社会時評エッセイ

テレビ討論会が
トランプ逆転の
チャンスだ

藤 誠志

特攻の英霊を冒涜する
「朝日」の終戦の日の天声人語

 戦後七十一年となる八月十五日に「朝日は何を書くのかなぁ」と朝日新聞朝刊を手に入れ、天声人語を読んで、私はやっぱりと思いつつも、その内容に驚いた。「けっして反戦のための文章ではない。むしろ兵士たちの勇敢さをたたえている」で始まる一文なのだが、最後に作家の保阪正康氏を訪ねてきた特攻機の整備兵だった老人の話が書かれている。「突然訪ねてきた彼が語ったのは、飛び立つ日の特攻隊員の姿だった。失神する、失禁する、泣きわめく。きれいなことを言って飛んでいった人もいたが、ほとんどは茫然自失だった。『それを私たち整備兵が抱えて乗せたんです』(『戦争と天災のあいだ』)」。これまで私は靖国神社で、特攻で散った多くの人々の遺書を読み、特攻隊で生き残った人々の話を聞き、「永遠の0」など特攻隊を題材にした映画や舞台を観てきたが、ここまで特攻隊員を酷く描いたものは、見たことも聞いたこともない。この一文は、日本のために特攻で散っていった英霊に対する冒涜ではないか。整備兵が抱えて乗せた特攻隊員が自ら操縦して飛び立てるのか。ならば、どこかに逃げるのではないのか。きれいなことを言って飛んでいった人もいたが、ほとんどは茫然自失だったという記述に根拠はあるのか。この整備兵は誰で、どの隊員のことを語っているのかを明確にすべきであり、この曖昧な「朝日」の一文は、特攻隊員の遺族の心を逆撫でするものだ。
 先の大戦を開戦するかどうかにあたって、海軍大将の永野修身は「戦わざれば亡国、戦うもまた亡国であれば、戦わずしての亡国は身もこころも民族永遠の亡国である。戦って死中に活を見いだし護国の精神に徹するならば、たとえ戦い勝たずとも、護国に徹した日本精神さえ残せば、我らの子孫はかならずや再起、三起するであろう」と語った。特攻隊員の精神は、正にこれだろう。特攻隊の戦果は戦後少なく語られてきたが、被害を与えた艦船の数は半端ではないし、多くのアメリカ兵に恐怖心を植え付け、本土上陸作戦をためらわせた。戦わずに敗れたら、それこそ永遠の敗北だ。戦い自らを犠牲にするからこそ、国が蘇ると信じ、特攻隊員は散っていったのだと思う。村上正邦氏が編纂委員会の代表を務め、月刊『日本』編集部が編集を行った『やすくにの遺書』という本をいただいた。先の大戦時に将兵達が残した遺書などに、英訳と美しい日本の風景の写真を付けて構成してあるものだ。海軍報道班員・山岡荘八氏からの、今の心境に関する質問に、二十二歳で亡くなった特攻隊員、海軍少佐・西田高光氏は以下のように答えている。「学鷲は一応インテリです。さう簡単に勝てるなどとは思ってゐません。しかし負けたとしても、そのあとはどうなるのです……おわかりでせう。われわれの生命は講和の条件にも、その後の日本人の運命にもつながってゐますよ。さう、民族の誇りに……」。同じく特攻隊員として二十二歳で亡くなった陸軍大尉・上原良司氏の遺書は以下の様な内容だ。「栄光ある祖国日本の代表的攻撃隊ともいうべき陸軍特攻隊に選ばれ、身の光栄これに過ぐるものなきと痛感致しております……。
 愛する祖国日本をして、かつての大英帝国のごとき大国たらしめんとする私の野望は遂に空しくなりました。真に日本を愛する者をして、立たしめたなら日本は現在のごとき状態にあるいは、追い込まれなかったと思います。世界どこにおいても肩で風を切って歩く日本人、これが私の夢見た理想でした」。若干二十二歳でのこの文章は、当時の日本人のレベルの高さを示すものだ。朝日新聞の天声人語の筆者には、是非この本を一読してみることを勧める。

