社会時評エッセイ

改憲と防衛力の
充実が日本の急務だ
Vol.327[2019年12月号]

藤 誠志

審査委員が全員一致で
村島氏の論文を最優秀に

 十月一日、第十二回「真の近現代史観」懸賞論文の審査委員会が開催された。懸賞論文のレベルは審査委員のレベルで決まるといわれるが、今年も審査委員長の加瀬英明氏をはじめ、小堀桂一郎氏と伊藤隆氏の二人の東京大学名誉教授や、報知新聞社前会長の小松﨑和夫氏、衆議院議員 元復興大臣の今村雅弘氏、以上のハイレベルな審査委員が厳正な審査を行い、二百本近い応募の中から最優秀藤誠志賞に鹿児島大学名誉教授 村島定行氏の論文「平成日本は精神的に独立していなかったために没落した」を選んだ。村島氏は計算機科学者で日本語の研究も行っており、表意文字と表音文字を併用する世界唯一の言語である日本語は、それ故に機能が非常に豊かであり、カタカナ語の氾濫は日本語の文化的特徴を失わせると主張する論客だ。この村島氏の受賞論文の一部をここに掲載する。

「平成日本は精神的に独立していなかったために没落した」

1 あらまし
  
 1995年から2015年の間に日本経済は世界の17%から世界の6%に縮小した。この平成期間における日本の大没落は朝鮮、台湾、樺太及び満州を失った大東亜戦争における敗北に匹敵する。この平成の大没落の原因について、占領軍或いは占領軍のおかげで日本の主流となった敗戦利得者達によって吹き込まれた日本人の自虐性によることを論証する。

2 経済的な成功の後にやってきた
  反日プロパガンダの嵐

 大東亜戦争の敗北以来日本はすぐに国家の再建に取り掛かった。1955年の経済白書では「もはや戦後ではない」という副題がついたが、戦前のGDPの最高値を敗戦後10年目に凌駕したことを表現したものである。岸信介首相が行った安保改定とその後に首相になった池田勇人による所得倍増計画の提唱は日本の独立と心の再建を後回しにし、経済問題に専念することを決定したという意味で転換点であった。そのお陰で順調に経済の再建は進み、昭和が終わる1989年頃には米国に次ぎ、米国を脅かす経済大国になっていた。
 東西の冷戦に勝利した米国は日本の経済力にたじたじとなっており、米国が勝ったというより、軍事的に米国に守られている日本だけが勝利した感があった。
 日本国憲法の戦争放棄、交戦権放棄の規定は日本国は滅んでもいいという規定である。つまり日本国第一ではなく、周辺の諸国の利益が最優先なのである。これは敗戦の罰として押し付けられた。
 地価の一貫した値上がりから予想されていたバブルの崩壊は平成に入ってすぐやってきた。借金をしてでも土地を買っておけば損をしないという考えが背景にあるが、どこかで土地の値上がりは止まる。借金して買った土地の値下がりで返済不能の借金を抱え込んだ者が大量に発生したのだ。日本では初めての経験でどうすればいいか誰もわかっていなかった。有名高を出て東大、京大、一橋などを比較的いい成績で卒業した官僚が多い。いわゆる受験秀才で、正解のわかっているものは解答できるが正解のわからないものについては回答できない。
 日本の経済的な復興が目立ってきた頃から、経済的に際立って豊かで国民の自由度も申し分のない日本に対して「世界最大の犯罪国家」や「世界最大の借金国家」というプロパガンダが行われるようになった。日本国の発展を望まない勢力からみれば、経済の実績や国民の自由度では何も言えないが、日本を攻撃できる材料があればそれを利用しない手はないというわけだ。
 こういうプロパガンダに日本の官僚はまともに対応できない。慰安婦問題や南京大虐殺については「日本政府は既に謝っている」とか「南京で虐殺があったことは否定できない」としか言わない。これでは簡単に濡れ衣を着せられてしまう。いつまでもこの種の問題が終わらないのは、日本政府の真実を言うことさえ出来ないほどの弱い姿勢にある。弱い姿勢は憲法第9条からきている面がある。日本には交戦権がない。つまりまだ服役中の罪人だと意識すれば強く出れない。経済問題についても「日本政府は膨大な額の公的債務があり、実質的に破綻している」と攻撃されると強く反論する者がいない。当然緊縮財政が必要ということになるが、正解は「公的債務は日本人がこれだけ政府に貸せるほど豊かであることを意味している。1000兆円の公的債務は財政の破綻の象徴ではなく、日本人の豊かさの象徴」なのだ。当然のことながら「デフレギャップを埋める大規模な財政出動」が必要であったのに、プロパガンダに誘導されて日本政府は「基礎的財政収支の均衡をとる」という需要圧殺政策を続けた。

