社会時評エッセイ

安倍ロスを乗り越えて
存在感のある日本に
Vol.339[2020年12月号]

藤 誠志

自虐史観を脱却して
先の大戦の総括をすべきだ

 月刊誌WiLL十一月号の「総力特集 世界中からエール 身命を賭した安倍総理の光輝」の中に、橋本琴絵氏が寄稿した「精神の高潔 安倍総理はなぜ硫黄島の地に伏したのか」という一文が掲載されている。以下にその冒頭部分を参照する。
 「憲政史上最長政権が突然幕を閉じたことは日本中に衝撃を走らせた。深い悲しみと共に善政への感謝の声が上がる中、安倍政権を振り返るにあたって、私が安倍総理の国を思う心に感銘を受けた経緯を説明したい」「平成二十五年四月十四日、安倍総理は小笠原諸島硫黄島の航空基地を訪れた。硫黄島は昭和三十二年に米国から返還された後、自衛隊の基地として使用され、島内には米軍が戦時中に敷設した長さ二千六百五十メートル、幅六十メートルの滑走路と予備滑走路がある。騒音が問題となりやすい夜間発着訓練に使われ、また民間機の緊急着陸先として活用されている。島内では今も多くの不発弾が見つかるため、爆弾処理を専門とする陸上自衛隊員が常駐している」「昭和二十年二月、栗林忠道大将率いる硫黄島守備隊に対し、リッチモンド・ターナー海軍中将率いる米軍十一万人が強襲した『硫黄島の戦い』(アメリカ軍の作戦名はデタッチメント作戦)は、日本の守備隊総員数(約二万人)を上回る米軍戦死傷者二万六千人超という結果となり、大東亜戦争の激戦地として知られる」「このように世界最強のアメリカ海兵師団に対して大きな出血を強いた硫黄島の戦いとは何か。沖縄戦の八原博通陸軍大佐と硫黄島の栗林忠道陸軍大将は共に米国留学体験があり、日本軍の島嶼部防衛戦術である水際作戦では、米軍の火力を前にして壊滅すると悟り、敵軍を内部に引きつけてから肉薄攻撃を加える作戦を展開した」「島全体にコンクリート要塞を構築し、わが将兵は空気の薄い壕内で灼熱と渇き、そして有毒の硫黄に耐えながら、今日の私たちのために戦い、散華された。硫黄島が攻略されたならば、この飛行場から東京にある宮城を狙う敵重爆に護衛戦闘機がつくようになり、戦略爆撃によって多くの日本人殺傷が予期されたからである」「この歴史の中、硫黄島を攻略した米軍は、わが将兵が立てこもって戦った遺体の残る蛸壺壕をブルドーザーで押しつぶし、そのまま滑走路を敷設した」「つまり、今も飛行場の下に英霊のご遺骨が眠っている。この事実に対し、安倍総理は御身の立つ両足の下にあるご遺骨を、まるでコンクリート越しに撫でるように跪き手をそっと重ねられ、言葉をかけられた。いまだご家族のもとに返すことができない事実に対して、一国の宰相ともあろう方が跪かれた。そして内閣府の予算を使い、大東亜各地で散華された英霊のご遺骨を最後の一柱まで収集する決意を固められた」と綴っている。
 正に安倍首相らしい誠実な態度なのだが、戦後の歴代首相は、戦争直後も高度経済成長で日本が世界第二位の経済大国になった時も、そして今も、先の大戦の総括を怠り、散華された英霊のご遺骨収集を「最後の一柱まで」収容する意欲に欠けている。この背景にあるのが戦後の自虐史観に基づく事実とは異なる歴史教育だ。先の大戦では負けたとはいえ、日本がアメリカ、ソ連、イギリス、中国、カナダ、オーストラリアなどと戦ったことで、世界中から西欧列強の支配する植民地が消えてなくなり、その後には公然と人種差別する国家も無くなった。これは世界史に残る快挙だ。もしも日本が先の大戦を戦っていなかったならば、未だに世界は白人・キリスト教徒の国家に支配されたままで、その他の多くの国々は白人国家の植民地のままで苦しんでいただろう。このことをきちんと多くの日本国民が知って、先の大戦を正しく総括することが、今強く求められている。

