社会時評エッセイ

攻撃用兵器の独自開発で
独立自衛の国に
Vol.306[2018年3月号]

藤 誠志

金正恩の動向を常に把握
斬首作戦は既に実行可能だ

 毎年恒例となってきたが、今回の年越しも、アメリカ・ラスベガスの噴水のあるリゾートホテル、ベラージオでのニューイヤーパーティーで迎えた。このパーティーはその年のお得意様をベラージオが招待するもので、皆正装して出席する。私のテーブルには昨年も同席したトランプ大統領と親しいアメリカ空軍の元将軍がおり、北朝鮮危機に関する意見交換を行った。彼は、北朝鮮から攻撃してこない限り、アメリカは決して北朝鮮との戦争を始めないと言っていた。一番の理由は、アメリカは今、株価が高く、失業率は低く、景気が良いからだ。戦争を始めて、韓国や日本の多くの民間人を巻き込み犠牲者を出すようなことは、北朝鮮が余程の挑発を行わない限りあり得ないと述べた。トランプ大統領の基本的なスタンスは、自らの再選戦略で再選が危うくなるか、ロシア疑惑の拡大で弾劾されることを避ける。この二つを戦争を始める重要な条件としていると言っていた。私が「それではアメリカは北朝鮮を核保有国として認めるのか?」と聞いてみると、彼は「そうではない」と返し、続けて次のような話をした。アメリカ軍は偵察衛星や脱北者からの情報などを使って、金正恩の動向を常にウォッチしている。戦争ではなく、金正恩の生命だけを狙う斬首作戦をいつでも実行できる状態を維持する為の訓練を日夜繰り返しているというのだ。
 この話を聞いて私が思い出したのは、二〇一一年五月にオバマ大統領が行った、ウサマ・ビンラディンの殺害作戦・ジェロニモ作戦のことだ。この作戦は、主権国家であるパキスタンの許可を取らずにアメリカが実行、ステルスヘリコプターで、ビンラディンが潜伏するパキスタンの施設をアメリカ海軍特殊部隊が急襲して、彼を殺害したものだと発表されていた。しかし、これに対する異説が出てきた。