3 平成の大没落の原因は
 「お金の使い方が少なかった」こと

 2012年に安倍内閣になって異次元金融緩和を実施し、年間80兆円を刷って市場に流すようになったがデフレ脱却は実現しなかった。お札を刷るというのは金融緩和(アクセル)であるが基礎的財政収支の均衡をとるという(ブレーキ)政策をとり続けたため、お金の使い方は抑制されたままだった。使われないお金は米国などへ流れ円安を引き起こした。「膨大な公的債務があり実質的に破綻している」というガセネタを真に受け、「基礎的財政収支の均衡をとる」という、誤った政策を最初にとった官僚の政策をその後の官僚が引き継いだために、デフレが続き、平成の大没落を引き起こした。30年間お金の使い方が少なすぎたということは、日本がどの程度の経済力を持っているかという問題で常に小さい低い評価をし続けたことを意味する。日本は米国の6割のGDPを持つ経済大国にふさわしいお金の使い方をして来なかったのだ。「日本は借金国だ。金を使ってはいけない」ではなく「日本は世界一の金持ちだ。それにふさわしい予算を組まなければならない」が正しかったのだ。
 平成30年の末には日本の対外純資産は400兆円を超えている。それは外国に造った工場や外国に貸したお金に関する純資産であり、世界一の額だ。昨年度の大企業の内部留保の総額は450兆円だ。2012年の安倍内閣登場以来、異次元の金融緩和として年間80兆円の日銀券を刷らせている。その総額は450兆円に達する。この3部門の合計は1300兆円だ。これは国民のために使おうと思えば使えるのに使ってこなかったものだ。1300兆円のお金を余らせながら日本の財政当局はわずか数兆円の税収が必要として消費税を10%へ上げようとしている。気違い沙汰としか言いようがない。

4 日本が精神的に独立すれば
  デフレ脱却ができる

 サッカーの試合などで重要なことは勝つつもりになることだ。勝とうと思わなければ勝てない。核兵器も作る気になれば1ヶ月でできるとしても作る気にならなければ作れないのと同じだ。靖国参拝の問題にしても参拝に何の問題もないと内心で論証するだけではだめだ。例大祭の際に欠かさず真榊を奉納したとしても実際に参拝しなければ参拝は不可であることを自ら認めたと同じである。例えば尖閣諸島の領有権を中国が主張しているので尖閣諸島を守り切れるかどうか心配になる。相手は10倍の人口を持っていると怖気づけば守れなくなるが、「必ず守る」と決めれば守る方法が見つかる。日本国憲法の改正については「変えなければならないし,変える事ができる」と考える政治家が安倍晋三首相以外にいなくて、これまで手付かずで放置されてきた。
 戦後の日本の特徴は自国第一の与党と周辺国第一の野党に分かれて折り合いが難しいことである。憲法第9条を廃棄し、交戦権を持ち軍隊を持つことが自国第一の原則である。自己の存続のために戦う軍隊を持つということだ。
 日本のGDPが米国の6割もあった頃、例えば防衛費をGDPの3%に増やしたとする。そうすると防衛生産が内需において大きな部分を占めるようになり、デフレに陥りにくくなったであろう。米国とともに世界平和を維持する役を任されたかもしれない。デフレとは仕事をしないという病気だ。大国になりながら大国としての仕事をしない日本がデフレに陥るのは当然の報いとも言える。精神面の復興ができていないために米国の半分以上の経済力を持つ経済大国になっても、経済力を政治的に生かそうという発想が生まれなかった。敗戦で植え付けられた自虐性や消極性のため、軍事大国、科学技術大国への転換など思いもよらなかった。その他にも順調に成長を続けられる方法はあったはずだ。日本は借金国だ。日本はまだ再建中だ。失敗は許されない、など様々な自己抑制が働いて、借金国という口実の下、何もせず、長期のデフレになったのである。

