社会時評エッセイ

戦争を始めるのは
軍人ではなく文民だ

藤 誠志

不戦の誓いを守るため
先の大戦の発端を知るべき

 第二次安倍政権が発足してから丸四年となる二〇一六年十二月二十六日、安倍首相はハワイを訪問し、様々な場所を巡った。まず訪れたのは国立太平洋記念墓地だ。献花台に献花・黙祷した後に、第二次世界大戦で日系人部隊に所属し、ヨーロッパ戦線で数々の武勲を立てた故ダニエル・イノウエ上院議員の墓碑にも献花・黙祷を捧げた。その後マキキ日本人墓地、えひめ丸慰霊碑を訪問、そしてアメリカ海兵隊基地の中にある飯田房太旧日本帝国海軍中佐記念碑を訪問した。戦死で大尉から二階級特進した飯田中佐は、空母・蒼龍の零戦パイロットとして真珠湾攻撃に参加、燃料タンクに被弾したために空母に戻れないと判断し、引き返して海兵隊基地の格納庫に突入し、自爆した。アメリカ海軍は飯田中佐の勇敢さを称えて基地内に丁重に埋葬、記念碑も建立した。さらに安倍首相はアメリカ国防総省捕虜・行方不明者調査局(DPAA)中央身元鑑定研究所やアリゾナ記念館を訪れた後に、記念館や戦艦ミズーリをバックにして、不戦を改めて誓う声明を発表した。
 戦争で一番痛ましいのは戦士達だが、彼らは敵味方であっても、互いの敢闘精神を称え合う気風を持っている。思い出されるのは、戦争末期の一九四五年に戦艦ミズーリに特攻した石野節雄二等飛行兵曹の話だ。機体がバラバラとなったが積んでいた爆弾が爆発せずに、損傷の酷い半身が甲板に張り付いた遺体となった石野兵曹を、ミズーリのウィリアム・キャラハン艦長は丁寧に水葬にして弔った。どんな軍人も、基本的には、戦争を嫌っている。しかし彼らを戦いに追いやるのは常に文民で、メディアを動員し、国民を煽って戦争を始めるのである。その理由は自国の利権や領土の拡大であったり、戦争特需を作り出す為であったりだ。ベトナム戦争も湾岸戦争も、これまでのほとんどのアメリカの戦争がそうやって始まっているという見方もある。また軍人が戦争を始めるというデマ同様、軍備を持てば戦争になるというのも間違いだ。戦争抑止力となる軍備を持てば攻められないので戦争にならないのだ。
 不戦の誓いを守るためには、先の大戦や日米戦争がなぜ起こったのかを知っておく必要がある。先の大戦を引き起こしたのは民主党ルーズベルト大統領であるとの説もある。一九二九年の株の大暴落に端を発した世界大恐慌から脱することにアメリカの共和党のフーヴァー大統領は失敗し、一期四年でその座を民主党のルーズベルト大統領に譲った。
 需要を生み出すことで恐慌から脱しようとしたルーズベルトは、ニューディール政策を推し進めたが、中々恐慌から脱しきれなかった。そこで、壮大な需要の創造は戦争を起こすことであると判断した彼は、戦争特需を創り出すために、ヨーロッパで戦争が始まればアメリカは英仏側に立って参戦すると約束し、そのことで、一九三九年三月にイギリスとフランスは、ドイツに対抗する十分な軍備がないにも拘らず、ポーランドとルーマニアに対して独立の保証を与えた。しかし同年九月にドイツのポーランド侵攻が始まり、独立保証をしたイギリス・フランスはやむ無くドイツに宣戦布告を行うが、アメリカは参戦しなかった。なぜならルーズベルトは再選をかけた選挙において、ヨーロッパの戦争への不介入を公約にしていたからだ。