アパホテルの展開によって
保守の考えを英語で北米へ

 私が事業を始めて四十五年、注文住宅を手掛けたことを皮切りに、宅地造成、賃貸マンション、分譲マンション、ホテルから総合都市開発事業へと業務の範囲を広げてきた。今や事業の主力はホテルとなり、今年十月には五十階建てのアパホテル&リゾート〈東京ベイ幕張〉のイーストウイングが完成して総客室数が二千一室に、また横浜では国内最大の二千四百の客室を持つアパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉が二〇一九年の開業を目指して、現在設計中だ。さらに七月にはカナダとアメリカで三十九棟、四千八百二十八室のホテルを展開する企業を、縁あってM&Aで取得、九月六日に決済を行う予定だ。昨年十一月にプレオープン、今年の六月二十日にグランドオープンしたニュージャージー州のアパホテル〈ウッドブリッジ〉は、ヒルトンホテルからリブランドしたフランチャイズによるアパホテルの海外進出第一弾だったが、今回のM&Aでアパホテルは北米に四十ホテル、五千二十八室となり、アメリカ東海岸から西海岸まで展開するホテルチェーンとなる。
 二十五年間に亘って発行している本誌Apple Townは今号で三〇七号、復興大臣の今村雅弘氏が登場しているビッグトークは三〇三回、このエッセイは二八九回になる。アメリカでのアパホテルの展開の際、契約時に、このApple Townをホテルの各部屋に必ず置くことを条件にしてきた。それに対応して、Apple Townの主要記事であるビッグトーク、エッセイ、ワインの会は全て英訳も掲載するようにした。現在アパホテルネットワークは、国内外、設計・建築中も含め四百十三ホテル、六万六千九百二十六室になる。
 私はこれまで、断られた人を除いて、Apple Townを全ての国会議員・在日大使館、友人知人に無償配布すると同時に、一部は書店販売も行ってきた。また二〇〇八年からスタートした「真の近現代史観」懸賞論文の第一回では、現在、事後買収事件として不当に拘留されている、当時現役の航空幕僚長だった田母神俊雄氏が最優秀藤誠志賞を受賞したことで更迭され、大騒ぎとなった。しかしこの騒動が、日本の保守化へのきっかけとなった。この懸賞論文は年々応募作品の質が高まり、今年で第九回となる。二〇一一年に発足した勝兵塾の東京での月例会は、八月で第六十三回、大阪では第四十五回、金沢では第五十二回を迎え、合わせて百六十回、塾生数も延べ一万一千人を超えた。各月例会の講師のスピーチはYouTubeの動画でも見ることができる。これらの活動で、私は日本の世の中の保守化に貢献してきた。しかし世界における言論戦、歴史戦、思想戦などの情報謀略戦はなお激しく、海外の多くの人から、日本は南京で三十万人を虐殺し、朝鮮から二十万人の女性を強制連行して性奴隷にした国だと信じられている。
 八月十五日付けの産経新聞朝刊の一面トップは、一九三七年に中国の河北省正定でオランダ人のカトリック司教ら九名が殺された「正定事件」に関して、根拠なく日本軍の仕業だとする説が独り歩きしているという記事だった。司教らが慰安婦にされそうになった中国人女性を守ったために日本軍に殺害されたというのだが、当時の関係国の書簡にはそのような記載は一切ない。軍律が厳しかった日本軍では、無抵抗の民間人や、ましてや女性や子供を一人でも殺せば、軍法会議で死刑となる。この「正定事件」で言われているようなことが起こるわけがない。しかし日本の左翼や、反日日本人が国連や他国にこのような事実でもない話を持ち込んだり、海外で慰安婦像を造ることをサポートしたりということを長年に亘って行ってきたために、世界の多くの人々が虚構を信じるようになり、その結果、日本人の誇りが失われてきた。この様な状況となっているのは、英語での発信がこれまで少なかった保守にも責任がある。私がカナダやアメリカでのホテル展開を決断した理由の一つに、Apple Townによって日本の保守の考えを英語で英語圏に伝えたいという思いもあった。