米大統領は再選のためには
戦争を始めることも厭わない

 二〇一五年六月一日付ネットの「週プレNEWS」に、「ビンラディン暗殺はウソばかり? 突然暴露された新説に全米震撼」というタイトルの記事が掲載されている。「二〇一一年五月一〇日、アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンの暗殺作戦が『すべて茶番だった』という記事が英誌『ロンドン・レビュー・オブ・ブックス』に発表された。執筆したのは、超一流の調査報道ジャーナリストであるシーモア・ハーシュだ」「ハーシュは、ベトナム戦争における米兵の虐殺を暴いた『ソンミ村虐殺事件』のスクープ記事でデビューし、いきなりピュリツァー賞を受賞。その後も大韓航空機撃墜事件、イスラエルの核兵器保有、イラクでの捕虜虐待事件などのスクープを連発。それゆえ、ホワイトハウスやペンタゴンは火消しに躍起となり、全米が揺れた。オバマ政権がこれまで主張してきた暗殺作戦の公式な要点は以下の4つだ。
●二〇一〇年八月、ビンラディンと外部との連絡役(クーリエ)を米諜報機関が特定。追跡の結果、その人物はパキスタンのアボタバードという街の、コンクリート塀で囲まれた邸宅に通っていると判明。
●地上と空から二四時間体制で監視を続け、庭を散歩するビンラディンらしき長身の男の姿を確認。
●オバマ大統領は、男がビンラディンであるという一〇〇%の確証がないまま暗殺作戦にゴーサインを出す。一一年五月二日、米海軍特殊部隊SEALs(シールズ)の精鋭隊員たちは二機のステルスヘリでアフガンの前線基地からパキスタン領空に侵入し、隠れ家を急襲。一機が着陸に失敗するアクシデントはあったが、銃撃戦の末、ビンラディンらしき男を殺害。
●SEALsは男の遺体と、大量の情報が入った電子機器を持ち帰った。DNA鑑定によりビンラディンであることが確定し、オバマ大統領が記者会見で発表した。
 しかし、ハーシュはそのほとんどがウソだと主張している。特に重要な点を時系列に沿って検証していこう。
(一)ビンラディンの潜伏場所は、アメリカが割り出したのではない。パキスタン軍情報機関であるISIの元高官がCIAと接触。ビンラディンにかけられた懸賞金二五〇〇万ドルと引き換えに居場所を教えると申し出た。
 ハーシュの記事では『ISIの元高官』とだけ書かれているが、その正体はすでに判明しているという。国際ジャーナリストの河合洋一郎氏が解説する。『ISIの退役准将、ウスマン・ハリッドです。彼は作戦が決行される前に、秘密裏に家族と共にアメリカへ渡っています。そこで市民権と新しい身分証明書をもらい、現在はCIAのコンサルタントをしているようです。もちろん懸賞金ももらっています』
(二)ビンラディンは潜伏していたのではなく、〇六年にISIに身柄を拘束され、パキスタン軍の重要施設が集中するアボタバードに軟禁されていた。彼は難病を患っており、主治医がいたが、そこからDNAがアメリカ側に渡った。つまり、アメリカは男がビンラディンであると知っていた」
「再選を狙うオバマ大統領にとってもこれは渡りに船。こうして両国の利害が一致した、という見方だ。
(三)オバマ政権は、情報漏洩を恐れて暗殺作戦を事前にパキスタン側に知らせなかったと発表しているが、実際は一一年一月に合意が結ばれていた。作戦当日、ビンラディン邸の警備員たちは、ヘリの音が聞こえたら立ち去るように命令されていた。SEALs隊員は、一緒に来ていたISIの将校に案内されて三階の部屋へ入り、無抵抗のビンラディンを撃った」「領空に侵入した米軍ヘリがパキスタン軍に迎撃されなかったこと、ビンラディンの潜伏集落が作戦決行前に停電したこと。これらのことはパキスタン側の協力を仰がなければ不可能です」。
 ニュースには必ず表と裏がある。公式発表の通りか、パキスタンと密約があったのか、それともまた別の真実があったのか。いずれにしても、オバマ大統領がビンラディン暗殺に踏み切ったのは、二〇一二年の大統領選挙での再選を見据えてのことであり、その目論見通りに彼は再選を果たすことができた。アメリカ大統領は再選のためなら、どんなことでも実行する。かつてルーズベルト大統領が、世界恐慌から脱することが出来ず再選出来なかったフーバー大統領のようにならないために、レンドリース法(武器貸与法)を作り、一九四一年からイギリスやソ連、中国(蒋介石国民党軍)、フランス、その他連合軍に対して、総額五〇一億ドル、今の貨幣価値で七〇〇〇億ドルもの軍事物資を提供した。この戦争特需により、先の戦争を起こしたルーズベルトは再選どころか四選も果たした。
 トランプ大統領がロシアゲート疑惑で弾劾される危機を吹き飛ばし再選を確実にするために、金正恩の斬首作戦を実行に移しても、なんら不思議はないだろう。