常に被害を自作自演し
国民の戦意を煽り
戦争を始めるアメリカ

 ヨーロッパ全域がドイツに蹂躙され、島国イギリスも猛爆撃にさらされ、その命運は風前の灯という段階となっても、根強い国民の反対でヨーロッパの戦争に参戦出来なかったルーズベルトは、一九四〇年に日独伊三国同盟が結ばれたことを背景にヨーロッパの戦争に参戦すべく、日本を追い込んで暴発させ、自動的にドイツと戦端を開くことを考え、日本に対して経済的なプレッシャーをかけ始めた。
 アメリカとは、一九四〇年一月に日米通商航海条約が失効した、その後の同年九月に屑鉄の全面禁輸、一九四一年七月に日本の在米資産凍結、同年八月に石油の対日全面禁輸などをイギリス、オランダなどと連携して行い、俗に言われるABCD(アメリカ・イギリス・中国・オランダ)包囲網で日本を追い込んできたのだ。さらに最後まで交渉を続けようとする日本の和平提案をアメリカ国民には一切知らせず、コミンテルンのスパイであるハリー・ホワイト(一九四八年夏、下院非米活動委員会で共産主義者であるという告発を受けた直後に不可解な死を遂げた。)が原案を作った、本来は議会の承認が必要な宣戦布告書といっても良い、過酷な内容を持つハル・ノートを議会にも国民にも全く知らせずに日本に突きつけた。日本は、合意不可能と拒否された日本の和平案も、過酷な条項のハル・ノートも、アメリカ国民や世界に知らせ、ルーズベルトが日本を挑発し、無理やり戦争を始めようとしていると訴える必要があったのに、そうしなかったことも大きな誤りである。
 当時日本の外交暗号と海軍暗号のほとんどはアメリカで解読されており、日本がハワイの真珠湾を攻撃することも、ルーズベルトはしっかり掴んでいた。そこで彼は真珠湾から空母と新鋭艦を離脱させ、アリゾナなど旧型艦のみを真珠湾に残したのだ。
 アメリカ時間で一九四一年十二月七日、日曜日でありながら、なぜか戦艦アリゾナには定員以上の兵員が集められていた。日本軍の激しい空爆が終わって六分後に、火災でアリゾナの弾薬庫が誘爆したと言われているが弾薬庫火災で誘爆した例は他には知らない。この突然の大爆発で真珠湾攻撃のアメリカの犠牲者二千四百人の約半分となる、千百七十七人が艦と運命を共にした。
 暗号を解読して日本軍の攻撃が行われることが分かっていたのに、真珠湾を守る太平洋艦隊司令長官のキンメル大将には、そのことが伝えられていなかった。彼にとっては不意打ちだったにも拘らず、キンメルは被害の責任を取らされて司令長官職を解任された。これらは全て、真珠湾で大きな犠牲が出なければアメリカ国民の厭戦気分は変えられないと考えたルーズベルトの演出だったと思われる。
 「リメンバー・パールハーバー」は、一連のリメンバーシリーズ(先に手を出させて怒りを煽り、反撃戦争を始めて領土を拡大していく戦法)の中でも最も効果的だった言葉だ。一八三六年、メキシコ軍によってアラモ砦に立てこもったアメリカ独立義勇軍が全滅させられたことから出た「リメンバー・アラモ」は、メキシコからのテキサス独立の戦いの合言葉だった。一八九八年、米西戦争の合言葉になったのは、戦艦メイン号が爆発して二百六十名が亡くなったことから出た「リメンバー・メイン号」だ。アラモの場合は、独立義勇軍からの援軍要請を、中央は無視して彼らを全滅に導き、メイン号は、アメリカが自ら爆破してスペインの犯行に見せかけたものであり、いずれも世論を戦争に向けるための自作自演だったとの説もある。事前にルーズベルトが攻撃を知っていた真珠湾も、限りなく自作自演に近いものだと思われる。 
 他の沈没した艦船は引き揚げられて修理され、戦線に復帰しているのに、アリゾナだけが引き上げずに、沈没の原因を究明しないまま戦死者もそのままにして記念艦として今も残されている。これも不思議だ。またキンメル大将の名誉回復決議が一九九九年アメリカ上院で、二〇〇〇年には下院で採択されたが、クリントン、ブッシュ、オバマと三代に亘る大統領が署名を拒否している。署名すれば、「リメンバー・パールハーバー」が欺瞞だと認めると思われるからかもしれない。このことをメディアはほとんど報じない。
 日本側にとっても真珠湾攻撃は不十分なものだった。日本海海戦で旗艦・三笠で陣頭指揮を執った東郷平八郎とは異なり、真珠湾攻撃の時、山本五十六は旗艦・長門に乗艦して瀬戸内海に居た。そもそも腰の引けた戦いだったのだ。

