社会時評エッセイ

北方領土問題の解決と
憲法改正が安倍政権の命題

藤 誠志

アメリカの権力空白期間に
日露交渉を進展させるべき

 東京湾に停泊した戦艦ミズーリ号の上で日本の降伏文書調印式が行われてから七十一年目となる九月二日、ロシアのウラジオストクで安倍首相とプーチン大統領が会談を行った。翌九月三日の産経新聞一面の記事によると、この日露首脳会談のポイントは「北方領土問題を含む平和条約締結問題について、安倍晋三首相とプーチン大統領が直接突っ込んだ議論」「プーチン氏が来日し、十二月十五日に安倍首相の地元・山口県長門市で会談することを確認」「十一月にペルーで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて首脳会談を行うことで合意」「『新たな発想』に基づくアプローチの推進を確認」「首相は八項目の経済協力案の詳細を提示」となっている。
 アメリカ大統領選挙も益々混迷を極めながら終盤に入ってきており、十一月八日には投票が行われ、来年の一月二十日には新大統領の就任式が行われる。この選挙・就任式前後は、謂わばアメリカの権力の空白期間だ。このタイミングこそ、必ずしもこれまでアメリカが賛成してこなかった日露交渉を進展させ、日露平和条約を締結し、北方領土問題を解決するチャンスである。アメリカは、クリミア半島を併合したり、ウクライナで親露派ゲリラを支援したりしたことに対してロシアに経済制裁を行っており、日露交渉の結果行われるであろう、日本からロシアへの経済援助を、全く歓迎していない。日本から考えれば、ロシアが原油安と経済制裁で苦しむこの時期をチャンスに、したたかなロシアとの交渉であるので経済援助の約束だけで終わらせないように、軍事基地化を進め二五〇〇メートルもの滑走路を造った択捉島を除く、少なくとも三島返還との引き替えでの割にあう経済援助で、一気に領土問題を解決しなければ、この先いつになっても北方領土が返還されることはない。この領土問題を解決することと憲法改正が、安倍政権の二大命題だと言える。
 選挙により不透明感が増してきているのが、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の行方だ。次期大統領候補である共和党のトランプ氏も民主党のクリントン氏も、共にTPP反対を表明している。苦労してなんとか合意にまで持っていったオバマ大統領としては、何としてでも自分の任期中に議会の承認を得たいと考えているはずだ。承認を得てしまえば、元々TPPに反対ではないクリントン氏はもちろん、トランプ氏であっても政策の継続性や議会の存在の重みから、TPPを受け入れざるを得なくなるだろう。そのためにも日本は、十月末までに衆議院でTPP最終合意文書の批准を急がなければならない。そうすれば十一月末までには参議院で可決しなくとも自然成立する。
 二〇一二年十二月に発足した安倍政権だが、今の自民党党則の「総裁任期は二期六年」に従えば、安倍首相の任期はあと二年二カ月しかなく、自分が勝ち取った東京オリンピックの開会式を、首相として迎えることができないということになる。これは奇しくも安倍首相の祖父である岸信介首相が、先の東京オリンピックの招致に成功したのに、開会時には自分ではなく、池田勇人氏が首相として出席したのと同じだ。現在の方式ではオリンピックの開催地が決定するのは開催の七年前であり、開催を決めた首相が開会式に出るためには、最低でも七年以上の任期が必要となる。自民党は党則を改正して総裁任期を最大三期九年とし、安倍首相が二〇二〇年東京オリンピックの開会式に出席できるようにするべきではないか。

