社会時評エッセイ

新帝国主義時代の到来
「力の論理が支配する年」

藤 誠志

二〇一六年はアパホテルの
世界戦略元年

 この稿の執筆時で、二〇一六年もあと一カ月を切った。毎年この時期に私はこの一年を振り返ると共に、迎える新しい年をどういうものにするべきかを考え、アパグループ恒例の年頭所感を作成する。二〇一六年の年頭所感はこうだった。
ソフトがハードを支配する
スタンダードを確立し
世界を席巻する時
限りないロマンに全力でトライし
願望は自ら実現する

 最後の二行は毎年同じだが、最初の三行にその年に対する想いを込めている。これまでの欧米の流れを汲む一流ホテルの考え方では、伝統的にホテルのスタッフはご主人様にお仕えする召使という立場であり、まるで宗主国と植民地のような関係だった。外出中にスタッフが部屋に入ってもゲストが文句を言わないのは、スタッフを召使と考えているからだ。アパホテルでは、スタッフがお客様のプライバシーを守り、チェックインした部屋にお客様の許可なく入ることはない。「誇りを持って宿泊していただけるお客様を、スタッフが誇りを持っておもてなしをする」「お客様とスタッフは対等である」というのがアパホテルの基本理念だ。
 車はフルサイズのキャデラックから環境に優しい小型車のプリウス等が主流となり、航空機は四発エンジンが排気ガスを撒き散らすジャンボ七四七から、双発エンジンで軽量な七八七やリージョナルジェット機等へとコンパクト化したのと同じく、ホテルもコンパクト化するべきだし、環境にも優しくあるべきである。アパホテルはベッドサイドに空調や照明など全ての機能を集約して部屋をコンパクトにして、さらに様々な工夫を重ねて、炭酸ガスの排出量を一般の都市ホテルの三分の一に削減している。こうした高機能・高品質・環境対応型の新都市型ホテルという新しいスタンダードを確立、これが世の中に受け入れられて、世界一の収益率三十九%、達成することができた。二〇一六年は正に年頭所感がぴったりと当てはまり、躍進の一年となった。
 二〇一七年の年頭所感だが、熟慮の末このようにした。
力の論理が
支配する年
鬩ぎ合いを制し覇権を握れ
限りないロマンに全力でトライし
願望は自ら実現する

 「力の論理が支配する年」とした根拠はトランプ氏が大統領に選ばれたことにある。これは、軍事力の行使をためらい、民主主義や人権を重視したオバマ大統領の時代が終わり、自国第一主義を前面に出した新帝国主義時代が到来したことを告げるものだ。ロシアではプーチン大統領の治世が、途中で配下のメドヴェージェフを大統領に据えた四年を含め、十七年を迎え、ますますプーチン帝国というべきものとなってきた。中国の習近平国家主席は、二〇一六年十月の「第十八期中央委員会第六回全体会議」にて「党中央の核心」と位置付けられた。これまで「核心」と呼ばれたのは、毛沢東、鄧小平の二人だけだ。習近平はこの二人に倣って、強い権力を握って長期に亘って政権を保持するつもりではないだろうか。江沢民・胡錦濤と、中国ではそれぞれ十年で国家主席を交代してきたが、習近平は、国家主席は譲っても党主席と中央軍事委の主席は譲らず、習近平帝国を築くつもりなのだろう。北朝鮮の最高指導者の金正恩氏はもちろん、最近はフィリピンのドゥテルテ大統領という、人権を全く重視しない国家のトップも出てきている。