反日日本人が広めた
捏造された歴史の数々

 私は昨年六月に「本当の日本の歴史 理論近現代史学」を上梓した。その本で私が強調したのは、日本の中国への侵略の端緒とされている、一九二八年の張作霖爆殺事件は、通説で言われている関東軍河本大佐の仕業ではないということだ。河本の証言通りに爆弾を仕掛けたのであれば、車両の側面が破壊され、脱線する。現在残っている、爆破現場の天井が破壊された車両の残骸の写真の様にはならない。通説を鵜呑みにするのではなく、実際の写真などの事実を基に、出来事を矛盾なく説明できるのが、正しい歴史観だ。南京三十万人大虐殺説も、日本軍入城時の南京の人口が二十万人で、その一カ月後の人口が二十五万人という記録がある以上、その約一カ月間に三十万人を虐殺したということはあり得ない。国民党の敗残兵で逃げ延びるために民家に押し入って住民を虐殺し、衣服や金品を奪い、軍服を脱ぎ捨てて便衣兵となった者の一部を逮捕し、日本軍が処刑したことはあっただろう。しかしそもそも南京攻略戦に勝利した日本軍が民間人を殺害する理由がない。もしそのような虐殺があれば、写真や犠牲者の名前が残っていそうなものだが一切ない。上海大学の朱学勤教授も、被害者名簿が一名分もないと認めている。またこの捏造された歴史である南京大虐殺の影に隠れて、実際に起こった中国人による日本人の虐殺である、通州事件(中国の保安隊が日本人居留民を襲撃した事件で二百二十三名を猟奇的に虐殺した。)や大山大尉惨殺事件が埋もれてしまっているのだ。
 もう一つの大きく捏造された歴史は、従軍慰安婦の強制連行だ。一九四四年にアメリカ軍がビルマで行った朝鮮人慰安婦への尋問記録には、多額の報酬をもらい、日本軍将兵と一緒にスポーツイベントやピクニック、演奏会に出席する慰安婦達の証言が残っている。この尋問記録の結論は、彼女らは軍を追いかけている「追軍売春婦」以外の何者でもないというものだ。高額報酬で慰安婦を募集した広告の記録も残っている。強制連行は捏造された歴史であるのに、朝日新聞や反日日本人が真実のように取り上げ、喧伝してきた。正に「日本人の敵は日本人」と言えるだろう。北米エリアにおいてこれらの捏造を暴き、真実を伝えるために、アパホテルを展開してApple Townをより多くの人々に読んでもらうことが、多少なりともビジネスで成功を収めることができた私の義務だと考えている。

東アジアの力のバランスは
「ニュークリア・シェアリング」を日米間で協定することだ

 十一月のアメリカ大統領選挙が迫ってきた。このところ、共和党のトランプ候補の支持率が失速状態だ。理由は、正式な候補になっても止まらない過激な発言にある。八月十四日付けの時事通信の配信を要約すれば、トランプ氏は、保有している核兵器がなぜ使えないのかと、外交政策の専門家に三回も尋ねたという。「一連の発言は核の先制使用の可能性を完全に否定しない米政府の政策と矛盾するわけではない。だが、米メディアによれば、識者の目にはトランプ氏の発言があまりに軽々しく映り、『核戦争の引き金を引くかもしれない』(シンクタンク関係者)という漠然とした不安が広がっているようだ」という。そんな中、「オバマ大統領が検討中とされる『核兵器の先制不使用宣言』について米空軍長官は懸念を表明した」と報じられているが私も大反対だ。
 私は七月号と九月号の本稿で、トランプ氏について下記のように書いた。「現実的な予想として、今の状況では『トランプ大統領』がどんなに望んだとしても、太平洋の覇権維持のためには、沖縄の在日米軍の撤退や日本の核保有は、軍や議会の大反対によって認められないだろう。しかし日本はもっと先を見越して、真の独立国家となるべく、憲法を改正して抑止力としての攻撃用兵器を持ち、アメリカ軍が撤退していく中で、東アジアのバランス・オブ・パワーの維持に備えるベきだ。膨張する中国に対してバランスをとるベく、アメリカがぎりぎり承認できる核保有方法である『ニュークリア・シェアリング(核の共有)』を日米間で協定し、かつての日英同盟のように、日米安保を双務化することが必要だ。孤立主義へと向かっているアメリカ世論も、このような形であれば、東アジアにおいて、日本がこれまでのアメリカの力の肩代わりをすることを認めるのではないか。
 実際アメリカからの軛は緩みつつある。サウスカロライナ州女性知事のニッキー・ヘイリー氏や同じくアラスカ州女性知事サラ・ペイリン氏のように、若くて聡明な女性で、共和党主流派の支持を得られる、トランプと異なるキャラクターの人物を副大統領に選ぶべきであると、私は以前から主張していた。
 しかし七月十六日の日本経済新聞朝刊は、トランプ氏がペンス氏を大統領候補に選んだと次のように報じている。「ペンス氏は二〇〇一年から六期一二年間にわたって下院議員を務め、一三年からインディアナ州知事に就いた。保守派の論客として知られ、トランプ氏と同様に移民政策にも強硬だ。ライアン下院議長など共和党主流派とのパイプが太く、非議員のトランプ氏は党内の調整役をペンス氏に期待する。
 本選に向けてトランプ氏の弱みとみられるのは、女性やヒスパニック系(中南米系)、黒人など少数派の集票だ。ペンス氏はトランプ氏支持層の主体である白人男性で、キリスト教保守派に属する。少数派の集票につながるとの予測はほとんどない。インディアナ州も元来、共和党が強い『レッド・ステート(赤い州)』で、激戦州ではない。共和党全国大会目前の副大統領候補の発表は、トランプ氏が意中の副大統領候補に次々と断られた末に、ペンス氏しかいなかったという消去法の選択の面もある」。

