下型の地震だった阪神淡路大震災でも、新しい建築基準法に則って作られた鉄筋コンクリートの建築物の被害はほとんどなかった。また津波に対しても強いことは、今回の地震でも証明されている。これまでも十八メートルを超える津波がほとんどなかったことを勘案し、これらの防災マンションは六階以上の高さとする。いざ津波警報が出された場合には、住民は近くの防災マンションの屋上を目指す。緑あふれる都市計画で200メートル間隔に防災マンションを建設するのは、誰もが何処からでも百メートル以内にあり一分程度でマンションに避難できるためである。これだけ近ければ、津波を目視してからでも逃げることができるだろう。各防災マンションには水や非常食なども備蓄し、今回のような事態になった場合も多くの人があわてずに救助を待つことができる。大災害が起こった今、被害地の土地を区画整理して今まで所有していた土地とこの防災マンションを交換で無償で供与すれば、作ってもしばらくしたら壊さなければいけない仮設住宅よりも多くの人から喜ばれるだろう。莫大な費用と長い時間をかけスーパー堤防を建設するよりも、防災マンションの方がはるかに少ない予算で出来る。

想像を絶する天災にも耐えられる原発がこれからも必要だ

 この東日本巨大地震によって、福島第一原子力発電所が深刻な事故に見舞われた。同時に六基もの原子炉で事故が起こった今回の件は、一九七九年スリーマイル島での一基の事故よりも重大であるが、一九八六年の格納容器もなく核分裂中の状態で事故が起こったチェルノブイリの事故を超えることはない。しかし周辺諸国にも大きな不安を与える大惨事となった。
今の時点では予断は許さないながらも、事態は一時の緊迫状態からは脱しつつあるようだが、世界の目は日本の津波による死者の数よりも、この原発事故がどのように収束するかに注がれている。特に関心が高いのは米仏中英露の核保有五カ国であり、このデータと日本の高い原子炉技術を喉から手が出るほど欲しがって色々と援助を申し出てきている。
日本はこれまで原子力発電所の安全性が世界から高く評価されていた原発大国で、海外への技術の輸出も検討されている最中だった。スリーマイル島やチェルノブイリの事故で各国が原発推進を抑制する間隙を縫って原発技術を磨くことで、日本は世界有数の原発大国となった。近年高まったエネルギー危機対策と地球温暖化抑制のためのCO2排出抑制対策として原発が見直され始め、中国やインド、ベトナムでも原発建設の機運が高まっていた矢先だった。地震大国・日本は地震に強い原発を作ってきたはずなのに、今回、炉心溶融(メルトダウン)を起こし、放射性物質を周囲に拡散させてしまうかもしれない深刻な事故を起こしてしまった。非常に残念なことである。
今回の巨大地震による原発事故は原子炉本体に冷却水を送りこむポンプと電源装置が津波によって一緒に駄目になったことが原因で、今後は想像を絶する天災にも耐えられる原子力発電所が必要であり、そのためには原子力潜水艦の様な原子炉と付属設備が一体型で、湖沼か近海にフローさせるような設計も検討すべきである。

非常時に平時の基準に拘るな

 地震が発生した十一日には、私はアパリゾート栃木の森ゴルフコースを訪れていたのだが、そこから普段であれば一時間半で赤坂の本社まで戻れるところが、この日は九時間かかった。その理由は地震によって高速道路がすべて通行止めになったからだ。一般道は通行可能な中、平時の基準に従い、高速道路を通行止めにして、あれだけの大渋滞を引き起こした。仮に急病人が発生しても、あの渋滞に遭遇すれば絶命してしまうだろう。こういう非常事態を想定した非常事態法をあらかじめ定めておいて、メリット・デメリットをトータルに判断し、決定することが必要なのではないだろうか。これはJRや地下鉄などの鉄道についても同様だ。渋滞の発生や多くの人間が帰宅難民になることを考慮し安全基準を緩和し、高速道路であればまず徐行運転を決定、その後パトロールカーが試しに走って問題のない区間はすべてOKサインを出し、鉄道なら低速の運転を指示し、その後問題のない線から順次通常運転に切り替えていく。平時の基準にとらわれ、安全に配慮しすぎることは、経済的損失や人的損失を考えても、マイナスが大きすぎる。  計画停電も、何事にも平等・公平を重んじる民主党らしい天下の愚策だ。料金体系を一時的に変更し、昨年の電気使用量の半分以下であれば無料とし、昨年の八〇パーセントを超えればもとからの電気料金を二倍とするようにすれば、二〇~三〇%の電力などすぐ節約できる。市場原理に基づく節電策である。そして非常時においても運輸と通信は絶対に確保すべきなのに計画停電で電車を止めたり、まだ使える部分の高速道路まで閉鎖するなどは絶対にやってはいけない。