防衛用兵器の増強だけでは
日本国民を守れない

 一月十一日の読売新聞朝刊の一面トップ記事の見出しは「迎撃情報 イージス艦共有」だった。「政府は、北朝鮮が弾道ミサイルによる波状攻撃を仕掛けてきた際の対処能力を向上させるため、2019~20年度に配備する海上自衛隊の新型イージス艦2隻で、新たな迎撃システムを運用する方向で調整に入った。日本海で対処するイージス艦が迎撃ミサイルを撃ち尽くして弾切れになっても、別のイージス艦が日本海にいる艦のレーダー情報で照準を合わせ、迎撃可能となる」「海自のミサイル防衛用のイージス艦は現在4隻態勢だ。日本海で警戒監視にあたる艦は1〜2隻程度で、SM3搭載数は1隻で最大8発。新システムにより、日本海のイージス艦が弾切れになっても、太平洋など遠くの海域の艦でも迎撃可能になるとみられる。北朝鮮がミサイルを繰り返し発射しても対処数が拡大する。イージス艦は改修と新造で20年度には8隻態勢となる。遠隔交戦可能な新システムを導入するのは19、20年度に完成予定の新型艦2隻(1隻約1700億円)で、その他の艦も改修による導入を検討する。23年度頃から運用開始する陸上型イージスシステム『イージスアショア』2基にも新システムを入れる方向だ。21年度には射程がSM3の3倍の約2000キロメートルになる新型迎撃ミサイル『SM3ブロック2A』が配備される。新システムとSM3ブロック2Aの組み合わせで、より遠隔のイージス艦でも迎撃可能となる」。
 また同じ十一日の日本経済新聞朝刊の国際面には、読売新聞の記事に関連するような「新型迎撃ミサイル 米、日本に売却方針」という見出しの記事が掲載されている。「米国務省は9日、北朝鮮の核・ミサイル開発に対応するために日米で共同開発している新型迎撃ミサイル『SM3ブロック2A』4発を日本に売却する方針を議会に通知した。売却額は技術支援も含めて1億3330万ドル(約150億円)相当にのぼる。2021年度の導入をめざす。米政府当局者は『海上自衛隊が日本や西太平洋を弾道ミサイルの脅威から防衛する能力が高まる。米国の安全保障の利益にもつながる』と狙いを説明した。SM3ブロック2Aは海上でイージス艦が現在搭載している『SM3』に比べて推進力が大きく、迎撃可能な高度も高い。新たに日本が導入する米軍の陸上配備型迎撃システム『イージス・アショア』にも搭載できる」。
 この新しい迎撃システムとSM3ブロック2A導入の理由は、当然北朝鮮のミサイルへの対抗力の強化だ。前述の読売新聞二面でも解説されているが、現状ではイージス艦は同時に二発のミサイルを迎撃することしかできない。建造中の新造艦やイージスアショアでも同時に迎撃できるのは三〜四発だ。北朝鮮が日本など近距離にミサイルを発射する場合、既に配備済みのスカッド・ノドン・テポドンなどの色々なミサイルを使うことが出来るので、同時に多数のミサイルを発射する「飽和攻撃」を行うことが可能であり、それに対抗するための今回の迎撃ミサイルシステムの強化なのだが、果たしてそれだけで万全なのか。防衛省は今年の予算で、敵基地攻撃能力を持つ長距離巡航ミサイルを導入しようとしている。「抑止力向上をどのように図るか。敵基地攻撃能力の保有も含め、迎撃以外の手段も検討すべきだ」とこの解説は結ばれているが、私はスカッドやノドン等のミサイルはたぶん一発一億円もしないのに、そのミサイルを迎撃するミサイルが一発数十憶円もするのは、投資効果が悪すぎると思う。アメリカが北朝鮮危機を日本などに迎撃ミサイルなどを売り込むチャンスとしているのではないだろうか。私は盾をいくら並べても身を護れないので戦争抑止力となる攻撃用兵器である中距離弾道弾ミサイルや大型爆撃機に長距離巡航ミサイルなどを装備すべきであると考える。