ますます広がるコロナ禍
ワクチン開発が急がれる

 中国・武漢市にあるウイルス研究所で行われていた生物兵器の研究過程で流出したとも言われる新型コロナウイルスは、アジアから北米、南米、ヨーロッパ、そしてインドへと瞬く間に世界中に広がり、世界中で約三千七百万人が感染、約百十万人が死亡している。特に北米、南米、ヨーロッパ等、白人や白人との混血の人々が多い国家で感染者数が多く、中国、日本、台湾、韓国等の黄色人種の多い東アジアの国家では感染者が少ない。人口百万人当たりの死者数も、アジアの国々よりも白人国家の方が百倍前後多い。これまでの死者数はアメリカが約二十二万人、イギリスが約四万三千人、イタリアが約三万六千人、フランスが約三万二千人と、いずれも一万人を超えている。
 大量破壊兵器としては核兵器、放射能兵器や化学兵器、生物兵器が挙げられるが、最も恐れるべき兵器はウイルスや細菌等の生物兵器だということは、今はまだ終息の兆しが見えていない今回の新型コロナウイルスの感染拡大からも明らかである。百年前に大流行し、一千七百万人から五千万人もの人々が亡くなり、アメリカでは最初の年に平均寿命が約十二歳低下したとされるスペイン風邪等、これまでのパンデミックは、終息までに約二年を要している。新型コロナウイルスの最初の症例が出てからまもなく一年であり、長くても来年末までにはこの事態は終息すると思われる。
 このウイルスの感染拡大の影響で、開催を予定していた二〇二〇年夏の東京オリンピックは来年七月二十三日から八月八日までの十七日間と一年間延期となったが、九月にIOCのバッハ会長は、今年の夏以降に多くの国際的なスポーツ大会が再開していることを理由に、来年の開催実施に自信を示した。しかしフランスやイギリスでは再び感染者が増加、アメリカやブラジル、インドでもまだ感染者が増えている現状を考えると、日本が世界中から選手や大会役員、そして観光客を受け入れることができるかは大きな疑問だ。是非とも来年には盛大に開催してほしいが、IOCと東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は東京オリンピックの縮小案について既に協議しており、その案には選手の歓迎セレモニーの中止、競技場の観客数の削減等が盛り込まれている。さらに、例えばPCR検査で陰性になった選手、役員、そして観光客のみが、日本に入国してオリンピックに参加できるという形も想定できるが、果たしてそれでよいのだろうか。
 オリンピックの一年延期は異例の措置だが、今後の国際的なスポーツの日程を考えれば再度の延期はない。これまでもオリンピックは戦争を理由に中止になったことがあり、どうしても夏に開催できない場合は日程が詰まっていて来年の東京オリンピックは中止となるだろうが、縮小しての開催の方がまだましだという考え方もある。昨年までは日本で一番の成長産業は観光産業であり、オリンピックイヤーの今年は世界各国から観光客が日本に殺到、そのさらなる発展を期待する人も多かった。しかし選手と役員、そして限られた外国からの観光客のみでの開催であれば、大きな経済効果は期待できない。
 問題はワクチンや特効薬の開発が来年七月までに成功して、必要としている人々の全てに行き渡らせられるかどうかだ。IOC副会長のコーツ氏もワクチンが利用できるようになっていれば、その接種が義務化されるとコメントしている。そうなれば、入国制限や大会会場での制限をかなり緩和しての東京オリンピック開催が可能になり、それなりの経済効果も見込めるようになるだろう。一年遅れたとはいえ、多くの観客を集めて競われる東京オリンピックの実現を、私は強く望んでいる。

南沙諸島、スプラトリー諸島を埋め立て軍事基地化を図る習近平

 冒頭で紹介した月刊誌WiLL十一月号の「総力特集 世界中からエール」にあるように、今は「憲政史上最長の政権が突然幕を閉じた」ことにより、すっかり安倍ロスになっているかのような日本だが、菅首相の下、再び元気を取り戻し、経済のみならず政治的にも世界で存在感を示す国にならなければならない。
 十一月にはアメリカ大統領選挙があり、トランプ大統領が色々物議を醸す発言を繰り返しているとの報道が多いが、日本にとってはアメリカ大統領は共和党から選出される大統領が望ましい。世論調査でトランプ大統領は民主党のバイデン候補に一〇%も差をつけられているものの、世論調査ではトランプ支持と意思表示しない人が多く、実際の投票では熱烈なトランプ支持者は必ず選挙に行く一方で、バイデンと世論調査で答えた人たちは、バイデンが勝利するものと思い選挙に行かない人も多いことから、結果的にはトランプ大統領は再選すると思われる。コロナ禍での大統領選挙であり、強いアメリカに期待するアメリカ国民は、絶えずアメリカに追いついてくる国家をライバル視してきたことを考えれば、中国に厳しいスタンスを取るトランプを支持するだろう。そのため、トランプは勝利する。トランプ大統領の再選に期待したい。
 習近平率いる中国は、二〇一八年二月二十五日に憲法を改正し、国家主席の任期二期十年を撤廃、習近平が二〇二八年からの三期目の任期に挑むことが可能となり、長期独裁体制の習近平帝国となる可能性が高い。
 中国が管轄権を主張する九段線は、フィリピンに近い南シナ海の公海からベトナムに近いファイアリー・クロス礁まで広がり、南シナ海での軍事拠点化を進めてきて、南シナ海に新行政区を設置し、ベトナムと対立を強めている。
 日本にとって不都合な国家といえども引っ越しのきかない国家と共生していくには力のバランスを保つことが重要である。益々軍拡し軍事大国となった中国と対峙するには制空権と制海権を維持することであるが、中国は次々とJ‐20等の新型第五世代ステルスジェット戦闘機を開発し、その新型戦闘機だけでも数の上では中国は日本の四倍も保有し、今や日本の制空権は危うい。そこで、天然の要塞とも言える日本を取りまく海を守りとする制海権の維持が最も重要である。そのためにも日本は海底九〇〇メートルまで潜れると言われる深深度潜水艦に、深深度魚雷を装備することで海底二〇〇メートル以下の深海を支配する必要がある。制深海権を保持するとともに、日本の海上自衛隊が装備する航空機による敷設可能な磁気誘導型九一式機雷(世界初の複合誘導型追尾上昇機雷)を必要量保有し、開戦時に敵対国の港湾と日本海に繋がる海峡に即座に設置することで制海権は確保できるであろう。
 日本の平和が守られてきたのは憲法九条があるからではなく、日米安保条約があり、アメリカに守られていたからである。日本が真の独立国家となる為には、自分の国を自分で守れる体制を確立することである。日米安保条約で一方的に守ってもらう条約から対等互恵の相互防衛条約に改定して、米軍が日本に駐留しているように、日本はグアムとかハワイに自衛隊を駐留させて初めて対等な同盟関係となったと言える。その時初めて、日本は真の独立国家となる。

2020年10月12日(月) 10時00分校了