パニック状態を呈した首都圏では、コメや乾電池、トイレットペーパーやガソリンなどの買い占めが起こっていた。ガソリンは備蓄も十分にあるし、そもそも消費量が減少しているのに「ガソリンがなくなる」とパニックを起こしてタンクにまだ七割も八割も残っている車が給油に行くために、ガソリンスタンドには三時間、四時間待ちの車列ができ、二〇リットルの給油制限が行われていた。こういう緊急時には、タンクに半分以上ガソリンが残っている車には給油しないというルールを作ったらいっぺんに列がなくなる。これらのパニックも政府の施策のまずさを示している。正確な情報を素早く出すことが、パニック回避には一番である。やはりこういう事態には、集中して情報を収集、判断して事態をコントロールする達観できる強いリーダーのもと全てを仕切る司令塔が必要だろう。

マスメディアが作り出す風評被害は人災だ

 とある新聞に元防衛大学教授が『残念ながら、この福島原発事故では日本政府は真実を語っていない。危険性を低めに述べている。この乖離の最も顕著なのは危険地域の設定である。日本政府は発電所から二〇キロ内からの立ち退きを勧告している。他方、米国は自国民に対して八〇キロ内からの立ち退きを勧告している。十七日付米国の星条旗新聞は一マイル(約一・六キロ)内は一、二週間で死亡、三マイル(約四・八キロ)内は口、喉から吐血、三〇マイル(約四十八キロ)内は体内化学変化と報じた。五〇マイル、つまり八〇キロ内は明らかに体に障害を与える。主要国が自国民の立ち退きを勧告したのは現状に不安があるだけではない。原子炉の温度が高くなると爆発し、放射線が大量に漏れる可能性がある。温度を下げるため、放水が必要だ。この任務を自衛隊が実施している。すでに見たようにここでの任務には危険が存在する。死も覚悟である。しかしこの任務がなければ爆破する可能性がある。文字通り命がけでこの任務に従事する自衛隊員に感謝します』と、あたかも福島で巨大原爆が爆発したような、全く科学的根拠のない米国の三流新聞の記事を紹介して不安を煽っている。この元防大教授は、今回米国が日本にいる自国民に対して第一原発から八〇キロメートル圏内からの退去勧告を出したことをさも正当であるかのように『日本政府は真実を語っていない』と書いて不安を煽っているが、私は日本人は嘘をつけないと思う。参考までに述べるなら、米国は本土で起きたスリーマイル島事故のときには、避難距離を事故現場から十六キロメートルとしていた。  今回の原発事故に際して、アメリカからの援助は実に第七艦隊だけで一万人を超える人員の投入、原子力空母ロナルド・レーガンの派遣、無人偵察機グローバル・ホークによる二十四時間体制での現場情報収集、FA18戦闘機で上空から十三万一千枚の現場写真撮影、更に艦艇二十隻、航空機百四十台、第七艦隊旗艦「ブルーリッジ」や強襲揚陸艦「エセックス」などが沖縄の第三十一海兵遠征部隊や救援物資などを積み込み、被災地沖に展開……ここまでの援助を行うのは、アメリカにとってこの事故が重大な放射能事故・核戦争のシミュレーションとして千載一遇の機会であり、ここでデータ集めをするのが自国の国益に沿うからなのではないかと勘繰りたくもなる。