問題を永遠に解決する
安倍・トランプの靖国参拝

 今回安倍首相が訪れたアメリカ国防総省捕虜・行方不明者調査局(DPAA)中央身元鑑定研究所は、アメリカの「捕虜・戦時行方不明者を軍や国は決して忘れない」のモットーに従って、遺骨のDNA鑑定までを行って、遺族に届ける仕事をしている部署だ。これは安倍首相の「日本もまた戦没者を決して忘れない」というメッセージなのだろう。日本はまだまだ異国に眠る戦没者の遺骨が多い、出来る限り早急に遺骨を収容して弔うべきである。三年前の二〇一三年の同じ十二月二十六日に安倍首相は靖国参拝を行った。しかしこの時に民主党オバマ政権下でキャロライン・ケネディ大使のいる在日アメリカ大使館は「失望している」という声明を出した。小泉純一郎は首相在任中、六回靖国参拝を行ったが、アメリカは一度も批判しなかった。それどころか、二〇〇二年二月に訪日した共和党ブッシュ大統領は、小泉首相に、一緒に靖国参拝を行うことを打診していた。中韓の批難を恐れた外務省が参拝先を明治神宮に変えたのだが、それでも小泉首相は一緒に参拝せず、ブッシュ大統領を車の中で待っていたという。もしこの時に一緒に靖国参拝を行っていれば、その後靖国問題は消滅していただろう。共和党トランプ次期大統領就任後、必ずあるであろう訪日時には、今度は安倍首相から提案して「一緒に靖国参拝をしましょう」と言うべきだ。国のために戦死した人を大切に弔うのは日米共通の精神だということを打ち出せば、トランプ次期大統領も応じるのではないだろうか。
 稲田朋美防衛大臣が、昨年の八月十五日に外遊のために靖国参拝ができなかったのは、安倍首相が配慮したことによるのだろう。一部保守勢力からの批判もあり、民進党の辻元清美議員の国会での追求に涙ぐんだ稲田大臣だが、ハワイから帰国直後の十二月二十九日に靖国参拝を行ったにもかかわらず、メディアも中韓もあまり問題としなかった。稲田大臣の前に現職大臣として今村復興大臣も靖国参拝を行っている。もう靖国参拝を批判するという歴史カードも賞味期限切れとなってきているのだ。このタイミングでトランプ大統領を同行して、安倍首相が靖国参拝を実現することに大いに期待したい。
 二〇一五年十二月の日韓合意を無視するかのように、釜山の日本総領事館前にまた慰安婦像が設置された。日本政府が対抗措置として、長嶺駐韓大使、森本釜山総領事を一時帰国させ、通貨交換(スワップ)協定再開への協議を中断、さらに日韓ハイレベル経済協議の延期などを決めたのは、極めて妥当だ。朴槿恵大統領が職務停止となっていることもあるが、十億円を受け取っていながら、次々と約束を破る今の韓国は、国としての体をなしていない無政府状態だ。そもそも従軍慰安婦という言葉は、当時は存在しなかった。強制連行もなく、性奴隷などという言葉は全くあてはまらない。実際の慰安婦募集広告も資料として残っているが、従軍慰安婦は高給売春婦であり、当時売春は合法だった。当時の慰安婦募集広告によれば「月収三百円以上(前借三千円迄可)」と書かれていて一般の日本人兵士の月給十五円~二十円、陸軍大将の月給は五百円。そこから慰安婦の収入がいかに高額だったのかが分かる。自ら応募してお金を溜め込み、僅か二年三カ月で現在の価値で一億円も貯めた人(文玉珠氏)もいるといった話もあり、兵隊達と楽しい時間を過ごしたり、前借金を返して兵隊と結婚した人もいたのだ。