5 誰しも自己正当化のために噓を言い、
  悪口をいう。

 大東亜戦争の勝者の米国は自国の犯罪を棚に上げて日本を裁いた。戦争中から考えていた罪悪感を植え付ける計画(ウオー・ギルト・インフォーメーション・プログラム)を絶対的な占領軍の立場を利用して実施した。検閲を行い、その事実を隠していた。中国は共産党政権の正当性を裏付けるために日本を邪悪な侵略者として描き、朝鮮は遅れた国であった過去の歴史を消すために、日本を戦争犯罪を犯した国と宣伝し、自国民に教育した。日本の左翼政党は「無謀な侵略戦争をし、その責任を曖昧にしている」として旧指導層を攻撃した。そうすることが現実に与党攻撃になり党勢拡張に有利になると考えたのだ。教育勅語は国会で無効宣言がなされたままであり、神道や仏教については教えられず、道徳教育については骨抜にされた。慰安婦問題や靖国神社問題で、周辺国を第一とする中韓および野党などの攻撃にさらされ、有効な反撃をできないまま、後退させられ続けた。
 中曽根首相は「中国人民の心を傷つけた」と脅されて自分の任期中だけは靖国神社を参拝しないと約束してしまう。何の問題もなかったものが、左翼により火が付けられ、問題化していったことを忘れてはならない。基本的な価値観が相違しているとして突き放して考えることも必要になる。
 日本に他国に卓越しているところがあるとすればそれは日本人だけが持つソフトウエア(=漢字仮名混じり文)の影響ではないだろうか。日本語を使いこなせればそれだけで賢くなれる。日本人及び日本語はそういう存在ではなかろうか。戦国時代に日本に来た宣教師たちは日本の識字率が世界一であると書いている。こういう言語を持つ日本人の社会が高度な文化、高い水準の豊かさを示すのは当然であろう。

6 謀略、陰謀が渦まき、
  スパイが暗躍する日本

 鄧小平の時代に中国は「日本はなぜうまくいっているのか」というテーマで日本の高度成長について研究したはずだ。結論として「道路、新幹線、車などを造る事が経済成長だ。ものを造る事が国民の所得を増やす」という原理を把握したのではなかろうか。そのための環境づくりとして改革・開放政策が推進された。諸外国と良好な関係を保つことが順調な技術移転と資本導入に欠かせない。日本が経済的には圧倒的であったとして称賛ばかりしているわけにはいかない。自分たちの立場を強めるため、日本は「世界最大の犯罪国家」と同時に「世界最大の借金国」というデマを流した。中国では天安門事件の後、江沢民によって反日教育が始まり、子供達は「日本に侵略され辱めを受けたことを忘れるな」という言葉が反復、暗唱させられた。憎むべきは中国共産党ではなく日本軍国主義であるという教育がなされた。その中心テーマであった南京大虐殺については明瞭な証拠がないことを知った中国共産党は南京大虐殺の証拠の捏造を始めた。1997年にアイリスチャン著「レイプオブ南京」という本が米国で出版されたが中国共産党が捏造資料を用意し、チャンに書かせて、中国人に買わせてベストセラーに仕立上げたものだ。チャン自身は2004年36歳で車の中でピストル自殺しているところが発見された。「本の内容がデタラメだった」ということにチャンが気づいたか何かで殺されたものであろう。
 日本の歴史と伝統は深いものがある。万世一系の天皇の存在は大きい。そのことを日本人が誇りに思い、思考、行動全般に落ち着きを与えている事実を快く思わない連中が少なくない。