 私は今度の事故に際して、放射線被曝許容範囲の二五〇ミリシーベルトの範囲内での活動とはいえ、東電職員も自衛隊員も消防隊員も命懸けで良くやっていると思う。彼らに比べれば、二〇キロメートル以上離れた場所では被曝により健康を侵される恐れが全くない一九五~三三〇マイクロシーベルト(〇・一九五~〇・三三ミリシーベルト)でしかないのに大騒ぎしている。まして二〇〇キロメートルも離れている東京では毎時一マイクロシーベルト以下(平均〇・八マイクロシーベルト)である。作業員の被曝上限数値は二五〇ミリシーベルト(二五万マイクロシーベルト)で、東京の被曝量で計算するなら二五万時間分に相当する。毎日二十四時間浴び続けて三〇年近く経てば現在生きて作業をしている東電職員の放射線被曝許容量と同レベルだ。「今回の放射性物質の量は〇・八マイクロシーベルト」のように報道が行われるために不安が煽られるのだから、『マイクロシーベルト』をやめて、わかりやすく全て『ミリシーベルト』の表示とし、「放射線量は毎時〇・八マイクロシーベルト」ではなく「〇・〇〇〇八ミリシーベルト」、さらに「これを一日浴びてもCTスキャンを受けた際の被曝量の三〇分の一以下」と発表するようにすれば皆が安心する。  そうは言っても、現に放射性物質が放出されたのだから、いずれ野菜からも魚からも水道水からも放射性物質が検出されるだろうが、一年間にわたって食べても飲み続けても大丈夫といった極めて低い安全基準値が設定されていて、その五倍・一〇倍などとの発表ではなく、その量をどれだけ摂取しつづけたらどうなる、といった報道に徹すれば不安がなくなるのに、特に米・中・仏での報道はひどく、東京から外国人が逃げだしている。

 菅総理はどうせパフォーマンスを行うのであれば、テレビで『放射能』に『汚染』された牛乳やほうれん草を食べてみせれば、あるいは人気が出たかもしれない。

震災を乗り越え 日本の再興をはかれ

この震災で筆舌に尽くし難いほどの被害と犠牲者を出したが、本当は今一番心配なのは福島の原発が廃炉となっての電力不足であり、これはそう簡単には解消しない。このことから来る産業界への影響を軽減するために、電力多消費産業に日・祝・夜間操業を割当てたり、夏時間制度を導入するなどで昼間電力の消費量を落とすべきだ。このような大災害に際してボランティアや自衛隊だけに頼るのではなく長期国債をどーんと発行して国家はどんどん人を採用し、全国から土木・建築業者を集めて公共事業を興すとともに、大々的に資金を必要としている企業に資金の貸し出しをすることだ。アメリカのニューディール政策のようにこの天災を日本復興のチャンスに変え、よりよい日本を国民が一体となって創っていくことが必要だ。
産経新聞三月二十五日朝刊には、ジョージタウン大学のケビン・ドーク教授による『日本国民が自制や自己犠牲の精神で震災に対応した様子は広い意味での日本の文化を痛感させた・日本の文化や伝統も米軍の占領政策などにより、かなり変えられたのではないかと思いがちだったが、文化の核の部分は変わらないのだと思わされた』『震災への対応で示された団結などは、本来の日本文化に基づいた新しい目的意識を持つ日本の登場を予測させる』との論評が掲載されていた。
私は、この国難により半年は非常に厳しい時期が続くがその後の復興需要の高まりの中で国民から真のリーダーを求める動きが生まれ、自民党は菅総理の退陣と引き換えに民主との大連立を組み、そして真正保守の思想を持つ新しい強いリーダーのもとに結集して、政界再編を目指して真の独立国家としてこの国が「誇れる国日本」の再興を果たしていくことに期待したい。

平成23年3月26日 0:49校了