安倍首相の任期の延長は
安全保障上からも必要だ

 首相の任期を伸ばす理由はオリンピックだけではない。世界では長期に亘って政権を担うことが国益にかない一般的だからである。アメリカ大統領は最長で二期八年。ロシアも二期八年だったが、二〇〇八年に憲法を改正して、一期が六年に伸び、任期の最長は二期十二年になっている。まず二期八年大統領を務めたプーチン氏だが、一期四年だけ腹心の部下のメドベージェフ氏に大統領を譲り、二〇一二年に大統領に復帰した。再選を果たせば、二〇二四年までプーチン氏が大統領を続けることになるが、彼は更なる延長を画策し、ロシアのプーチン帝国化を進めていくだろう。中国の国家主席の任期は五年で、最長でも二期十年だ。これは、鄧小平氏のお墨付きで選ばれた江沢民氏も胡錦濤氏も守ってきた。しかし、鄧小平氏と直接の繋がりがない習近平氏は、軍の掌握を進めながら、反腐敗闘争と称する反権力闘争で胡錦濤・江沢民派の一掃を図り、二期十年後(二〇二二年)に国家主席の座を譲っても、党主席や軍事委主席は譲らず院政を敷き、習近平帝国を目指そうとする可能性が非常に高いと思われる。しかし反腐敗運動でこれまでに二十五万人を超える共産党員を逮捕したり処分したりしてきて不満が渦巻く中、中国がそれまで国家自体を存続させることも難しいのではないかと思われる。
 国家は、全ての国民がまだ貧しい時には困難に耐えて団結が固いが、国民の三~四パーセントが(四~五〇〇〇万人)極端に豊かになったことでまとまりがなくなり、国民の不満が臨界点に近づきつつある。権力闘争がはびこり、クーデターや暗殺事件が起きる可能性も高くなってきている。
 独裁国家は、オリンピック開催後およそ十年後に崩壊するジンクスがある。一九三六年のベルリンオリンピックの九年後に国家が崩壊したドイツ、一九八〇年のモスクワオリンピックの、十年後に国家が崩壊したソ連、中国も北京オリンピックから十年後の二〇一八年あたりから国家が崩壊を始める可能性も高い。
 長きに亘って続いたソ連も七十三年で崩壊した。一九四九年に成立した中華人民共和国も六十七年が経過したことになり、習近平政権が二期目を迎えるあたりから権力闘争が始まり、ソ連同様、建国七十三年を迎える二〇二二年の二期十年を迎えるあたりで、権力闘争により、中国が分裂して内乱状態になる恐れが高い。
 ソ連がウクライナやベラルーシ、ロシアなどの多くの民族別国家に分かれたように、中国もチベットやモンゴル、東トルキスタンなど幾つもの国に分かれていく可能性がある。日本はこれらの隣国の動向にも警戒しなければならない。
 中国や韓国・北朝鮮による日本敵視政策が続いている。中国は虚構の南京三十万人大虐殺を主張し、韓国は従軍慰安婦として二十万人を強制連行し性奴隷にしたと、これまた虚構の歴史を押し付け批判し、言い募っているし、北朝鮮は原爆実験を繰り返している。中韓の上層部は、今や批判していることが事実ではないことを知っているのだが、そのようなことを言い続けるのは、外に敵を作ることで国家の団結を図り、国内の不平不満を抑えていく必要があるからである。しかし、日本がGDPで世界第二位を維持していた時や日本が軍事的に強かった時には、このような言い掛かりはつけられなかった。国際社会は弱肉強食であり、「ガキ大将の喧嘩の論理」で成り立っており、正しいか正しくないかではなく、強いか弱いかが重要であり、軍事力や経済力が弱いと近隣諸国から彼らの権力強化と国益のために利用され、情報謀略戦を仕掛けられてくる。今日本の周辺国は中国、ロシア、北朝鮮と核保有国ばかりであり、その核の力を背景とした動きは、あたかも帝国主義時代に逆戻りしたかのようだ。このような東アジアの情勢の中で、日本は憲法を改正して日米安保条約を対等互恵の双務条約に改定すると共に、日露平和条約を締結、軍事費を増強し、領海・領空・領土と国民の命と財産を守るために、日本は先端科学技術を駆使して、レールガンやレーザー砲などの先端科学兵器を早急に開発して配備すべきである。
 年間五兆円ずつ軍事費を削減しつつあるアメリカだが、それでも世界の軍事費の約四〇%以上を占めており、アメリカ軍の強大さは際立っている。日本はアメリカとは良好な関係を維持し、今や破れ傘となった核の傘に頼らず、非核三原則を放棄して自国を核攻撃から守るために、周辺国の核兵器に対抗する抑止力として、アメリカとの核レンタル協定である「ニュークリア・シェアリング協定」を導入し、力のバランスの維持を図ることで、東アジアの平和と安定に貢献しなければならない。
 そのためにも先の参院選の結果、衆参ともに改憲勢力が議員数の三分の二を占めるようになった今、安倍政権は早急に改憲に着手すべきだろう。最初から思い通りの憲法へと改正することに対しては、今はまだ大きな抵抗が予想されるため、二段階での改正が良いのではないか。まず前文など多くの国民が同意しやすい部分の改憲を急ぎ、その実績を踏まえて東アジアで急迫する軍事情勢を背景に国民世論の気運を高め、日本を真っ当な国へと変える自主憲法の制定を目指すのだ。これができるのは安倍首相しかいない。しかし改憲には時間が掛かり、あと二年で二回の改憲はとても無理だ。自主憲法制定実現の観点からも、自民党党則を改定して総裁任期の三期九年へと延長が求められる。