7 日本に追いつきたい、
  日本の発展を止めたい陣営の作戦

 昭和の終わり頃の日本は光り輝いていた。日本の存在が米国、中国その他に与えた恐怖心は大きかったと思われる。米国は日本の発展を止めるためにBIS(=国際決済銀行)規制を持ち出してきて、銀行に自己資金規制8%を守るよう強制した。銀行は自由に日本の企業に貸し出しを行えないようになり、貸し剝がしも頻発した。米国がとった日本経済の成長を遅くするための作戦の一つだ。
 バブル崩壊を機に日本では「自民党がダムや道路や新幹線を無駄に造っている」というキャンペーンが行われた。さらに「日本は世界最大の借金国だからお金を使ってはいけない。お金を刷ればハイパーインフレになるから刷ってはいけない。財政再建のために基礎的財政収支の均衡を達成しなければならない。そのためには歳出削減と増税が必要だ」という主張がなされた。これは米国のBIS規制と同じで「できるだけ日本経済にお金を供給しない。或いはお金を使わせない」という狙いを持っていることは明らかだ。国内の日本国を第一としない連中の画策か、或いは中国からの指令だった可能性もある。この作戦がうまくいき、日本は「失われた20年」という長期のデフレに陥ってしまった。日本に追いつきたい、或いは日本の発展を止めたいという反日陣営の作戦が見事に成功したのだ。
 2012年に安倍内閣が再登場した時がデフレ脱却が実現する最大のチャンスであった。日本の発展を望まない者から見れば最大の危機であった。安倍内閣はお札を年間80兆円刷って市場に流し始めたが既発行の国債を購入するに留めたためにデフレ脱却に繋がらなかった。国債の購入は借金の返済であり、GDPの増大には繋がらないし、税収も増えない。増刷した日銀券を財政出動に回して140兆円〜150兆円の大型予算を組んでおれば大規模な内需拡大が実現し、物価上昇率は容易に2%に達したはずだ。
 近年、現代貨幣理論(MMT)が注目を集めるようになった。この中に自国通貨建ての国債については、借金は大きくても構わないという考え方がある。国債の発行が多いとして日本の国債の格付けを下げられたときに日本の大蔵省は「自国通貨建ての国債が債務不履行になることはない。」と抗議している。増刷した日銀券を使えば返済不要にできるから債務増大を恐れず、成長を実現するべきであった。
 30年間とりつづけている基礎的財政収支の均衡が有害で、諸悪の根源であったことになる。日本の官僚、学者、政治家などが独立心に乏しいため、失敗を恐れるあまり、非難攻撃に対し過剰に対応し、正しい道を踏み外したことを示している、と村島論文にある。

日本再興策

 日本は戦争放棄、交戦権の放棄を敗戦国の罰として押し付けられた日本国憲法を盾に、戦後の戦争に組み込まれることなく、朝鮮戦争特需で日本経済を復興させ、ベトナム戦争特需や冷戦特需で世界第二位の経済大国にのし上がったが、その後、「世界最大の犯罪国家」や「世界最大の借金国家」というプロパガンダに貶められてきた。
 今や日本は真っ当な国となるべく、憲法を改正し、GDPの2%程を国防予算とし、最先端科学兵器であるレールガンやレーザー砲を開発装備し、深深度機雷に世界最強と言われている日本の深深度魚雷を装備する深深度潜水艦を三十隻程度配備、全国の地方空港に対空迎撃ミサイルを配置し、空爆に耐えられる地下格納庫や弾薬庫を造り、ファランクスガトリング砲全自動迎撃システムで守り、偵察無人攻撃機や巡航ミサイル(トマホークなど)に攻撃用ドローンや小型索敵偵察ドローンなど数千機を配備するべきである。また、陸自隊員の所有する武器の近代化を図り、少数精鋭化するとともに、五千人程度のサイバー戦士を養成し、情報省を創って情報謀略戦にも負けない国防軍を作るべきである。
 日本は観光大国化を目指し、まだまだ不足している片側三車線の高速道路を、仙台・東京・名古屋・京都・大阪・広島を繋ぐ基幹高速ネットワーク(最高速度 晴れの日一三〇キロメートル、雨の日一一〇キロメートル)として完成させると共に、東京駅と羽田空港・成田空港間の高速リニア鉄道を造り、横浜港をアジアのハブ港となる巨大港湾施設に増設し、羽田空港にもう一〜二本、浮上式滑走路を造り、発着機数の倍増を図る。
 超低金利時代とも言える今、都市部における電柱の地中線化や必要な公共事業を、超長期で超低金利の国債を国内で捌ける限り大々的に発行して賄い、再び世界第二位の経済大国を目指すべきである。
 近隣諸国のロシアや中国・北朝鮮までもが核保有国となった今、日本はNATO四か国がアメリカと締結している、ニュークリア・シェアリング協定をアメリカと締結し、東アジアにおけるバランス・オブ・パワーを確立しなければならない。必要な財政支出のためには、財政均衡政策から脱却し、大胆な財政出動を行うべきであり、それが我が国の安全保障と経済活性化の両方に寄与することになる。今年の懸賞論文の成果として、この村島氏の論文を世に問うことができたことを、私は非常に誇りに思っている。

2019年10月7日(月) 18時00分校了