自国の兵器の開発や購入を
他国に委ねるべきではない

 二〇一八年度の防衛関連費は五兆一九一一億円と過去最大となったが、その六割以上は人件費や装備品の修理や油の購入と、現状の装備の維持費で、新たな装備購入に使われる予算は決して多くはない。攻撃用兵器にはほとんどお金が回っていないのが現状だ。日本は数百億円かけて迎撃ミサイルシステムを購入するのであれば、次世代の兵器である電磁レールガンや電子レーザー兵器の開発研究費に資金を投入すべきだ。北朝鮮は一旦手にした核兵器と大陸間弾道ミサイルを決して手放さないだろう。日本にとって北朝鮮危機への最も安上がりな対処方法は核武装だが、日本が独立自衛の道を進む独自の核武装はアメリカが絶対に認めない。まだ可能性があるのは、かねてから私が主張している、NATO四カ国(ドイツ・イタリア・オランダ・ベルギー)が実際に締結している核シェアリング協定を、日本もアメリカと結ぶことだろう。この場合最低限、非核三原則の撤廃が必要だ。しかしそれで十分だろうか。高いレベルで国民の安全を確保するためには、戦争抑止力の為の攻撃用兵器を充実させ、北朝鮮に対しても中国に対しても抑止力を発揮できるような独立自衛の国家となるべきではないだろうか。そのためにも憲法九条の一項二項に加えて三項を設けて、三項には「国防の為には前二項に関わらず、国防の為の交戦権と国防の為の戦力として、陸海空の国防軍(自衛隊)を保持する」とする憲法の改正を急ぐ必要がある。
 アメリカの軍需産業はこの北朝鮮危機で既に多くの商談をものにしているだろう。アメリカという国は大統領の再選が危うくなると戦争や軍事行動を行うが、景気が悪くなっても戦争を始める。今回の北朝鮮危機でも、口先だけでなかなかアメリカが軍事行動に出ないのは、まず日本などに防衛用兵器を売りつけるためではないのかという疑いもある。日本は北朝鮮危機に直面して、アメリカ頼みの兵器体系を見直す必要があるのではないか。今後充実させていく敵基地攻撃能力を担う攻撃用兵器は、日本独自で開発して装備すべきだ。
 私が心配しているのは、かつてのイランの二の舞いである。イランはパーレビ国王時代に戦闘機など高価なアメリカ製兵器を買い込んだのだが、イラン革命後アメリカと敵対するようになると、メンテナンス先を失ったそれらの兵器は、全て鉄屑と化してしまった。また、湾岸戦争でイギリス軍がトマホークを一発も発射できなかったのは、イギリスに手柄を立てさせないように、アメリカがGPSのコードを変えたからだという説もある。アメリカと共有するものだけではなく、日本は独自の暗号とコンピュータシステムに軍事用GPS衛星を開発し保持すべきである。自国の兵器の有効性を他国においそれと委ねるべきではない。
 私は世界の軍事費の半分近くを使うアメリカと事を構えろと言っているわけではない。日本は真の独立国家として、かつての日英同盟のように、日米安保条約を双務条約に改正して、アメリカと対等互恵の関係になるべきだと主張しているのだ。そのためにはアメリカが抱いている「原爆投下の罪悪感」という呪縛を、日本が解いてあげる必要がある。アメリカが日本に原爆を投下した最大の目的は、アメリカの軍事援助で強大な軍事国家となった旧ソ連が、ポスト第二次世界大戦として世界赤化のための戦争(熱戦)となる第三次世界大戦を始めることを阻むことだった。そのためにアメリカは、天皇制の継続さえ保証されれば日本が降伏するとの情報を、日本と日ソ中立条約(不可侵条約)を結ぶ旧ソ連や中立国のスイスやバチカンから得ていながら、当初のポツダム宣言案に一度は入れた国体護持の保証をするとの文言を削除し、日本が降伏するまでの時間を稼いで原爆開発の時間を作り、完成した原爆を広島と長崎に投下した。その結果、軍事的モンスターとなった旧ソ連はユーラシア大陸を席巻し、中東もアフリカも、たぶん日本も北海道等は旧ソ連に分割支配された可能性も高く、一千万人を超える戦死傷者が更に出る事が予測される世界赤化の戦争(第三次世界大戦)を熱戦から冷戦へと変えた。
 原爆を手にしたアメリカは第二次世界大戦後の世界覇権を握った。日本はその原爆投下の側面を理解し、アメリカの原爆投下の呪縛を解いてあげる。そうすることで、両国の関係が更に深まると同時に、日本が真の独立国家となる道が開かれるだろう。

2018年1月16日(火) 10時00分校了