再び経済大国になるために
インフラ投資を加速せよ

 憲法を改正して、自衛隊を国防軍に変え、抑止力が高い攻撃的兵器も保有できるようにする。だからといって、日本は軍事力によって他を圧倒するような国になるわけではない。むしろ目指すべきは経済力において圧倒的に強い国だ。そのためにも、現在の異常超低金利を利用して長期の建設国債を発行し、収益の確保できる大規模インフラ整備を行うべきだ。例えば山手線の地下化を、大深度地下(地下四十メートル以深)の公共的使用に関する特別措置法に基づき、すぐに工事に着手すべきである。その建設費用は、九十九年償還の長期建設国債を財源として行う。地下化して空いた地上部の土地を借地権化し、九十九年の借地権を分譲して得た資金と月々の借地料で国債を償還すれば、税の負担なくプロジェクトを実施することができる。
 世界の核シェルターの人口に対する普及率はスイスやイスラエルは百%、ノルウェーは九十八%、アメリカは八十二%、ロシアで七十八%であるのにも拘わらず、日本は今でも〇・〇二%でしかない。(NPO法人日本核シェルター協会調査)北朝鮮や中国、ロシアの核攻撃に対処する意味でも、山手線の地下化工事に伴い、世界で最も核攻撃を受ける可能性の高い東京に核シェルターの機能を付加することは、国民に核戦争に対する脅威の現実を知らしめると共に、一定の核攻撃への抑止力ともなるであろう。
 日本で実現しなければならないインフラ整備は、まだまだ沢山ある。交通インフラはしっかりと拠点と拠点を繋ぎバイパス機能を持つことで、初めて真価を発揮する。リニア中央新幹線は二〇二七年に東京〜名古屋が開業する予定だが、名古屋〜大阪の開業予定が二〇四五年とかなり遅い。地下化により、災害に強いリニアのバイパス機能を発揮するためにも、大阪延伸を大幅に前倒しして、二○二七年の名古屋開業を大阪開業とすべきだ。また金沢まで開業した北陸新幹線だが、バイパス機能と収益力アップのためには早急に、まず米原まで延伸すべきだ。東京の空の玄関口である羽田空港だが、さらに埋め立てを拡張することで、メガ空港化が可能だ。埋め立てた土地を経済特区として広大な免税ゾーンを設け、アジア一の大免税ショッピングモールを造り、爆発的に伸びるアジアの大人口国家の海外旅行離陸期に間に合うように急ぎ、「二○三○年六千万人の訪日外国人客誘致目標」に対応すべきである。同時にアジアの「ハブ空港」とすることも可能だ。またリニアで羽田空港とリニア品川駅経由で成田空港とを結び、羽田〜成田間を二十分で移動できるようにすれば、二つの大空港を一つのメガ空港として機能させることも可能となる。
 私はこれまで世界八十一カ国を訪問してきて恥ずかしく思うのは、大都市であるはずの東京にまだまだ多くの電信柱と電線が残っていることだ。小池百合子東京都知事も主張していることだが、災害対策としても、また無用な交通事故を防ぐためにも、併せて都市景観を良くするためにも、無電柱化を進め、すっきりとした景観の東京にすべきだ。政府の目標通りに二〇二〇年に四千万人、二〇三〇年に六千万人の外国人が日本に訪れるようになれば、二十一世紀の東京は間違いなく世界最大の観光都市になる。治安が良く街が清潔で、公共交通機関が時間通りに運行され、食べる物が美味しく、マスコミがあまり報道しないが、世界最古と言われる優れた日本の「縄文文明」期の縄文土器の中には一万六千年も前の土器が発見されている。歴史がある日本は、観光大国となるポテンシャルが十分過ぎるくらいにある。インドや中国、インドネシアやベトナムなど、多くの人口を擁するアジアの国々の人々の所得が増えて、経済的に海外旅行離陸期を迎えれば、まだまだ多くの人々が憧れの国・日本を目指してやって来るだろう。これを踏まえて、東京は世界最大の魅力的な都市づくりに取り組んでいかなければならない。