トランプ大統領の誕生は
独立自衛の国となるチャンス

 ’Make America Great Again’(アメリカを再び偉大にしよう)というトランプ氏の自国第一主義を掲げるスローガンは、一部のエリートに対して不満を抱くアメリカの大衆に訴える力があった。ヨーロッパにおいても、多くの大衆の支持を背景にした、俗にポピュリズム勢力と呼ばれる政治勢力が台頭してきて、世界各国の政治体制が不安定になる中、今や先進国で最も政権が安定しているのは日本だ。その日本が独立自衛の国家になれる大きなチャンスが到来している。トランプ次期大統領は在日米軍の駐留経費を全額日本が負担しない場合には撤退もあり得るとか、日本や韓国の核武装を容認するなどの発言を行っている。当初私が大統領候補の最有力だと考えていたのは、日本を取り巻く情勢をよく理解しているマルコ・ルビオ氏だが、二月十七日発表のCNN世論調査で支持率が十九%と振るわず、予備選から撤退するだろうと予測した。そして、戦略的にニュースとして取り上げてもらうために、敢えて刺激的な言動で「不法移民は『強姦魔』」だとか、「壁を造ってメキシコに払わせろ」だとか、「でかい食事会などやらないで習近平にはマックのハンバーガーでも食わせておけ」だとか、「イスラム教徒の入国を禁止せよ」など、多くの白人が思っていても言えなかった数々の本音の発言をするトランプ氏を、ほとんど全てのメディアが、暴言を繰り返す暴言王と批判する報道を繰り広げていたが、私は絶えず話題を提供してメディアを煽る戦法は「ランチェスターの弱者の差別化戦法」ですごい。白人国家アメリカが有色人種国家になるのではとオバマのアメリカに不満を持つ多くの白人層の不安は、隠れトランプ支持者を増大させ、世論調査は現実を反映しなくなると私は読み解き、トランプ氏が勝てる候補として共和党の大統領候補となり、クリントン民主党大統領候補に世論調査で絶えず負けてはいても、実際の投票では隠れトランプ支持者の票で、トランプ氏が大統領選挙に勝利して、第四十五代米国大統領となるだろうと確信した。
 トランプ氏が大統領となったことに一番脅威を感じているのは中国の習近平である。トランプ氏は大軍拡競争(スターウォーズ計画)でソ連を崩壊に追い込んだ第四十代米国大統領ロナルド・レーガンをモデルに、バブル経済崩壊に苦しむ中国を大軍拡競争に巻き込み、中国共産党政権の崩壊を目指してくるからである。トランプ氏が大統領となれば、日本が独立自衛の国家となるチャンスだと、三月二日のワインの会を始め、本誌Apple Townや勝兵塾で、十八回に亘って主張してきた。このチャンスが現実のものとなったのだ。
 近年の世界の混乱の原因は、オバマ大統領が世界の警察官の役割を放棄したことにある。これによって、ロシアはクリミア半島を占領して自国に編入し、ウクライナの親露派武装勢力を支援して、内戦を繰り返している。中国は南シナ海で岩礁を埋め立てて、滑走路まで持つ軍事基地化を図り、東シナ海では、日本領土である尖閣諸島を自国領土だとして領海侵犯を繰り返しており、イラクとシリアではISが跋扈し、彼らに影響を受けて世界中でテロが発生した。北朝鮮は、当時中国の軍事委主席だった江沢民から、最後の賭けとして、核を断念しない金正日の訪中帰りの列車を狙い、中国人民解放軍が北朝鮮の軍部の一部をそそのかして八百トンものTNT(高性能爆薬)を使っての爆殺計画、列車爆破事件を仕掛けられ、自らの身を守るのは核しかないと、自存自衛のために核実験とミサイル発射を繰り返し行っている。こんな「力の論理が支配する年」になろうとする情勢の中、ロシア、中国、北朝鮮と、核保有国に囲まれた日本の国民と領土の保全を図るためにはどうすればいいのか。現在の憲法では今の日本は守れない。独立自衛の国となる為にも、憲法改正を行わなければならない。その為にも安倍首相の長期政権化を図り、次回のオリンピックを東京に決めた安倍首相が、そのオリンピックの開会式に臨むことができるように、自民党総裁任期を三期九年へと自民党党則の改正をした。このタイミングでトランプ大統領が登場したことで、アメリカとの関係はより緊密となる可能性が高い。トランプ氏は日米安保の片務的な条項を非難していた。これを改めて、お互いが守り合う双務条約とすることで、日米同盟はより緊密で効果の高いものとなるだろう。