世界の戦いは
ノンキネティック(非殺傷兵器)を駆使した戦いとなる、
日本もこれに対応すべきだ

 日本にとって最大の脅威は膨張を続ける中国だ。オバマ政権の八年間でアメリカの軍事力は衰退してきた。特にここのところは毎年五兆円、軍事費を削減し続け、ますます弱体化してきている。その間中国は南シナ海の岩礁を埋め立てて滑走路を持つ軍事基地化を行い、尖閣諸島においても領海侵犯を繰り返し、多数の漁船や公船をこの海域に送り込んできている。
 トランプ次期大統領は弱体化したアメリカ軍に対し、軍事予算を増大して補強を図る一方、同盟国である日本に対しても、応分の負担を求めるだろう。在日米軍の駐留費の全額負担の要求はないかもしれないが、現在のGDP比一%の防衛費を、NATO標準の二%に増額せよという要求は、十分にありえる。しかしいくら防衛費を増やしても、現行憲法下で攻撃用兵器が保有できないのであれば、まともな軍事力を確保することは難しい。またトランプ次期大統領が主張する、お互いに守り合う双務的な日米安保関係は理想だが、これも日本国憲法によって現状では不可能だ。三期九年の長期政権が可能となった安倍政権において、トランプ政権誕生を契機として、憲法改正を行わなければならない。そして攻撃用兵器として最先端化学兵器を保有し、同じ敗戦国ドイツもイタリアもアメリカと協定している、ニュークリア・シェアリング協定を結び、アメリカ軍と核の共有を図ることも必要だ。
 今や、世界の戦争は殺傷兵器を使用するキネティック(動的)な戦いから、心理戦、メディア戦、歴史戦、法律戦といった情報謀略戦、サイバー戦などを中心とするノンキネティック(非殺傷的)な戦いに変わってきている。アメリカが何兆円も掛けて開発した兵器がハッキングによってコピーされ、安価で複製されるとか、発電所がハッキングで停止するなどのサイバー戦も活発化している。日本も年間予算三千億円で三千人の要員を抱える情報省を創設し、情報謀略戦やサイバー戦に備えるべきだ。
 ロシアには強硬路線の一方、親中政策を行ったオバマ政権とは違い、トランプ政権はロシアと親密な関係を保ち、中国に対して強硬に対応するだろう。シリアではロシア軍の介入で、劣勢だった政権側が息を吹き返し、アレッポを制圧し、ISとの戦争を停止した。ISが跋扈する時代は終わった。残り丸四年となった安倍政権は、これまで地球儀俯瞰外交を実践してきた。昨年末の安倍・プーチン会談ではメディアが過剰な北方領土問題解決への期待を煽ったが、そもそも戦争の結果決められた国境を、話し合いで変更したなどという事例は過去にほとんどない。そんなことが横行すれば、世界は大混乱に陥るだろう。日ロの関係は、プーチンを安倍首相の地元に招いて話し合ったということだけでも大きな意義がある。日本は自らの安全のために、ロシアだけではなく、インド、アメリカ、オーストラリアなどとの連携を強く模索していくことが、必須となる。昨年この『Apple Town』や勝兵塾で十八回繰り返しコメントしたように、トランプ大統領の誕生は刺激的だが、日本が真っ当な国になるチャンスだ。またトランプ効果で株高、円安と経済的な環境も良くなっている。まだ続く超低金利も大いに利用して事業を拡大、本年も事業と言論の両輪をフル稼働させていく所存だ。

2017年1月16日(月)13時00分校了