リオでの選手の活躍で
東京オリンピックへの懸念は吹き飛んだ

 私は一九七六年のモントリオールオリンピックから、日本がボイコットしたモスクワオリンピックを除く、十回のオリンピックの開会式や閉会式のいずれかを全て現地に行って見て来た。
 今回のリオデジャネイロオリンピックの開会式は、実際には映像で見るより遥かに簡素で、空席も目立ち、北京やロンドンの開会式程の感動は感じられなかったが、一見の価値はあった。また今回の日本選手の大活躍は見ていて非常に痛快であり、エンブレム盗作問題や国立競技場の建設費用の問題などで、必ずしも好意的ではないメディア報道から生じていた国民の東京オリンピック開催への疑念を、一気に吹き飛ばしてくれた。 オリンピック開催による経済効果は、長期間で見れば数十兆円にも及ぶ、数千億円や一兆円程度の費用のアップはロンドンや北京、ソチなど、どこの開催国でもよくあることである。日本にとってオリンピック開催は、観光大国となる絶好のチャンスでもある。この機会に超低金利を活用したインフラ投資を加速させるなど、安倍政権は世界経済を引っ張るという気概で、思い切った経済活性化政策を実行して行って欲しい。そのためにも、総裁任期を三期九年にすることは必須だ。私としては、まだ若い安倍首相が元気なうちは、ずっと政権を担当して欲しいという思いもある。そして北方領土問題を解決し、憲法改正によって東アジアの力のバランスを取り戻し、地域の安定と経済に貢献できる軍事力を整えていって欲しい。
 自虐史観に満ちた教科書やテレビ、新聞などのマスメディアだけを見ていると気づかないが、日本には、神話から始まり、先の大戦までの英雄伝説など誇れるものが沢山ある。子供から大人まで、これらをきちんと教えて、日本人に誇りを取り戻さなければならない。そのために私は二十五年以上、三〇八号に亘って本誌Apple Townを発行し、エッセイやビッグトーク、ワインの会などで、真実を読者に伝えてきた。また八年前に始めた「真の近現代史観」懸賞論文は今年九回目を迎え、以前にも増して優秀な論文が続々と応募されている。東京、金沢、大阪で開催している勝兵塾も通算百六十回、のべ一万一千人の方々が参加している。これらの事業を統括する公益財団法人アパ日本再興財団は、多くの日本国民の覚醒に貢献している。本当の事を知れば、皆保守になる。私は誇れる祖国・日本を再興すべく、これからも邁進する所存だ。

2016年9月9日(金)16時00分校了