トランプ大統領の誕生が
日本を真の独立国へ導く

 思ったような副大統領候補を選べなかったトランプ氏にとって、今最も必要なのは優秀なブレーンだ。ここからの闘いは共和党VS民主党という組織対組織の闘いだ。これまでは数の多い低学歴のノンエリートの支持を掴む作戦で共和党大統領候補になれたが、この延長線上だけでは勝てないことは、トランプ氏もわかっているだろう。
 トランプ陣営は選対最高責任者に保守派ニュースサイト「ブライトバード・ニュース」のスティーブン・バノン会長を起用したと発表し、これまで控えてきたテレビ広告を再開するとともに、十八日のノースカロライナ州での演説で、過去の発言を「後悔している」と述べ、原稿を映し出すプロンプターを見て読み上げながら、「議論が白熱し多くの問題を話していると、正しい言葉を使わなかったり、間違ったことを言うものだ。」と反省を述べ、過去の発言を「後悔」し、共和党主流派ともしっかり手を組んで、民主党から政権を奪還するために党の団結を固める戦略に軌道修正してきた。
 しかしこの先、雌雄を決するのは「テレビ討論会」である。一九六〇年のケネディ対ニクソンの時には、十分に休養をとり、入念なメイクを施してテレビ映りを良くしたケネディが、下馬評を覆して大統領になった。同じ様に、トランプ氏がこのテレビ討論でいかにクリントン氏を議論で追い込めるかが、勝敗を決めるだろう。
 アメリカの友人によると、トランプ氏の支持が低下しているとはいえ、クリントン氏への支持率も、決して高くはないという。どちらにも投票したくない人が増えているのは確かだ。しかし親中派の民主党が政権を獲得すれば、日本の核保有やニュークリア・シェアリングを認めることは決してないだろう。トランプ氏が大統領になることは、日本が真の独立国家になることに繋がる。彼の言う通り日米安保条約を対等互恵のものへと変え、先端科学技術による攻撃用兵器を備え、アメリカとのニュークリア・シェアリング協定をして核の抑止力も手に入れる必要がある。今の日本が軍国主義化して他国を侵略するなど、あり得ない。中国、ロシア、北朝鮮と核保有国に囲まれ、露骨に海上権益への野望を露わにする中国と対峙している日本にとって、力のバランスを維持するための軍事増強は不可欠だ。ソ連は七十三年で崩壊した。先の大戦から七十一年経過した今、トランプ大統領誕生によるショック療法で、日本も自主憲法を制定し、軍事力の強化に着手するべきではないのか。今後のトランプ氏の巻き返しに期待したい。

2016年8月19日(金)18時00分校了