最優秀賞の西鋭夫氏の論文は
歴史見直しの先駆的存在に

 「鬩ぎ合いを制し覇権を握れ」はアパのビジネスに関することだ。パートナーホテルまでを含むアパホテルネットワークは、現在世界で四一五ホテル、六万七、五四九室、その中で、東京で展開するホテルは六九ホテル、一万五、八一一室、(建築・設計中を含む)、二〇一六年にオープンしたアパのネットワークホテルは五四ホテル、八、五九四室となり、二〇一六年はアパホテルにとって最も充実した一年だった。日本一のホテルネットワークを持ち、ホテルの利益率三十九%は世界一、利益三三〇億円は日本一、カード会員が一、二〇〇万人で日本一、直営のアパホテルだけに限れば、まだ客室数では日本一とは言い難い。まずは日本国内で圧倒的な覇権を握ることが、二〇一七年の目標だ。さらに二〇一六年五月には、アメリカ・ニュージャージー州にアパホテル〈ウッドブリッジ〉をグランドオープン、九月にはアメリカとカナダに三九のホテルを展開するコーストホテルズを買収した。二〇一七年はアパホテルが世界の覇権を握るための第一歩を踏み出す年でもある。超低金利の今、事業の拡大を行わず、利益を内部留保として溜め込む企業は非難されるべきだ。日本の景気回復のためにも、新規事業に利益を再投資するべきである。また借入金を二倍、三倍に増やしても、支払う利息の金利は、三分の一、五分の一となったのだから、借入金を増やしてでも投資を行うべきだ。これを実践するアパホテルは、現在第二次頂上戦略として、二〇二〇年の東京オリンピック開催までの大きな目標として、アパホテルネットワークの十万室達成を掲げている。
 私にとって、独立自衛の国家を目指す言論活動とアパホテルネットワーク十万室を目指す事業活動は車の両輪であり、「二兎を追うものは二兎とも得る」の精神でここまでやってきた。事業で成功することが言論活動のプラスとなり、言論活動を行うことが多くの連帯感を生み、事業の成功に結び付くのだ。今回九回目となった「真の近現代史観」懸賞論文は、日本の政治に大きな影響を与えてきたと自負している。二〇〇八年の第一回開催時に、当時の現職航空幕僚長だった田母神俊雄氏が、最優秀藤誠志賞を獲得したことで更迭され、それが日本中で大騒動となったことで、世の中が保守に目覚めた。この流れで安倍首相が再登板し、さらに長期政権になろうとしているのだ。第九回の最優秀藤誠志賞はスタンフォード大学フーヴァー研究所教授の西鋭夫氏に贈られた。「勝者は歴史を作る」というが、ルーズヴェルトが世界大恐慌から脱して大統領選挙で再選する為に、先の大戦を起こした事が、フーヴァー回顧録(第二章「過ったアメリカの政策」で十九のポイントを指摘している中、第四の過ちとして挙げられた「英仏のポーランドとルーマニアへの独立保証」。一九三九年三月末、英仏は、ドイツの侵略を防ぐ力が無かったのにルーズヴェルト米国大統領が、開戦となれば英仏側に立って戦うと言った事を信じてポーランドとルーマニアの独立を保証した。)から明らかであり、このことは、『ルーズベルトと開戦責任』(ハミルトン・フィッシュ)の著書により出てきた。それはイェルジー・ポトツキー駐米ポーランド大使が「ルーズヴェルト大統領はポーランド独立の為、英仏の側に立って参戦することを約束していた」と言った、このことが第二次世界大戦の原因を作ったのである。
 対日戦(太平洋戦争)の原因は、ロークリン・カーリー大統領特別顧問補佐官(戦後、南米へ逃げた)がコミンテルンのスパイとして、日本からの和平提案の甲案、乙案の全ての和平提案に反対したことや、これもコミンテルンのスパイ、ハリー・ホワイト(戦後、スパイ疑惑の中、審問期間中に突然不審な死、恐らくコミンテルンに消された)がハル・ノート(宣戦布告書といえる対日強硬要求)を作ったことにある。先の大戦後にアメリカは、日本占領政策として、ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(戦争に対する罪の意識を日本人に植え付ける計画)を作って歴史を捏造し、自国に都合の良い歴史(東京裁判史観)を日本国民に教え、強要したことが明らかとなってきているが、同じことが明治維新の時にもあった。勝者である薩長を正しいとする歴史観が、明治政府によって徹底的に日本国民に刷り込まれたのだ。西氏の論文はこれを指摘、幕末から今日に至る日本の近代史を改めて見直すきっかけとなる意義あるものであり、審査委員の全員一致で最優秀藤誠志賞の受賞が決定した。この論文は今後の歴史の見直しの先駆的存在になると思われる。

オバマの八年で弱体化した
軍事力を強化するトランプ

 事業において判断を行う時に、私は常に、それがあり得ることなのかあり得ないことなのか、矛盾なくその内容を説明できるのかどうかを考える。しかしこのロジックは歴史学には通用しない。特にアメリカで歴史を見直すと、一方的に歴史修正主義者と呼ばれるのだ。新しい事実が判明した場合、その事実を矛盾なく説明できる新たな歴史解釈を行うことが大切である。帝国主義が再来する世界の中で、自分の国は自分で守る国家へと変貌するためにも、まず日本人は真実の歴史をしっかりと知る必要があるのだ。また、反撃能力を持つことが抑止力となり、戦争を回避することとなる。その抑止力は攻撃的な兵器を持つことによって生まれることが理解できるはずだ。このまま抑止力への無理解が続けば、日本は広島、長崎に続いて三度目の原爆投下の被害国となってしまう。これを避けるためにも、同じ敗戦国であるドイツやイタリアがアメリカと協定している、ニュークリア・シェアリング協定を、日本にも導入しなければならない
 冷戦終結から二十五年が経過し、今やアメリカは軍事予算を毎年五兆円ずつ縮小している。一方、崩壊したソ連に代わるように、中国が経済力と軍事力を高めて台頭し、太平洋の覇権を狙うようになってきた。東アジア情勢が大きく変化してきたこのタイミングに、日本の核保有を容認する可能性のあるアメリカ大統領が誕生する意義は大きい。大統領に就任した後のトランプ安倍会談においては、在日米軍の縮小と共に、ニュークリア・シェアリングも交渉テーマにするべきだろう。産経新聞の十二月三日付け朝刊の国際面には、「米安保布陣 タカ派色」という見出しの記事が出ている。「トランプ次期米政権の安全保障分野に関する布陣は、国防長官にジェームズ・マティス元中央軍司令官、国家安全保障問題担当の大統領補佐官にマイケル・フリン元国防情報局長と、軍事経験が豊富な元将官が起用されたことで、タカ派色が色濃く表れた形だ。オバマ政権から次期政権に持ち越されるイスラム教スンニ派過激組織『イスラム国』(IS)の掃討を強化する明確な意思の反映だとみられている」という。オバマ政権の方針だった、アジアからの撤退や軍事予算の縮小をトランプ氏は改め、軍事費を増やして海軍の艦船を増強するなど軍事力を強化し、アジアにおいても中国に侮られないような体制を作るのではないだろうか。日本の軍事的な役割も重要度を増すはずだ。レールガンやレーザー砲等、先端科学技術を使った日本独自の兵器の開発を急ぎ、攻撃を受けた場合に、敵基地に報復ができる能力のある兵器を保有することが戦争抑止力となる。長期政権を担うことになった安倍政権は、腰を据えて憲法改正を行い、これらの抑止力獲得の実現を目指すべきだ。

2016年12月5日(月)11時00分校了